BanG Dream!~隣を歩む者~   作:TRcrant

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第8章『合同文化祭』
第38話 ライブの知らせ


「あれ、チュチュからだ」

 

公開リハを終え、上々の結果でいい日を終えた僕が自室に戻ると、サポートミュージシャン用の携帯電話が着信があったことを光で知らせて来たので、確認して見ると相手はチュチュからだった。

僕は電話をリダイヤルでかけ直した。

 

『Hello、クレア。ようやく電話してきたわねっ』

「申し訳ない。ちょっとばかり取り込み中だったもんでね」

 

電話に出たチュチュはどこか不機嫌そうな厭味を込めた挨拶をしてきた。

 

『まあいいわ。用件は二つよ。まず一つ。バンドの名前が決まったわ』

「おー、それはそれは」

 

これでようやく彼女たちをバンド名で呼称することができる。

 

『We are RAISE A SUILEN! 略してRAS(ラス)よ! 私の最強の音楽でガールズバンド時代を終わらせるっ!』

 

チュチュの宣言はともかくとして、バンド名は中々にセンスがある。

直訳すれば『スイレンを持ち上げる』という意味になる。

チュチュの言葉から察するに、『幕を上げて表舞台に出ろ!』的な意味合いなのかもしれない。

 

『明日から毎日スタジオに入りなさい! ファーストワンマンライブまでに、最高の状態に仕上げてあげるっ』

 

(明日からか……まあ、幸い文化祭の運営側もクラスの出し物も良い感じに終わってるから、可能っちゃ可能か)

 

「了解。で、そのライブの日程は?」

『それは―――』

 

(あちゃー)

 

チュチュから日程を聞かされた僕は、思わず頭を抱えた。

 

(見事に文化祭の日程と被ってるな)

 

二日にわたって開かれるライブは来週末。

要するに、文化祭の開催日だ。

流石に生徒会役員が、二日とも休むわけにはいかない。

 

「チュチュ、申し訳ないがその日程は無理だ」

『はぁ? あなた何言ってんの?』

 

なので、素直に告げたところ、呆れたような声で返ってきた。

 

「その二日間、どうしても外せない仕事があってね……出るのは難しいんだが」

『クレア! これは私たち最強のバンドの伝説の一歩となる大事なライブなのっ! それを―――』

「だったら、せめてどっちか一日だけでも休ませてほしいんだけど」

 

僕の淡々とした口調に怒りが頂点に達したチュチュが声を荒げるのを遮って、僕は一つの折衷案を出す。

 

『どういうことよ?』

「つまり、どちらかの日程のライには出て、もう一日は休みにするということ。こちらも仕事がある以上、二日間も休むことはできない。でも、一日だけなら何とか休みは取れそうだ」

『………』

 

僕の言葉に、チュチュは押し黙る。

0か100か。

その選択肢なのだ。

 

『OK。それでいいわ』

「ありがとうございます」

 

僕の狙い通り、チュチュは僕の提案を呑んだ。

 

『その代わり、ライブではSweetでExcellentな演奏をしなさいっ』

「もちろん、出るからには全力を出させてもらうよ」

 

そう言って、僕は電話を切った。

 

(これで、どっちを休みにするか……)

 

僕は携帯のスケジュール管理用のアプリを起動させて考え込む。

どちらを休んでも差しさわりはないが、出来れば初日ぐらいは、文化祭のほうの見回りなどで立ち合いたい。

 

(それじゃ、初日を休ませてもら………)

 

そこまで考えたところで、僕は唐突にあることを思い出す。

 

(そう言えば、ポピパの文化祭ライブって、二日目にあったよな)

 

夕方の戸山さんの言葉を聞き間違えてなければ、間違いない。

花園さんは、RASのサポートとしてメンバー入りをしている。

つまり、ライブにも出演するということであり、思いっきりダブルブッキングの状態だ。

 

「どうするんだろう、花園さん」

 

思わず口を継いで出てきた言葉だが、それでも不安は募る。

 

(僕が動くわけにもいかないしな……)

 

クレア=美竹一樹だと知られるわけにはいかない。

もし、花園さんに下手なアプローチをすれば、バレる可能性は高い。

既にバレているかもしれないが、”可能性”があるというだけでまだバレているとは限らない以上、下手に動くべきではない。

 

