黄色い閃光inダンジョン   作:いちごぎゅーにゃー

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1度は書いてみたかったあの技。むじぃ...


壊れて叫んでも消しされない記憶と

月の光が妖しく照りつける。ほとんど音はなく、2人の身体が交差する時のみ接触音が鳴り響いた。

 

「ッ!!」

「......」

 

第1級冒険者でも視認する事の難しい速度で、何度も打ち合う。遠慮なく頭を狙う上段蹴りがミナトを襲う。狼人(ウェアウルフ)の身体能力を存分に生かし、蹴り技を主体とするベートの攻撃はオラリオ内でも()()()()()。『スキル』の恩恵も合わさり、凄まじい速度と威力を誇る蹴りは、並の冒険者程度であれば防御(ガード)ごと吹き飛ばすだろう。そう、()()()()()

 

「.....」

「ちっ....!」

 

左手の甲を使い、繰り出される豪脚を難なくいなす。自慢の蹴りをいとも簡単に防がれたベートは、カウンターを予期してか、即座にその場から後退する。

 

「どういうつもりだ、てめえ....!?」

「.....」

 

5m程距離が開き、ただこちらを見つめるだけの青年に、ベートは苛立(いらだ)ち言葉に乗せ彼に問いかけた。

 

「さっきから防いでばかりで、ちっとも攻撃してこねぇ」

「.....」

 

投げかけられたミナトは何も言わない。

 

「【飛雷神】も使わずに....俺を舐めてんのか...っ!?」

 

どれだけ仕掛けようが完璧に蹴りを防がれ、しかも向こうからは攻撃をしてこない。得意の【飛雷神】も使わず、ただ()()()()()()のみで自身(ベート)を完封する。そんなミナトの態度に業を煮やしたベートは、地面を蹴り、今日最速の蹴りで彼の横腹を狙う。

 

「.....」

「っ!?」

 

反気相殺(はんきそうさい)

 

相手の白打に同質の威力、速度をぶつけることで、攻撃を完全に殺す超高等技術。

 

第1級冒険者(Lv.5)の中でも最速を誇るベートの蹴りに、寸分の狂いもないタイミングで同質の蹴りを放ったミナト。先程までとは違って、ただ防ぐだけではなく、実力差を見せつけるような動きにベートは屈辱を覚える。その強靭な精神をもって感情を押し殺す彼に、遂にミナトが仕掛けた。

 

「.....」

「く、そがぁ...!」

 

鋭い掌底、死角から放たれる蹴り、それらが先のベートを超える速度かつ緩急をつけながら襲いかかる。次第に防ぎきれなくなり、受け始める。明らかに自分よりも上の『技と駆け引き』、『ステイタス』。目の前の男には自慢の速度さえも完全に劣っている。上位互換。攻撃を受けるベートの頭にその言葉が浮かび上がった。

 

「....たまるか」

「......」

「認めてたまるかァァァああ!?」

 

()()()強者(ミナト)を前に屈する、それだけは許せなかった。それは自らにかけた(いまし)めを破ることを意味する。()()()()()()()としての矜恃を失う。たとえ、眼前で格下だと決めつけられようが、ここで負けようが、『牙を収める』。それだけは絶対にしない。

 

月光が彼を強く照らす。瞬間、ベートの身体が脈動した。毛並みが逆立ち、端正な顔に鋭さが増す。眼孔は細長く縦に割れ、彼が狼人(ウェアウルフ)であることをより強く示した。

 

月下咆哮(ウールヴヘジン)

 

狼人(ウェアウルフ)ならば誰もが発現する獣化スキル。月の光を浴びることで獣性と力が発揮され、全アビリティ能力に超高補正がかかり、状態異常も無効化する。このスキルは月の下でないと発動できないため、狼人(ウェアウルフ)は最もダンジョン攻略に向いていない種族と揶揄(やゆ)される。スキル発動時のベートは、『魔法』を使っていないアイズを、一方的にねじ伏せることが可能になるほどまで強化される。

