黄色い閃光inダンジョン   作:いちごぎゅーにゃー

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オラトリアの新刊を読んで久しぶりにモチベが上がりましたので軽いお話を。




閑話休題 蛞蝓姫と蝦蟇仙人

今でも夢に見ることがある。

 

 

満点の青空。風に揺れる木々。()を一望できる程の視界のいい大きな練習場。

 

小さな子供から大人まで老若男女問わず自身の力を向上させ、そして身に付けたモノを試す場所において今日も平和な声が響き渡っていた。

 

 

「こぉんのエロ助がぁぁ!!」

 

「ぶべらっ!?」

 

 

平和な声が響き渡っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年で8歳になる少年ナミカゼ・ミナト。

 

「ははは....」

 

 

彼は今まさに彼自身の師が黄金色の髪を背中あたりで結んだ妙齢の女性の拳によって地面に叩きつけられている場面を目撃しているところであった。

 

 

「まったく、ちょーっとばかし女湯を遠くから覗いていただけで大袈裟なものだのぅ」

 

 

特徴的な長い白髪を揺らしながらゆっくりと立ち上がる少年の師、自来也(・・・)は己の行動に対して反省をしている素振りを一切含まない様子でボヤく。

 

自来也はその性格と言動から、彼のことを良く知っている者からは今回のような仕打ちを受ける機会がかなり多い。

 

暇さえあれば欲を満たすために身に付けた隠形術を駆使して今回のように女湯を覗いたり、酒の席では後先考えず金を使っては自分の好みの女を侍らして豪遊したり、挙句の果てには少し考えれば分かるようなハニートラップに簡単に引っかかったりする。

 

そんなどうしようも無いエロおやじである自来也だが、その実力は折り紙付きで彼自身の能力も目を見張るものがあるが、ミナトのような才に溢れる少年少女達に対する指導力は身近な者達からは評価されている。

 

 

「お主も大きくなったらワシのように素直さを忘れん大人になるんだぞ?」

 

 

「先生....」

 

 

実力はある。

 

だが、その言動は10歳にも満たない幼い少年からしても決して褒められたものではないことが分かるため何とも言えない気持ちになってしまうのは仕方の無いことだろう。

 

少年自身も今のようなやり取り(お仕置される師)を何度も目撃してきたため、慣れた光景ではあるが尊敬している人物が知人によって折檻される光景を目にした後に少年の将来に暗雲をかけるような発言は如何なものかと感じさせるだけの謎の説得力がある。

 

 

「馬鹿なことを言ってないでさっさと修行を付けてあげな!」

 

 

「!」

 

 

まさに鶴の一声とはこのような発言なのかもしれない。

 

今しがた自来也を沈めた拳を振り上げる素振りを見せる美女。彼女は自来也と同じ世代を生きる人物であり、かつては自来也と他1人を含めた三人一組(スリーマンセル)で数々の功績を残してきた。

 

そんな彼女の名は「千手綱手」。

 

その血筋と優れた容姿から『綱手姫』と敬称されることの多い綱手は昔から自来也の暴走を力づくで止める役割を担っていたが、最近ではそれぞれが弟子を持つ立場となり一緒に行動する機会も減っている。

 

しかし今日のように顔を合わせる機会は何かとあるため、その交友関係は良好なまま保ち続けていることが見てわかる。

 

 

「先生。今日は影分身(・・・)について教えて頂けるんですよね?」

 

「むふふふ...良いかミナトよ。【影分身の術】とは通常の分身とは違い実態(・・)を持つもう1人の自分を生み出す高等忍術のことを指す!!」

 

 

「先日もそのように仰っていたことを覚えています」

 

 

【影分身の術】

 

今は亡き二代目火影が編み出した高等忍術。

 

もう1人の自分自身を作り出すことで戦闘、索敵、斥候など術者に多岐にわたる選択肢を与える忍術である。通常の分身とは違い術を解いた後には影分身が経験したことが術者本人に還元されるこの術の主な用途としては、本来は行けないような危険度の高い場所に作り出した影分身を送り込み情報収集をさせることを目的とされている。

