黄色い閃光inダンジョン   作:いちごぎゅーにゃー

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やべえ、リアルが辛すぎる.....


星の内海、物見の台。楽園じゃあ!

 

【ロキ・ファミリア】の本拠地『黄昏の館』では『遠征』から帰還した冒険者達と、留守を任された冒険者達が会話を弾ませている最中であった。『遠征』後、一夜明けた朝。後片付けやら何やでゴタゴタする中、ロキの「まずは【ステイタス】を更新やな!」という一声によって、三十名以上の団員が主神の元へと(おもむい)ていた。大派閥なだけあって中々の人数がロキに【ステイタス】更新を迫り、骨が折れる作業ではあったが、彼女自身も可愛い眷族達の成長を楽しみにしているのか、わくわくしながら機敏かつ効率よく捌いていった。

 

そして。

 

「しゃあっ!!」

「アイズに追い付いたー!!」

 

ベートやティオナ達の叫び声が館中に響き渡った。未到達領域での死闘を経て、彼等はLv.5からLv.6へと器を昇華させたのだ。ロキから受け取った【ステイタス】を写した羊皮紙を両手にティオナははしゃぎ、珍しくベートも他の団員達の目もはばからずに吠え、喜び一色の様子だ。同様にティオネもLv.6へと至り、期限の良さを滲ませる中、昇格(ランクアップ)をしたのかと彼女に尋ねられたアキとナルヴィは、軽く肩を竦めて否の意を表した。そんな中アイズは、『穢れた精霊』を初めとした深層域での戦闘から得た経験値(エクセリア)が、確実に【ステイタス】を上昇させていたことに対して、満足そうに頷いている。

 

一方、遅れて更新を行っていたレフィーヤはと言うと。

 

「えっ?」

「おめでと!自分もLv.4になれるでー!!」

「や、やったぁ!」

 

にこにこと笑うロキの顔を数秒見つめた後、着替えようと服に手をかけていたレフィーヤは、喜びの声を上げた。手に持った服で隠しているだけで未だ裸な上半身を揺らしながら、今にも飛び跳ねようとしてしまう。

 

「(どうですかっ、見ましたか!!)」

 

ここにはいない白髪の少年にライバル心を勝手に燃やしている彼女は、ここぞとばかりに胸を張った。

 

「それでなぁ、レフィーヤーーー」

 

ややあって、ロキは自分の胸の内をレフィーヤに明かした。確かにLv.4へ昇格(ランクアップ)することはできる、が。今の【ステイタス】ではやや勿体ない。Lv.2からLv.3になった時、彼女の秀でた魔力の能力値(アビリティ)はS。対して今、Lv.3の最終値はBである。かつてSまで伸ばしたことがあるために、今回もSまで能力値(アビリティ)を上げきってから、Lv.4になってはどうか、そうロキは提案した。

 

「たかが数十、数百かもしれん。『極める』ってことの労力を考えれば、さっさとLv.4になった方がええ」

 

ただ、と続けてロキは行儀悪く机の上に腰掛けた。

 

「その取りこぼしが、レフィーヤの才能を全て引き出せん原因になるのは、流石に勿体ないなぁ」

 

能力値(アビリティ)はランクアップをする度に、一度リセットされる。しかし、それは()()()()()()であり、実際には前Lv.の能力値(アビリティ)が次Lv.へと引き継がれている。勿論、ここに冒険者達の技術である『技と駆け引き』などと言った要素も加わって、初めてその者の実力を表すが。昇格(ランクアップ)毎に上乗せされる能力値(アビリティ)に余白を残したまま、次のステージ(Lv.)へ移行することは、ロキの言う通り勿体ないことであると言えた。

 

「勿論、これはウチやフィン達のワガママや。決めるのはレフィーヤ、自分の好きにしたらええ。どうする?」

 

思考の間を置き、ややあって、レフィーヤは頷く。

 

「もう少し、今のままで頑張ってみます」

 

リヴェリアの後釜として期待されているプレッシャーは確かにある。それでも、純粋にその期待に応えたいと思っている。都市最強魔導士を継ぎ、アイズ達の背中を支えるためには、できることを全てこなしても尚足りないかもしれない。だかこそ、今できる精一杯を。1歩ずつ着実に、憧憬に追いつきたい。