 

「獣化か...」

「いくぞ、舐めプやろう!!」

 

それを合図にベートの姿が掻き消える。スキルによる強化が加わった彼の【ステイタス】はLv.6に匹敵する。2人の戦いを観戦していたアイズ達(Lv.5)は彼の姿を目で追えなかった。次の瞬間にはミナトの背後へと回っており、左腹を狙うように右脚で回し蹴りを繰り出していた。視界の端でベートを捉えたミナトは、放たれる蹴りの威力が先程までとは比べ物にならないものであると判断し、腰を落とすように身を(かが)めることで躱す。そのまま低い姿勢を保ちつつ、後ろ蹴りでベートの顎を狙う。

 

「見えてんぞ!」

「.....」

 

スキル発動前であったなら、彼はその反撃(カウンター)を防げなかっただろう。しかし今は違う。確実に捉えたミナトの攻撃を、両の(てのひら)を重ねるようにして受け止める。無理な体勢から蹴りを放ち、それを防がれたミナトに隙が生じる。すかさずベートはがら空きの胴体へ蹴りを放つ。しかし、放った脚に手応えが返って来ることは無かった。顔を上げて見渡せば、9時の方角の少しばかり離れたところにミナトが立っている。

 

「使いやがったな、【飛雷神】」

「.....」

「てことは今の蹴りは、()()()じゃあ躱せなかったってことでいいんだよなぁ?」

「.....」

「いい加減何か喋りやがれ!」

 

距離を開けながらベートが叫ぶ。

 

「【ステイタス】頼みの攻撃から、少し変わったね...」

「....ああ?」

「さっきまでの君は、()()()だった。そう言ってるんだよ」

 

なまじLv.5という恵まれた【ステイタス】があるために、その火力任せになることは珍しくもない。しかし、()()が通用するのは自分と同格か格下を相手にした時である。格上と戦う際に同じことをすれば、先のベートがその身で体験したように、より強い【ステイタス】で封じられるだけで、通用することは無いと断言できる。その差を埋めるものこそが『技と駆け引き』であり、第1級冒険者が何よりも重要視しているものだ。磨き上げられた技術は、時にレベル差を(くつがえ)す武器になりうる。

 

「今の君の【ステイタス】は、俺に匹敵するくらいまで上昇している」

「だから何だってんだ....」

()()()()()少し本気で行く。構えなよ」

「かかって来やがれ!」

 

再び閃光が交差する。両者ともずば抜けた敏捷の持ち主、繰り出される攻撃回数は他の冒険者を軽く凌駕する。だからこそ、一瞬の判断が2人の命運を分ける要因であり、コンマ数秒という限りなく短い時の中でベートとミナトは攻防を繰り返す。

 

 

 

「凄い...」

「ミナトはもちろんだけど。『スキル』を使ったとはいえ、ベートがここまで食い下がるなんて...」

 

ティオナとティオネが目の前の光景に息を飲む。恐らく今のベートには彼女達ですら、手も足も出せずに負けるだろう。普段、月の光が届かないダンジョンでのベートしか知らないために、彼女達は本来の彼の姿を目にし、静かに驚愕した。

 

 

 

「オラァ!!」

「ふっ!!」

 

自力の差を埋めたことでミナトに食らいつき始めたベート。少しずつ攻撃が当たり始める。その身に鈍い痛みを増やしながらも尚吠え続ける。目の前の男に勝つために。もはやベートの頭に酒場での出来事など微塵も残っていない。あるのはただ、目の前の男(ミナト)を倒すことのみ。

 

「ここまでやるとは思わなかったよ」

「なに、言ってやがる...っ!?」

 

