黄色い閃光inダンジョン   作:いちごぎゅーにゃー

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再会

「(クラネル君は凄いな。もうここ(18階層)まで辿り着いたとは.....)」

 

今は貸し出された【ロキ・ファミリア】の天幕の一つで眠っている3人組のパーティ、その1人である白髪のヒューマンを称賛するミナト。既に彼等が運び込まれてから半日が過ぎ、その間に首領であるフィンと【ヘファイストス・ファミリア】の鍛冶師(スミス)達が何人か見舞いに訪れていたようだ。天幕の中ではアイズが付きっきりで看病をしており、何かあった時の為に、そのすぐ外側でミナトが待機しているのが現状だ。

 

およそ2週間前。ミナト達の目の前でミノタウロスとの死闘を繰り広げ、見事打ち倒した少年は、恐らくLv.1からLv.2へと至ったのだと思われる。昇格(ランクアップ)直後にも関わらず、到達階層をミナト達のいる18階層まで更新する大胆さ。ただし、これは少年の思惑通りでは無かったのだろう。彼等3人の様態から考察するに、決して軽くない怪我を負ったために途中で引き返すのを諦め、安全地帯(セーフティ・ゾーン)である18階層を目指すことにした、と考えるのが一番辻褄が合う。だとしても彼等の決断は第1級冒険者のミナトですら舌を巻くものであり、一度『冒険』を乗り越えた少年の成長を見せつけるものだった。

 

「ん.....?」

 

思考に耽っていると、何やら天幕の中から話し声が聞こえてくる。聞き覚えのある2つの声音は、アイズとベルのもののようだ。ややあって、2人が天幕から出てくると、外で待機していたミナトの姿に、ベルが驚いたように声を上げた。

 

「ミ、ミナトさん.....っ!?」

「やあ、クラネル君。元気になったみたいで何よりだよ」

 

ベルの脳裏に浮かび上がる数週間前の出来事。あの夜、ミナトから謝罪とお気持ち(高級菓子)を頂いた彼と少年、そしてヘスティアを含めた3人での夜会はとても華やかなものだった。憧れの第1級冒険者の口から紡がれる『冒険譚』は、新米冒険者であるベルにとっては夢物語であり、同時に目指す場所でもあった。アイズとはまた違った、尊敬と畏怖を一緒にしたような、上手く言えないが。何となく、ナミカゼ・ミナトはベルにとっては雲の上の存在なのだ。そんな青年を、意識を取り戻したばかりなのに目の前にした白髪の少年は、ガチガチに緊張しているようで。深紅色(ルベライト)の瞳を上下左右と、あちこちに泳がせていた。

 

「.....?」

 

ミナトとベルが知己であったことを知らない少女は、可愛らしく首を傾げ、慌てふためく少年と苦笑を浮かべる青年を見つめるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ティオネ聞いた!?アルゴノゥト君来てるんだって!!」

「うるさいわねー。というか、何なのよ『アルゴノゥト』って.....」

 

野営地に近づいてきたモンスターの駆除を行っていたアマゾネスの姉妹は、他派閥の冒険者が運び込まれたことは聞いてはいたが、詳細までは知らなかったらしい。レフィーヤから説明を受けたティオナがはしゃぐのに対してティオネは呆れた顔をしている。

 

「凄いなー、もうこんな所まで来ちゃったんだ!」

「.....本当、血が騒ぐわね」

 

女戦士(アマゾネス)としての本能だろうか。『強さ』に(こだわ)る彼女達らしい反応に、レフィーヤは面を食らっている。

 

「ねぇねぇ、アルゴノゥト君はどこにいるの?」

「団長達と面会中みたいです.....」

 

アイズとミナトがフィン達のいる所に案内していったことを、やや不機嫌そうに説明するレフィーヤ。そんな彼女に対してティオナは「後で会いに行こう!」と楽しそうに言う。その後、2人と別れたレフィーヤは、振り分けられた仕事に戻りながら頬を膨らませてしまう。不満を募らせる少女と同調するかのように、野営地にいる団員達は、みな同じ金髪を揺らす2人に連れられる少年を余り歓迎していないようだった。「皆のアイズさんなのに.....!」とか。「俺達ですらまともに会話したことないのにっ」とか。「私もミナトさんにお世話してもらいたい!」とか。とにかく、突如現れた謎の少年対する反感を隠そうともしていないようで、レフィーヤは他の団員達からも意見を聞こうとする。

