「アイズ、本当に1人でやるつもりか?」
歩み出すアイズの背に、リヴェリアが強ばった声を飛ばす。上下の顎骨を開口し、凄まじい咆哮を放ってくる『ウダイオス』を前に、アイズは剣の銀光を静かに散らした。
「大丈夫」
絶対の決意を胸に、彼女は唇を開く。
「すぐに終わらせるから」
見てて、とミナトを一瞥し、そう続ける。
黒骨の巨身が震えた。射程圏内へと1人足を踏み入れたことで、凶悪な戦意が開放される。全身の骨格を
一直線、敵の元へ駆け抜ける。唯一の武器にして数々の死闘をくぐりぬけてきた愛剣を右手に提げ、アイズは見上げるほどの大巨躯の懐へ、真正面から疾走した。
『オオオオオオオオオオオオオッッ!!』
突貫してくるアイズに、ウダイオスは大気を震わす雄叫びを上げる。揺らめく朱色の眼光で金色の影を睨みつけ、剥き出しの長骨が黒く光る歪な左腕、その巨大な鈍器を背に溜めた。大気を抉り取りながら、矮小な影に向かって、横なぎの一撃を繰り出す。
「【
押し寄せる一撃必殺に対し、アイズは超短文詠唱を唱えた。瞬く間に風の気流が防具ごと体を包み込む。速力の増したアイズは、叩きつける左足で地面を爆発させ、一気に加速した。ぐんと体を前に倒し、ウダイオスの左腕が自身を捉える前に懐へと入り込む。空洞の
『ウゥゥゥ!?』
「!」
肋の隙間を狙って滑り込ませようとした風の一撃を、第五助骨が上下動することで阻んだ。弱点である魔石を黒骨の盾で守ったのだ。防がれても足をとめず、体の左脇を抜けてウダイオスの後方に出るアイズは地面に着地し、すかさず反転する。隙だらけの背後、背骨を晒す階層主へ斬りかかった。
次の瞬間。
走るアイズの足元、その地面から伸び上がる槍のように漆黒の逆杭が放出された。
「っ!」
顎の下から突き上がる鋭い一撃を、上半身の動きだけで回避する。漆黒の柱によって金の長髪が乱れる中、続いて地面より射出された5本の矛からアイズは素早く横手へ逃げた。地面を破って現れる黒槍、あるいは剣山は執拗にアイズを追いかけ、眼下から攻撃を加える。
その巨躯ゆえに機動力が乏しいウダイオスには、大人数のパーティでさえも一気に攻めかかることができない理由がこれだ。この地面から放たれる無尽蔵の
『ルゥオオオオオオオオッッ!』
「くっ!?」
まるで誘導されるように漆黒柱の群れがアイズの動きを支配する。連続の回避行動を強いられるその体は、気付けばウダイオスの正面に連れ戻されていた。敵を目の前にした階層主は容赦なく両腕で攻撃を開始する。地面からの
「アイズ!」
手を出さないでと懇願されているリヴェリアが外から叫んだ。ルームの出入り口付近でウダイオスに補足されていない彼女の足元は、嵐の前の静けさのように沈黙を守っていたが、戦闘の行方を見守るその心中は穏やかではない。対大人数用の逆杭が全てアイズ1人に集中している。魔法の恩恵によって並ならぬ速度を得ていようが、あれでは捕まるのも時間の問題だ。杖を持ち一歩踏み出そうとしたリヴェリアの足を、彼女の隣で同じくアイズを見守っていたミナトの双眸が制する。
彼女の戦いです、と訴えるその碧色の視線に、リヴェリアの顔が何かを耐えるように歪む。
「.....っ!」
2人の視線の先、アイズは下方から伸びる槍撃を大きく避ける。あっという間に足場を埋め尽くしていく剣山をすれ違う度に切断しながら、アイズは横目でウダイオスの体を見据えた。
「(狙うなら、関節.....!)」