蹴りがかすった時に切れたのか、唇から垂れる血を指で(ぬぐ)いながら言う。超高速で行われる攻防の中でミナトだけが余裕を残していた。それに対して、ベートを見れば肩で息をしているのが分かる。「そろそろ終わらせる」そう言い、ミナトがベートに肉薄する。

 

「っ...!?」

 

一段とギアを上げた速さにベートは反応が遅れる。鳩尾(みぞおち)付近を狙ったパンチを辛うじて防ぐが、すぐに連続して放たれた蹴り上げをモロに顎で食らう。決して軽くない彼の身体が宙に浮く。

 

「行くよ」

 

空中で身動きの取れないベートの背後に回ったミナトが仕掛ける。手始めに腰をひねり左脚で蹴りを放つ。

 

が、

 

「甘ぇ!」

 

驚異的な反応を見せたベートは、左腕でガードする。空中でも手足は動く。体勢を持ち直すことは出来ないが、四肢を動かすことは可能だ。

 

「甘いね」

 

2人の戦いを見ていたフィンが呟く。

 

受け止められた脚の裏を使い、ベートの腕を踏み台にするように蹴ることで、彼の背後から真横へと体を移動させる。その踏み込みと同時にバランスを崩されたベートは、次に繰り出された裏拳に反応はするも、ガードは間に合わず首元に食らってしまい、地面に頭を向ける形になった。

 

「く..そ..がっ!」

 

流麗な舞のように振りかざされる連撃。ここまで体勢を崩されれば、もはやベートに抗う(すべ)は無い。ミナトは裏拳の流れのまま体をコマのように捻り、その回転から生み出された遠心力を乗せた右腕の腹でベートを殴る。

 

「終わりだよ」

 

既に2発、確かに手応えのあった打撃をベートに与えたミナトは、トドメとばかりに叫ぶ。

 

獅子連弾(ししれんだん)!」

 

重力に従い落下していく狼人(ウェアウルフ)の青年に、この戦いに決着を着けるかかと落としが直撃した。地面とミナトに挟まれる形で叩きつけられたベートの体に、余すことなく衝撃が伝わる。叩きつけられ、地面に仰向けになるベートは、Lv.6の【ステイタス】から放たれる連撃をその身に全て受けたために、立ち上がることが出来ない。

 

 

 

 

 

「そこまで!」

 

『獣化』で身体能力が強化されたとは言え、身動きの取れない状態から叩きつけられたのだ。体中が悲鳴を上げているだろう。ベートの身を案じたリヴェリアが、すかさず試合終了の合図をだす。そのまま彼の元へ駆け寄り『回復魔法』を施す。

 

 

「清々しいまでの完敗だな、ベート」

「....るせぇ」

「アイズ、ティオナ、ティオネ、そしてベート。お前達4人はここ最近【ステイタス】に頼りすぎている」

「.....」

「その顔だと、今ので思い知らされたようだな」

 

Lv.5の【ステイタス】は凄まじい。それは誰もが知るところだ。ただでさえ難しい器の昇華を何度も経て、ようやく手にすることの出来る力を持つ彼女達は胸を張っていいだろう。だが、それに頼りきっては成長は見込めない。【ステイタス】を行使するのはあくまで人間。力任せに振るうことはモンスターと何ら変わりない。先程ミナトがベートに見せつけたように、『技と駆け引き』。それと【ステイタス】が合わさってこそ、本領を発揮するというものだ。巨大な力を使う側であっても、力に使われる側になってはいけない。リヴェリアが言いたいのはそういう事だろう。

 

 

 

 

 

 

「原点回帰ってやつかな」

「...」

「あの少年(ベル)にも、同じように君にも()がいる。」

「.......」

「俺が何を言ってるか、君なら分かるだろ?」

 