 

「皆さんは、あのヒューマンをどう思いますか?」

 

レフィーヤと同じく炊事を担当していたアキ、ナルヴィ、リーネは少女の質問に顔を見合わせる。

 

「まあ、こんな時くらいは助け合わないとね」

「流石に見捨てるのは、後味が悪いよ」

 

アキとナルヴィは同業者として思うところがあるのか、2人揃って苦笑を浮かべた。

 

「それに、アイズさんとミナトさんのお知り合いみたいですし.....」

 

最後に休憩を貰っていたリーネが、おずおずといった感じで告げた。予想外の返答に、思わずレフィーヤは口を尖らせてしまう。

 

「でも、少し意外です」

「どうしたの、リーネ?」

「他の方達と同じように、ラウルさんも不満がると思ってたんですけど.....」

 

ヒューマンの少女が眼鏡越しに見つめる先では、冴えない男性冒険者、ラウルが他の団員達を必死に(なだ)めているところだった。

 

「ラウル君は、何て言うか、苦労人?」

 

「皆落ち着くっすよ〜!?」と叫んでいるラウルの姿に、擁護にもならないセリフをナルヴィがこぼす。

 

「私とラウルは、同期みたいなものなんだけどさ.....」

 

おもむろにアキが口を開いた。

 

「私達が【ファミリア】に入った時、アイズはもうLv.2だったの」

「確か、8歳でLv.2になったっていう.....?」

「そう。自分達よりもずっと幼い子がどんどんモンスターを斬り倒していく様子に、ラウルはもう震え上がっちゃってね」

 

苦笑を浮かべたアキは「それからあいつはアイズのことを、『さん』付けで呼ぶようになったのよ」と付け加えた。

 

「それに、ね.....」

「ま、まだあるんですか.....!?」

 

猫人(キャット・ピープル)の少女の次は、ヒューマンの少女が口を開いた。今でも既にお腹一杯なレフィーヤに、更なる追加攻撃(デザート)が添えられる。

 

「私はあの娘(アイズ)よりも、ミナトの方が怖かったかな」

「えっ?」

 

ナルヴィがこぼした、温厚なナミカゼ・ミナトが怖いという言葉に、面食らったレフィーヤは固まってしまう。

 

「今もそうだけど、昔からミナトは()()()()().....」

「.....」

「.....」

 

 

目を伏せるナルヴィに、リーネとレフィーヤは思わず息を呑む。唯一共感できるのか、アキだけは彼女と同じように眉を反らせていた。

 

「ミナトにはね、誰も追いつけないの」

「それって、どういう.....」

 

単純な脚の速さではないことはわかっている。恐る恐る尋ねるレフィーヤに、ナルヴィはくしゃっと、自嘲じみた笑みを作った。

 

「どんなに私達が努力しても、工夫しても、誰一人としてミナトの背中を見ることさえ叶わない」

「.....」

「普段近くにいる分、『冒険者』としてのミナトを見ると、どうしてもその凄さに圧倒されちゃう.....」

「.....私も、ちょっとわかるかな」

 

歳は大して変わらない。だが、才能は違う。当時は今よりも苛烈だったアイズを遥かに上回る実力。【ファミリア】に入団した者達の誰よりも、彼の歩む速度は速かった。ナルヴィとアキも当時はあの金色の背中を追いかけていた。若い世代の中でも特に突出した実力者が近くにいることは、彼女達にとっては良い刺激になっていたのだが、追いかけようとすればする程、自分達と彼との差を知ってしまう。その差を強く実感させられてきたアキも、ナルヴィに同感するよう小さく頷いた。

 

「ここだけの話、実はね」

 

どこか達観した瞳を向けるアキに、レフィーヤは何故か胸が締め付けられた。

 

「昔、一度だけ。ミナトと自分を比べていた時期があったんだ。どうして私はあんな風になれないのかな、って毎晩ベッドの上で考えてたの.....」

 

都市最強派閥【ロキ・ファミリア】に所属する冒険者達は、迷宮都市オラリオの中でも屈指の実力者が多く所属している。アイズ達ばかりに脚光が向けられるが、Lv.4のアキやナルヴィ達も(れっき)とした実力者である。『魔法』に秀でたレフィーヤでさえLv.3なのだから、それ以上の彼女達がいかに優れているかは説明するまでも無い。