(とりあえず、様子見……それしかないか)

 

ちょうど明日チュチュに直接休む日程を伝えようと思っていたので、その時にでも根回しをしてみるのもいいかもしれない。

そんなことを考えながら、僕は閉じていたカーテンを少しだけ開けて、夜空を仰ぎ見るのであった。

空は、曇っていて星の一つも見えなかった。

 

 

Bang Dream!~隣を歩む者~   第8章『合同文化祭』

 

 

翌日の朝。

ちょっと早めに家を出た僕が訪れたのは、チュチュの住むマンション兼、練習スタジオだった。

 

「おはようございます! クレアさん」

「おはようチュチュ、パレオさん」

 

スタジオに入る僕を出迎えるパレオさんとチュチュの二人に挨拶を返した。

 

(パレオさんって、ここに住み込み?)

 

「クレア。ちょうどいいところに来たわ」

 

朝からいるので、住み込み過去の近辺に暮らしているのかと考えていると、チュチュが口を開く。

その口調からは、怒った様子はなかったので、機嫌はいいようだ。

 

「ちょっとそこに立ちなさい。パレオ」

「はい、チュチュ様っ!」

 

チュチュの指示に困惑する僕をよそに、名前を呼ばれたパレオさんは、とてもいい笑みでタブレット端末っを取り出した。

 

「クレアさんのステージ衣装の採寸をしますね。両手を開いて、前を向いてください」

「は、はい」

 

とりあえず、パレオさんに言われた通りに立っていくと、パシャリというシャッター音が聞こえた。

 

「横向いてください」

 

そして、続くようにパレオさんからの指示が飛ぶ。

 

(今は衣装の採寸もデジタルでやるもんなんだね)

 

「はい、オッケーです☆」

 

便利になったもんだなーと年寄り臭いことを考えていると、採寸が終わったようでパレオさんはチュチュの横に戻っていく。

 

「それで、クレアの用事は何?」

「昨晩の電話の一件のことで」

 

僕のその言葉にチュチュの表情が不機嫌なものに変わった。

ある意味わかりやすい人だなと思いつつ僕は用件を口にする。

 

「まずは、無茶な願いを聞いてもらってありがとう」

 

最初に僕はあたあを下げて無茶を聞いてくれたことのお礼の言葉を口にする。

何事も、礼儀は大切なのだ。

 

「……お礼なんて必要ない。昨日も言ったはずよ。SweetでExcellentなライブにして。それが条件よ」

「もちろん、そのつもりだよ。それで、日程だけど二日目のほうを休みにしてもらいたいのだけど」

「………」

 

僕の提示した日程に、チュチュは顎に手を当てて考え込むような仕草をする。

 

「まあ、いいわ。クレア、あなたの休みを許可するわ」

「ありがとうございます」

 

考えた末に、チュチュから休むことの許可が出た。

なんだかおかしいような気もするが、バンドに所属している以上、リーダーたるチュチュが頷かないことにはどうしようもないのだ。

 

「初日だったら、無理だけど、まあ二日目だったらNo,problem」

 

(あ、やっぱりそっちなんだ)

 

さすがに門出の……しかもしょぱなで休みというのは無理だったようで、ある意味僕の読み通りの展開になった。

 

「そう言えば、花園さんは何か言ってた?」

「ハナゾノ? そういえば、日程を言ったら少しだけ考えこんでいたような感じだったけど……何も聞いてないわね」

 

(もしかして、言い出せなかった?)

 

僕はチュチュからの”それがどうかしたの?”という問いに適当にはぐらかしながら、僕は彼女のことについて考えを巡らせる。

もし、ダブルブッキングのことに気づいていないのであれば論外だが、気づいていたうえで何も言わないというのであれば、言い出し辛かったかもしくは何らかの算段があるか……。

いずれにせよ、僕にできることが様子を見ることしかない時点で、これ以上踏み込むのは危険だ。

なので、僕はそれ以上踏み込むのを止め、スタジオを後にするのであった。




今回より第8章が始まります。
原作で言うところの9話がメインになります。
今回も基本的な展開は原作と同様です。

それでは、また明日お会いしましょう
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