「西のルートへ迂回する!!」
フィンの指示に従いパーティが進路変更をし、全力で走るすぐ後方でまたもや大爆発が起こる。
「新種を引き付けてもいい!リヴェリア、防護魔法を急げ!」
「【木霊せよ、
「敵の数は!」
「6、7、いや.....それ以上!?」
途方もない熱量と大振動がパーティを襲う。何発もの大爆撃が続き、灼熱の暴風と無数の火の粉がアイズ達の元に押し寄せる中、フィンの指示にすぐさまリヴェリアは『詠唱』を開始し、爆発し続けている地面を見下ろしながらティオネが敵の数を叫び返す。地面から吹き出す大爆発の正体、それは紅蓮の豪火球であった。
「そういうことかっ!」
浮かべた笑みを盛大に歪ませた椿は、全てを悟る。その一方で、ラウル達の後ろを必死に着いて行くレフィーヤの顔からは血の気という血の気が失われていた。
「こ、こんなことって.....!?」
事前には聞いていた。心の準備は万全であった筈だったのに、現実を目の当たりにして動揺を隠すことができない。
「ラウル、横だ!!」
「えっ?」
彼女と同じくいち早く気付けたのは、パーティの最後尾に位置していたガレスだけだった。通路の横穴から迫り来る極太の糸束に、呼びかけられたラウルは反応することができない。だが、
「ラウルさんっ!?」
すぐ後方にいたレフィーヤが咄嗟に手を伸ばし、ラウルのバックパックごと突き飛ばした。前方にこける青年を他所に、レフィーヤは腕を糸に捕縛され、ぐんっと隊列から引き剥がされる。
「レフィーヤっ!?」
ティオネの叫び声が響く中、顔を焦りに染める少女を釣り上げた巨大蜘蛛のモンスターは、醜悪な大口を開け捕食しようとした次の瞬間には、
「あ.....」
糸によって宙に投げたされていたレフィーヤは、たった今目の前にできた大穴に、そのまま落下した。そして、彼女は
あまりにも深い、放出された大火球によって階層を複数ぶち抜かれた巨大な縦穴。穴の底で得物を仰ぎ見るのは、獰猛な牙を覗かせ口から煙を吐く数匹の紅竜であった。
やはり間違いない。
途切れることなくパーティを襲っていた大爆発の正体は、彼女達のいる遥か下層より放たれた竜の砲撃。レフィーヤ達は何百メートルも離れた地底からモンスターによって狙撃されていた。
『階層無視』。あまりに規模が違う攻撃にレフィーヤの相貌が絶望に
『オオオオオオオオッッッ!!!』
視界の遥か先の地底、
「「レフィーヤ!!」」
「足引っ張るんじゃねぇ!」
「っ!?」
その時だった。恐怖に我を失いかけていた彼女に届いた声の方向、真上に目を向けると、そこには空いた大穴に身を投げ出したティオナ、ティオネ、ベートがいた。
更に。
「落ち着いて。ゆっくり息を整えるんだ」
「ミナトさん.....っ!」
ドジを踏んでしまった自分の救援に駆け付けてくれた第1級冒険者達に、彼女を優しく包み込む温かさに、レフィーヤの瞳に涙が浮かぶ。
「【ヴェール・ブレス】!!」
次いで52階層からリヴェリアの防護魔法が縦穴を急降下する5人の元に届いた。だが、ほぼ同時に大紅竜から砲撃が放たれる。直径5メートルを軽く超える大火球がレフィーヤ達へ真下から襲いかかった、次の瞬間。
『ギャアアアアアアアアッッッ!?』
「「「「は.....?」」」」
ベート、ティオネ、ティオナ、レフィーヤの4名が、一瞬。眼前で起きた現象に目を疑い、素っ頓狂な声を漏らした。
摩訶不思議な出来事の原因を探る彼女等は、視線を巡らせていると、豪炎に呑まれる『ヴァルガング・ドラゴン』達の足元に、
「もしかして.....!?」
ティオナが驚愕を叫び、見覚えのある武器、その持ち主である金髪の青年へと視線が集まる中。当の本人であるミナトはにこやかにウィンクを浮かべていた。
「【飛雷神】の応用、ってね」