他人に勝つことは、さほど難しいことではない。むしろ自分で研鑽(けんさん)し続けることこそが、最も重要で、最も難易度が高い。誰もが最初は弱いのは道理。そこからどう花開くかは全て己次第。ミナトの言う「上」に勝つためには、確固たる意志と決して折れない覚悟が必要になる。『豊穣の女主人』においてベートがベルにやったことは、他人の意志と覚悟を踏みにじる行為であり、彼の可能性を否定するものだった。

 

「...やめだ」

「ベート」

 

ミナトの言わんとしている事を理解したのか。リヴェリアに手当をしてもらい、自力で動けるまで回復したベートは起き上がって本拠(ホーム)の方に歩き始めた。リヴェリアが彼の名を呼ぶが特に気にもせず、ミナトとすれ違い、一瞬だけ目を合わせ、そのまま歩き去っていった。

 

「(分かってくれたみたいだね)」

 

すれ違い様に見たベートの瞳には、少年を侮辱する意思は見受けられず、ただミナトに負けた悔しさが滲み出ていた。ベルのことについて反省したかは分からないが、少なくともこれ以上馬鹿にすることは無いだろう。

 

 

 

「さ、飲み直すでぇ〜!!」

「まったく、この馬鹿(ロキ)は...」

 

白けた空気を元に戻すように、ロキがおちゃらけた声を出す。そんな彼女に呆れたガレスは深いため息をついた。その後、狼人(ウェアウルフ)の青年が酒場に戻ってくることは無かったが、再び【ロキ・ファミリア】の団員達は楽しそうに騒ぎ散らし、何人か潰れたところで今晩はお開きになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

 

「むー」

 

腕を組み、ティオナは(うな)る。

 

「ティオナさん?」

「何難しい声出してんのよ」

 

朝の食堂でレフィーヤとティオネに見つめられながら、考え込む。

 

「アイズ、また元気なかった」

 

朝食を終えた今、自分の隣にいたアイズはもういない。今日はいつもの4人で食事を取ったり話題を振ってやれば、言葉少なながら普段通りの受け答えが返ってきて、その様子は何も変わりないように見えた。しかしだ。ティオナにはわかる。空元気と言うほど取り繕ってもないだろうが、今のアイズは本調子ではない。

 

「ベートに腹を立たてるだけでしょう?放っておけばいいじゃない」

「いや、多分ベートはあんまり関係ないんだよ。アイズは最初からあの狼のことはきにしてないって」

「あんた、酒場であれだけベートをのしといて.....」

「アイズ、別のことでまた落ち込んでる」

 

ティオナは考えることは苦手だが、能天気な振る舞いで、アイズから笑顔を引っ張り出してやることはできる。

 

「レフィーヤ、ティオネ。今日の予定はなんかある?」

「いえ、特には」

「あたしは今日も団長のお手伝いに....」

「じゃあ暇だね、あたしに付き合ってよ!」

「ちょっと!」

「あたし、アイズ探してくる!」

 

小難しいことはいい。要はアイズのしょぼくれた顔を見たくないのだ。ホーム中を駆け回ってアイズを探していて狭い廊下を走っていた時だ。

 

「....おい」

「わっ!?」

 

長い足が壁にかけられ、ティオナの行く手を阻む。ギリギリ立ち止まったティオナは、いきなり通せんぼしてきたベートを睨みつける。

 

「ちょっと危ないじゃん!」

 

酒場の事もあって語気を強める彼女に対し、口を引きつるベートは、くいっと窓の外を顎でしゃくる。

 

「アイズなら、中庭にいるぞ」

「え....」

 

呆気に取られるティオナを見て、ベートは足をどける。歩き去って行く背中に、両目を瞑ってあっかんべーをした後。素直に中庭へと向かった。

 

「!」

 

ベートの言葉通りアイズはいた。その隣にミナトもいる。

 

木の下にある長椅子に2人揃って座り、アイズは視線を空に向け。ミナトは手元の本に意識を向けている。ティオナはぱっと顔を明るくさせ駆け寄った。

 

「ア〜イズ!」

「...ティオナ?」

「うん?」

 

