黄色い閃光inダンジョン   作:いちごぎゅーにゃー

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遂に毎日更新をとぎらせてしまいました.....
不定期になりそうですが、週末は頑張って更新します


突きつけられる現実

『さっさと出てきやがれ、クソ狐!!』

 

ただの咆哮ですら軽い衝撃波を発生させる化け物に、満身創痍のアイズ達は、ただただ愕然と呆けるだけであった。先の女体型を優に超える巨躯は最早小さな山のように見える。土色の表皮には所々紺の模様が入っており、異常に発達した下顎から獰猛な牙をチラつかせている。硬貨に近い金色の瞳は瞳孔が十字に割れていて、巨体の中で一際不気味さを醸し出している。そして何より、

 

「な、何なのよ、あの化け物.....っ!?」

「尾が、一本ということは.....」

「ああ、間違いない。あれが()()だ.....っ!」

 

驚愕に顔を染め上げるティオネの視線の先では。臀部から伸び、本体の体よりも大きい一本の尾が、彼女達の目を引いた。見たことは無い。だが、聞いたことはあった怪物の特徴に、王族(ハイエルフ)の魔導士と小人族(パルゥム)の首領は、敵の正体に辿り着く。

 

『無視してんじゃねーぞ!!俺が怖ぇのか!?』

 

甲高い声で怒鳴り散らす『一尾』は、ミナトの方を見ながら、憤怒の形相を浮かべた。十字の金眼が射抜くのは彼自身ではなく、()()()()()()()()であり、今だ何も反応を見せないことに憤りを感じているようだ。

 

『この野郎っ、コケにしやがってぇ!?』

 

とうとう我慢の限界が来たのか、一尾が円形の腹部に右腕を当て、口元に『魔力』を蓄え始めた。

 

「っ!?」

「不味い!?」

 

魔導士であるレフィーヤとリヴェリアは、怪物が練り上げる『魔力』の量と質をいち早く感知し、顔色を真っ青にしながら叫喚を上げた。『詠唱』はしていない。が、『穢れた精霊』と同等かそれ以上の『魔力』を秘めた魔法陣(マジック・サークル)を口元に展開する一尾は、目を見開き、叫んだ。

 

「【風遁・練空弾】!!」

 

瞬間。豪嵐が超巨大な五発の砲弾となってアイズ達へと打ち出された。速度、規模、ともに桁違い。すでに傷だらけの冒険者達に躱す術はない。数秒も経たず彼等の元へ嵐弾が到着し、凄まじい轟音とともに爆発した。

 

半径50メートルはあるクレーター全体を覆い尽くす爆風。直撃を免れなければ耐えることは不可、砂の化身にとって取るに足らない人間程度など即死で間違いない。確かに手応えがあったと、口を吊り上げる一尾は、直後の光景に瞠目した。

 

『あぁ.....?』

「ハァ...ハァ.....」

 

怪物の眼下に映るのは、銀の剣(デスぺレート)を横に構える金髪の少女。よく見れば少女の周囲だけ魔法(砲弾)の影響が見受けられない。辺りは地面に大穴を構築したのに対して、アイズの周りだけが何も変化していなかった。

 

「た、助かった.....」

「何とか、間に合った......っ」

 

ドサッと、思わず尻もちを着いたティオナは、額に滲んだ冷や汗を乱暴に手で拭った。

 

一尾の攻撃が届かなかったのは、敵の魔法()に対してアイズも『風』を発動し、最高出力で放出することで、『尾獣』の魔法を見事相殺してのけたのだ。アイズに助けられた一同が止めていた息を吐き出す中、既に限界を迎えていたことで精神疲弊《マインド・ダウン》を引き起こした少女の体が、ふらりと後ろに倒れる。すぐ近くにいたティオナが「アイズ!?」と名を叫びながら、少女の体を受け止めた。

 

『大したもんだなぁ。あれ(魔法)を防ぐとは、少し驚いたぜ』

 

金髪の少女を褒めるように、けらけらと笑う一尾は、再びミナトを睨みつける。

 

『今のでわかったけどよ〜』

「.....」

 

十字の瞳を細め、口角を上げて何かを確信した表情を浮かべる尾獣に、青年は無言で返す。

 