あらかじめ58下層で待ち受ける大紅竜達の足元へ、『マーキング』の付いたクナイを投げることで【飛雷神】の発動条件を満たし。後はモンスターの砲撃を【飛雷神】でモンスター達にお返しするだけ。口で言えば簡単に聞こえるが、ベート達でさえ思考の余裕を持てない状況下において、レフィーヤを助けると同時に先手を打っていたミナトに、誰もが脱帽した。一切の無駄を見せない【黄色い閃光】がいる限り、彼女達に豪火球が届くことは無い。
「もうっ!速い奴がいるんだけどぉ!?」
「ちっ、『強化種』か.....っ!?」
砲竜の火球全てをミナトが【飛雷神】で逆に攻撃に利用することに業を煮やしたのか、竜達は次第に直接ティオナ達へ襲いかかって来た。降下を続ける彼女達は壁を蹴っては跳びかかり、【ステイタス】を存分に活かした戦法でモンスターを撃墜していくが、空を飛べない彼女達には流石に限界があった。周囲から
だが。
「とりゃぁぁぁあああああああっっ!!!」
超威力の
「がるぁぁぁぁああああっっっ!!!!」
きらめく
「いい加減うざえんだよおおおおッッ!!」
怒りに身を任せた
『オオオオオオオオッッッ!?』
手足のように得物を操る第1級冒険者達はモンスター達を倒しつつ、遂に58階層へその身を着陸させた。たった3人の冒険者に対し、大紅竜を含めた無数のモンスターが一斉に襲いかかる中、間髪入れず新しい影が天井より現れる。
「3人とも、その場を離れろ!!」
身構えていたティオナ達の頭上より、警告が投下される。肌で感じ取れるほどの『魔力』に反応した彼女達は、モンスターの攻撃に構わずその場から離脱する。
「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!」
58階層に無数の火矢が降り注いだ。上空から空襲する魔力弾に絶叫が響き渡る。強靭な肉体で何とか耐えきる『ヴァルガング・ドラゴン』を残し、それ以外のモンスター達はことごとく焼き尽くされていく。
「ミナト、レフィーヤ!!」
「い、生きてる.....」
「あれだけかましといて良く言うわ」
「凄いじゃないか」
ミナトに抱えられたレフィーヤが58階層に降り立つ。攻撃範囲から見事逃れたティオナが2人に駆け寄り、腕の中で呟くレフィーヤにティオネが一笑した。
「あのクソ竜だけは潰すぞ」
双剣を構え直したベートが彼女達に告げる。眼前に移るは残り一体の大紅竜。【飛雷神】によるカウンターとレフィーヤの『魔法』によって撃滅されたモンスターの内、辛うじて生き残った個体がベート達に牙を見せ高々と咆哮を放つが、次の瞬間。
『ガァァッ!?』
頭上より来襲した影が、最後の『ヴァルガング・ドラゴン』の頭部を粉砕した。頭部を弾けさせ豪快に倒れ込んだモンスターの姿に、ティオナ達は言葉を失う。静寂が走り続ける中。その人物は倒れた竜の死骸から、振り抜いた大戦斧を引っこ抜いた。
「なんじゃ、このトカゲが最後の一匹か」
深く被った兜の奥から、にっ、と不敵に笑みを浮かべるドワーフの大戦士に、レフィーヤ達は目を見開く。
「ジジイッ!?」
「ガレスさんっ!?」
「「ガレス!?」」
「フィンさんの采配かな.....」
たった今見せつけられたデタラメな光景を作り出し、何事もなかったかのように姿を見せたガレスに、ミナト以外の全員がようやく我を取り戻し、彼の戦士の名を驚愕の声に乗せた。
「何を呆けておる。ほれ、新手が来たぞ。さっさと暴れて老人を労わらんかい」
周囲から飛来する
好き勝手言う血気盛んな彼等に、ガレスは「ひよっこどもが」と笑う。
「あ、あれはっ!」
慌てて杖を構えたレフィーヤの視線の先、57階層への道から数えきれない芋虫型のモンスター達が現れていた。
「やれやれ.....」
「次から次へと.....若造ども、離れるでないぞ!!」