目の前に現れた彼女に、金色と碧の瞳が瞬きする。ティオナは2人の片手を両手で取り、長椅子から立ち上がらせた。

 

「買い物行こう!!」

 

 

 

 

 

 

 

レフィーヤ達と合流し、ティオナはアイズを連れて街へと繰り出した。

 

「ったく、強引に連れ出して.....」

「いーじゃん、たまにはさ!ぱーっと気晴らしに買い物行きたいって、ティオネだって前に言ってたでしょ!」

「1人だけ男が混ざってもいいのかい?」

「いーのいーの、ミナトは審査員ね!」

「審査員?」

「うん!服、服買いに行こう!アイズもいいよね!?」

「う、うん」

 

アイズの手をしっかりと握り、ティオナは先導するように進む。

 

北のメインストリート界隈はアパレル関係で有名だ。種族間に存在する衣装の壁は意外と大きい。多くの種族で溢れるオラリオでは、各種族に対応した店が多く並ぶ。特に北のメインストリート周辺は、世界でもトップクラスの数の店舗が軒並み店を構えている。

 

「まずはここねー!」

「えっ、ティオナさん、このお店って....」

 

レフィーヤの声音がまさかという危惧を(はら)む。店内に入ると、非常に際どい衣装がズラっと並んでいる。1目見ればわかる、アマゾネス御用達の店舗だ。

 

「久しぶりねー、私もちょっと羽目を外しちゃおうかしら」

「な、なあ...俺は入口で待ってるから、君たちだけで行っておいで?」

「いいからいいから!ミナトも、ほら、アイズも行くよ!」

「え、あの、」

 

ティオナとティオネに挟まれたミナトとアイズが連行される中、レフィーヤも慌てて後を追う。結論を言えば、店内はアマゾネス以外の種族には目に毒でしかなかった。中でもミナトの顔から冷や汗が止まらず、顔を青くしている。性別の問題ももちろんあるだろうが。かつて【イシュタル・ファミリア】との抗争で多くの戦闘娼婦(バーベラ)を蹴散らした彼は、日頃からアマゾネスに熱血的、肉体的なアプローチを受けている。そのため、アマゾネスという種族そのものに嫌悪感を抱いてる節がある。そんなミナトの心境は(つゆ)知らず、ティオネとティオナはアイズに服を進めていた。

 

「アイズ、これ着てみない?貴方体の線が細いから、きっと良く似合うわよ」

「な、なんでアイズさんがここの服を着ることになっているんですか!?」

「なあ、頼むからこの店は止めないか?」

「別にいいじゃない、せっかくなんだし。レフィーヤもどう?」

「き、着ませんっ!」

 

 

それから何軒も店を回り、最後にヒューマン用の店に入った。

 

 

「「「おおー」」」

 

3つの感嘆が重なり合う、ティオナ達が声を揃える中、気恥しさで頬を染めるアイズは、人形のようにただずみ軽くうつむいた。さりげなく花を(かたど)った刺繍が施された白い短衣に、ミニスカート。単純な組み合わせだが、着こなしている素材が素材だ。美しい金の長髪と合わさってこれ以上なく映えている。

 

「に、似合ってます、アイズさん!」

「うんうん、凄くいい!ロキがいたら飛びついてきそう!」

「肌は綺麗だし、出るとこは出てるし....羨ましいわね、ホント」

 

彼女達から黄色い声を浴びながら、アイズ少し上目遣いで、この場でただ1人の男であるミナトに声をかけた。

 

「どう...かな」

「ああ、よく似合ってる。綺麗になったね」

「....あ、ありが...とう」

 

赤らめた顔を上げられない彼女に、ティオナ達は笑みを漏らした。

 

「でた!ミナトのすけこまし!」

「す、すけこまし...っ!?」

「そんなんだからギルド職員のエルフさんに怒られんのよ」

 

