黄色い閃光inダンジョン   作:いちごぎゅーにゃー

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間が空いてしまいました。すみません.....


想い

「何か凄い話になってきたね.....」

 

【ロキ・ファミリア】女性陣が利用する天幕の一つにて、ティオナの呟きがやけに大きく響き渡った。ヘルメス達との交渉が終わった後、レフィーヤと他派閥の椿を含めたLv.4以上のメンバーで、59階層やここ最近のことについて整理をしていた。ミナト等男性陣はまだ仕事が残っており、アイズとリヴェリアはこの場にはいない。

 

ヘルメスから告げられた、ダンジョンの入口がバベル以外にもあるという推測。誰にも認知されない抜け穴は食人花のモンスターを運び出すために必要となることには間違いない。話の規模の大きさに頭を抱えるティオナ達は、続いてアイズとミナトについて話題を変えた。

 

「アイズは59階層の怪物が精霊ってことを、真っ先に気づいていたわね」

「ミナトは何故か怯えられてたし.....」

 

魔法を行使してきた『穢れた精霊』。彼の存在はアイズを『アリア』、ミナトを『九尾』という名で呼んでいた。それぞれ確認するようにアマゾネスの姉妹は怪訝そうな顔つきで呟く。

 

「もともと変わっている娘だとは思っていたがなぁ」

「椿さんっ!」

「アキはこの中で一番の古株なんだし、何か知らない?」

「生憎、訳ありの子ってことしか知らないわ」

 

顎に手をやる椿にレフィーヤが食いかかる中、アキはティオナの問に、あまり詳しくは知らないと返した。

 

「う〜ん。『精霊』と『アリア』なら、やっぱり『迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリア)』が引っかかるんだけどなぁ.....」

 

おとぎ話を好むティオナが天井を仰ぐのに対し、姉であるティオネは口をへの字に曲げた。

 

「それは『古代』の話でしょ?アイズがその『精霊』な訳無いじゃない」

「そうだけどさ〜.....」

「確か、精霊は子を産めない筈では?」

 

エルフのアリシアも言葉を続ける。2人に指摘されたティオナは両腕を組んで、う〜ん、と眉を下げながら呻き声を漏らす。

 

「精霊の子孫なんぞ知らんが、その血を受け継ぐ者は普通におるぞ?」

『えっ!?』

 

あっさりと告げられた仰天事に瞠目する一同を見て、最上級鍛冶師(マスター・スミス)は楽しそうに笑った。

 

「少し待っておれ。()()()を連れて来よう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何のつもりだ、椿....?」

 

女だけの花園に、赤髪の青年が中央付近に座らされている。あからさまに嫌そうな顔を浮かべる彼は、やや距離を置いて囲むティオナ達を見回しながら、面倒事を持ち込んできた張本人(椿)を軽く睨みつけた。

 

「ふふふ、ヴェル吉よ。まずは自己紹介をするといい」

「それより先に説明をしろっ!!」

 

彼女が同派閥の団長であることも関係無しに怒鳴るヴェルフに対して、何処吹く風な様子の椿は話を進める。

 

「こやつの名は、ヴェルフ・クロッゾ」

「あれ、クロッゾって確か.....」

 

いち早く彼の名に反応を示したアキが、腰から伸びる細い尻尾をぴんと立たせた。

 

「『クロッゾの魔剣』で知られるあの()()()()に間違いないぞ、アキ。そこのヴェル吉は彼の鍛冶貴族の末裔だ」

 

ラキア王国が他国を侵略する際に大いに貢献したと伝えられている『クロッゾの魔剣』は、魔剣の常識を覆す言い伝えが残っており。オリジナル魔法を超える威力を超えるとされ、その威力は『海を焼き払った』と言われる程だ。『クロッゾの魔剣』で世界に家名を轟かせた一族、その血を引くとされる青年に、みなの視線が集まった、その瞬間。

 

「何だ、アリシア。エルフ(森の一族)であるお前なら『クロッゾ』に対して思うところがあると踏んでいたのが、そうでは無いのか?」

 

