黄色い閃光inダンジョン   作:いちごぎゅーにゃー

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日間ランキングの21位に掲載して頂きました。

ただの気まぐれで始めた今作ですが、読んでくださっている皆さんのおかげで続けることが出来ています。

これからも不定期ですが、頑張ります。


行きたいようにいけ、やりたいようにやれ、愛したいもの愛せ

「エイナさぁあああああああんっ!!!」

「ん?」

 

ダンジョンの運営管理をする『ギルド』の受付嬢、エイナ・チュールは片手に持った仕事用の冊子から顔を上げた。ほっそりと尖った耳に澄んだ緑色の瞳。セミロングのブラウンの髪は光沢に溢れている。美しいその容姿はエルフのように完璧に冴え渡っている訳ではなく、どこか柔らかい風貌。スレンダーな肢体はギルドの制服を綺麗に着こなしていた。その容姿と親しみやすい性格から冒険者に評判の彼女は、ヒューマンとエルフの間に生まれたハーフエルフである。少しばかり暇を持て余していたエイナは、自分の名を呼ぶ声の主をすぐに察する。

 

「(今日も無事だったんだ...)」

 

半月前。深紅(ルベライト)の瞳を大きく輝かせながら、少年はギルドで手続きを行った。自分がダンジョン攻略のアドバイザーとして監督することになった少年の年は14。年齢、種族問わず誰でもなれる冒険者であるが、その職業柄、犠牲者の数は多い。元々面倒見のいいエイナは、まだ年端もいかない子供である少年が、わざわざ危険地帯へ(おもむ)くのにいい顔はできなかった。

 

「(()が一緒に行ってくれたら安心なのになぁ)」

 

自分が担当している1人の冒険者を思い浮かべる。百戦錬磨の彼ならば、少年を上手く導き、間違っても死なせるなんて事は犯さないだろう。まあ、【ファミリア】が違うことに加え、彼と少年とでは余りに釣り合わない組み合わせだ。(はた)から見れば、獅子の後ろで兎が隠れている様にしか見えない。

 

「ふふっ」

 

ありえない光景を想像し、少しばかり笑みを作る。そんなエイナの様子を目にした1人の男性冒険者が、彼女が作り出す雰囲気にあてられて顔を赤く染めた。

 

 

自分が担当しただけあってその身を案じているエイナは、少年。ベル・クラネルの安否を確認して頬を緩ませる。制服の襟を正し、自らも声をかけるべく声の方向に振り向くと、

 

「エイナさぁあああああん!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁあああ?!」

 

全身をドス黒い血で染めきった少年の姿が、視界に飛び込んできた。

 

「アイズ・ヴァレンシュタインさんの事について教えてくださああああああああいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのねぇ、ベル君」

「はい....」

「返り血を浴びたならシャワーくらい浴びてきなさいよ....」

「すいません....」

 

体を洗ってさっぱりした少年の前で、エイナはこれみよがしにため息を着く。2人がいるのはギルド本部のロビーに設けられた小さな一室。互いに椅子につき、テーブルを挟んで向き合っている。

 

「あんな格好のままダンジョンから街を突っ切って来ちゃうなんて、私ちょっと君の神経を疑っちゃうなぁ」

「そ、そんなぁ」

 

美人の彼女にそんなことを言われてしまい、心が(えぐ)られる。涙が浮かび上がってしまいそうだ。エイナは苦笑し少年の鼻をちょんと指で押さえると、「今度は気をつけるんだよ?」と微笑んだ。ぶんぶんぶんと、大袈裟にベルは首を縦に振る。

 

「えっと...アイズ・ヴァレンシュタイン氏の情報だったっけ?どうしてまた?」

「えっと、それは....」

 

真っ赤になりながら先程あった一部始終を語った。話していくうちに、向かい合う彼女の瞳から光が無くなっていくのは気のせいだろうか。

 

「どうして君は私の言いつけを守らないの!ただでさえ1人(ソロ)でダンジョンに潜ってるんだから。不用意に下層へ言っちゃダメ!冒険なんてしちゃいけないっていつも言ってるでしょ!?」

「は、はいぃ....」

「君はまだ初心者(ルーキー)なんだからね!?なんで彼みたいに慎重に攻略してくれないかなぁ...」

「えっと...誰のことでしょう?」

 

少年の不用心さに腹を立て、感情を表す彼女が口にした「彼」が気になり、ベルがおずおずと尋ねる。

 

「えっ...」

「エイナさん?」

「(私、声に出してた!?)」

 

ベルの言葉で我に返り、自分の失態に気づく。無意識に口に出していたこと、それを年下の男の子の前でやってしまったこと。すぐにエイナの顔が熱病にかかったみたいに赤くなる。

