【完結】転生せし音色~夢に縋る青年だった少女~   作:詠符音黎

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Fight For Justice

 それは、俺達が小学四年生に上がって少しした頃だった。

 さすがに小学四年生ともなると、俺が自分の事を俺と言うことも一つの個性として受け入れられてきていた。

 ただ、そういった個性を受け入れられないような人間は当然いるわけで……。

 

「おい男女! うぜーんだよお前!」

「…………」

 

 放課後、俺は学校の体育館裏に呼び出され、数人の男子生徒および女子生徒に囲まれていた。

 内訳は六年生男子三人に同級生の四年生女子一人。

 どうしてこんなことになっているかというと、

 

「お前のことうちの妹気持ち悪いっつってんだぞ! いい加減その口調やめろよ!」

 

 ……とのことだ。

 俺のことを嫌いな同級生が、兄の六年生に告げ口し、その六年生がたまたま学年の不良グループのボスだったために徒党を組んでやってきた、という流れである。

 

「……はぁ」

 

 俺はため息をつく。

 小学六年生にもなって下の学年、しかも女子相手に威張って楽しいのだろうか。

 いやでも、小学生なんてこんなものか……。

 

「おい、何ため息ついてるんだよ! その態度マジムカつくなてめー!」

「……すんません」

「もっとちゃんと謝れよお前!」

 

 ついアホらしく思ってしまっているのが態度に出てしまい、相手の感情を煽ってしまう。

 

「兄ちゃんマジこいつムカつくからやっちゃってよ!」

「おう! うちの妹を困らせる奴は誰も許さねぇからな!」

 

 目の前の六年生のボス格の男子がそう言うと、私の胸ぐらが掴まれる。

 

「ぐっ……!」

 

 さすがにそれは苦しく、俺は声を上げてしまう。

 そんな俺の姿を見てか、同級生の女子は笑う。

 本当に意地の悪い子だな……。

 

「おらっ!」

「ぐっ!」

 

 そのまま俺は地面に突き飛ばされてしまう。

 うう、さすがに年下女子相手にやり過ぎだろう……。

 でも、自慢じゃないが俺は生前から喧嘩は弱かった。さらに今は女の体。

 上級生男子がいる複数人相手に勝てるわけもない。故に、俺は黙ってその暴力を受けるしかない。そう思った。

 

「なんだ、その目は!」

 

 でも、ムカつくものはムカつく。

 そんな俺の感情が目に現れてしまった。それを目の前のボス格の男子が見過ごすはずもなく、俺は再び胸ぐらを掴まれる。

「女だからって加減すると思ってんじゃねぇぞ!」

 そして、そのままその男子の片手が握りこぶしを作って振りかぶられる。

 殴られる。

 俺はそう思い、ぎゅっと目を閉じた。

 そのときだった。

 

「やめろっ!」

 

 聞き慣れた叫び声が、俺の耳に響いた。

 

「響……?」

 

 そこにいたのは響だった。どこで知ったのか、響はこの体育館裏にやってきて、俺を今殴ろうとしている男子に叫んでいたのだ。

 

「ああん? なんだてめぇ!」

「男の子なのに年下の女子いじめて恥ずかしくないの!? やめなよ、そんなことっ! そして祭から手を離せっ!」

「ちっうぜぇな! 黙ってろ女のクセに!」

「なんだとっ!」

 

 そして次の瞬間、俺にとって驚くべき行動を響はとった。

 なんと、俺を掴んでいた男子に駆け寄って体当たりしたのだ。

 

「うげっ!?」

 

 男子はその勢いで俺ごと地面に倒れる。

 

「行こうっ!」

 

 そして響は、一緒に倒れた俺の手を取って一気に走り始めた。ちょっと勢い良すぎて方が抜けそうだと、俺は思った。

「あっ! 待てこらっ!」

 ボス格の男子は倒れたまま叫ぶ。その声を背後に、俺は響に連れられとにかく逃げたのだった。

 

 

「……はぁ、はぁ。ここまでくれば大丈夫かな」

 

 しばらく走った俺と響は、授業に使われていない理科室に駆け込んでぜぇぜぇと息を吐いていた。

 

「ひ、響……無茶しすぎだ……」

 

 俺は響に言う。

 

「……へへ、ごめんね」

 

 その俺の言葉に、響は汗を流しながらも笑みで答えた。

 

「でも、祭が危ないって未来から聞いて、現場についてあの姿を見たらいてもたってもいられなくて……」

「響……でも、よかったのか?」

「え? 何が?」

「だって、響って暴力は嫌いじゃないか。でも、あんなふうにぶつかって……」

 

 俺にとっての一番の心配事はそれだった。

 響は暴力が嫌いだ。アニメの作中でも、今まで付き合ってきた中でも、まずは話し合いをしようとする子だ。

 それがいきなり体当たりなんて、俺にとっては驚きの事だった。

 

「うん……そうだね」

 

 それに対し、響は苦笑を作る。

 

「確かに、私はそういうの好きじゃないよ。話し合って済むならそれでいいと思うし、手は殴るためじゃなくて人と繋ぐためにあると思う。でもね、あのときはそんなこと言ってられなさそうな状況だったから……大切な親友が傷つくのを見るなんて、私は絶対嫌なんだ」

「……響」

 

 俺は彼女の名前を呼ぶのが精一杯なぐらいに心が満たされた。

 彼女が俺の事を親友と呼んでくれたことが、とても嬉しかった。

 この体になってから、俺と響、そして未来は短くない時間を一緒に過ごしてきた。

 でも、それでも俺は響にとってちゃんとした友達なのか不安になることがあった。

 だって俺は異物だから。本来のシンフォギアには存在しないはずの人間だから。

 でも、そんな俺を響は親友と呼び信条を曲げてくれた。

 そのことが、俺はとても嬉しかった。

 だから、俺は言った。

 

「……ありがとう」

 

 一言、お礼の言葉を。

 いろんな感情を含めた、一言を。

 

「……うん! どういたしまして!」

 

 それに対して響は笑みを見せてくれた。太陽のような笑みを。

 彼女のその笑みを見て、俺は決めた。

 俺は、この親友を何があっても守ろうと。

 前世ではついぞ作れなかった、親友のためにこの新たな生をかけようと。

 そう思わせる力が、彼女の笑顔にはあった。

 

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