ラキアの侵略戦争において猛威を振るった『クロッゾの魔剣』は、あらゆる土地、街、国をことごとく灰に変えてしまったと言う。その戦火はエルフの里にも及び、静かな森の中で生活する彼女達一族にとって『クロッゾ』は、憎き怨敵である筈なのだが。謹厳実直を地で行く典型的なエルフのアリシアならば、何かしらの反応を見せると予想していた椿は不思議そうな表情を浮かべた。

 

「確かに.....同胞の里を焼き払った『クロッゾ』に対して憎しみが無い訳ではありません.....」

 

投げられた疑問に目を伏せながら答えるアリシアは、件の『クロッゾ』家、その末裔の青年を一瞥した後、もう一度椿に向き直った。

 

「昔、同じようなことをミナトと話しまして.....」

「ほう?」

「彼の故郷にも、ラキア王国が攻め込んできたことがあったと、直接教えて貰ったんです」

『!!』

「何と、それは初耳だな」

 

過去を嘆くように告げられたアリシアの言葉に、椿以外がみな息を呑んだ。

 

「ミナトの故郷はエルフの里と同じく自然に富んでいるらしく、決して少なくない被害を被ったそうです」

「.....」

 

何かを考えるように『クロッゾ』の青年が目を瞑る中、妙齢のエルフは続ける。

 

「私はその時、彼の態度が気に入らなくて、思わず怒鳴ってしまいました」

「ど、どうして、ですか.....?」

 

普段は頼りになるお姉さんとして団員たちから支持を集めるアリシアが誰かに怒鳴る、なんて状況を想像できないレフィーヤは、恐る恐る理由を尋ねた。

 

()()()()()()()()()()()()憤りを覚えたんです」

 

どうしてそんなに平然としていられるんだ、故郷が焼かれたんだぞ、と。強く金髪の青年に訴えかけたアリシアに返ってきたのは、彼女の遥か上をいく意志の強さであった。

 

「『復讐に走れば憎しみが産まれ、その憎しみがまた別の憎しみを産む。だからこそ、誰かがその負の連鎖を断ち切らなくちゃいけない』。そう言い返してきたミナトの瞳には、強い覚悟が込められていました」

「それと、お前が『クロッゾ』に激情しないことと、どう関係があるのだ?」

 

椿の問に、自嘲じみた笑みを浮かべたアリシアは、ヴェルフの瞳を見つめ、告げた。

 

「『憎しみ』による復讐は、エルフの矜持とはほど遠い。ミナトの言葉でそれに気づかされたんです」

 

「昔の私なら間違いなく怒り狂っていたでしょうね」と付け加えたアリシアに、赤髪の青年は驚いた顔を浮かべる。『クロッゾ』の名前を聞けば誰もが魔剣に何かしらの強い執着を見せることが多く、それが里を焼かれたエルフなら尚更である。今青年の目の前にいる妙齢のエルフは、森の一族として、()()()()()ことを選択したのだ。無闇に復讐の念を燃やすのでは無く、新たな『憎しみ』を産み出さないために。

 

「ということらしいが、ヴェル吉よ」

「.....何だ」

「アリシアのようなエルフもいるのだ、手前よりも強力な『魔剣』を打てるお主が自分の血筋を忌み嫌うことは、ちと勿体無くは無いか?」

 

『クロッゾ』は『魔剣』を打つ術を失ったからこそ没落したと言われているが、最上級鍛冶師(マスター・スミス)のものより強力な武器と聞いて、レフィーヤ達をはぶっと噴き出した。アリシアも目を見開いて椿の言葉に耳を傾けている。

 

「ラキア王国から飛び出したのも『魔剣』を強要されたかららしい」

 

唖然とするティオナ達に、けらけらと笑う椿。一方話題の青年は、身の内を勝手に喋る彼女にいい加減にしろとばかりに憤って口を開いた。

 

「おい、さっきからべらべらと話やがって!」

「別に減るもんでも無いし、小さいことは気にするな」

 

ヴェルフの叫びも虚しく、飄々とする椿には全くもって通用しない。いい加減この天幕に連れてこられた目的を欲した青年は、【ロキ・ファミリア】の面々に物怖じすることなく尋ねた。

 

「じゃあさ。君が『精霊』の血を引いてるってのはホントなのー?」

「.....」

「こちらも知りたいことがあるのだ、付き合ってくれ」

 