文字通り肘や肩を始めとした関節は、『魔石』の輝きにも似た紫紺の輝きを放っている。皮も筋肉もないウダイオスの骨身が動くのは、あの核関節の力によるものだ。膨大な魔力を放つ節々の核の力によって巨大な骨は縦横無尽に可動、そしてパーツ同士を繋ぎ止めている。関節を打ち壊せば、敵の体は脱落し、大きく力を削ぐこのができる。狙うのは関節の数だけ存在する紫紺の輝きだ。敵の魔力もまた無尽蔵、こちらの力が底をつく前に仕掛けなければ。思考に区切りをつけ、アイズは防戦一方から攻勢へ転じようとする。
「風よ!!」
最大出力。
風の鎧が気流を、厚みを、風力を増し、アイズの体を小さな剛嵐へと変える。痛みを訴えていた全身が一層激しく軋む中、莫大な風の力を味方につけ、この日一番の加速を断行した。
『!?』
視界の外へ消えたアイズにウダイオスの瞳が揺れる。敵の巨体の左手から、直角の起動を描いて後方へと回り込む。ウダイオスも堪らず
いくつもの黒槍を置き去りにしたアイズは、ウダイオスの真正面から急迫し《デスぺレート》を構える。細い竜巻を宿すその銀のサーベルを、アイズは敵の腰の前を駆け抜けると同時に振り抜いた。
『ゴッッ!?』
腰椎の一部を破壊され、均衡を失った上半身が前のめりになり、地面へと倒れ込んだ。平伏するように上半身を折り曲げるウダイオス。好機とばかりにアイズは踊りかかる。姿勢を崩した階層主の右腕、その核関節へ切っ先を下に向け、直下させた。
「【
剣身に大気流を流し込み、暴走させる。刃が埋まった核関節は瞬く間に破裂、爆砕した。
『ーーーーーーーーーーーーーッッ!?』
ウダイオスの絶叫が
「何てやつだ.....!」
「アイズ.....」
視線の先で巻き起こった光景に、リヴェリアは
『ウゥ.....』
右腕を消失させた漆黒の骸骨は、憤怒の炎を瞳に宿しながら、1本の
一振りの剣。
およそ6mほどか、アイズからすれば極厚の長剣。
「.....!?」
アイズもミナトも、そしてリヴェリアでさえも目にしたことの無いウダイオスの行動。武器を装備した階層主は、ゆっくりと左腕ごと振りかぶる。肩、肘、手首。それぞれの核関節が、燃え上がる太陽の如く発光している。ぞっっ、とアイズの背中がわなないた。左手を振り上げた体勢で固まっている階層主から、全力で、距離を取ろうとする。ほぼ同時に、ウダイオスの左手が霞んだ。
「ーーーーー」
視認を許されない超速度でなぎ払われた、黒大剣。核関節が光を炸裂させたかと思うと、階層主ではありえない攻撃速度をもって武器が振るわれる。アイズの視界の隅で漆黒の影が過ぎり、次には凄まじい爆風が起こった。
「〜~〜~〜~っっ!?」
直前の子ところで黒大剣の効果範囲から逃れたアイズは、その衝撃波に殴り飛ばされ地に叩きつけられた。ウダイオスの隠し球、今まで確認されなかった、本当の切り札。階層主が隠し持っていた力に対し、アイズの相貌から、強い危機感が汗という形で滲み出していた。
「アイズ、一度下がれ!?距離を取れば剣は届かない!」
後方から打ち寄せる吹雪の余波とともに、リヴェリアが呼びかける。階層主の声に応じ召喚された大量の『スパルトイ』をミナトとともに殲滅するため、魔法を放ち、詠唱を終えて口が自由になった彼女の忠告に、しかしアイズは従わなかった。剣の柄を握りしめ、頑なになったようにウダイオスへ肉薄する。
「馬鹿者.....!」
痛罵の声を背で聞きながら、自ら懐へ近づく。もう一度突撃をしようとしたアイズは。がくんっ、と。肉体から力が失われる音を聞いた。
最高出力の魔法、更に長時間の連続行使。その殺人的な過負荷に耐えかね、
「っ!?」
何とか回避するも、纏っている気流が削られる。現在位置は完璧に敵の射程圏内。凍りつくアイズを、揺らぐ朱色の瞳が無慈悲に見下ろしている。思考が純白に染まり上がる中、幾重もの気流を纏い、アイズは全力で己の体を突き飛ばした。次の瞬間、
