黄色い閃光inダンジョン   作:いちごぎゅーにゃー

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今回のガレスって強いんですか.....?


辿り着けるように、一歩テイク、後戻りは無い。

激走劇を終えたレフィーヤ達は『リヴィラの街』に到着した。手当り次第聞いていたらキリがないので、一行は街の棟梁(とうりょう)であるボールスの元へ(おもむ)き、話を聞きに行った。

 

「【剣姫】なら俺様の所にも来たぜ」

 

街のトップである彼の情報網は広く、やはりといった様子で、ボールスはアイズの目撃情報を得ていたようだった。「これを預かってくれ、って来てな」と続けた彼は、背後にあった棚から緑色のプロテクターを取り出してレフィーヤ達に見せた。

 

どう見ても第1級冒険者である【剣姫】が付けるような防具ではない。下級冒険者用、といったところか。彼女が何故このようなものを持っていたかはわからないが、今知りたいのは彼女の行方である。

 

「あの、アイズさんがどちらに行かれたか知りませんか?」

「【剣姫】の行き先かぁ〜」

 

立ち上がりレフィーヤを見下ろすボールスの顔には、勿体ぶるような笑みが浮かんでいる。

 

「知りたいなら、相応の()()を用意しねぇとなぁ?」

 

人差し指と親指で丸を作り、レフィーヤの眼前に突きつけるボールスは、実に悪党らしい顔をしている。情報料をよこせ、というの物言いに、レフィーヤは顔を引きつらせる。

 

「ごちゃごちゃうるせえ、さっさと言え」

「あっ、はい。言います言います」

 

ベートに胸ぐらを掴まれながら睨みつけられたボールスは、あっさりと彼に屈した。あまりにも早い態度の変わり様にレフィーヤが冷たい視線を送っていると、ボールスは知っていることを白状し始めた。

 

アイズ含む一団は、トラップアイテムなどの陽動用のアイテムを大量に購入。そこから導き出されるのは。

 

食料庫(パントリー)か」

「だろうな」

 

ミナトとベートが同じ回答に行き着いたようだ。血肉(トラップアイテム)はモンスターの食欲を刺激することで、設置した周囲にモンスターをおびき寄せる効果を持つ。アイズ達が24階層に向かうことは事前に聞いているため、何があり、そしてトラップアイテムで何をするのかは大方予想できるため、ベートは一足先にボールスが(あきな)う小屋から出ていった。フィルヴィスも後に続く。

 

「あの野郎、調子に乗りやがって!おい、【千の妖精(サウザンドエルフ)】っ!金やるから1発あの狼殴ってこい」

「無理です、殺されます.....」

 

ベートがいなくなった瞬間に耳打ちしてくるボールスに、絶対の拒否を示すレフィーヤ。返り討ちにされて泣かされるイメージしか湧かない。彼女とて乙女、傷つくことは嫌なのだ。

 

「ところで.....」

 

1人離れたところにいるフィルヴィスに視線を送りながら、ボールスが呟く。

 

「お前ら、『死妖精(バンシー)』と組んでいるのか?」

「ボールス.....」

「えっ?」

 

ばっ、と振り向くレフィーヤに対し、少し避難の目を向けるミナト。

 

「てめえも()()()()()()()()()()()、ミナト」

「だけど.....」

「隠すようなことでもねぇ、俺様がそこの嬢ちゃんに教えてやんよ」

 

フィルヴィス・シャリアに付けられたもう1つの渾名。あれほど美しい女性に付けられた不吉な呼び名。レフィーヤはボールスに経緯を尋ね、返ってきた内容に、彼女は絶句する。

 

フィルヴィスの組んだパーティは彼女だけを残し、全滅する。6年前、闇派閥(イヴィルス)によって引き起こされた『27階層の悪夢』で彼女だけが生き残ってしまった。さらに、その日を境に、彼女がその後組んだパーティではことごとく彼女以外が死んでいく。事件後に何とか再起した後も、フィルヴィスの周りには不幸が途切れなかった。疫病神、妖精ならぬ死神、彼女への非難は止まらず、やがて付いたのが『死妖精(バンシー)』。

 

「まあ、気をつけろや。そこの色男がいる限りは大丈夫だろうけどよ」

 

肩を竦めて忠告するボールスは、レフィーヤにそう告げると小屋の中に戻って行った。

 

レフィーヤとミナトが広場で待つ彼女の元まで行くと、艶のある綺麗な黒髪を翻しながら、白きエルフは振り向いた。

 