ティオナの質問に、青年は瞳を細めて椿を見やる。どこまで勝手に話してやがるという非難がましい視線に、ようやく彼女は、悪かった悪かった、と謝った。

 

深く息を吐いたヴェルフは、他言無用だと釘を指した後、レフィーヤ達に自身と『精霊』との接点を説明し始めた。

 

まだ世界が『古代』と呼ばれる時代の頃。『クロッゾ』の初代は『精霊』をモンスターから助けたことがあり、その際に深傷を負った彼を助けるために、精霊は自身の血を分け与え命を救った。それからというもの、初代クロッゾは凡夫なヒューマンでありながら『魔法』も使用できるようになり、寿命まで伸びたという。出鱈目(でたらめ)な『魔剣』を打てるようになったのも『精霊』の恩恵であり。以後、彼の子孫は『クロッゾの魔剣』を打てるようになったということだ。

 

赤髪の青年から『精霊』の奇跡を聞いたレフィーヤ達は、アイズの強力無比な『魔法()』を思い浮かべた。彼女はヒューマンであり、特段魔法に秀でた種族では無いのにも関わらず、階層主にたった1人で渡り合える程の恩恵をもたらす【エアリアル】は、アイズに『精霊』の血が流れているならば辻褄が合うのかもしれない。古株のアキもアイズの両親や血筋を知らないため、この場にいる者だけでは彼女の謎を解き明かすことはできない。他にも『精霊』について知っていることはないか、と椿がヴェルフに尋ねるが。己の血筋を忌み嫌う青年は、突っぱねるように心当たりは無いと答えた。結果、「その手の話だったら俺よりずっと詳しいやつがいる!!」と言い残し、彼は生贄を椿達に押し付け、さっさと天幕を出ていった。

 

「あ、あの〜.....どうして僕はここに?」

「ベル・クラネルよ、お主はヴェル吉に売られたのだ。覚悟するがよい」

 

ヴェルフと入れ違って天幕の中央に新たに座らせられているのは、白髪のヒューマンだった。悪代官のように不敵な笑みを浮かべる椿に、少年が怯えていると。

 

「アルゴノゥト君って英雄譚とかに詳しいって聞いたけど、本当?」

「詳しいかはわかりませんけど、昔はよく読んでいました」

 

竜殺しの英雄が倒した怪物の住処。伝説の騎士が助け出した王女の名と、その際に使用した武器の名前。ティオナの抜き打ちテストに全て答えたベルに、彼女は「すごいすごい!!」と歓呼した。いつまでも続けられる2人のやり取りに痺れを切らしたティオネが、早く本題に入れと促す。

 

「精霊『アリア』ですか?英雄アルバートに生涯寄り添った『迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリア)』の大精霊?」

「それそれ!」

 

よくもまぁ答えられるものだと、椿達が感心している中、ティオナが遂に切り出した。

 

「じゃあさ、『アリア』が誰かに血を分け与えたとか、子供がいたっていう話は知ってる?」

「う〜ん.....血を与えたり子供がいたりしたことは知らないですけど、英雄アルバートに子供がいたっていう話なら.....」

「何それ〜!?あたし知らな〜い!!」

 

難しい顔をしながら昔の記憶を引き出す少年の言葉に、ティオナが驚きの声を上げた。ベル曰く、彼の読んでいた英雄譚は彼の祖父が描き上げたものらしく、もしかしたら独創性(オリジナリティ)が加えられているのかもしれない。

 

「ならさ、『九尾』って知ってる?」

「えっと.....確か名の数だけ尾を持つ『尾獣』の一体でしたっけ?」

「ほぉ、よく知ってるなベル・クラネル」

 

続いてミナトの謎に迫ったティオナの問に答えた少年に、極東に(まつ)わる話すらも知っている彼に対し、椿が再び感心の声を漏らした。

 

「その様子じゃ椿も何か知ってるのね」

「手前に限らず、極東に関わる者なら誰でも知ってるであろうな」

 

ここにきて白羽の矢が立てられた椿。『九尾』について何かしらの知恵があると思われしハーフドワーフに、ティオネが確認するように尋ねかけ、彼女もそれを肯定する。

 