『オオオオオオオオオオオオオッッ!!』
「うっ!?」
捉えられた。
黒大剣の切っ先が風の鎧を打ち破る。我武者羅に回避行動へ走ったおかげか、体に直撃することこそなかったものの、しかし衝撃だけでもアイズを殴り飛ばすには十分な破壊力だった。地面を削りながら、数10mもの距離を凄まじい勢いで吹き飛んでいく。纏っていた気流は弾け飛び、【エアリアル】が強制的に解除された。
「アイズ!?」
悲鳴を放つリヴェリア。震えながらゆっくりと仰向けの体を起こそうとしている少女の姿に、その美貌を歪める。
「どけっ!!」
『ゲェッ!?』
力任せの長杖に殴り飛ばされ、眼前のスパルトイの頭部が粉砕した。群がられていた最後のモンスターを撃破したリヴェリアは、アイズの元へ駆け寄ろうとする。
『オオオオオオオオオオオオオッ!!』
「っ!?」
しかし、足元から剣山が発射される。咄嗟に身を傾けたリヴェリアが顔を上げると、遥か前方ではウダイオスが眼孔の奥を彼女へと照準させていた。優先順位を倒れたアイズからリヴェリアに切り替えたらしい。漆黒の
「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に】.....っ!?」
吹き飛ばしてやる、と。素早く『並行詠唱』を行うリヴェリアは滅多に見せることの無い激怒の表情を浮かべ、翡翠色の瞳でウダイオスを睨み返した。が、詠唱の途中で彼女と階層主の間に割り込んできたミナトが、リヴェリアを抱き抱え、遥か後方へと退避するように跳んだ。
「離せっ、ミナト!!あの娘が、アイズが!?」
「.....」
未だ起き上がることのできていないアイズを見やり、狼狽するリヴェリアに怒声の如き嘆願をされるミナトは、何も言わず、ただウダイオスから距離を取る。
「私にあの
「.....」
彼の胸元を強く握りしめながら、鬼のような形相で下から睨みつけるリヴェリアに、やはりミナトは何も言わない。
「何か...言ってくれ.....っ!」
懇願するようにより強く彼の服を細い指で握りしめ、泣き出しそうに美しい顔を歪め、何より意味不明な行動を取る彼に怪訝感を抱き、消え入りそうな声音で言う。実娘のように、ともに過ごしてきたアイズが命の危機に瀕している。仮とはいえ、母親として到底見過ごせる筈がない。
「彼女が.....」
「っ!あの娘が何だと言う!?」
やがて十分に離れたと判断したのか、彼女を優しくその場に下ろし、ようやく口を開いたミナトに、すかさずリヴェリアは言葉を返す。
「アイズが、『冒険』をしようとしてるんです.....見守ってあげませんか?」
「あの娘はお前とは違うっ!?確かに剣の才は目を見張るものがあるが、
「.....それでも、ほら。見てください」
彼女は立ちますよ。
ミナトの言葉に感情をあらわにする彼女をよそに、そう続けた彼が視線を向けた先、リヴェリアもその方向に翡翠色の瞳を向けると、そこでは、今まさに。
「ミナ、ト.....」
自分を信じてくれる碧色の視線を浴びながら、上半身を起こし、吹き飛ばされようが離さなかった《デスぺレート》を、杖のように地面へ突き立てた。額から溢れる血液で顔を染めながら、アイズはゆっくりと立ち上がっていく。
「ありが、とう」
柄を握る手を震わせ、地面から体を引き剥がしながら言う。ぽた、ぽたっ、と割れた額からとめどなく血が流れる。地面に真っ赤な血溜まりを作り上げながら、アイズはその四肢で立ち上がった。
リヴェリアが
「【