『狐野郎、お前。()()()()()()()()()()()()()()?』

『.....』

()()()()()()とは違うってことかぁ。ククク、こいつは面白ぇ!』

 

同じ尾獣だからこそ見抜けた事実。生身の人間が尾獣に勝つことはまず不可能であり、対抗するにはそれ相応の規模感が必要となるため、ミナト自身が『尾獣化』することが最も最善かつ必須の選択肢。にも関わらず、満身創痍のアイズ達を前にして一向に尾獣化をする気配の無い人柱力に、一尾は原因があることを即座に見抜いた。人柱力が尾獣から力を引き出す方法は主に2つある。1つ目は、尾獣から無理やり『魔力』を引き出す方法。これは特定の技術と封印が充実しているのであれば特段難しいものではない。そして、2つ目は、人柱力の器である人間と尾獣が和解し、互いの『魔力』を結びつける方法である。癖の強い尾獣達と気を合わせることは至難の技ではあるが、人柱力としての最高峰、『尾獣化』をできるようになる。前者と比べ後者の方が圧倒的に引き出せる力の規模が桁違いかつ、暴走の危険(リスク)も少ない。ミナトと九尾はすでに協力関係にあり、九尾から引き出せる『魔力』も相応のものであるはずだが。

 

『本来のお前なら、その程度の傷を治すことなんて10人だろうが100人だろうが余裕な癖によ』

『.....何が言いてぇ』

 

ようやく九尾が口を開いた。

 

()()()()()()()()()に大した魔力も回してねぇんだろ。随分と丸くなったなぁ?』

『バカ狸が、言わせておけば......』

 

はっ、と鼻で笑う一尾の目の前に。ミナトの体から朱色の魔力が溢れ出た次の瞬間には、巨大な妖狐が砂の化身を睨みつけていた。

 

『覚悟はできてんだろうな』

『中途半端な尾獣化しかできねぇ雑魚に俺様が負けるかよ!』

 

先の『精霊』など最早比較すること自体がおこがましい。大気を震わせる程の魔力を(ほとばし)らせる2匹の獣に、ティオナ達は武器を握っていた手の力を無意識に手放し、ガシャンと金属音が複数鳴り響いた。

 

『死ね、クソ狐!!』

『そりゃてめぇだろうが、バカ狸!!』

 

互いに土色と朱色の魔法陣(マジック・サークル)を眼前に展開させ、膨大な魔力を球状に圧縮していく。尾獣が放てる最高火力魔法【尾獣玉】が今にも放たれる、その瞬間。

 

「ごほっ、ごほっ.....!!」

 

大量の血を吐き出したミナトの意識が一瞬で飛び、尾獣化も解け朱色の魔力が残滓として周囲に飛び散った。

 

先の大戦で『九尾の衣』をアイズ達全員に付与し、かつ『穢れた精霊』が放つ魔法を直接浴びたミナトの体は、本来は立っていることすら奇跡なまで消耗しており、そこに尾獣化で魔力を更に使えばどうなるかは自明のことだった。

 

『ヒャハハハハハハッッッ!!』

『ミナト.....っ!』

 

今もミナトを見下ろす一尾と、青年の中に戻った九尾が対照的な声音を上げる。

 

『情けねぇ、情けねぇぞ!!』

『くっ.....!』

『認めたくはねぇが、俺様達(尾獣)の中でも魔力量なら図抜けてたお前がこのザマかよ!?』

 

宝の持ち腐れだなぁ、と絶対的優位に立った砂の化身は、荒ぶる魔力をコントロールせず周囲を威圧するように解き放った。そのまま魔力の余波を浴びれば、ボロボロの【ロキ・ファミリア】の団員達は一溜りもないだろう。それを瞬時に悟った九尾は、倒れ伏すミナトの体から9本の尾を出現させ、冒険者達全員を包み込んだ。

 

『あの狐がなぁ〜』

 

孤高の存在であった九尾が他の者を守るために尽力している、その光景を前にした一尾は面白そうなものを見るように口端を更に吊り上げた。

 

「これ、って.....」

「『九尾』の魔力だ。お前達、絶対にその場を動くなよ.....」

 