 

「でも、今はそんなこと考えたりしないんだけどね」

 

私は私のペースで頑張るって決めたからさ。と最後に告げたアキは、手元で調理していた鍋に意識を戻した。

 

「ちゃーんと皆ミナトを尊敬してるんだからね?」

 

先程とは違って、ナルヴィも明るい笑みを向けながらレフィーヤにそう補足して、続けた。

 

「だから大丈夫、レフィーヤ」

「えっ?」

「私達がミナトに劣等感を抱くことは無くなったし。ティオナ達や貴方のおかげで、アイズは随分と丸くなったし。前よりずっと笑うようになったよ」

 

白髪の少年に、自分の憧憬が奪われた気になっていた心を見透かすように、ヒューマンの女性に笑いかけられるレフィーヤは、思わず赤面してしまった。

 

「(まあ、私達とアイズさん達の間には、深い絆がありますし?あのヒューマンが立ち入る隙なんてどこにも無いですし?)」

 

ナルヴィに諭されたレフィーヤは、少し上機嫌になりながら、アキ達と夕食の仕込みを進めた。

 

しかし。その後にティオナの口から、彼のヒューマンが『ミノタウロス』を、それもLv.1の時に単独撃破したことを聞いたレフィーヤは、再び。むむむむむ、と頬を膨らませるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「18階層まで辿り着いた彼等に、同じ冒険者として、どうか敬意をもって接して欲しい。それじゃあ、乾杯だ」

『乾杯!!』

 

揉め事を避けるように釘を刺された後、ささやかな宴が始まった。昨晩に続いて開催された晩餐では、ベルを含め、彼のパーティメンバーである鍛冶師(スミス)の青年と小人族(パルゥム)の少女も参加していた。

 

「ヴェル吉!」

「げっ、椿!?」

 

少し酒が回り、酒瓶を持って真っ直ぐベル達の元へ向かってきた椿に、声をかけられた青年は顔を思い切りしかめた。

 

「なんじゃ、その態度は〜」

「うぉ!?酒臭ぇ、寄るな馬鹿!」

 

椿の参入でたちまち賑やかになる一角。ここで(18階層)採れた果物を飲み込んだティオナは、ティオネの手を引っ張りながらベルの隣に割り込んだ。嫉妬の視線を一身に受ける兎に「ミノタウロスを倒した時凄かったよー!」と詰め寄るティオナを他所に、何故か冷や汗を流している少年の元へ痺れを切らしたレフィーヤが突撃しようとした、その瞬間。

 

『ぐぬああっ!?』

 

野営地から離れたところから、可愛らしい悲鳴が届いてきた。見張り役の団員達に断りを入れたベル達3人は、声主の元まで駆けて行き、アイズ達も彼等の後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜、助かったよ!まさか階層主に襲われるとは思ってなくてね」

 

愉快そうに笑う男神が歯切れよく言葉を連ねる後方、水色の髪をため息と一緒に揺らす従者が控える中、フィン達は更に増えた客人達を見つめた。宴の最中に聞こえてきた悲鳴の持ち主は、まさかの女神ヘスティアのものであり、聞けば、ダンジョンから帰らない眷族(ベル)を心配に思った彼女は、護衛を引き連れて自らダンジョンへと潜り込んで来たと言う。今フィン達の目の前にいる、男神ヘルメスを除く、彼の眷族や他の冒険者が彼女の護衛ということだろう。

 

「つまり、貴女方はベル・クラネル一行を救出するために来た、ということかな?」

「その通りさ【勇者(ブレイバー)】。ヘスティアに依頼書も用意されてね」

 

アイズ達が見守る中、ヘルメスは懐から取り出した依頼書をフィンに見せる。ギルドの承認印が示されていることから、男神の言っていることは嘘ではないようだ。フィンとヘルメスがことの確認をしている中、何やら忙しないやり取りが聞こえ、アイズは金色の双眸をそちらへと向けた。

 