 

「ありがとな、レフィーヤ」

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またLv.7はお預けか」

 

団員達の【ステイタス】更新がある程度澄んだ後。【ファミリア】内で最後に更新を行った首脳陣の中で、リヴェリアが腕を組みながら呟いた。

 

「ここまで来ると、オッタル(Lv.7)に話を聞いてみたくなるなぁ」

「世界最高のLv.7は未だ2人のまま、だのう.....」

「精進あるのみ、ってことですかね」

 

リヴェリアの他にロキの部屋には苦笑するフィン、溜息をつくガレス、頬を指でかくミナトが残っていた。彼等もみなLv.6を維持だ。中庭でたむろする団員達を窓から見下ろしながら、首脳陣達もこの時ばかりは歯がゆさを浮かばせていた。

 

「.....まあ、フィン達は皆を導く側やしなぁ」

 

チラリと金髪の青年に一瞬何か言いたげな視線を送ったロキは、頭の後ろで手を組んだ。

 

その後、【ヘファイストス・ファミリア】へ讓渡するドロップアイテム、今回かかった費用、ギルドへの報告など、『遠征』の後始末について話を纏め、その場は解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ステイタス】更新が終わると、団員達はそのまま街へと繰り出した。

 

小人族(パルゥム)の首領はギルドへの『遠征』終了報告を。冴えないヒューマンの青年や猫人(キャット・ピープル)の少女達はドロップアイテムやダンジョン産鉱物の換金を。ドワーフの大戦士は『遠征』に協力した派閥へ報酬の受け渡しを。王族(ハイエルフ)の魔導士は『魔法石』が破損した杖の修理の依頼を。アマゾネスの姉妹や金色の少女達は医療派閥へ『遠征』前に貰ったアイテムの礼を。

 

そして。

 

「ただいま、エイナ」

「おかえりなさい、ミナト君」

 

金髪の青年とハーフエルフの少女は再開の祝福を。

 

ささやかな一時ではあったが、それぞれが『遠征』から無事帰還したことを実感しながら、束の間の安らぎに身を委ねるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃあ、皆『遠征』お疲れちゃん。乾杯!!」

 

『遠征』の後処理が落ち着いた夕方頃。【ロキ・ファミリア】の団員達は『豊穣の女主人』にて、酒好きの主神先導のもと打ち上げを行っていた。

 

「あ、このお肉美味し〜!」

「.....私も」

「ったく、落ち着きなさいよね.....あ、そこのやつ(料理)おかわりお願い」

「皆さん、す、凄い食べっぷりですね.....」

「これも美味しいよ、食べるかい?」

「あ、頂きます!」

「しまった、ここの勘定まで計算には入れてなかったぞ.....」

「祝いの席くらいはいいじゃないか。いざとなったらロキのヘソクリで何とかするさ」

「しゃーないなー!今日はうちの奢りや!!」

 

両手で豪快に焼かれた骨付き肉を持ち、がぶり、と噛み付くティオナに便乗して小さな口に肉料理を運ぶアイズ。妹を注意しつつどんどん料理を平らげていくティオネ。2人のアマゾネスが繰り広げる大食劇に圧倒されるレフィーヤに、採れたての野菜で彩り良く飾られたサラダを進めるミナト。その光景を横目に大ジョッキをあおるガレスと笑みを浮かべるフィン。既に酔いが回り顔を赤くしたロキからも景気のいい声が上がる。

 

『遠征』帰還を祝う宴会に、周囲にいる客達も注目しており、見目麗しいウェイトレス嬢達は次々と飛び込んでくる注文に目を回していた。

 

「そや、明日は都市の外に行くからなー!」

 

(やぶ)から棒に告げたロキに、彼女の周囲にいた物はみな不審そうな視線を向ける。そんな眷族達を前にロキは顔を赤くしたまま、「休みもかねて懸案旅行や!」とにんまりと笑った。

 

「旅行かー!楽しそうじゃん!」

「真に受けるな、馬鹿ゾネス」

「何だとー!?」

 