巻き起こる気流。風の加護を全身に宿し、アイズは再びウダイオスと対峙する。戦意を欠片も失っていない少女の姿に、階層主もまた瞳の火をゆらめかせた。
『アアアアアアアアアッッ!!』
「っ!!」
咆哮と同時に疾駆する。意思の力で悲鳴をあげる体をねじ伏せ、ありったけの
「アイズ.....?」
その光景に、リヴェリアは呆然とするように立ち尽くす。激しく舞うように
「(もっと.....もっと!)」
身を包む風に誓いを立てるかのように、心が叫んでいた。
「(私は、もっと!!)」
どうすれば、この心と体は。この決して折れない剣のように、この速く気高い風のように、憧憬の彼のように、強く在ることができるのか。
「(もっと、強くならなくちゃ!!)」
視界が白く弾け、次には黒く染っていく。胸の奥へ、心の奥底へと。深く、深く落ちていく。
「(もっと、私は!!)」
許せない。アイズは自分の弱さが許せない。何より、弱いままでいる自分が誰よりも許せない。
「(絶対にっ!)」
アイズはわかっている。自分がこの先も数多の敵を、斬って、斬って、斬り倒し。積み上げられる骸の山を作り上げ、その上を乗り越えるしかないのだと。そして、その先に。その遥か高みにいるのは。
「(絶対に、取り返す!!)」
願望を。
渇望を。
悲願を。
「うああああああああああっ!!」
感情を吐き出すことの無い喉が、咆哮する。渇いた叫びが、手を、足を、全身を、限界の先へと駆り立てた。
「いけ、アイズ」
金色の青年の激励が木霊する。
より速く、より鋭く、より刹那的な斬撃が、気圧されるウダイオスの体を断ち切っていく。そして渾身の一撃が、黒大剣の切っ先を破壊した。
『オオオオオオオオオオオオオッッ!?』
怪物をも上回る彼女の強大な意思と力に恐怖する階層主は、その漆黒の巨身で恐怖を追い出すように、雄叫びとともに震え上がる。
ウダイオスの咆哮、そして最後と言わんばかりに繰り出された黒大剣に対し。アイズは、一点突破の神風を放った。
「リル・ラファーガ!!」
漆黒の剣突と風の螺旋矢が衝突した。真正面からぶつかり合う必殺と必殺。紫紺の光輝と風の衝撃波が発生する中、2つの力は拮抗した。
「風よ、風よ、風よッ!!」
アイズの叫びに呼応するように、風の出力が増す。徐々に押し返される黒大剣にウダイオスが瞳をゆらめかせ、更なる咆哮と力を注ぎ込んだ。再び戻る拮抗状態に、今度はアイズの顔が歪む。
「【集え、大地の息吹。我が名はアールヴ】!」
流麗な詠唱がアイズの元に届いた。
「【ヴェール・ブレス】!」
「!!」
気流ごと体を包み込む、温かな翡翠の光膜。リヴェリアの支援によってアイズの体に小さな活力が戻る。見張られる金の瞳に「これくらいは寛容しろ」と翡翠色の瞳が憤然とした眼差しで訴えてきた。彼女の隣では碧色の瞳で「君なら大丈夫」と伝えてくるミナトが、優しく微笑んでいた。リヴェリア達と数瞬目を合わせたアイズはすぐに前を向き、その眦を吊り上げる。
なけなしの力を注ぎ込み、【エアリアル】の力を激発させた。
瞬間、黒大剣の剣突を破壊し、アイズの矢が打ち勝った。黒大剣を抉るように剣身の半分まで突き進み、そこから一気に空中へと飛び出す。風の閃光は一直線にウダイオスの左肩の核関節へ突き進み、爆砕した。
ウダイオスの左腕が轟然と脱落する。後方で絶叫が上がる中、敵の肩を粉砕したアイズの体からはあたかも力尽きたように気流が消え、魔法が解除された。そのまま下降し、彼女は受け身も取れず地面へと脱落する。
それでも。
もう一度、詠唱を紡ぐ。
「.....【
