BanG Dream!~隣を歩む者~   作:TRcrant

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第39話 我儘

羽丘に登校して、いつも通りに授業を受け、文化祭の準備を進めていた僕だったが

 

「で、話してもらおうか」

 

屋上で田中君や啓介と言ったMoonlight Gloryのメンバーに囲まれて詰問されていた。

 

「えっと……」

「もちろん、知らないとは言わせないぜ。これはどういう意味だっ」

 

どのように返せばいいのかを考えている僕にしびれを切らした田中君が、僕にスマホの画面を突き付けながら地球してくる。

それは、僕が送ったメールだった。

 

「『ポピパの主催ライブに参加する』って、何かの冗談かと思ったぞ」

「冗談で言ったりはしないよ」

「知っとるわ! だから聞いてんだよ」

 

どうやら、今日は田中君の虫の居所が相当悪いようだ。

 

「はいはい。聡志落ち着きなって。そんなに閣下してたら一樹が答えられないでしょ」

「……っち」

 

そんな田中君を諫めるように森本さんが割って入ると、バツが悪そうに舌打ちをして後ろに下がる。

 

「僕たちのバンドの活動再開日が、ポピパの主催ライブの予定日とほぼ同じだって言うのは分かるよね?」

「ええ。スタッフからそう聞かされてるわ」

「でも、それがどうしてポピパの主催ライブに参加するということになるんだよ?」

 

バンドの活動再開とポピパの主査ライブへの参加が結びつかないようで、啓介は首を傾げていた。

 

「僕たちは、目的を達成するため、活動を再開したらまた前に進んでいく。立ち止まったり後退するなんて選択肢は一切ない。ここまではわかるよね?」

 

だから、僕は皆にもわかりやすく説明をすることにしたのだ。

 

「でも、同年代の人たちのバンドのライブに出たいって、僕は前々から思ってはいたんだ。ただ、その機会もなければ、余裕もなかったからできないで今まで来ていた。そんな中、僕に出演のオファーを出してきたのが」

「ポピパって、言うわけか」

 

僕の言葉を引き継ぐように声を上げる田中君に、僕は頷いて答える。

それは僕の一つのわがままだった。

同じ年代の人たちのバンドが出演するライブで思いっきり楽しみたいと思っていた。

ただ、その機会もなくズルズルといった結果バンドは活動休止となってしまっていたのだが、ちょうどいいタイミングで戸山さんが僕たちにオファーを出してきたのだ。

それに運命を感じたからこそ、僕は快諾したのだ。

 

「とはいえ、俺は反対だ。リスクが高すぎる」

「俺も反対」

「私も、反対かな。なんだかPoppin'Partyのほうで何か不穏な出来事が起こっているみたいだし」

「どういうこと?」

 

僕の予想通り、猛反対を受けたわけだが、そんな中、中井さんの言葉に引っかかりを覚えた僕は、詳しく聞いてみることにした、

 

「さっき、市ヶ谷さんが白金さんに、文化祭ライブのスケジュールの変更について話しているのを聞いたの。なんでも、花園さんがダブルブッキングしているらしいからって」

「……」

 

どうやら、彼女たちの結論は何とかして間に合わせるというものだったようだ。

とはいえ、本当に可能なのだろうか?

たしかに、ライブの予定終了時刻は、急いで行けば一番最後の開始時刻に間に合う。

だが、ライブというのは何が起こるかわからないのだ。

予定通りに行くこともあれば、アクシデントが起こることだってある。

 

「これは僕のわがままだ。嫌だとは思うけど、聞いてほしい」

 

それでも、僕の意思は変わらなかった。

 

「……私は、別にいいと思うわよ。一度くらい、楽しいライブをしたっていいじゃない」

 

その僕の言葉に折れるように、最初に賛同したのは森本さんだった。

 

「はぁ……まあ、一樹が言い出した時点でこうなるのは目に見えてたけどな」

「あはは……私も賛成、かな」

「じゃ、俺も賛成するしかないじゃないか」

 

嫌々だったり、呆れたりなどなど、反応は様々だったがそれでもみんなは僕のわがままを聞いてくれた。

 