 

「なっ、なんでもないよ!気にしないでっ!?」

「でも...」

「き、に、し、な、い、で!!」

「はっ、はい!?」

 

結果、彼女の圧に負けたベルが折れ、エイナは無理やり話を元に戻す。

 

「それで、ヴァレンシュタイン氏の情報ね?」

「はい!」

「う〜ん、ギルドとしては冒険者の情報を漏らすのはご法度(はっと)なんだけど...」

 

「教えられるのは(おおやけ)になっていることくらいだよ?」と前置きをしてエイナは語り始めた。本名、アイズ・ヴァレンシュタイン。【ロキ・ファミリア】の中核を担う女性冒険者。繰り出す剣技の凄まじさからついた二つ名は、【剣姫】。女神にも匹敵する美貌につられ、下心を丸出しに近づいてくる異性はみな玉砕されているとか。

 

「え〜と、他に何があったかなぁ。あの容姿であの強さだから、話題は尽きないんだよね」

「その、趣味とか好きな食べ物とか、情報を...」

 

顔を熱くしながら尋ねる少年を見て、エイナは目を2、3度。ぱちくりと瞬かせた。

 

「もしかしてベル君、ヴァレンシュタイン氏のことを好きになっちゃったの?」

「いや、その....、はぃ....」

「あはは、まあ、仕方ないのかな。同性の私でも彼女には思わず見惚れちゃうし」

 

目の前のエイナもアイズに負けずとも劣らない美人であり、それでいて意外と人懐っこく親しみやすいものだから、ギルド職員は硬派な人である、そんなイメージとのギャップでやられる人は多い。担当してもらっているベルも、初めの頃はエイナの美貌にすっかり(とりこ)にされ、浮かれていた口だ。

 

「でも、お付き合いしている人がいる。なんて事は聞いたことが無いかなー」

 

ベルは思いっきりガッツポーズをとる。

 

「趣味とかは流石に知らないかな...って、ダメダメ!恋愛相談は職務に関係ないって!」

「そ、そこをなんとか!」

「だーめ!ほら、もう用事が無いなら、帰った帰った!」

 

椅子から立ち上がり、少年を追い出すように部屋の退出を(うなが)すエイナ。

 

「エイナさんのいけず....」

「あのねぇ...君は冒険者になったんだよ?もっと気にしなきゃいけない事がたくさんあるでしょう?」

「うっ.....」

 

理解はしている。庇護してくれる存在がいないベルは、自分を救ってくれた主神の恩に報いるため、その小さな体を使ってダンジョンに挑み続けるしかない。お金も節約する必要がある。苦楽を共にする『神様』になるべく負担をかけないよう、自分がしっかりしなくてはならない。アイズのことを考える余裕は、実際彼には無いのだろう。

 

「君は神ロキ以外の神様から恩恵を授かったんでしょう?【ロキ・ファミリア】で幹部クラスのヴァレンシュタイン氏にお近づきになるのは、私は難しいと思う」

「.....はい」

「諦めろ、なんて言いたくはないけど。現実はしっかりと見据えておかなきゃ。じゃないとベル君のためにもならない」

 

少なくとも今は冒険者として全力で頑張れ。そういう意味だろう。若干へこむベルに困った顔をしながら、エイナは()()()()()()()として、言葉を続けた。

 

「ベル君」

「何ですか....?」

「あのね、女性はやっぱり強くて頼りがいのある男性に魅力を感じるから、えっと、めげずに頑張っていれば、その、ね?」

「......」

「ヴァレンシュタイン氏も、強くなったベル君になら振り向いてくれるかもよ?」

 

ギルド職員ではなく、1人の知人として励ましてくれていることに気づいたベルは、みるみる内に笑みを咲かせた。勢いよくその場から駆け出した後、すぐに振り返り、彼女に向かって叫ぶ。

 

「ありがとうございます、エイナさんっ。大好きー!!」

「....えぅ!?」

「じゃあ、またー!」

 

顔を真っ赤にさせたエイナを確認して、ベルは笑いながら街に走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わり、【ロキ・ファミリア】のホーム、「黄昏の館」

 

1度自室に戻り愛剣と防具を外したアイズは、ティオネ達に引き連れられ上層の浴室へ向かった。

 

「アイズの服ってさぁ、結構大胆だよね」

「着ないと死んでやるってロキが言うから....」

 

彼女の着る服は、背中の部分が大きく見開いており、瑞々しい肌が丸見えだ。アイズの性格に似つかわしくない露出度の服に疑問を感じたティオナは、その返事だけで「そういうことねー」と納得した。

 

「レフィーヤ、早く脱ぎなさい。後がつかえるわよ」

「あ、はい...」

 