「こ、これは火影様!?」

「ちょ.....オラリオでは名乗ってないから、そんなに固くならなくていいから、ね?」

「い、いえ、そういう訳にはいきませんっ!?貴方様は彼の『木ノ葉隠れの里』の長であらせられます(ゆえ)!」

「だ、だから.....」

「火影様にダンジョンでお会いできるのなんて.....どうしよう(ミコト)ぉ」

「じ、自分に言われましても.....」

 

見れば極東風の戦闘衣(バトル・クロス)を纏った冒険者達が、ミナトに対して全力でひれ伏している。一向に顔を上げようとしない彼等を何とかしようと躍起になっている青年だが、声を発すれば発するほど恭しくなる彼等に困った表情を浮かべている。

 

「ハッハッハ。いやぁ流石は『火影殿』だ。極東出身の桜花君達にとっては、とても尊き御方みたいだね」

 

ヘスティア達の護衛に協力してくれた桜花と呼ばれる青年達、【タケミカヅチ・ファミリア】が(こうべ)を垂れる姿を見て、ヘルメスは楽しそうに笑い上げた。

 

「神ヘルメス。『木ノ葉』については団員達に余り話していないんだ。吹聴するような真似は控えて頂きたい」

「あぁ、すまない。つい舞い上がってしまったよ」

 

優男の神に怪訝そうな顔を向けた小人族(パルゥム)の少年に、当の本人は余り反省していないように謝罪した。

 

『(木ノ葉.....火影.....?)』

 

聞いたことの無い単語に、周囲で控えていたアイズ達は疑問を浮かべる。『木ノ葉』とは何を刺しているのかはわからないが、極東風の冒険者達が名を告げながら平伏することから、『火影』とはミナトを指す言葉なのだと推測できる。神の一柱と【ファミリア】の首領が会談をしてる以上、余計な口は挟むことはできないと理解しているアイズ達は、頭の中に浮かんだ疑問を口にするような真似はしなかった。

 

 

「単刀直入に言おう、【ロキ・ファミリア】の諸君。どうか君達の野営地に滞在をする許可を貰いたい。そして可能ならば、君達が地上へ戻る際に俺達の同行を許して欲しい」

「安全に帰還するために、ということかな?」

「話が早くて助かるよ」

 

フィンの確認に、ヘルメスは笑顔で頷いた。もともとベル達が18階層に避難してきたのは、自力で地上へ帰還することが叶わないため、上級冒険者達に同行させて貰うことが目的であった。ヘルメスの申し出も要は同じことを意味しており、【ロキ・ファミリア】の後ろにくっついて行くことが最も安全な手段なのだ。

 

「急いで準備してきたからね、野営の道具なんて持って来れなかったんだ。食料の方は何とかするし、何か必要な出費があれば俺の【ファミリア】が肩代わりしよう」

「随分と羽振りがいいな」

「ヘファイストスにヴェルフ君のことを頼まれたからね、遠慮はできないさ」

 

先に本音と建前を置き、後から少しの誠意を見せることで相手に申し出を断りにくくしている。此度の『遠征』で協力関係を敷いている【ヘファイストス・ファミリア】の名も出して、上手いこと交渉を持ちかける男神に、アイズ達は脱帽する。

 

「どうだろう。この申し出、受け入れてくれるかな?」

「余計な駆け引きは止めよう。一度保護した以上、見放すつもりは毛頭ないから安心してほしい」

「これはすまない。ありがとう【ロキ・ファミリア】、感謝するよ」

 

その後、ヘルメスの口からロキ、ディオニュソスとの三柱で同盟を組んだことを聞かされた一同は驚愕するも、慎重派であるフィンが、ロキに確認を取るまでは信用できない、と述べると。ヘルメスは「今はそれでいいさ」と告げ、未だ寸劇を繰り広げるミナトと【タケミカヅチ・ファミリア】の元まで行くと。

 

「ミナト君。これは君の()()からだよ」

「!」

 

そう言ってヘルメスが取り出したのは、可愛らしい蝦蟇(ガマ)印の付いた一通の封筒。受け取ったミナトが瞠目していると。「この間オラリオの郊外に出ている時に、少しね」、そう言って自身の師と妙な繋がりを示唆した男神は、軽く手を振りながら天幕を出ていった。

 

「(旅好きの先生のことだから、って考えるのは早計かな.....)」

 

