そうでない方はご無沙汰しております。
この度、新たにバンドリの作品を投稿いたします。
なお、本作は『BanG Dream!~隣の天才~』の続編となっております。
前作をお読みにならなくても楽しんでいただけるよう、執筆させていただく予定ですが、より一層楽しんでいただくために、お読みになることをお勧めいたします。
それでは、記念すべき第1話をどうぞ。
プロローグ
季節は春。
「……よし。行くか」
出会いと別れの季節とも呼ばれているこの時期に、僕……美竹一樹は羽丘の制服に身を包み窓から見える青空を仰ぎ見て一つ気合を入れて、自室を後にする。
「兄さん、何してるの?」
朝食を済ませて、玄関で靴を履いていると、義妹の蘭が話しかけてきた。
「何って、これから学園に行くんだけど」
「兄さん寝ぼけてるの? 在校生は来週の月曜でしょ」
軽く笑いをこらえたように言ってくる蘭に少しむっとしつつも、
「普通はね」
と意味ありげに返した。
「あ、そうか。兄さん風紀委員だったっけ」
ようやくここで、蘭も僕の言わんとすることに気づいてくれたようだ。
「なんだか、兄さんが風紀委員って似合わないね」
「言ってろ。じゃ、行ってきます」
自分でも似合わないのは自覚している。
バツが悪くなった僕は、悪態をつきながら家を後にすると、羽丘に向かって足を進めた。
(まあ、確かに僕が風紀委員っていうのは驚きだよね。普通)
啓介や田中君たちから”今年一番の衝撃事件”とまで言われたぐらいだ。
そんなことを考えながら歩いていると、T字路に差し掛かる。
そこは啓介った位との待ち合わせスポットだったが、今では意味合いが少しだけ変わりつつある。
そのT字路には、一人の少女が立っていた。
鞄を手に持って立つその人物は、僕の姿を見つけると顔をほころばせる。
「一樹君」
「紗夜」
彼女の名前は、氷川紗夜。
昔、僕の家の隣に住んでいた子で、今は僕の最愛の人だ。
そんな彼女のもとに、やや駆け足で合流した僕は、自然な動作でカバンを持っていないほうの手でつなぐと、駅に向かって足を進める。
あのT字路は、今では朝登校する時の紗夜との待ち合わせスポットとなっている。
啓介たちは色々と気を使ってくれているみたいで、
『お前たちを見てくると無性に走りたくなる時がある……ちっくしょおおおお!!!』
という、言葉をもらってからというものの、啓介たちとは別々に学園に向かうようになった。
(なんとなく、気を使っているというよりも、耐えられなくなったような気がするけど)
物事何でも考えすぎはよくない。
そんなわけで、僕はそれ以上考えることはなかった。
「一樹君が本当に風紀委員になるとは、予想もしてなかったわ」
「もうみんなに言われてるよ」
そんな僕にかけられた紗夜の言葉に、僕は苦笑交じりに答えるしかない。
「前にも聞いたけど、どうして風紀委員に?」
「うーん。あの時の交流会にかな」
交流会。
それは、去年の夏ごろに行われた留学のようなものだ。
お互いの学園の風紀活動をシェアすることにより、今後の風紀活動がよりよくなることを目的として行われた交流会だったのだが羽丘川の花女に行くはずだった風紀委員のメンバーが、僕にその役目を押し付けてきたのだ。
尤も、僕もそれに応じたので、押し付けられたというのは誤りだけど。
それはともかくとして、そんな経緯で僕は羽丘の風紀委員として花女に向かうことになった。
そこでいろいろと事件に巻き込まれていくわけなのだが、思い出すと長くなりそうなので割愛したい。
あれがきっかけで、僕と紗夜の距離は縮まったようにも思える。
それと同時に、僕の中で風紀委員としてのやりがいと言う物も感じていた。
”これを羽丘でも活かしたい”
その思いが強くなっていた時期に、僕に風紀委員にならないかという誘いが来たときは、運命を感じた。
だからこそ、僕は二つ返事で承諾したのだ。
「まあ、紗夜から教えてもらった風紀委員として大切なことを活かせるようにするよ。今年の生徒会は色々とあれだから」
「……すみません」
僕の言わんとすることが伝わったのか、申し訳なさそうに謝ってきた。
「大丈夫だよ。風紀委員になった理由が交流会の時の経験なのは本当だから」