ベートの指摘にティオナが怒鳴る中、アイズ達も彼の言う通りロキの言葉を鵜呑(うの)みにはしなかった。気まぐれな女神が突拍子もなく何かを言い出すことは今に始まったことではないが、大抵の場合、何かと振り回されるハメになる。一体、今度は何を企んでいるんだと団員達が身構える中で、ミナトが神意を理解したかのように、笑いながら尋ねた。

 

「それで、どこに行くのかな?」

 

青年の問に口を吊り上げたロキは、端的に告げる。

 

「詳しい話はホームに帰ってするけどな、行先はズバリ、メレンや!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メレンとは、オラリオから僅か3kmほど離れた場所に位置する港町だ。広大な海路に通じる汽水湖には、数え切れない異国の商船が入港し、連日多くの貿易品を、このメレンに輸送しに来ている。港町なだけあって海鮮品が露店に並び、アイズ達は店の前に出品されている巨体魚に目を輝かせていた。

 

「ほれ、そんなキョロキョロしてないで進むで〜。海が、湖が、ムフフフフ.....理想郷(アヴァロン)が待ってるんや!!」

「何を言ってるんだい......」

 

アイズ達の中でも一際はしゃいで先頭をずいずいと行くロキに、彼女の隣でミナトが溜息を吐く。心底楽しそうに通りを進んでいく主神の背中を見つめながら、一行はメレンまで足を運んだ経緯を。昨晩ロキの口から告げられた内容を思い出していた。

 

ダンジョンのもう一つの出入り口を探す。簡潔に纏めるとこういうことであり、ロキ、ディオニュソス、ヘルメスの三柱が導き出した推測を確かめるためにメレン(港町)までやって来たのだ。食人花と似たような特徴を持ったモンスターの目撃情報も上がってるとのことであり、真偽を確かめる動悸に足りうる材料は十二分に揃っていた。

 

「メレンに行くのは決定やけど、都市を空ける訳にも行かんし、ギルドにも【ファミリア】の半分は残すことを条件にされたし?ちゅーことで、()()()()()()()男組はお留守番なー」

『は?』

「うちとアイズたん達で、ちょっくらメレンにお泊まりしてくるわー」

「どういうことだ!?」

「あ、フィン。一応ディオニュソス達の動向も見張っとって。こそこそ動き回られると面倒やし」

「無視するんじゃねぇぇっっ!?」

 

勝手に話を進めるロキに、怒りを爆発させるベートを他の男性団員達が必死に押さえる中、ミナトと女性団員達はげんなりとし、首脳陣達は深い溜息を吐いた。結局、主神の一存により、女性陣にミナトを加えた泣く子も黙る美少女軍団による、メレン調査が決定されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で俺だけこっち(メレン)に.....」

「いいやん別にー。ハーレムやでハーレム!」

 

見目麗しいエルフや可憐なヒューマンに猫人(キャット・ピープル)と、女好きのロキが選び抜いただけあって容姿に優れた女性団員達が周囲の注目を集める中、ただ一人何故か男であるミナトは珍しく億劫さを隠すことなく己の主神の横に並んでいた。既に疲れた様子の青年の肩を叩きながら笑い上げるロキ。そんな2人のやり取りを後ろから眺めていた団員達は、今もイタズラ好きな女神によって(いじ)られるミナトに同情の視線を送った。

 

「あっちやー、みんな行くでー!」

その声に従い船着き場を南下して行く一行。大型の貨物船を複数通り過ぎることしばらく、ロキはようやく目的の神物を見つけ、早速声をかけた。

 

「おーい、ニョルズー!」

「ん?お、ロキか!」

 

ロキの声に振り返ったのは、美丈夫の男神だ。長い茶髪を頭の後ろで纏め、浮かぶ笑顔には人の良さが滲み出ている。身長はミナトを超える高さであり、海の男らしく上着を脱いだ上半身は引き締まっていてたくましい。

 

「昨日ぶりみたいな感じがするけど、会うのなんていつぶりだ?数年、数十年?」

「うちらの尺度だと数年なんてあっという間やからなぁ」

「それで、一体どうしたんだ?こんな大所帯で押し寄せてきて。それに、その担いでる荷物は何なんだ.....」

 