息もつかせぬ脅威を目の当たりにしながらも、第1級冒険者達は都市最速の青年とドワーフの大戦士に遅れを取るまいと、彼等の後に続いて駆けだした。
「大丈夫でしたか、アイズさんっ!?」
「うん、平気。レフィーヤ達は?」
「ガレスとミナトのおかげで楽させて貰っちゃった〜」
ようやく合流した一団は、エリア内にいたモンスター全てを倒し、次の出現時間までのインターバルを利用して小休憩を取っていた。
「途中で二手に分けられたが、58階層を攻略できたか.....」
「初見じゃなきゃ余裕だっつーの」
リヴェリアのセリフにベートが鼻を鳴らす中、見えを張っているように聞こえる言葉に「さっきまでヘロヘロだったくせに」とティオナがからかう。「そりゃてめぇのことだろうが、馬鹿ゾネス!?」と怒鳴り返すベート達を皮切りに、パーティには少しばかり弛緩した空気が流れた。
「......」
「......」
「フィン、ミナト。何を難しい顔をしておるのだ?」
ティオナ達が息を着く中、椿が怪訝そうな表情を浮かべている2人に声をかける、
「【ゼウス・ファミリア】の記録によれば、59階層から先は極寒の領域だった筈.....」
「ええ。だからこそ
2人だけが理解したように言葉を交わすのを他所に、レフィーヤ達も椿に続いて彼等の様子を不思議に思い始めた。
「第1級冒険者の動きを阻害する程の冷気が発生する階層」
「なら今その階層の目前にいる、
彼等の分析に、はっとティオネ達は肩を揺らす。今現在パーティが待機しているのは、59階層へ直接続いている連絡路のすぐ前。にも関わらず極大の冷気を一片たりとも感じ取ることができない、そうフィンとミナトは言っている。
「何かあるってこと?」
「まさか【ゼウス・ファミリア】の誇張ってわけでもねーだろ」
穴を見据えるティオナに、
「フィンさん、どうしますか?」
「
直ちに準備を済ませたパーティは、武器を装備し隊列を組み直しながら目の前の大穴へと足を踏み入れた。
「これは.....」
「じめじめして鬱陶しいのぉ」
情報にはない蒸し暑さにミナトとガレスが反応する中、誰もが胸騒ぎを覚えた。そして、一団は誰も目にしたことの無い『未知』へと進出した。
『ーーーー』
視界に拡がった光景に、誰もが言葉を忘れる。事前情報の氷山や冷気など存在せず、彼等の瞳に移るのは
「森、いや.....ジャングルか?」
太刀を装備する椿が唖然と呟く。背の高い木々、極彩色の輪を小さく咲かせた花々、四方八方の壁面に生える
「これって、もしかして24階層の.....?」
脇を締め魔杖を両手で胸に抱くレフィーヤは、喉を震わせながら呟いた。巨大花に寄生された、例の
やがて、樹木が姿を消し、灰色の大広場へと進んだ冒険者達の目に、それは飛び込んできた。
「あれは、女体型か?」
「寄生したのは『タイタン・アルム』に見えるな.....」
荒野に似た広間の中心には、無数の食人花と芋虫型のモンスター。大量の怪物が囲むのは、下半身が巨大な植物で構築された『女体型』だった。眉間に皺を寄せるガレスの隣で、見覚えのある女体型の半身にリヴェリアが、寄生されたと思われるモンスターの名を口にする。
女王に献上品を捧げるように、芋虫型達は口腔から細い器官を伸ばし『魔石』を差し出している。次々と受け渡される極彩色の魔石を、女体型は途切れることなく捕食していた。自身の
「不味いっ!」
『強化種』の法則を真っ先に思い浮かべ、対応に乗り出そうとしたフィン達の視線先で、突如
『ーーァァ』
小刻みに震える女体型の上半身の肉が一気に盛り上がる。驚愕する彼等を無視し、歓喜の声を漏らす女体型の上半身から殻を突き破るように、艶かしい体の線を描いた『女』の体が飛び出した。
『ァァァアアアアアアアアアッ!?』