「聞いたのだろう?私といるとロクな目に遭わないことを」

「それ、は.....」

「どうでもいいがよ、要はてめえが仲間を見捨てた、ていう話だろうが」

 

本人の前で、彼は乾いた笑みを浮かべる。少女の傷を抉るような物言いに、正義感の強いレフィーヤが彼に怒りを見せるが、当のフィルヴィスは何も言わなかった。

 

「お前言う通りだ」

 

仲間を見殺しにしたと、あっさり認めるフィルヴィス。彼女の自嘲じみた笑みを目にしたベートとレフィーヤは動きを止めた。

 

「どうする、ここで別れるか?」

 

お前達も殺してしまうぞ。と続ける彼女に、狼人(ウェアウルフ)の青年は舌打ちを放った。

 

「てめーみたいな奴が1番頭にくるんだよ」

 

そう吐き捨てて、彼は広場の外へ向かい出した。

 

「フィルヴィスさん、貴方は.....」

「そんな顔をするな、ナミカゼ・ミナト」

 

壮絶な過去を持つフィルヴィスに、同情の仕方もわからず、ただ申し訳ない顔を浮かべるミナトに、彼女は告げる。

 

「お前のことはよく知っている。『暗黒期』の英雄。たった1人で闇派閥(イヴィルス)の中でも幹部クラスだった者達を次々と屠った、オラリオの光」

「......」

 

死妖精(バンシー)』は続ける。

 

「お前が駆けつけた場所では、()()1()()()()()()()()()()()と言う。まさに英雄の成す(わざ)だな、惚れ惚れするよ」

「......」

「フィルヴィスさん.....」

 

死妖精(バンシー)』は続ける。

 

「まだ20にも届かない若輩者が、あれほど壮絶な時代を攻略するための鍵になったとはな」

「それ、は.....」

 

死妖精(バンシー)』は続ける。

 

「あの卑怯で、下劣で、愚図な連中が尻尾を巻きながら逃げる様、私も見たかったよ.....」

「......」

 

()()()()()()()()()()()は続ける。

 

「だからこそ、だ。レフィーヤ・ウィリディス.....間違っても私に情を移すな。私は同胞を穢したくはない」

 

私は汚れている。

 

瞠目するレフィーヤに、ハッキリとそう告げた。まだ綺麗な同胞を、血で汚したくはない。エルフにあるまじきセリフを吐き、彼女は拒絶の瞳をレフィーヤに向ける。だが、目の前にいる山吹色の同胞(エルフ)は違った。

 

「貴方は汚れてなんかいない!!」

 

彼女の細い腕を掴み、レフィーヤは偽りなく叫ぶ。今度はフィルヴィスが瞠目した。

 

決して汚れてはいない、穢れてなんかいない。なぜなら、私を助けてくれる優しい心が残っているから、と。

 

「お前と私はまだ会って間もないはずだ。何がわかるっ!?」

「こ、これから貴方の良いところを一杯見つけていきます!!」

 

正論に負けそうになったレフィーヤは、勢いに身を任せ言い返した。

 

「.....」

「.....」

「ふふっ」

 

フィルヴィスはぽかん、と。レフィーヤはじっ、と。ミナトはくすくす、と。三者三様の表情を浮かべる。ややあって、「くっ」と笑いだしたフィルヴィスは、

 

「結局答えになってないぞ」

「えっと.....」

「ははははっ!」

 

その美しい相貌を崩しながら、おかしそうにレフィーヤに告げ、彼女も素っ頓狂なことを言った自覚があるらしく赤面した。2人のエルフが作り出す微笑ましい光景を目にし、金色の青年は肩を震わせて笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ギャッ!?』

 

銀の一閃がモンスターの頭角を切断し、そのまま顔面を断ち切った。

 

「やっぱり強いなぁ〜」

「ルルネさん達も、凄いです.....」

 

モンスターを瞬殺したアイズの剣技に、目を輝かせながらルルネが言う。今現在、アイズ達は目的地である24階層に足を踏み入れていた。16人の中規模パーティの指揮をとるアスフィ、ルルネの軽やかなナイフ捌き、その他パーティメンバーも粒がそろっている。個人の技量も、連携も高い水準でこなす【ヘルメス・ファミリア】に、アイズは静かに驚嘆していた。

 

そんな中アスフィがアイズの隣まで近づいて来る。

 