見覚えのある朱色の尾に包まれる中、レフィーヤが呆然と驚嘆を零し、『尾獣』の恐ろしさをある程度知っているリヴェリアが翡翠色の瞳を凄めながら告げる。

 

やがて、津波のような魔力波が収まった。同時に限界が来たのか、朱色の魔力も拡散し跡形もなく消え去る。

 

『本当に情けねぇな』

『.....』

『ここでお前らをぶっ殺してやってもいいがよ.....』

 

十字の金瞳でアイズ、ティオネ、ティオナ、ベート、と順々に彼女等を見やる一尾は、つまらなそうに息を吐くと、三度ミナトを睨みつけた。

 

『ここはてめぇ(九尾)が一番ムカつくことをするのに決めたぜぇ』

 

ニヤリと、不敵な笑み浮かべた怪物は、弱っている相手を殺すことよりも、宿敵に屈辱を与える方が自身の欲求を満たすことになると考えたのか。一際声を上げ、ドスの効いた宣言を告げた。

 

()()()()()()()()()()()()()、さっさと尻尾巻いて巣に帰りやがれ、ひよっこども』

『.....ちっ』

 

最高で最低な提案が投げられる。回復をしなければ今にも死に絶えるミナトを始めに、アイズ達全員は最早風前の灯火であった。今この場で『尾獣』という埒外(らちがい)の存在を相手取れば、命を落とすことは必須。敵に見逃される屈辱に耐えされすれば帰還することができる。悔しさに打ち震える【ロキ・ファミリア】が一尾を睨みつける中、ただ一人。フィンだけが冷静さを欠くことなく、最適の回答を言った。

 

「.....撤退する」

『ほぉ?』

「総員、直ちに準備を進めろ」

 

首領の英断に、一同は血が滲むほど拳を握りながら、小さく頷くのであった。間もなく撤退準備が整い、58階層へと繋がる正規ルートへ引き返そうとした、その時。

 

『じゃあな、クソ狐。次は無様な面見せるんじゃねぇぞ』

 

上層へ向かうフィン達の背中を眺めていた一尾が、最後に九尾、いや。冒険者全員の心に爪痕を刻み込んだかと思うと、山のような巨躯を崩し、数秒後には大量の砂を残して階層から完全に姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『穢れた精霊』と『一尾』との接触。前者を突破した彼等に残されたのは、高揚感などではなく、屈辱だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砂の化身に見逃された【ロキ・ファミリア】は、かき集められたアイテムを中心に全員の治療を何とか済ませ、動けるまでに回復させ、50階層の拠点(キャンプ)を目指し、51階層まで辿り着いた所だった。

 

「つまりは、あの女体型でさえ尖兵ということか.....」

「ああ。宝玉がモンスターに寄生することで変貌するんだろう?」

「確かにアイズ達もそう言っておったが.....」

 

体に鞭を入れてパーティが強行軍に努める中、59階層で得られた情報をもとに語られるフィンの考察に、リヴェリアとガレスは動揺を隠せない。

 

「女体型の本体は別にいる。これは間違いない」

 

それに、とフィンは続ける。

 

「敵に『尾獣』がいる。これが分かっただけでも今回の『遠征』は価値があった」

「.....」

「むぅ......」

「宝玉を用いた『精霊』の地上召喚、恐らく敵の狙いはそれだろう」

 

都市最強派閥であるフィン達ですら辛勝した穢れた精霊、その『分身』。あの女体型が何体も現れ、都市を脅かすことになる。肝心の尾獣に関しては、「そう簡単に御せる存在である筈がない」と結論付けた3人は、サポーター達によって運ばれ、未だ眠っているミナトを一瞥するのであった。

 

「急いでロキに知らせる。準備が出来次第、地上へ帰還しよう」

「わかった」

「おう」

 

異議を唱えることはなく、冒険者達は階層を脱出するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....ふぅ」

「気持ちいいですね〜〜〜〜」

「うっひゃー!さいっこー!!」

「ちょっと、こっちに水が跳ねるでしょうが!?」

 

顔まで水面に浸かったアイズとレフィーヤが、心地よい水の冷たさに息を吐く。岩の隙間から流れる小滝に突っ込んでいた顔を引き抜き、ティオナが歓声を上げる。ぶんぶんと犬のように顔を振って水を切る彼女に、姉であるティオネは怒って声を張った。

