BanG Dream!~隣を歩む者~   作:TRcrant

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第6章『合同文化祭~計画編~』
第26話 合同文化祭計画


『World Idol Festival』から一夜明けたこの日。

 

講堂に全校生徒が集められていた。

それは、月に一度行われる集会であり、校長先生からのありがたい(長い)話を聞いたりする場でもあるのだ。

そして、その集会はいつものように静かな感じで進んでいた。

 

『それでは、続いて生徒会からのお知らせです』

 

そう、この時までは。

 

『みんな―! 花女と合同文化祭、やりたいか―!?』

 

壇上に上がった日菜さんのその言葉に、講堂中が歓声に包まれる。

それは、彼女の問いかけに対してYESと応えている物であった。

 

 

 

BanG Dream!~隣を歩む者~   第6章『合同文化祭』

 

 

 

いきなりだが、羽丘の集会は例年とは違うことがある。

それはズバリ、順番だ。

これまでは校長先生の話の前に生徒会からのお知らせがあった。

だが、今年はそれが一番最後に変更されている。

それは生徒会長のスピーチの後は、自分たちの話を全く聞いてもらえなくなるという問題点に対する対応策によるものだったが、生徒会長のために流れを変更するというのは羽丘学園始まって以来の事態だというのは、つい最近聞いた理事長のお言葉だった。

 

「さてと」

「あれ、一樹君どこに行くの? お昼は?」

 

昼休みになったタイミングで席を立った僕に、いつの間に来ていたのかリサさんがきょとんとした様子で聞いてきた。

 

「ちょっと暴走生徒会長のところに」

「あ、あはは……気を付けてね」

 

僕の様子にただならぬものを感じたのか、引きつった表情を浮かべたリサさんはそう言って僕を送り出した。

 

「失礼」

 

そして、僕が向かったのは生徒会室だ。

 

「あれ? 一樹先輩。どうかされたんですか?」

 

生徒会室に入ると、そこにいたのはつぐだけで、目的の人物の姿が見えなかった。

 

「うん、ちょっと生徒会長に用があってきたんだけど……どこに行った?」

「私もさっき来たばかりなので……すみません」

「あ、いや……こっちこそごめん」

 

申し訳なさそうに目を伏せて謝るつぐに、僕ははっとして慌てて謝った。

ちょっとばかり冷静さに欠けていたようだ……これは反省しなければ。

 

(にしても、一体どこに行ったんだ?)

 

日菜さんは、昼休みになるとよくここに来ているだけに、ここにいないとなると彼女の居場所で心当たりがある場所はないに等しい。

一応部室も行ってみたが、彼女の姿はなかった。

 

「……なんだか、嫌な予感が」

 

朝の集会のこともある。

気が付けば、僕はある人物に電話をかけていた。

出来れば、この予感が外れていてほしいという願いの元、なり続けるコール音を聞いていた。

 

『どうしたんですか? 一樹君』

 

コール音が途切れ、電話の相手……紗夜は、不思議そうな声色で僕に用件を聞いてきた。

 

「紗夜……日菜さん来てる?」

『……ええ。今、生徒会室にいるわ』

 

どうやら、僕の予感は的中してしまったらしい。

僕はすぐに向かうことを紗夜に告げると、電話を切ってその場を後にするのであった。

 

 

 

 

 

「すみません、ありがとうございます」

 

できる限り急いで向かった場所は、紗夜たちが通う花咲川女子学園……通称、花女だ。

そこの受付で、校内に入る許可をもらった僕は、生徒会室へと向かっていく。

もちろん、歩いてだけど。

 

(ここに来たのも一年くらい前なのに、昨日のことのように感じるな)

 

去年の交換留学で、ここに通った僕が紗夜の力を借りて難事件を解決したのはいい思い出だ。

今思えば、あれが僕と紗夜が付き合うきっかけだったのかもしれない。

 

「失礼します」

 

そんなことを考えながらも、生徒会室前までたどり着いた僕は、ドアを数回ノックして、一言断ってからドアを開けて中に入った。

生徒会室内は、風紀委員長の紗夜に生徒会長の白金さんをはじめとして、書記の市ヶ谷さんに羽丘の生徒会長の日菜さんの姿もあった。

 

「あ、一君! どうしたの?」

「どうしたの? じゃないよ。日菜さん滅茶苦茶すぎ」

 

白金さんと紗夜さんの向かい側に腰かけているお気楽気な日菜さんを見ていたら、そんな言葉が出てきた。

 

「朝の集会で話をして、昼休みに直接交渉しようとする行動力はすごいと思うけど、まだこっちのほうで話がまとまってないのに、いきなり相手のほうに打診をするのは違うから。日菜さんのことだから、どうせアポも取ってないでしょ」

 