「んじゃ、俺は事務所のほうに確認を取ってくる。ま、行けるだろうけどな」

「俺は、文化祭の準備でもしようかな」

 

そんなこんなで、僕は何とかポピパの主催ライブにゲスト出演することができるようになるのであった。

 

(とはいえ、それもこの文化祭で流れは決まるだろうけど)

 

中井さんが指摘したPoppin'Partyの不穏な空気。

それが、何事もなく終われば、参加は可能だ。

だが、もし万が一のことがあれば、賛成という空気は一転して反対という風に変わっていくことになる。

 

(何も起こらなければいい……なんて、願いはきっとかなわないだろうなぁ)

 

なんとなく、僕も感じているのだ。

不穏な空気、というものを。

 

 

 

 

 

「あ、美竹君。ちょうどいいところに」

「先生? 何か御用で?」

 

屋上を後にして教室に戻ろうとしてた僕を呼び止めたのは、文化祭の実行委員の担当の先生だった。

 

「実は生徒会に、資材置き場の資材の確認をしてもらいたいの。

「資材の確認……ですか?」

 

先生の頼みごとに、僕は首を傾げる。

 

(資材の確認って、文化祭の人の役割だったはずだけど)

 

「実行委員の役割なんだけど、ちょっと手が空いてなくて」

 

僕の疑問は、先生の言葉で解決した。

手が空いていない理由は、間違いなく、合同文化祭だろう。

例年よりも作業量が倍になっているという嘆きがリサさん経由で僕のほうに伝わってきてるので間違いない。

 

(これもまた課題だよね)

 

どのようにして作業を効率化させるのかは、要検討だろう。

もっとも、来年もやるとは限らないけど。

 

「わかりました。チェックはどのように?」

「助かるわッ。このリストのほうに残っている資材を書いてもらえばいいわ。終わったら私のところに、その容姿を届けるように。それじゃ」

 

先生は、ぱぁと嬉しそうな表情で言うと、僕にリストを渡して、足早に去って行った。

リストにはベニヤなどの資材名が記されており、、その横に個数を書く場所が作られていた。

 

(さてと、早くやっちゃうか)

 

なんだか面倒ごとを押し付けられた感がすさまじくするけど、それを頭の片隅に追いやると、僕は資材チェックを行うべく、資材置き場に向かうのであった。

 

 

 

 

 

(えっと、資材のほうはこれで良しっと)

 

資材チェックはものの十分程で終わった。

 

「それじゃ、このリストを先生に渡して――「美竹君、ちょっといいかしら」――あ、はい。何でしょうか?」

 

チェックした資材が記されている用紙を担当の先生に渡しに行こうとした時、女性教師が声をかけてきた。

 

(あの人って、確か体育講師の人だったっけ)

 

このチェックを頼んだ先生とは別の人なだけに、嫌な予感がした。

 

「申し訳ないんだけど、体育館倉庫の備品の確認をお願いしてもいいかしら? この時期になると無断で備品を持ち出す生徒がいたりするから」

「あー……わかりました」

 

やはり、応援要請だった。

しかも、今度は備品チェックと来た。

 

「ありがとう。このリストに備品の数を書きだして終わったら私のところに提出してもらえるかしら?」

「はい」

 

先生から備品のチェックリストを受け取り、返事をした僕は資材チェックのリストを提出するべく、職員室に向かうことにした。

 

「失礼しました」

「一樹君」

 

職員室を後にして、今度は体育館倉庫の備品チェックを行うべく、体育館のほうに移動しようとした時、僕を呼び止める者がいた。

 

「ん?」

 

その声のほうに視線を向けると、そこには花女の制服を身に纏った紗夜が立っていた。

 

「紗夜、どうしたの?」

「いえ。ちょっと用があってこっちに来たので。もしよければ、手伝うわよ」

 

柔らかい笑みを浮かべていてくる紗夜に、僕は

 

「それじゃ、お言葉に甘えようかな」

 

そう言って手伝いをお願いするのであった。

 

 

 

 

 

「一樹君、バスケットボールは38球よ」

「ありがとう。38っと」

 