 

天女の如き少女、容姿端麗な妖精(エルフ)、瑞々しい褐色肌を惜しまないアマゾネス。そんな彼女達が作り出す光景は桃源郷のようであった。

 

「うぅ.....皆さんスタイル凄すぎます.....」

「貴方だっていいもの()持ってるじゃない」

「わ、私は太っているだけで.....っ!?」

 

リーネの呟きに、細い尻尾を洗っていたアキが、くびれが映える腰をひねりながら告げる。顔を真っ赤にして胸を手で隠す少女に肩を竦めた猫人(キャットピープル)の少女も、美乳と言って差し支えない胸の持ち主であった。

 

「【ロキ・ファミリア】は本当に別嬪揃いだな。主神の趣味が見え隠れしておるわ」

 

かっかっかっ、と豪快に笑い上げる椿は、魅惑的なうなじをチラつかせながら、美女美少女達を見渡す。

 

「こりゃあ男どもは堪らんだろうなぁ。覗いてきたらどうする?」

「成敗します。問答無用です」

「あはは...男性方は覗きたくても覗けないんじゃないかなぁ.....」

 

椿の問いに、アリシアとナルヴィが答えた。2人とも59階層進行の際に同行したLv.4の実力者であり、二軍メンバーの中心人物だ。彼女等は自分たちの為に周囲で見張りをしている女性団員達に手を振り、感謝の意を表す。ロキの趣味が爆発しているこの【ファミリア】では、構成員の殆どが女性である。人数も質も女に軍配が上がる【ロキ・ファミリア】では、男達の夢が叶うことは無いだろう。

 

 

現在18階層。階層奥から流れてくる水晶の流水で作られた湖にて、アイズ達は水浴びをしていた。なぜ帰還せずにこの『迷宮の楽園(アンダー・リゾート)』に滞在しているかというと。ダンジョン『下層』において遭遇した『ポイズン・ウィルミス』の大量発生が団員達に猛威を振るったからである。毒妖蛆(ポイズン・ウィルミス)は『毒』を用いるモンスターの中でも最上位の危険度を誇り、その劇毒は上級冒険者の『耐異常』を容易に貫通してのける。末端構成員の多くが毒の餌食となり動けなくなり、彼等を抱え全力でモンスターの産まれない18階層まで駆け抜けてきたということだ。地上まではまだ時間がかかると踏んだフィンは、18階層で団員達の治療を行うことに決め、ミナトが回復しきっていない現状。動ける中で最も足の速いベートに、『特効薬』を地上まで取りに行って貰っている。彼が往復するのにフィンの見立てでは残り2日。今頃悪態を着いているであろう狼人(ウェアウルフ)の青年を待つ他無かった。

 

「こりゃあしばらく火の車かのぅ」

「ガレス、今は忘れさせてくれ.....」

 

【ヘファイストス・ファミリア】への素材讓渡。不壊属性(デュランダル)の武器が数振り。新種対策の『魔剣』が30振り異常。さらには『遠征』最後に待ち受けていた特効薬の買い占め。莫大な資金を必要とする『遠征』は道中で手に入れたドロップアイテムや『魔石』が、費用回収の大半を占める。『深層』のモンスターから得たドロップアイテムは全て【ヘファイストス・ファミリア】に讓渡する契約だったため、彼等の収入源は『魔石』だけだあった。

 

「次回の遠征は資金集めがメインかな.....?」

「こうなった以上は仕方あるまい。ロキへの報告はベートに持たせた手紙がしてくれる」

「儂らも少し羽を伸ばさせてもらうとするか」

 

それぞれ思うところを口にした首脳陣は、最後のガレスの提案に口を挟むことなく頷くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

18階層には地上と時間はズレるが、『朝』、『昼』、『夜』が存在する。階層の天井一面を覆う水晶郡が発光量を時間によって変化するためだ。現在は『夜』。階層で取れる果物や木の実を含めた食事を、【ロキ・ファミリア】は団員全員で取っていた。

 

「つ、椿さん、このキノコって食べられるんすか!?」

「『耐異常』があれば問題ない!」

「やっぱり毒キノコじゃないっすかぁ!?」

「いや、意外とイけるかもしれないよ?」

 