「ええ〜、知ってたなら教えてよ〜!」

「そうぶーたれるな。手前の代わりにそこの少年が説明してくれる、な?」

「えっ?あ、はいっ」

 

ぶーぶー、と口を尖らせるティオナに苦笑する椿は、自分よりも話が上手いベルに託すよう隻眼の瞳を彼に向けた。

 

「ぼ、僕が説明すれば.....っ!?」

「ああ、頼んだぞ」

「それじゃあーーー」

 

椿の頼みを聞き入れたベルは、ティオナ達へ丁寧に語り始めた。

 

九尾とは『尾獣』と呼ばれ、膨大な魔力を内包した9匹の魔獣の1匹であり、その起源は『古代』より前の時代に遡る。()()()()()()()()()()()()()()()()()『六道仙人』という者が、かつて地上を脅かさんと出現した1匹の獣を倒そうとした。が、その獣の力は凄まじく、倒すことは不可能だと悟った六道仙人は、怪物を滅するのではなく、()()することにした。『核』となる抜け殻を残し、獣の力を9つに分散させることに成功する。そうして誕生したのが『尾獣』であり、他ならぬ六道仙人の手によって守り通されていたのだ。

 

「六道仙人の死後、尾獣達は自分の意思で世界各地にバラバラになったと伝えられています」

『.....』

 

白髪の少年の話から想起されるのは、最後に59階層でティオナ達の前に立ちはだかった砂の化身、『一尾』。圧倒的な存在感を放っていた一尾と同じような怪物が他に8体も存在するという事実は、彼女達の背中に冷や汗を滲ませる。

 

「アルゴノゥト君は、尾獣が人間に宿るってことは聞いたことある......?」

「はい、『人柱力』と呼ばれる人達のことですよね」

「.....本当に博識だな、お主は」

「い、いえっ!興味のあることだけですぅ.....」

「じゃあさーーー」

 

椿が三度感心した様子を見せる中、ティオナはいよいよミナトについて聞き出そうとした、その瞬間。

 

「お前達、あまり詮索をしてやるな」

 

天幕入口の布を片手でよけ、中に入ってくる者がいた。

 

「リヴェリア!」

「どうしてここにっ!?」

 

他の者達ともどもティオナとレフィーヤが狼狽えると、リヴェリアは翡翠色の髪を揺らしため息する。あまりにも賑やかなので彼女はフィン達のいる本営からこちらへと足を運んだのだ。

 

「ベル・クラネル、お前はまだ病み上がりの身だ。しっかりと休養を取れ」

「す、すみません.....!」

「仲間達も待っていることだろう、もう戻るといい。身内が迷惑をかけたな」

「は、はいっ!」

 

都市最強魔導士に気を使わせてしまったことに、凄まじい罪悪感を抱いた少年は、脱兎のごとく天幕から出ていくのであった。それから、リヴェリアがそれぞれの者を見回すと、アリシア達は恐縮そうに身を縮める中、椿だけは「このくらい、大したことではないだろう」と肩を竦め相変わらず平然としていたが。

 

「.....リヴェリア。アイズとミナトの秘密って、同じ【ファミリア(家族)】のあたし達には教えられないことなの?」

 

眉を下げながら、ティオナは胸の内を吐露するように問いかける。

 

「確かに私達は絆で結ばれた【ファミリア】だ。しかし、お前達にも、打ち明けていない秘密の一つや二つあるはずだ」

「っ!」

 

無理に聞き出されたとして、お前達はそれ(秘密)を教えるのか、と付け加えたリヴェリアに。アキ達は目を見張り、体を揺らすティオナとティオネは翡翠色の瞳から目を逸らした。

 

「だが、お前達の気持ちもわかる」

「え.....」

「こうなった今でも何も話すことができないのはアイズの弱さであり、ミナトの優しさでもある。59階層で一部始終を見たお前達に何も話せないのは、確かに不誠実なのだろう.....」

 

リヴェリアは両の(まぶた)を閉じ、改めて口を開いた。

 

「本人達がいない以上、全てを語ることはできないが.....アイズには『精霊』の血が、ミナトには『九尾』が宿っている」

 