産まれ変わる女体型の変化が落ち着き始め、アイズ達の視界の中に、怪物に相応しくない麗しい『女』が映り込む。緑色の肌、緑色の長髪、全てが緑色に染まる体の中で、唯一その瞳だけが淀みがかかった金色を放っていた。また、上半身と同様変貌を遂げた下半身は、無数の触手や巨大な花弁を咲かせている。
「う、そ.....」
血のざわつきがアイズの体を支配し、かつて『宝玉』に触れた時よりも遥かに強い衝撃が彼女を襲う。そして、天に向かって産声を上げていた『彼女』もアイズを感じ取ったのか、首を振り回し、こちらを見つめ歓声を上げる。
『アリア、アリア!!』
金髪の少女に『アリア』と嬉しげに連呼する極彩色の天女。
間違いない。
あの異形の存在は。
「『精霊』.....!」
更に。
『.....っ!?』
『女』は大きく目を見開き、アイズの隣にただずむ金髪の青年。正確には
『キ、九尾様....っ!』
「「「っ!?」」」
おぞましき女がそう口にした瞬間。【ロキ・ファミリア】の首脳陣は一斉にミナトの方を向く。決して無闇に口外してこなかった【ファミリア】の最重要機密を口にした敵に、ましてや人間ですらないモンスターが
「『精霊』.....!?あんな不気味な奴が!?」
「それに、なんでモンスターがミナトの
アイズの言葉に反応し、未だ怯える『女』を見やったアマゾネスの姉妹が叫ぶ。軽く15メートルを超す巨躯を誇る怪物相手に、冷静さを取り戻しつつあるフィンは。新種の芋虫型や食人花達が、女体型モンスターを眼前にいる存在へと進化させるための、触手かつ餌でしかなかったとことを悟った。
そして、
『アリア!!会イタカッタ!!』
「.....っ!?」
子供のように叫び散らし、たどたどしい言葉を紡ぐ。
『貴方モ、一緒ニ成リマショウ?』
少女に向けられている異常な言葉の羅列に、ばっとアイズの方へ振り返るレフィーヤ達。フィンやミナト達は何かを察しているのか、緊迫した表情を浮かべる。
『貴方ヲ食ベサセテ?』
怪しげな笑みを『精霊だった』ものが浮かべると、『彼女』の足元に残っていたモンスター達が一斉にベート達へ照準を向ける。ほぼ同時に、彼等が行きに通ってきた階層の出入口が緑肉壁によって塞がれた。
「総員、戦闘準備!!」
「儂も前衛に上がるぞ!?」
「はっ!どうせいつもとやることは変わらねぇ、蹴り殺してやる!」
フィンの号令を合図にして飛び出すガレスとベート。腐食液と触手を交わしながら斧と双剣でモンスター達を叩き潰しては切り刻む。断末魔が階層中に響き渡る中、立ち尽くしていたアイズも、ティオナ達も全身から動揺を消し去って戦線に加わった。
「フィン?」
「親指の疼きが止まらない.....何かが来る!」
予測できない『未知』に誰よりも危惧を抱く彼の直感を。
美しい微笑みをもって女体型は、肯定した。
『【火ヨ、来タレ】』
『!?』
巨大な下半身の元に広がる巨大な
「いけない!」
「リヴェリア、今すぐ結界を張れ!?」
堕ちた精霊が発する紅い魔力光を目にしたミナトがリヴェリアの方へ振り向くと同時に、目を見開いたフィンがなりふり構わず叫んだ。アイズ達でさえ見たことも聞いたこともないミナトとフィンの焦燥した様子に、リヴェリアも焦った表情で詠唱を開始した。
「敵の詠唱を止めろ!」
「ま、『魔剣』斉射!」
「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!」
フィンから続けざまに放たれる指示に、ラウル達が砲撃を、『詠唱』を完了させていたレフィーヤが魔法を放った。
だが。
「はははっ、あれが効かないというのか.....」
人工の魔撃と数百発の火矢を前に、傷一つ負っていない敵の姿に椿が笑おうとして、失敗した。こちらの最大火力が一切通用しない敵にレフィーヤとラウル達が愕然とする中、尚も女体型は魔力を