一際賑やかな箇所では、自ら採ってきた巨大キノコを丸焼きにした椿が、怪しげな色に怯えているラウルに勧めていた。必死の形相で断るラウルにミナトが存外乗り気なのを他所に、椿の隣に座っていたティオナがぱくっ、と大きく口を開けてキノコにかぶりついた。その光景を目にした団員達から笑い声が上がり、アイズも笑みを浮かべる。

 

その後も賑やかな食事は続き、みな『遠征』の疲れを癒すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョン内で迎えた『朝』。

 

「.....」

 

階層天井から光が地上へと降り注ぎ、早朝の森を思わせる明るさが野営地に広がる中、アイズは天幕から抜け出した。地上との時間差を肌で感じながら、アイズはおよそ2週間浴びていない太陽の日差しと、趣のある月明かりが恋しくなった。何となく歩きたい気分になったアイズは、剣の素振りもしたいな、なんて女の子らしからぬことを考えていた時、地鳴りのようなモンスターの咆哮を耳にした。

 

「!」

 

すぐにアイズは何が起きたのかを察する。この階層の1つ上、17階層で出現する階層主『ゴライアス』が冒険者を襲ったのだろう。ゴライアスが産まれ落ちる大広間は、【ロキ・ファミリア】が拠点にした野営地からそう遠くない場所にある。同業者の身を案じたアイズは、誰よりも早く目的地へと向かった。

 

そして。

 

「え?」

 

草原の上に倒れ伏す、3人のパーティを見た。しかも、内1人は見覚えのある白髪の少年。

 

「ベル.....?」

 

少女の足を掴み、助けを懇願し気絶した少年は、間違いなく。ベル・クラネルであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在は『夜』

 

【ロキ・ファミリア】の野営地では、団員達の人集りとともにざわめきが起こっていた。

 

「な、何かあったんですか?」

「あ、レフィーヤ」

 

キャンプの中心地にできた人集りのもとに、レフィーヤは慌てて駆け寄る。騒ぎを聞き付けてきた彼女に、ラウル、更に隣にいたアキが振り返る。

 

「17階層でゴライアスに襲われたパーティを、アイズさんが助けたらしいっす.....」

「ボロボロになって、今は意識を失ってるの.....」

 

ラウルの答えにアキが補足する。騒ぎを聞き付けた者達が囲む場所、草地の上では3人組のパーティが寝かされており、リヴェリアや治療師(ヒーラー)のリーネ達が様態を確認しながら治療に当たっていた。

 

「あの3人の中に『ヘファイストス・ファミリア』の団員もいるらしいっす」

 

驚くレフィーヤと一緒にリヴェリア達を眺めていたラウルは、さらし姿の椿の方に視線を送る。

 

「ヴェル吉.....」

 

最上級鍛冶師(マスター・スミス)の彼女は、眼帯で覆われていない右眼を大きく見開いている。流石に【ヘファイストス・ファミリア】の身内がいるとなれば、基本的に他の冒険者には不干渉が暗黙の了解であるダンジョン内においても、無視はできない。今もリヴェリアが周囲の団員達に指示をとばし、少年達の治療が進められている。

 

「あと、アイズとミナトの知り合いみたいよ」

「お2人の.....?」

 

そういえば、と思い出したようにこぼしたアキの言葉に、レフィーヤは敏感に反応した。怪我人が一体何者なのか気になった彼女は、野営地に運び込まれた冒険者達をつい観察してしまう。

 

「(.....あれっ?)」

 

寝かされている内の一人。まだ幼さを残す白髪の少年。彼を視界に捉えたレフィーヤの瞳が大きく見開かれた。

 

「あ〜〜〜〜〜っ!?」

 

次の瞬間には、少年を指差し、大絶叫する。周囲の団員達が山吹色の少女へと振り向く中、己の憧憬に師事をしていたベル・クラネルと図らずも再会した彼女は。「怪我人の前だ、静かにしろ!!」とリヴェリアから雷を落とされるのであった。

 




まあ、原作ではかませ犬だった一尾も本当は強いはずですから。今のアイズ達では勝てないでしょう
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