「褒めただけじゃないか」と落ち込むミナトをよそにティオナ達は大いにはしゃぐ

 

「アイズ、これにしよう!」

「う、うん.....ティオナ、お金は....」

「大丈夫!ミナトがさっき払ってくれたから!」

 

Vサインを向ける彼を見たアイズは、ありがとうと礼を述べた。

 

 

 

 

 

「そろそろお昼にしない?あたし、お腹空いちゃった」

 

時刻は正午を迎えようとしていた。

 

「少し早いような気もするけど、そうしましょうか」

「あ、でしたらこの先にカフェがありますよ」

 

会話をしながら歩んでいると、ティオナは視線を感じた。後ろを振り向くと、アイズが少し下を見つめてきている。

 

「どうしたの、アイズ?」

「ティオナ.....」

 

言い切る前に、どんっ、という衝撃がティオナを襲った。

 

「わっ!?」

「おっと、ごめんよ、アマゾネス君!」

「ヘスティア様?」

「おお、ミナト君!この間ぶりだね。でもごめんよ、今は少し急いでるんだ!」

 

ティオナにぶつかった幼い女神は、そそくさと先へ行ってしまった。

 

「今の可愛い女の子...女神様ですよね?」

「うん、彼女は『ヘスティア』様というお方だよ」

「どこで知り合ったのよ......どうしたの、ティオナ?」

「胸が、すごい大きかった...あんなに小さい体なのに」

『.......』

 

ティオナに辟易とした視線を送るレフィーヤ達。辺りを見渡せば、女神の姿がそこら中で見える。

 

「そういえばロキが言ってたわね。『神の宴』が近いって」

「そういうことかー」

 

ティオネの発言にティオナが納得する。よく見れば女神達の腕の中には何着ものドレスがあった。

 

やがてティオナ達はカフェを見つけ、丸テーブルに座る。

 

「ねぇ、この後は南のメインストリート行こうよ!」

「繁華街ね....私はいいけど」

「私も大丈夫です」

「俺も付き合うよ」

「アイズも行こう!夜にならなくてもあっちは凄く賑やかで楽しいんだ!」

 

隣の席にいるアイズに笑いかけると、彼女は何も言わず視線を落とした。

 

「ごめん、ティオナ....」

「.....」

 

金の双眸を伏せたままアイズは、つい先程も言いかけようとしたのだろう、その言葉を口にする。ティオナの振る舞いが、自分を気遣ってのものだと気づいたのだろう。アイズは申し訳なさそうに体を小さくし、視線を上げようとしない。

 

「あたし、謝って欲しくてアイズを連れ回したんじゃないんだけどなー」

 

そう言いつつ、2度、3度とアイズの額を小突く。やがてティオナが手を止めると、打たれた額をさするアイズは、おずおずと彼女と目を合わせた。互いに視線を交わした後、彼女は力が抜けたように、口元を綻ばせる。

 

「.....ありがとう、ティオナ」

 

小さな笑顔。

 

ようやく笑ったアイズに、ティオナも破顔し、勢いよく抱きついた。

 

「ティオナさんっ、抱きつく必要はないんじゃあっ...」

「あ、レフィーヤ、もしかして羨ましいの?」

「ち、違っ....!」

「でもダメー。アイズの隣はあたしの特等席だし!」

「.....!?」

「ふふ、素直になった方がいいんじゃない、レフィーヤ」

「やれやれ.....」

 

その肩に両手を回して、レフィーヤに見せつけるようにアイズと頬を触れ合わせる。くすぐったそうに片目を閉じる彼女は照れはしても、拒むことはない。レフィーヤが動揺し、ティオネが面白そうに見守る中、ミナトが小さく息を吐いた。くっつき合うティオナとアイズは、2人一緒に笑顔を分かちあった。

 




反鬼相殺をオマージュしたのが反気相殺です。BLEACHから少しお借りしました。

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