ライブハウスgalaxyのリニューアルライブ当日。
僕は、一足先にライブハウスの客席に来ていた。
ライブハウス内は座る席がわずかに用意されているが、基本的には立ってライブを見るのがメインのようだ。
壁のレンガ造りっぽい感じが、何とも言えない渋さを醸し出しておりまた、ステージの背景が宇宙(?)なのも、斬新だなと思わせるのに十分だった。
そんなライブハウスgalaxyのリニューアルライブ。
どう変わったのかがわからないので、あれだけど僕はこのライブを堪能することにした。
トップバッターは僕の妹である蘭と幼馴染である五人が結成したバンド『Afterglow』だ。
中々に熱い演奏をしてくるので、ステージは一気に彼女たちの熱で満たされる。
「galaxy、悪くないね!」
彼女たちの演奏が終わり、蘭のいつもの言葉が放たれる。
ちなみに言っておくが、蘭の”悪くない”は大まかに言うと、”良かった”という意味だ。
『Afterglowでしたー!』
「良かったよー!!」
みんなが手を振ってステージを去って行く中、僕も彼女たちに手を振って彼女たちにねぎらいの言葉をかける。
……聞えているかは知らないけど。
というより、間違いなく聞こえてないと思うけど。
そして彼女たちが去って行って数分後。
「ミッシェルー!」
「かのちゃんせんぱーい!」
(うわ!? い、一体どこから出てきてんの!?)
次の演奏を行うバンドである『ハロー、ハッピーワールド』のボーカルの弦巻さんにギターの薫さん、ベースの北沢さんの通称三バカ(奥沢さん命名)が姿を現した。
ステージの反対側の扉のほうから。
聞えた言葉からして、おそらくは花音さんたちを探しているのだろうけど、間違いなく彼女たちが間違ったところから出てきてる。
当然、彼女たちの登場で歓声が沸き起こり、それに気が付いたミッシェルと花音さんがステージ袖から現れた。
そんな二人を見つけた三人は、なんとまるで泳いでるかのように、ステージのほうまで移動し始めた。
この時ほど観客席の端のほうにいといてよかったと思ったことはないだろう。
「ハッピー!」
途中で、聞えた弦巻さんの声から推測すると、おそらくは彼女たちのバンドの掛け声を言ってるのだろう。
『えがおのオーケストラ!』
そんなハプニングはあったが、普通にライブが始まった。
相変わらず、弦巻さんはステージの上をよく動いている。
(なんだか、見ていると自然と笑顔になれるんだよね)
彼女たちの存在は、ある意味謎の塊だった。
そして、最後は弦巻さんがものすごい高さまでジャンプをして、ライブは終わった。
(次はRoseliaか、Poppin'Partyか……)
どっちが来てもおかしくないバンドたちだ。
特にポピパのほうは最近はライブに行っていないので、どのくらい演奏がうまくなったのかはわからないので、楽しみではある。
そう考えていると、ステージの上に現れたのはRoseliaだった。
「行くわよ! LOUDER」
湊さんが告げた曲名で観客たちは歓声を上げる。
(なるほど、凄まじく熱い曲をぶつけてきたわけだ)
Afterglowの熱い演奏に対抗していると思わせるような選曲に、僕は顔をほころばせていた。
一気に照明が暗くなり薄暗い青色の照明が彼女たちを照らし出す。
(何度聞いてもいい曲だね、これ)
Afterglowとはまた別の熱さがあるこの曲は、間違いなくRoseliaの代名詞と言っても過言ではないほどの曲だった。
(ちょっとドラムが走りがちだけど……まあ、後で言えばいいか)
もちろん、演奏のうまい下手を見てくことも忘れない。
この後に控えているライブのためにもなるのだ。
彼女たちの演奏も終わり、残すのはPoppin'Partyのみだ。
あこさんと白金さんの二人がステージ袖に移動すると、照明が落ちた。
『ポピパ、ピポパ、ポピパパピポパー!』
(それ、毎回言ってるの!?)
確かに会場は一気に盛り上がったが、ものすごく噛みそうな掛け声は、何度聞いてもツッコミを入れたくなってしまう。
もし誰かが、僕に言うようにお願いされたとしても断るであろうその掛け声とともに再び照明がつくと、ステージの上には戸山さんたちの姿があった。
『私はたちは、Poppin'Partyです!』
最初の掴みはばっちりだった。
『久しぶりのライブで、緊張していますけど、とてもうれしいです!』
『うん。まるで帰ってきたみたいだね』
『いや、ここに立ったの初めてだろ!』
(あはは、相変わらずだね)
恐ろしいのは、素で言っていることだったりもするのだが、MCとしては十分だ。
『それでは、聴いてください! Happy Happy party!』
そして始まったのは、ポップな曲調のものだった。
(演奏技術はそんなに高くないんだけどね)
演奏が下手というわけでもないが、それほど高いわけではない。
それでも、楽しくなってくるこの感じは、彼女たちでしかできないことだ。
なんだかんだごちゃごちゃ言っても、彼女たちの演奏はとてもいいという最終的な結論が変わることはない。
こうして、リニューアルライブは何の問題もなく、無事に幕を閉じることとなり、最後に今回のライブに出演した全バンドがステージに上がる。
『ありがとうございました!』
そのお礼の言葉に、僕の周りの観客たちも歓声で応える。
そんな中、紗夜はマイクの前に移動する。
『最後に、皆さんに告知があります』
『私たちRoseliaは来月、主催ライブをやるわ』
(なるほど、そういう狙いもあったわけか)
経験値積みという理由だけではなく、来月開かれる主催ライブの告知という狙いもあったのかもしれない。
もしそうだとすれば、お見事といったところだろう。
とはいえ、Roseliaクラスのバンドであれば、このような場での告知をしなくても、十分見に来てくれる人はいるとは思うけど。
観客たちの反応もいい感じだった。
『他に誰か告知のある人はいますか?』
その紗夜の言葉を受けて戸山さんは花園さんたちと頷き合うと、さっと手を挙げた。
『私たちも、ライブやります!』
『Poppin'Party、ライブします!』
戸山さんの告知に続くように花園さんたちも声を上げた。
それによって、会場内は再び歓声に包まれる。
(あの感じだと、たぶん思い付きだろうな……)
彼女たちの様子から、かねて計画していたという印象は感じられなかったので、僕はそう結論付ける。
こうして、リニューアルライブは無事に幕を閉じるのであった。
彼女たち、Poppin'Partyの主催ライブが後々、僕たちを巻き込んだ騒動に発展するとも知らずに。
第1章、完
ということで、これにて本章は完結となります。
次回より、新たな章が始まります。
それでは、次章予告をば。
―――
Roseliaの主催ライブの告知を行い、準備が本格化し始める。
そんなある日、Poppin'Partyをゲストバンドとして招くという話がでるのだが……
次回、第2章『主催ライブ』