彼の派閥【ニョルズ・ファミリア】の漁師達に囲まれながら、ニョルズはロキが背負うバックパックに怪訝そうに瞳を向けた。そこでロキは、にやり、と不敵に笑う。

 

「実はうちら、調べ物ついでに旅行に来たんや。騎士(ナイト)様もおるし、安心と安全の『息抜き』をしようと思ってな〜」

 

横に控える青年の腕に抱き着きながら言うロキに、ニョルズは「程々にしてやれよ」と苦笑混じりに忠告する。その後、この辺りに詳しいニョルズから、誰も知らないような穴場スポットを聞き出したロキのテンションがうなぎ登りとなり、アイズ達の嫌な予感も最高潮に達しようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっごーい!」

「こんな浜もあったのね......」

「綺麗.....」

 

 

ニョルズの情報を元にやって来たのは、湖岸沿いに形成された入り江だ。多くの木々や岩石に囲まれており、知る人ぞ知る、まさに穴場のビーチにアイズ達は驚嘆をあらわにしていた。視界に広がる砂浜にさざ波が静かに音を立てて寄せてくる。幻想的な光景に、アイズや他の団員達も笑みこぼしていた。

 

「ムフフフフ.....さあ皆、これを着るんやー!!」

 

時は満ちたとばかりにロキは変なポーズを決め、雄叫びを放ち、ミナトに預けていたバックパックの中身をアイズ達の眼前にぶちまけた。

 

中から姿をあらわしたのは、他でもない『水着』である。

 

「これが本命だったりするのか......」

 

主神の強制命令によって薄い布に着替えさせられた女性団員達から、やや距離を置いて立ち尽くす金髪の青年はまさか、と。主神の目的が実は目の前で広がる光景(水着)だったのではないかと、鼻息を荒くする駄女神に呆れた視線を送っている。彼自身もロキの命令によって、瞳と同色の短パンに、白いパーカー型の水着を着させられていた。シンプルだが、逆に素材の良さを引き出すことに成功した主神の思惑に、この時ばかりは、ミナトの水着姿を目にした団員達は揃って、親指をビシッと突き上げた。

 

「んほぉーッ!太陽に照りつけられる眩しい肢体、たまらん!ここが楽園だったのかッ!?」

 

オヤジ臭い女神の興奮は絶頂の最中であった。湖を調査すると、もっともらしいことを言って彼女達を言いくるめたが、下心がこれでもかと溢れ出ている。

 

「人数分の水着を、わざわざ持たせるためにミナトを連れて来たのですか.....!」

 

団員達の瑞々しい脚線美を血走った目で凝視しながら、力強く握りこぶしを空に突き上げるロキ。全身から幸福のオーラを発出する己の主神を、長い耳の先端まで赤く染め上げ、ワンピース型の水着を身につけたアリシアが睨みつける。

 

「はっ!?うちの可愛いリヴェリアはどこやーッ!?」

「あそこの岩陰で水着を持ったまま固まってますが.....」

「しゃーない!こうなったらうちがリヴェリアを着替えさせたるー!!」

「やめろ!」

「待ちなさい!」

「リヴェリア様を穢すな!」

 

岩陰に全力で疾走するアホ女神をエルフの団員達が全力で止めにかかった。が、アリシア達の密着する柔肌に満足したのか、ぐへへ、と嫌らしい笑みを漏らすロキは、自分の思い描いた通りの状況になったことにガッツポーズを心中で掲げた。

 

「.....これ、恥ずかしい.....」

 

他の者とは違い、下半身に長いパレオが巻かれたワンピースの水着に激しい抵抗を覚えるアイズは、羞恥心に悶えるように剥き出しの二の腕をさすっていた。

 

「ア、アイズさんの、水着姿.....!?」

「やっぱり綺麗!」

「羨ましいです.....!」

「いいなー」

 

遅れて着替え終えた金髪の少女の存在に、レフィーヤ達も気付く。形のいい双丘や、きめ細やかな肌やほっそりとした足に感嘆の息を漏らし、レフィーヤだけでなく他の団員も好き勝手に言う始末だった。頬の赤みが増すアイズは、普段は余り気にしていない少女達の視線に、無性に俯きたくなった。

 

「アイズさん!良ければ一緒に遊びませんか?」

「.....えっと」

 