「だと、いいのだけど」
どちらかと言うと、交流会関連のことは一つのきっかけで、承諾しようと思った理由はもう一つのほうがウエイトを占めているのだが、これは言わないでおこう。
「目指すは紗夜みたいな風紀委員かな。まあ、なれるかわからないけどね」
どうせ風紀委員になるのであれば、紗夜みたいな感じになったほうがいい。
慣れるのかどうかは別としても、目指すのは問題はないだろう。
「ふふ……大丈夫よ。貴方なら、なれるわ」
「……ありがと、紗夜」
柔らかい笑みを浮かべる彼女にお礼を言ったところで、駅に着いた。
そして僕たちは、電車に乗ると、最寄りの駅まで向かう。
それもまたいつものこと。
「あ……」
「着いたね」
楽しい時間は過ぎるのが一瞬だというが、本当のことなんだと思い知らされる。
紗夜の寂しそうな声が特に。
「こっちが早く終わったら、いつものところで待ってるね」
「べ、別にそんなことしなくてもいいのに……でも、ありがとう」
今日は生徒会の活動なので、いつ帰れるのかは分からないが、それでも紗夜を笑顔にすることができたのであれば、それだけで十分だ。
「それじゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
僕は電車を降りてお互いに手を振って、その場を後にする。
今振り返ればどうしても尾を引きそうだったので、それを断ち切るのに必要だった。
(ああ。これが始まりの予感というやつか)
僕はもう一度青空を仰ぎ見た。
BanG Dream!~隣を歩むもの~ 第1章『始まりのライブ』
羽丘学園。
おととしに入学をして、今年でとうとう最高学年でもある3年生。
半年も過ぎれば進路などを考える必要も出てくる年だ。
(まあ、僕の場合は決まってはいるけどね)
春休みの時に、義父さんから『お前は家元の跡取りとして、これからも学んでもらう』と言われたことから、もはや確定だろう。
それ自体は覚悟していたことなので、別に後悔も異論もない。
また、大学にも必要であれば行ってもいいという義父さんからの返事も貰っているので、進路に関しては進学するという選択肢だってある。
残す問題は、”バンド活動のほうをどうするのか”だ。
僕としては続けていきたい気持ちはある。
だが、僕を含めてみんなの今後によっては、それが困難になる可能性だってある。
(一度、ちゃんと話さないとね)
そう結論付けたところで、羽岡の校門前に到着した。
校門の横には『入学式』という立て看板が掛けられており、今日が入学式であることは一目瞭然だった。
中に入っていくのは、今年入学する僕たちの後輩にあたる生徒たちだ。
まだ早い時間もあって、中に入っていく人はそんなに多くはない。
そんな中、僕は校門をくぐって少し進んだ先の横のほうに設置された、簡易式の受付にいる彼女のもとに向かう。
「おはようございます。こちらをお持ちになって左手のほうにお進みください」
「頑張ってるね、副会長」
集合時間よりも前に来る新入生に、資料と胸元につけるリボンを渡しながら入学式の会場へ誘導しているのは、生徒会の副会長でもあり、妹の幼馴染でもあるつぐだ。
「あ、一樹先輩! おはようございます」
軽い口調で声をかけると、元気のいい返事が返ってくる。
若干ではあるがつぐっていないかが心配ではあるが、取り合ずそれは置いておこう。
「おはよう。任せっきりにしてごめんね」
「いいえ! そもそも先輩はもう少し後でも大丈夫なくらいですし、私の仕事なので、気にしないでください!」
確かに、僕が来なければいけない時間はもう少し後だ。
生徒会メンバーとはいえ、そこまでの必要性はないのだが、ヘルプ要因にはなれるし、初日から風紀が乱れていては風紀委員長の名が廃るというものだ、
「それで、会長はどこ?」
「あ、日菜先輩でしたら生徒会室にいます!」
「あそこか……少しばかりくぎを刺してくるから、悪いけどもう少しだけここ任せてもらってもいい?」
「はい!」
つぐには申し訳ないが、今は懸念される問題を未然に防ぐことが先だ。
そんなわけで、僕は生徒会室に向かうのであった。
以上がプロローグとなります。
皆さんの感想やアドバイスなどお待ちしております。