体育館倉庫に移動した僕と紗夜は、二人で備品チェックを進めていた。

 

「これで、一通り見れましたね」

「うん。ありがとう。紗夜のおかげだよ」

「いえ。私はただ一樹君の手伝いをしただけよ」

 

紗夜はそう言って謙遜するが、実際のところ紗夜の活躍によるところが大きい。

紗夜の動きは、全く持って無駄がないのだ。

 

「それにしても……」

 

僕は一度言葉を区切ると、紗夜じっと観察してみた。

 

「な、なによ?」

「いや、なんだかここで花女の制服を着ている紗夜の姿が新鮮でね」

 

そもそも、紗夜は花女の生徒なのだから、ここに来ることなんてそうそうないのだが、それ故に新鮮さが増しているのだ。

 

「ッ! も、もう、そんなこと言ってないで、早く出るわよ―――きゃっ!?」

 

そんな僕の言葉に顔を赤くして足早に体育館倉庫を立ち去ろうと足を踏み出した時だった。

紗夜が床の段差に足を取られて前のめりに倒れかけていたのだ。

 

「危ないっ」

 

僕は慌てて、紗夜のほうに飛び込むように地面を蹴った。

 

「いつッ!」

 

背中に鋭い痛みが走る。

 

「か、一樹君!? 大丈夫?!」

「大丈夫。紗夜はどう?」

 

でもその代わりに最愛の人を守ることができたのだから、こんな痛みなんて、へっちゃらだ。

 

「私は平気だけど……ごめんなさい。私がもっとしっかりしていれば」

「気にしなくていいよ。紗夜が無事だったら、それだけで僕はうれしいんだから」

 

自分を責める言葉を口にする紗夜に僕は頭を撫でながらそう語りかける。

 

「一樹君……ぁ」

 

そんな時、紗夜は何かに気づいたのかいきなり固まると顔を赤くし始める。

 

(あ……)

 

そこで初めて僕も、自分たちの体制に気づいた。

床で抱きしめ合う僕と紗夜。

目の前には紗夜の顔があり、紗夜の柔らかい場所が僕の体に押し付けられているという状況に。

そのことに意識が向いてしまった僕の鼓動が、少しだけ速まっていく。

 

「紗夜」

「だ、だめよ。誰かが来ちゃう」

「この時期にここに来るような人は滅多にいないよ」

 

恥ずかしそうに体育館倉庫の出入り口のほうを見る紗夜に、僕はそう答える。

 

「だ、だけど、こんなところでなんて……」

「キスだけでも……ダメかな?」

 

なおも恥ずかしがる紗夜に、僕はそう提案をした。

 

「……それだけだったら」

 

視線を右往左往させながら悩んだ末に、紗夜はOKを出すと、静かに目を閉じた。

 

「んっ」

 

そんな彼女の唇に僕は自分の唇を合わせる。

 

「チュ……」

 

最初は軽く合わせるだけのキスだった。

僕たちはそれを何度も何度も繰り返していく。

 

「ぷはぁ……」

 

長い時間、そうしていたかのような錯覚を覚えるほど、僕たちはキスをし続けていたが、どちらからともなく唇を離した。

 

「どう? 紗夜」

「わ、わからないわ。なんだか、頭がぼーっとしてて」

 

そう答える紗夜の表情は頬がほのかに赤みを帯びており、自分の口元に指をそっとあてていた。

 

「きゃっ」

 

その姿がとても魅力的で、気が付けば僕は体を反転させて、今度は僕が紗夜の上に覆いかぶさるような姿勢にしていた。

 

「紗夜、いい?」

 

地面に横たわった紗夜は顔を赤くして口元に指をあてたまま、静かに目を閉じる。

僕はそれを承諾と受け取るのであった。




ということで第39話でした。

一樹が主催ライブのオファーを受け入れた理由と、紗夜との一幕が主な話でした。
今後の予定としては、残り1~3章ほどで2期の話は終わり、オリジナルをはさみつつ、3期の話に行く予定です。

果たして、オリジナルの話に行くのにどのくらい時間がかかるのかはわかりませんが(汗)


次回も楽しみにしていただければ幸いです。
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