「【剣姫】。率直な意見を聞きたいのですが、今回の依頼についてどう考えますか?」

「.....えっと、」

「リヴィラの件はだいたい聞いています。謎の宝玉等のことも。今回も似たように、危険なものだと思いますか?」

 

モンスターの大量発生の原因は、例の宝玉が関係している。ずばり、そう切り込んできた彼女に対し、依頼を受ける際に同じようなことをローブの男から聞いていたため、アイズは小さく頷いた。

 

それからしばらく道のりに従って歩いた。その道中で、金になるアイテムやモンスターを見つけはしゃぐルルネを、アスフィが(たしな)めたりもしていると。前方の通路に潜む気配に、アイズを始めとする冒険者達は反応した。アスフィが慎重に、と指示を出し、気を引き締め直して進行を再開する。通路を奥まで進み待っていたのは、視界いっぱいに広がるモンスターの大群だった。

 

「うげぇ.....」

 

うじゃうじゃといるモンスターの群れに、ルルネが1番に反応し、他の団員達も嫌な顔をする。醜悪な怪物が、巣穴のごとく溢れかえるその光景を観察していたアイズは、実に不思議な集まり方だ、と思った。

 

「アスフィ、どうする?」

「致し方ありません。ここで始末します」

「.....それなら、私が行きます」

「は?」

 

愛剣(デスぺレート)を鞘から抜いたアイズは、モンスターの群れへと突っ込んだ。

 

「おいおいっ!?」

 

ルルネ達が止める間もなく、単独先行する。次々と押し寄せる群れに対し、真正面から銀の剣閃を見舞う。少女が通った後には灰のみが残り、次々とモンスター達がその数を減らしていく。先程までアイズを食わんとしていたモンスター達の咆哮は、次の瞬間には叫喚に変わっていた。

 

「.....もう、彼女に全部任せてもいいんじゃないですかね」

 

アスフィが固まりながらも呟いている間にも、アイズは敵を駆逐していく。実際のところ彼女が1人で突っ込んだのには理由があった。それは、器の昇華、すなわちLv.6になった自身の体を確かめるため。【ランクアップ】を経た【ステイタス】の激上は凄まじく、【ランクアップ】直後は、今までのイメージと体の()()が起こりやすい。それを調節するために彼女は単身でモンスターの群に飛び込んだのだ。魔法は使用せず、純粋な身体能力のみで戦う。

 

数分もしないうちに、あれほど大量にいたモンスター達は、全て灰に姿を変えていた。

 

「やっぱり第1級冒険者って凄いなっ!あ、回復薬(ポーション)いるか?」

「ううん、平気.....ありがとう。でも、ミナトならもっと速く終わらせてたと思う」

「【黄色の閃光】だっけ?そんなに凄いのか?」

「.....うん、凄いよ」

「なぜ知らないのですか.....」

 

戻ってきたアイズを笑顔で迎えたルルネは、アイズの華麗な剣技を褒め称える。褒められすぎて照れたのか、ミナトの名前を出したアイズたったが、獣人の少女はあまり知らないらしく首を傾げた。ある意味【剣姫】より有名な【黄色の閃光】をしらない団員に、アスフィは思わずため息をつく。そんな彼女の呆れた様子も気にせず、ルルネは続けて尋ねた。

 

「で、モンスターは片付けてもらったけど、これからどうする?」

 

リーダーの判断をパーティが待つ中、アスフィは口を開いた。

 

「モンスターがいるところを進みます」

「ほぇ?」

「モンスターが発生している方向を進めば、恐らくその近くに原因となるものがある筈です」

 

おお、とアイズはアスフィの説明に納得した。なるほどなぁとルルネ達は顔を上げ、アイズが倒したモンスターの死骸を見やる。モンスターの行列が押し寄せてきたのは方角は、

 

「.....北、ですね」

 

一行は北の食料庫(パントリー)を目指すことに決定した。

 

モンスターの大量発生の原因、それは一体何なのか。今まで以上の緊張感を保ちつつ、一歩一歩通路を進んでいくと、冒険者達は、とうとうそれを目撃する。

 

「なっ.....」

「おいおい、なんじゃこりゃ!?」

「壁が、植物.....?」

 

アイズ達の目の前な現れたのは、不気味な光沢とぶよぶよと膨れ上がる緑色の壁だった。明らかに他の石壁とは作りが異なっており、ここら一帯で不気味な気色悪さを放っていた。

 

「.....ルルネ、本当にこの道なのですか」

「う、うんっ、間違いないって!食料庫(パントリー)に繋がる道を選んできたんだ、こんな壁(緑肉壁)はない.....筈なんだ」

 