フィン達に断りを入れ彼も天幕を後にし、野営地から少し離れたところに生える1本の広葉樹の根元に腰を下ろし、蝦蟇の封を切る。

 

「これは.....」

 

中から出てきたのは一枚の手紙と、『口寄せ』が組み込まれた魔法式であった。これは『魔剣』と同じ要領で作成されるものであり、言わば極東式の魔剣といったところだろう。比較的簡単に作れる代わりに使用限度回数が一回のみではあるが、今ミナトの手元にあるような小さい紙一枚で『魔法』を使えるため、割と極東では重宝されている。なぜ口寄せ術式を送ってきたかは手紙の内容が教えてくれるだろうと、ミナトは作家でもある恩師が直筆で書いた文面に、意識を落とすのであった。

 

「『拝啓、四代目火影殿』、まったく、相変わらずですね.....」

 

一度もその名で呼んだことがない癖に、踊ったような字体でそう書いてあるため、自分をからかっているのが良くわかる。小さくため息を吐き、手紙から読み取れる師の変わらない様子に苦笑した。

 

『なーんて、硬い挨拶は無しだのぉ。可愛い弟子との世間話に花を咲かせるのも悪くわないが、手紙じゃあ儂の片思いになってしまうしのぉ。が〜ハッハッハ!!』

「先生.....」

 

自身の声をそのまま文字にする簡易術式を使用したのか、ところどころ筆者の口癖や笑い声の痕跡が見て取れる。

 

『とまぁ悪ふざけはここら辺にしといて。何故ヘルメスと儂が顔見知りなのかは、お互い流浪人でもあり、たまたま旅先で会ったからだ』

 

この辺りは先程聞いたことであるために、特段驚きはしない。

 

『今回お前に手紙を残したのは、いくつか伝えておくべきことがあったからでなぁ。と言っても2つではあるんだが、きな臭さがプンプンしやがるもんでのぉ』

「......」

『お前がオラリオにいる間、()()()()の存在がこっち(極東)では浮き彫りになってきてな』

 

こういう時、百戦錬磨である師の勘は必ず当たる。その能力柄、情報収集も得意としている仙人は何かを掴んだようで、やや固い文面が連なっている。

 

『構成員は多くはないんだが、面子(メンツ)が厄介でのぉ。どいつもこいつもS級の指名手配犯で、単純な戦力だけ見ても小国に匹敵する、そう儂は睨んでおる』

「S級が、何故.....?」

 

ギルドのブラックリストのように、極東にもビンゴブックという、要注意人物を纏めた一覧書がある。その危険度や注目度によってランクが分けられ、その中でもSとは最上級の位を表すものである。実力も()ることながら、性格も一癖や二癖ある人物達が、一組織に所属しているという事実は信じ難いことであった。

 

『何が目的なのかはわからんが、指名手配犯を集めるような組織だ、まずまともじゃないだろうのぉ』

「一体.....」

 

わざわざ性格に難のある実力者達を束ねる以上、何かしらの目的があるのは違いない。だが、全く狙いが見えてこないのだと、そう続けられている。

 

『どうやらオラリオの近くでも動いているようだからのぉ、お前の耳にも入れておきたかった』

 

ミナトと同じか、それ以上の実力を誇る、あの()()()がここまで警戒する相手である以上。決して無視はできない。どうやら、地上に戻ってからもやることは山積みのようだ。

 

『怪しい動きを見せ、粒揃いの小組織。その名は、』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『(あかつき)』、か.....」

 

師の手紙に(つづ)られていた1つ目の事項。『暁』という名の組織について。極東だけでなく世界各地、オラリオにまで足を踏み入れようとしている。流石に武闘派の実力者が多く揃う迷宮都市には簡単に手を出せないのか、はたまた周囲で何かの準備をしているのか。ダンジョン内で敵の狙いを定めることは無理だろう。早急に地上へ帰還する必要が出てきた。自来也から託された『口寄せ』術式もあるため、長居することは悪手に違いない。

 

「まずはフィンさん達に報告かな」

 

尊敬する師からの警告。内容が内容なだけに、【ファミリア】の首脳陣に伝える必要があると判断したミナトは、手紙と『口寄せ』の術式紙を懐に入れ、再びフィン達のいる天幕へと向かうのであった。

 

 

 

 

 




やっぱ暁は良い味出してくれますわぁ
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