【完結】転生せし音色~夢に縋る青年だった少女~ 作:詠符音黎
響が物語通りに事故にあってから、一週間が過ぎた。
彼女は今、街の病院にいる。
意識は一日で戻った。医者によると、あれほどの怪我でこんなにも早く目覚めるのは早々ないことらしい。
だが、彼女は怪我の後遺症で満足に立ち歩けない体になってしまっていた。
そんな彼女のもとに、俺と未来は足繁く通った。
「響、来たよー!」
「やあ、元気か。響」
「あっ、未来。それに祭……!」
俺達が病室に顔を出すと、響はぱあっとした笑顔を作ってくれた。
でも、体の痛々しい包帯がどうしても目を引く。
「大丈夫か? 体、動かせてるか?」
だから、俺はつい聞いてしまう。
そして、その後にやっぱり聞かなきゃよかったと後悔が襲ってくる。
何気ない世間話でもして怪我のことなんて忘れさせてやればよかったんじゃないかと。
楽しくおしゃべりして現実逃避でもすればよかったのではないかと、そんな後悔を。
「うーん……まだ全然思うように動かないけど……でも、リハビリ頑張ってるよ。早く昔みたいに自由に動きたいしね」
だが、俺の言葉に響はまた笑って返した。
やはり響は強い子だ。
俺はそう思った。
だから、俺は響に言う。
「大丈夫だよ響。響ならきっとすぐにもとに戻れるって! そのために、俺達も全力で手伝うからさ! なあ未来!」
「うん、そうだよ! 響ならすぐ元気になれるよ! だって元気が取り柄なんだもん響は!」
「……うん、そうだよね! 元気のない私なんて私じゃない! へいきへっちゃら!」
響はまたそう言って笑った。
俺と未来はお互いに視線をあわせてうなずき合う。
そうだ、俺達が響を支えなきゃならない。
特に、響を救えなかった俺は。
響は一人でも立ち上がるなんてアニメの展開で知ってる。
でもそれがどうした。
今、俺は響の友達なんだ。なら、友達のためにできることはするべきじゃないか。
そうしてその日から三人一緒のリハビリ生活が始まった。
響は最初、まともに歩くことすらできなかった。
看護師や医者が一緒にいて車椅子で押してもらわないと移動することもできない。
そんな響を俺達は全力でサポートした。
歩く練習のときは手を引いてやり、手を動かす練習のときは彼女が指の動きを練習しやすいように様々な工夫をした。
そうして、響のリハビリは日々進んでいった。
「はぁ……やっぱ私って呪われてるかも……」
でも、そんな頑張ってる響だって弱音を吐くことだってある。
それは、リハビリを初めて一週間。
歩く練習がうまくいっていない日だった。
「どうした、響?」
「うん……この一週間頑張ってるのに、私全然歩けない。こうして助かった、助けてもらった命なのに、それを活かせない。やっぱり私って、ダメなのかな……」
「そんなことない!」
俺はその言葉に反射的にどなっていた。
「響がダメなことなんてあるもんか! 響はいっつも俺達の中心にいて、太陽みたいな存在なんだ! そんな響が、呪われてるなんて……ダメなことなんてあるわけない!」
「祭……」
「あっ……」
つい熱くなった俺は自分の口を手で閉じる。
言い過ぎたかな……思えば俺は前世で人付き合いが苦手だった。
それに、余計なことを言って他人と逆に距離を取られることもあった。
もしかしたら……。
そんな不安が、俺の中によぎる。
「……ありがと、祭。そうだね、しょげるなんて私らしくない! へいきへっちゃら!」
でも、響はまた笑顔を作っていった。
ああ、これが彼女の強さだ……辛く苦しくても、太陽のように笑うことができる。
それが、立花響という、俺の親友なんだなって。
俺はそのことにとても感動した。
そして、この友人のために俺はできることをまた頑張らないと、と思った。
響と一緒に立ち上がるんだ、俺も。
そして俺は決意した。
この後、響を待っている世間の悪意から、必ず彼女を守ると。
だが、そんな俺の考えが甘かったことを、俺はすぐ知ることになる……。