そして出てくるのはお小言のみだった。

しかも、アポを取ってないという僕の言葉に、紗夜も頷いてるし。

 

「本当に生徒会長が申し訳ない」

「い、いえ……私は、大丈夫です」

「わ、私もです!」

 

とりあえず、白金さんと市ヶ谷さん達に謝罪をしつつ、日菜さんの横に腰かける。

 

「あの、合同文化祭っていったい何を?」

「えーっと、同じ日に文化祭をやって……合同で出し物をしたらお客さんもどっちにも行けてビュンっ、るるるんっ♪でしょ?」

「「びゅん? るるるん?」」

 

内容を聞いた市ヶ谷さんに答える日菜さんの、擬音に僕たちは困惑するしかなかった。

なんとなくではあるが、何を言いたいのかはわかるけど。

 

「市ヶ谷さん美竹君、耳を貸さなくてもいいわよ」

「うぅー……ねえ、燐子ちゃんはどう!?」

 

呆れた様子の紗夜の言葉に、恨めしそうな声で唸っていた日菜さんは、聞く相手を白金さんに変えた。

 

「え!? わ、私?!」

「……生徒会長である白金さんが決めてください」

 

白金さんの意見を求める視線にも、紗夜は両腕を組んだままの紗夜の心境は、おそらくあきらめにも近いものだと思う。

結局、白金さんがこの場では結論を出すことはできなかったため、また後日連絡を入れることで話はまとまった。。

気が付けば昼休みも終わりかけている時間帯だったため、急いで羽丘に戻ることにした僕は、電車にのって一息ついたところで、日菜さんに今後の予定を話すことにした、

 

「先方からの返事が来るまで、こっちはこっちでやるべきことをやるよ。まずは先生方との打ち合わせから」

「……それってあたしじゃないとだめ?」

 

面倒そうだといわんばかりの日菜さんの様子に、僕は無言で頷いた。

日菜さんの気持ちもわかる。

入学式でのスピーチの一件などで、日菜さんは教師たちからあまりいい目で見られてはいない。

今回の一件もまた然り。

なので、話し合いなどはかなり難航するのが予想される。

それでも生徒からの受けが、かなりいいのが幸いというべきか皮肉というべきか。

 

「一君――「今日は家の用事があるから無理」――うぅ~」

 

日菜さんが何を言おうとするのかが手に取るようにわかった僕は、日菜さんのお願いを聞くこともなく切り捨てた。

今日は華道の集まりがあるのだ。

今日行ってしまえば、文化祭が終わるまでは集まりもないので、文化祭のほうに専念することができる。

 

「じゃあつぐちゃんにお願いしよう」

「……あまり、つぐに負担かけないでね」

 

今度、つぐの負担を減らすにはどうすればいいかをAfterglowの人たちと一緒に考えたほうがいいかなと思った瞬間だった。

 

 

 

 

 

「それじゃ、また明日」

「ええ」

 

放課後、僕は湊さんに別れの言葉を告げると、そのまま教室を後にして自宅に帰った。

 

「ただいま」

「おかえり。集まりがあるのは覚えているようだね」

「うん。これから着替えるとこ」

 

家に入って出迎えてきた義父さんにそう言って、僕は自室に戻ると制服を脱いでハンガーにかけておく。

そして、この日の朝に用意していた着物に身を包む。

 

(着物を着るのも、手慣れてきたな)

 

最初のころは、中々着れなくて義父さんにサポートしてもらっていたのが懐かしく感じる。

あれからはや三年。

時間など過ぎてしまえばあっという間だった。

 

「よしっ! これで準備はできた」

 

着物を着ることができた僕は、集まりに必要なものをひとしきりバックに入れると、自室を後にする。

 

「行ってきます」

「ああ、気をつけてな」

 

こうして、僕は義父さんに見送られるようにして、家を後にした。

 

「あれ? 電話だ」

 

家を出て少し歩いたところで、僕のもとに一本の電話がかかってきた。

携帯をバックから取り出して相手を確認すると、相手はライブハウスCiRCLEだった。

 

(サポートの連絡かな?)

 

とりあえず、出ないのもあれなので、僕は電話に出ると受話口を耳にあてる。

 

「はい、美竹です」

『いきなりごめんね。今、時間大丈夫?』

「ええ、まあ……何かあったんですか?」

 

よく聞くと、電話先のほうから女性の物と思われる声が聞こえてくる。

何を言っているのかはわからないが、まりなさんの口調も相まってただならぬ事態が発生しているのは十分伝わってくる。

 

『カメレオンを呼んで欲しいと言っている子が来てるんだけど……』

 

まりなさんから事の経緯を聞いた僕は、すぐに向かうと告げると電話を切って、行き先をCiRCLEに変えるのであった。


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