「【猛ヨ猛ヨ猛ヨ炎ノ渦ヨ業火ノ咆哮ヨ突風ノ力ヲ借リ世界ヲ閉ザセ燃エル空燃エル大地燃エル泉燃エル山燃エル命全テヲ焦土ト変エ怒リト嘆キノ号砲ヲ我ガ愛セシ英雄ノ命ノ代償ヲ】」
「【舞い踊れ大気の精よ、光の主よ。森の守り手と契りを結び、大地の歌をもって彼等を包め。我等を囲え】」
リヴェリアと女体型の、玲瓏たる歌声と禍々しい呪文が同時に紡がれる中。魔導士であるリヴェリアとレフィーヤの目が見開かれる。
信じられない程の長大な詠唱を、都市最強魔導士よりも速く、正確にこなす『精霊』の美貌が微笑み、リヴェリアの美貌が焦燥に歪む。
やがて。
「総員、リヴェリアの結界まで退避しろ!!」
リヴェリアの詠唱が完成する直前なり、フィンが前線にいるアイズ達へ撤退を命じ。彼女達がフィン達の元まで辿り着いたと同時に、示し合わせたようにリヴェリアの詠唱が完成する。
「【ヴィア・シルヘイム】!!」
リヴェリアが誇る最硬防護魔法が行使された。彼女の足元から発生した翡翠色の魔力壁がドーム状へと形成されていき、アイズ達全員を包み込む。
それとほぼ同時。詠唱を終えた女体型は、『魔法』を解き放つ。
『【ファイアーストーム】』
視界全てが紅蓮に染まった。
火精霊を連想させる極大の爆炎が、アイズ達の前方から津波のように押し寄せる。モンスターも、大広間も、ドーム状の『結界魔法』ごと、全てが呑み込まれた。
「〜〜〜〜っっっ!?」
灼熱の暴風が結界に触れた瞬間には、ビキッ、ビキッッ、と。無数の
「結界がっ....!?」
全ての方角から伝わる亀裂に、ラウルとレフィーヤが青ざめる。前方から押し寄せる炎の爆流に、みなの先頭で熱風を浴びるリヴェリアは叫んだ。
「ガレスッッ、アイズ達を守....!?」
不意に。
翡翠色の髪を揺らし振り返るリヴェリアの肩に。『遠征』当初に白髪の少年がアイズにしたように。彼女を後方へと押しやる者がいた。
「リヴェリアさん、アイズ達を頼みます」
今にも破壊されそうな結界を他所に、金髪の青年。ナミカゼ・ミナトはリヴェリアの横を通り過ぎたまま結界の最前線へと躍り出た。
『ミナトっ!?』
誰もが叫喚を彼にぶつける。リヴェリアも、ティオネも、ティオナも、フィンも、ベートでさえも。誰もが何故か先頭に飛び出した彼に驚きを見せ、今すぐ後ろに下がれ、と腹の底から叫んだ。
「.....ミナトっ」
青年の後方より、消え入りそうな声が団員達の耳を弱々しく叩いた。
「アイズ.....」
「だめっ、今すぐ戻って!?」
感情に乏しい少女が、激情をあらわにして懇願した。ミナトがしようとしていることに気付いた彼女は、彼の元に駆け付けようとするが、「ダメだよっ!?」と背後から羽交い締めをするティオナによって止められてしまう。
「離、してっ!?」
「ダメだって!今前に行ったらどうなるかわかるでしょ!?」
「よしなさい、アイズ!!」
「だったらミナトはっ!?」
必死に振りほどこうと暴れるアイズを、横からティオネも加わり2人で押さえつける。
結界の亀裂が大きくなっていく。
「アイズ」
「.....っ!?」
振り返らず背中を向けたまま少女の名を呼ぶ。
「そこでじっとしていなさい」
『アイズ、そこでじっとしていなさい』
「待って.....っ!」
彼の姿が。
「行かないでっ!!!」
かつての父と。
「ミナトっ!!」
憧憬の背中が、自分を残して去っていった父親と重なって見える。
次の瞬間。ミナトを除く全員の体を、朱色の衣が優しく包み込んだ。
「(里を守り、子を守る)」
少女の悲鳴を背中に受ける青年は、先人から託された想いを胸の中で静かに燃やす。
「(俺は、
直後、視界を覆い尽くす程の炎波が全てを呑み込んだ。
サブタイトルの意味がわからないと思いますが、私の自己満足ですので許してください笑