アスフィの指摘に慌てて地図を確認したルルネだったが、やはり道は間違っていなく、正しい道順で進んできたようだった。

 

「(生きている.....)」

 

後方でアスフィが団員達に指示を飛ばし、周囲をくまなく調べる中、アイズは壁の表面に触れた。そして感じるのは、ほのかな熱と僅かな鼓動。警戒を怠らず、彼女は壁をじっと見据えた。

 

「アスフィ、一通り調べた」

「どうでしたか?」

 

そこから【ヘルメス・ファミリア】の考察が始まった。周囲を見てきた彼等は、他の経路も同様の肉壁によって塞がれているのを見つけ。名の通り食料を求めて食料庫(パントリー)に集まったモンスター達が、次に向かう先は()()食料庫(パントリー)であると予想する。これらの要素からわかることは、ここ数日冒険者達を苦しめていたのは、異常事態(イレギュラー)によるモンスターの大量発生ではなく。次なる食料を求めたモンスター達の大移動。そう結論づけたアスフィは、「やはり、この壁を破壊するしかないですね」と呟いた。緑色の肉壁が通路を塞ぎ、進行方向を限定することで発生したモンスターの大移動。それを解決するには壁の破壊が1番手っ取り早いと、そう彼女は告げる。

 

「植物らしき外見から、炎が有効そうですが」

「斬りますか?」

お前(アイズ)、意外と物騒だな.....」

 

金髪の少女が剣を、ちゃきん、と鳴らすと、ルルネが呆れた目を彼女に向ける。ややあって、壁を観察していたアスフィは、魔法を試すことにした。

 

彼女に命じられた小人族(パルゥム)の少女、メリルが、小さな体に見合った小さな魔杖を構え、詠唱を始める。やがて完成した魔法名を口にすると、大爆炎が気味悪く脈動する壁に着弾、そして爆発する。ぽっかりと開いた燃焼穴を、急いでアイズ達がくぐり抜けると。次第に、ゆっくりと破壊したはずの壁がずぶずぶ、と音を立てながら修復していった。

 

「脱出できなくなったわけではありません。帰りの際には、また穴を開ければいいだけです。さぁ、行きますよ」

 

アスフィに従いアイズ達は緑壁の奥へ歩み出した。

 

「なぁ、もしこのぶよぶよが全部モンスターだったら.....」

『やめろっ!』

 

ルルネの恐ろしい一言に、全ての団員達から非難が飛んでくる。他派閥のやり取りを耳にしながら、アイズはとある一点を見つめた。うっすらと()()()に光る花弁。思わず金色の双眸を細めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オオオオオオオオオオッッ!!』

 

肉壁の中を進んでいたアイズ達は、天井近くに潜んでいた食人花のモンスターと激しい戦闘を繰り広げていた。この場にたどり着くまでモンスターとの戦闘はなかった訳では無いが、食人花と遭遇することは1度たりともなかった。

 

「ルルネ、あの花の魔石の位置は!?」

「た、確か、口の中!」

 

初見の【ヘルメス・ファミリア】の団員達が攻勢に出られない中、いち早くアスフィは、唯一あのモンスターを見たことがあるルルネに、敵の弱点の位置を尋ねた。次には、ベルトのホルスターから紅い液体の詰まった小瓶を取り出し、食人花の口に投げ入れる。

 

大爆発。

 

『神秘』を持つアスフィだからこそ作成可能な、特製の爆薬を食らったモンスターは、魔石を破壊され灰になった。自分専用かつ高威力の爆弾を駆使し、彼女は次々と敵を倒していく。そんな彼女の動きに触発された団員達は、一気に攻めに転じてモンスターに襲いかかった。

 

 

 

 

 

「あらかた片付けましたね」

「落ち着けば何とかなるな〜」

「調子に乗らない」

「うっ、ごめん.....」

 

しゅん、と獣耳と一緒に項垂れるルルネは、結構可愛い。そう感じたアイズは、先日逃げられた(ベル)を思い出し、少しばかり落ち込んだが、アスフィの言葉で直ぐに切り替えた。

 

「【剣姫】、貴方はあの新種を熟知しているようですが、今のうちに詳細を教えていただけますか?」

「分かりました」

 

打撃が通りにくいこと、魔力に反応すること、触手を駆使してくること。知っていることを全て提供した。

 

「.....多分ですけど、他のモンスターを狙う習性があるって、ミナトが.....」

 