先に湖で水浴を楽しんでいたレフィーヤが、楽しげな表情で誘ってくる。金色の瞳が見つめる先では、ティオナが気持ちよさそうに泳いでいる。水深は、そこそこあるようだ。

 

「わ、私は...いいかな.....」

「?」

「何や、まだカナヅチ直っとらんのかー?」

 

そわそわしているアイズに、レフィーヤが不思議そうに首を傾げていると、近づいてきたロキが、ずばり。核心をついてきた。

 

「えっ.....?」

「......」

「もしかして、お、泳げないんですか!?」

「確かに、ダンジョンでも水辺に近寄ってなかったわね」

「水中に落ちそうになっても、何故かミナトが抱っこしたり、『魔法()』で離脱してたもんね.....」

 

ティオネ達からも視線を浴び、声を詰まらせたアイズは、観念したように告白した。

 

「実は.....泳ごうとすると、沈んじゃって.....」

『は?』

 

【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン。16歳にして、未だカナヅチの少女。来る日も来る日もダンジョンに明け暮れていた生活を送ってきたせいか知らないが、割と笑えない代償を払っていた。

 

「あまりアイズを困らせないであげて」

「あ、ミナト」

「でも、今の今まで知らなかったし、ねぇ?」

 

これでもかというほど挙動不審になるアイズを見かねたのか、兄心をくすぐられたミナトが彼女のフォローをしに来た。捨て猫を拾いに来た飼い主に縋るように、青年の背後に隠れる金髪の少女。

 

「せっかくだし、泳げるように練習してみようよ!」

「だってさ、アイズ」

「..........うん」

 

自分のために力を貸してくれようとしている仲間にこれまでにない申し訳無さを覚えつつ、アイズはゆっくりと頷いた。差し伸べられたミナトの手を取りつつ、そのまま2人で湖に移動する。水底を後ろ向きに歩くミナトと両手を繋ぎ、横からティオナに支えてもらう。決して水面に顔を付けず、細い両足をばしゃばしゃと動かしながら、懸命に水への抵抗を見せつけた。

 

「力が入りすぎてるよ。そうそう、いい感じ。その調子だ」

「ほ、本当.....?」

「ああ、一回離してみようか?」

「.....う、うん」

「いくよ」

「〜〜〜〜〜っっ!?」

 

覚悟を決めた少女の手をミナトが離した瞬間、階層主に囲まれた兎のようにパニックに陥るアイズ。ぼこぼこっ、と大量の気泡を水面に立ち上らせながら虚しく沈んでいく。混乱する少女は必死に手を伸ばし、ミナトの体に何とかしがみつくことに成功した。憧憬の腰に抱き着き、ぶるぶると震えている。

 

「まだ少し早かったかな.....」

 

涙を滲ませた瞳で上目遣いをしてくるアイズの頭を優しく撫でるミナト。その一方、普段の凛々しい彼女の様子とのギャップに悶えるティオナ達。

 

「可愛い」、「可愛い」、「可愛いですっ」、「可愛いわね」、「アイズたんマジ萌え〜!!」。

 

団員達が声を揃える中、レフィーヤだけはアイズに抱き着かれるミナトを羨ましそうに見つめるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

澄み渡った青空から陽射しが都市を照りつけている。太陽の真下では多くの人々が溢れかえっており、賑やかな騒音を奏でている、そんな中。

 

「ママ〜、お鳥さん達だ〜!!」

「あら本当。良く見つけられたわね」

 

猫人(キャット・ピープル)の親子が見つめる視線の先では、数匹の鳥がオラリオの頭上で羽ばたいていた。目を凝らして見なければ視認できない程上空を飛遊する群れは、静かに世界の中心を見下ろしている。ダンジョン内でない地上で、鳥が飛んでいることなど目新しいことでは無く、見慣れた光景に街行く人達は大して気にもしていない。

 

だが。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

都市を脅かす影は誰にも気付かれることなく、()()()()()()から、エルフやドワーフ、多種多様な種族が互いに笑みを浮かべ合う光景を眺める。金色の長髪に隠された隻眼で何かを探すように視線を張り巡らせ、()()()の入った外套を(なび)かせていた。

 

 




最初はやっぱりお前や!
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