アイズとミナトの謎について肯定され、レフィーヤ達は息を呑んでいる。リヴェリアは一瞬、どこか遠いところに眼差しを向けた後、言葉を続けた。

 

「いつかあの娘達から話す時が来るだろう。それまで、どうか待ってやってくれ」

 

最後に、この場にいる者達に懇願した。

 

「全てを知った後も.....これまで通りあの娘達と接してほしい」

 

僅かな間、静寂が場を包み込んでいると。リヴェリアの願いにティオナが前に歩み出て、破顔する。

 

「当ったり前じゃん!私達は家族だもんね!!」

 

アイズはアイズ、ミナトはミナトだよと天真爛漫に笑い、あっさりと言う彼女を皮切りに、他の者達もティオナの後に続いた。

 

愛に溢れた少女達を椿が優しく見つめる中、リヴェリアはゆっくりと目を細め、微笑んだ。

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷宮の楽園(アンダー・リゾート)』の奥、森林が爽やかさを強く醸し出す場所では、()()()()()()()()が設置されている。ダンジョンで亡くなった英雄達に対して、敬意と哀愁が表されていた。

 

「貴方も花を贈りに来てたのですか」

 

背後からかけられた美しい声音に、慰霊碑を眺めていた金髪の青年は、ゆっくりと後ろを振り返った。

 

「リューさん、それにクラネル君も」

「こ、こんにちわっ」

 

フード付きの長いケープを羽織っているエルフの女性と、純白のヒューマンが並んで立っていた。聞けば彼女の墓参りにベルが付き合ってくれているようで、彼自身この場()に来るのは初めてだという。

 

「ここは.....」

「ダンジョンで亡くなった『英雄』達の墓だよ」

「.....亡くなった方達の」

 

見た目や飾られている花などから、ある程度は予想できていた答えだが、自分と同じ冒険者がこれ程多く亡くなっている事実は、まだ成熟しきっていない少年の心に強い衝撃を与える。

 

「ということは、その.....」

 

この場にいるということは、()()()()()()なのだろう。口に出すことは望ましくないと思い、言葉に詰まるベルに、ミナトは苦笑とともに、おどおとする少年の肩に軽く手を置いた。

 

「そんなに固くならないで。君が気を使うことじゃ無い」

「彼の言う通りです。他人を思いやる心は美徳だが、貴方まで背負い込む必要はありません」

「ミナトさん、リューさん.....」

 

人格者の2人に諭されたベルは、困ったような笑みを浮かべた後、静かに今は亡き英雄達に祈りを捧げた。

 

「ここに来ると、どうしても()()()を思い出してしまいます.....」

「はい.....」

 

少年が死者を弔っている中、彼の後方でミナトとリューは、神妙な顔つきで言葉を交わす。

 

「本当に惜しい人を亡くしてしまった」

「ええ.....」

「あの時、俺がもっと速く駆けつけていれば.....」

 

慰霊碑に刻まれた名を見つめながら、金髪の青年は自責の念を禁じ得ないでいた。隣にいるエルフも何か思うところがあるのか、かける言葉を見つけることができないようで、ただ、青年の声に耳を傾けている。

 

「生きていれば、今頃()()()()()()達だって、」

()()()

「っ!.....すみません」

「生を受けている私達が悲観していれば、きっとあの世でアリーゼは、我々に怒鳴りつけているでしょう」

「そう、ですね.....」

「彼女達に託された命。決して無駄にはせず、『正義』を貫き通すと、()()()決めた筈です」

 

脳裏に浮かぶのは、天真爛漫な笑顔を向ける赤髪の少女とその仲間達。かつて誇り高き翼と剣を掲げ、悪が跋扈(ばっこ)する『暗黒期』において人々を守り続けた女傑達。まだ若かったミナトとリューの同年代だった彼女達は、何かと共に行動することが多かった。【ファミリア】という垣根を越え、手を取り合った戦友かつ、親友。想いを託して散っていった彼女達に報いるためにも、2人は強く在らねばならない。リューの言いたいこと汲み取ったミナトは、彼女の隣で今一度慰霊碑に祈りを捧げ、受け継いだ『意志』を再確認するのであった。

 




原作では『古代』まで恩恵を受けた人間はいないという設定でしたが、六道仙人だけは、別枠として設定させてください。
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