最後は迷ったが、尊敬する金色の青年の予想だ。間違っていることは無いだろう、と判断し、アスフィ達に告げた。

 

 

()がそう言うなら間違いないのでしょう」

「なんだよ、アスフィ【黄色い閃光】と知り合いなのか?」

「ええ。数回顔を合わせた程度ですが」

 

問に答えるアスフィに、「そんなんで信じられるのかよ〜」と続けるルルネだったが、何故か横から飛んできた鋭い金色の視線と、首領の青い瞳に黙らされた。

 

「彼ほど聡明な人を、私は他に知りません。彼の【勇者(ブレイバー)】と知恵対決で張るとのことですし、問題ないでしょう」

「.....うん、いつも2人でチェス、してるよ?」

「チェスとかするのかよ.....」

 

計らずとも手に入った第1級冒険者の豆知識に、情報屋でもある獣人の少女は、貴重な情報であるはずなのに、目の前の少女が何故か自慢げに話す姿を目にして、なんだかなぁ、とボヤく。

 

「コホンっ。話を戻しますよ」

 

眼鏡をくいっといじりながら、アスフィは自身の仮説を打ち明けるように切り出した。

 

「モンスターがモンスターを狙う行動には、主に2つの理由があります」

 

まず1つ目。

 

「突発的なモンスター同士の戦闘。これは群れの中でもよくあることですから特段珍しくはないですね」

 

アイズ達が頷くと、アスフィは2本目の指を上げた。

 

「2つ目は、モンスターが『魔石の味』を覚えた場合、です。別個体の『魔石』を食らった個体の能力は大きく上昇します」

「『強化種』.....」

「有名なのは『血濡れのトロール』でしょうか」

「【フレイヤ・ファミリア】が倒したやつだっけ?」

「ええ、多くの上級冒険者を返り討ちにしたのは、記憶に新しいですね」

 

ルルネ達の会話を聞きながらアイズも黙考する。だか、食人花のモンスターは、食人花同士で共食いはしないため、何か別の要因があると思われる。もしかしたら、魔石のみを狙う。そんな習性があるのかもしれない。

 

 

 

 

『オオオオオオオオオオッッ!!』

 

その時、通路の前と後ろ、その両方向からモンスターの声が響き渡ってきた。

 

「また、ですか.....【剣姫】、片方をお願いしても?」

「わかりました」

 

首肯するアイズ。第1級冒険者である彼女ならば食人花に遅れはとらない、そう判断したアスフィはアイズに前方のモンスター達を託した。間もなく、食人花のモンスターに斬りかかり1匹目を倒した、次の瞬間。

 

タイミングを合わせたかのように、天井より超巨大な柱がアイズのいる位置へ落下した。

 

「っっ!?」

 

すぐさま反応したアイズは、地面を蹴りつけ緊急回避をする。が、

 

「.....」

 

アスフィ達と分断されてしまった。耳をすませば柱の奥からルルネの叫び声がするが、食人花達がアイズの元へ殺到してくるため、気にしている暇はない。

 

「ッ!」

 

敵の触手を切り裂き、最後の1匹を倒した後。肉壁に近寄り、奥にいるアスフィ達と合流しようとするが、彼女の背後から浴びせられる強烈な殺気が、それを許さなかった。

 

「.....!」

「そちらから出向いてくれるとはな。手間が省けた」

 

現れたのは赤髪の女、18階層でアイズが敗北した調教師(テイマー)だった。冷たい緑の視線を、金の瞳で受け止める。

 

「ここで、何を?」

「さぁな」

これ(肉壁)は貴方が作ったもの?」

「お前が知る必要は無い」

 

こちらの質問に対し、やはり相手はまともに答える気はないようであった。以前と同じく、バッサリと切り捨てられる。

 

「お前に会いたがっている奴がいる。一緒に来てもらうぞ、『アリア』」

 

その言葉にアイズは視線を鋭くした。

 

「『アリア』は私じゃない。『アリア』は私のお母さん」

「抜かせ。『アリア』に子供がいる筈がない。そうであったとしても関係ないがな」

 

そう言って、女は地面に右手を突き刺す。やがて勢いよく引き抜くと、彼女の手には()()()()()()()()()。臨戦態勢を取る敵を前に、アイズも《デスぺレート》を構え、体から余計な力を抜く。全ては、目の前の強敵を倒すため。

 

「行くぞ」

 

女が告げた瞬間、2人は激突した。




次回。レヴィス、死す?
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