 

もちろん戦闘時に用いれば数的有利な状況を作り出すことも可能であり、あらゆる場面で用いられる。

 

 

「ただし、この術は通常の分身の術に比べて多くの精神力(マインド)を消費するため使う場面を見極める必要があるから気をつけるようにのぅ」

 

 

『影分身』を作り出す際には術者本人の精神力(マインド)を分割する必要があるため、当然必要とされる精神力(マインド)も多い。

 

通常の分身と比べて遥かに優れている反面、リスクもある。

 

 

「私らでも影分身は滅多に使わないからねぇ。ミナトも気をつけな」

 

「(こくり)」

 

「それじゃあさっそく試してみるかのぉ!!」

 

 

便利すぎる裏にあるリスクを理解した少年を見て満足した自来也は指で十字を結ぶように印を結び、見せつけるように声を高々に張り上げた。

 

 

「【影分身の術】!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか一発で成功するとはのぅ....」

 

「まったく、毎度毎度あの子の才能には驚かされる」

 

 

場面は代わり里の街並みにひっそりと構える居酒屋の中で自来也と綱手は、先程の修行の場面を思い出すように酒を嗜みながら呆れるようにボヤく。

 

自来也が見本を見せた直後に淀みの無い動作で印を結んだミナトは自身と何ら違いのない分身を生み出した。

 

通常の【分身の術】とは求められる難易度が別格である【影分身の術】は一定水準に達した者でも扱うことが難しい術でもある。

 

修行を付ける度にメキメキと成果を見せ成長していくミナトは傍から見れば誰もが才能に溢れていると賞賛するほどである。もちろん自来也自身も出来のいい弟子が可愛くて仕方無いのだが、今回は弟子の手こずる様子が見たいという打算もあって【影分身の術】を教えたのだが、結果は弟子に師が才能を見せつけられるという普段と何ら代わり映えの無い時間を過ごすことになった。

 

 

「ミナトには才能に溺れず、ひたむきに修行に取り組める精神力がある。このまま順当に成長すれば10年後にはワシらに届きうるかもしれん」

 

 

誰よりも近くで見てきたからこそミナトの中に眠る可能性を理解している。

 

自来也と綱手は里の中でも有数の実力者。彼らの力は世界の中心でもある『迷宮都市オラリオ』の第1級冒険者達をも凌ぐ。

 

そんな彼らだからこそミナトの持つ才能を正しく理解することができ、正しく導くこともできる。

 

 

「『口寄せ』も教えてもいいかもねぇ。お前(自来也)はまだ早いと言うかも知れないが、あの子には『時空間忍術』の適性がある」

 

「いつの間に調べていたのかは聞かないでおくが、それは本当なのか...?」

 

 

綱手は以前に肉体活性の修行をミナトに付けたついでに彼の術に対する適性を調べていた。

 

どの術が肉体に適しているのかを調べることは今後修行の方針にも関わると判断した彼女は、ミナトの師である自来也に黙ったまま勝手に調べた。ミナトには『時空間忍術』の高い適性があると分かった際には表情こそ崩さなかったが内心ではかなり驚いており、その聡明さと才能からかつての『二代目火影』を想起させられたのだった。

 

 

「大叔父様のように【飛雷神の術】を使えるようになるかもねぇ」

 

「ありえるかもしれんのぅ」

 

 

ミナトが持つ才能は留まることを知らず常にその存在感を放ち続けている。

 

のちに『時空間忍術』の最高峰とされる【飛雷神の術】を今日【影分身の術】を見事身に付けた少年が遠い異国の地で存分に活用し、その戦闘スタイルに合わせた二つ名を付けられるのだが、まだそれは先の話。

 

木ノ葉が舞い続ける里において2人の傑物はひとりの少年の話に花を咲かせながら酒の場を楽しむのであった。




お久しぶりです。

マイペースに書いて行きますが、頻度などはあまり期待しないでください。

新刊を読んで一時的にモチベが上がっただけですので、、、笑

P.S.皆様誤字脱字報告ありがとうございます。
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