もう一度、力を振り絞ろう。あと少しだけ、死力を尽くそう。あの敵を倒して、あの敵を超えて。強くなろう。今の弱い自分と、決別しよう。あの
風の鎧を纏い、背後を振り返る。両腕を失い叫喚を上げ続けている漆黒の大骸骨に、剣の柄を握りしめながら。アイズは一歩、足を踏み出した。
両腕を失い、バランスを崩し、仰け反るように倒れ込んでいるモンスターの胸部に飛び乗った。
アイズは無言で《デスぺレート》を両手に持ち、刃の先端で天を衝く。風の渦を巻く銀の剣。大上段に構えたその一撃を、静かに、足元へ振り下ろした。
次の瞬間、魔石を砕かれたウダイオスの全身が崩れる。そして、数秒後には跡形もなく巨躯全てを灰に変えた。
大量の灰、怪物の屍の上に立つ彼女は、ゆっくりと頭上を見上げた。額から出血した顔を、そして胸当てを血まみれにしながら。言葉もなく、魂が抜けたかのように、闇に塞がれた天井を仰ぎ続けた。
「.....」
「.....リヴェリア」
剣を鞘に収め、地面に降り立つアイズの元に、リヴェリアが近付いてくる。
「じっとしていろ」
何かを言いかけようとしたアイズの口を、リヴェリアの唇が紡ぐ詠唱文が塞ぐ。やがて傷を治療し終えると、リヴェリアは1級品防具でもある己の聖布を破き、押し付けるようにしてアイズの血の汚れを吹いていく。多少、いやかなり強く拭ってくる聖布に、アイズは片目を瞑り、頬をぶにぶにと押されながらなされるままになった。
「.....」
「.....」
顔をあらかた拭うと、リヴェリアは手を下げて視線を合わせた。ちょうど彼女の隣にミナトが到着する。一瞬彼に目を向けたアイズは、自分より背の高いエルフの瞳を、黙って見上げた。
「何があった」
叱るわけでもなく、咎めるわけでもなく、ただ尋ねてきた彼女に目を見開く。
「あの人、私のことを.....『アリア』って」
18階層の出来事を全て話し、そう告げた瞬間、ミナトとリヴェリアは目を大きく見張った。何か黙考する素振りを見せた後、リヴェリアは少女を見つめる。
「アイズ、私は頼れないか?」
「!」
「私は.....いや、ミナトやティオナ達も、お前のことを家族のように想っている」
その温かさは、アイズの内側に染み渡った。そして、髪を
「お前はもう一人じゃない。忘れるな」
「.....うん」
リヴェリアの、愛と言えるものに触れ、アイズは揺れた瞳を隠し、頷いた。頬を淡く染め、やがておずおずと、彼女の顔を見上げる。
「リヴェリア.....」
「何だ?」
「.....ごめんなさい」
ふっ、と。リヴェリアの唇が綻ぶ。ぱしんっ、と軽く叩かれたアイズは、頭を両手で押さえきょとんとしてしまう。目を丸くするアイズに、リヴェリアはもう一度微笑む。
「魔石の量も大概だか、ドロップアイテムも大量に発生してしまったな。アイズ、ミナト、手伝え」
「.....わかった」
「はい」
ウダイオスの灰に埋もれる魔石へと歩むリヴェリアの後ろ。アイズとミナトは静かに、ゆっくりと顔を合わせる。もじもじと、どこか落ち着きのない様子の少女は。ちらっ、とミナトの目を見ては逸らす。そのよくわからない行為を数回繰り返したアイズに、碧色の双眸を優しく緩めたミナトは、彼女の頭に手を置き「頑張ったね」と少女を労るように、『冒険』をした妹分を可愛がるように言った。
「あ.....」
言葉を残してリヴェリアの方へ向かう彼の背中を、彼女に叩かれた時よりも赤めた表情で見送る少女の心の中は。憧憬である青年に褒めて貰えた嬉しさで満たされ、2人の後を追いかける彼女の足取りを軽くするものであった。
翡翠色の長髪と、2つの金髪を揺らす彼女達は。親子のように並んで、帰路につくのだった。
リヴェリアママ好きや