微塵も恥ずかしがらず裸になるティオネに対し、レフィーヤはゆっくり服を脱いでいく。この辺りの違いは、大胆さが売りのアマゾネスと、(つつし)みを重んじるエルフとの種族差から生まれるものだろう。

 

4人が入室した浴室。と言っても10人ほど入ればいっぱいになる室内は、ほぼシャワールームと言っていい。奥に湯船があるが、それも少人数用だ。

 

「アイズさぁ、ちょっと落ち込んでる?」

「....?」

「なーんか、50階層の時もそんな感じだったけど。ミノタウロスの群れを追いかけに行った後から尚更ーって感じ」

 

ティオナの指摘に内心で驚く。50階層で新種の女体型モンスターと戦った際に、ミナトとの差を見せつけられたこと。ベートには笑われたが、助けた相手に悲鳴を上げられ全力で逃走される珍事。このダブルパンチが、精神の幼いアイズを落ち込ませていた。

 

「レフィーヤの裏切り者ぉ...!」

 

そんなアイズの胸中よりも、目の前の育ってきている(裏切り者)レフィーヤの方が彼女にとっては重要なのか、ティオナが恨めし声を発した。

 

「ええ!?」

「無視しなさい。レフィーヤ」

「安心せぇティオナ!うちが揉み揉みして大きくしたるーっ!!」

 

ガラッと突如開かれた扉から、獣のような影が飛び出した。

 

「今日の晩御飯何かなー」

 

背後からの奇襲を難なく避け、足払いをかけるティオナ。目にも止まらぬ速さで足を刈られたアホ(ロキ)は、頭からタイル状の床に墜落した。

 

「う、腕を上げおったな、ティオナ...」

「じゃまー」

「なんやねんこの仕打ちっ!レフィーヤ慰めてぇぇぇぇ!?」

「え、まっ、きゃぁぁぁぁぁぁ!?」

 

慣れたようにアイズ達は退室する。後輩を生贄(いけにえ)にして。

 

 

 

 

「酷いですよぉ」

「ごめんごめん、あたし達もロキの相手するの面倒くさくてさ〜」

 

更衣室で着替えつつ、レフィーヤが零した恨み節にティオナが軽く答える。

 

こんな風景こそ彼女達【ロキ・ファミリア】の日常であり、子を愛するロキが時折暴走する。言葉ではうざいと言いつつも、実際、心の底から彼女(ロキ)を拒む者は1人としていない。家族同士の繋がり。それこそがティオナ達が所属する【ファミリア】最大の強みなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び場面が変わり、ギルド本部。

 

先の『遠征』で携帯していた武器等を自室に片付け、外出用の服に着替えたミナトは、ギルドの入口を通り、そのまま受付カウンターに向かっていた。

 

「おい、あれって....」

「【黄色い閃光】だよな?」

「確か、前にイシュタル・ファミリアとの『戦争遊戯(ウォーゲーム)』に1人だけで勝っちまったやつか!?」

「『遠征』から帰ってきてたのか....」

 

ギルド本部には冒険者を支援する様々なサービスがある。そのため、それ目的に来場する人は多く、毎日時間を問わず、ギルド内は大勢の冒険者で賑わっていた。

 

「....」

 

都市最大派閥として注目を浴びる事に慣れている彼は、気にした様子もなく足を進める。やがて1人の受付嬢の元へと辿(たど)り着いた。

 

「お久しぶりです、()()()()()()

「お久しぶりです。『遠征』からのご帰還、心から喜び申し上げます、()()()()()

 

声の行先はハーフエルフの女性。つい先程まで少年(ベル)と話していたエイナである。

 

「ナミカゼなんて、そんな他人行儀な...」

「君だって、私の下の名前を呼ばなかったくせに」

「...」

「...」

「ははっ」

「ふふっ」

 

先程までの硬い空気が嘘のように晴れる。そこにあるのは、知人同士が再会を喜ぶ光景だ。

 

「エイナがいつも通りで安心したよ」

「ミナト君こそ。今回は新階層を目指したんだから大変だったんでしょ?」

「うん、それについてはまた後日詳細を纏めて送るよ。うちの団長(フィン)が綺麗に纏めてくれる予定なんだ」

「了〜解。それで、ミナトくんはどんな用事でここ(ギルド)に来たの?」

 

お互いの身を案じ、言葉を交わしていると、エイナがそう問いかけた。

 

「....ん、用事が無いと会いにきちゃダメかな?」

「.....っ!もうっ!そういう言葉は軽々しく言っちゃダメって、いつも言ってるでしょ!?」

 

奇しくも先程の光景と今が重なる。ベルとミナトをそれぞれ違う理由で(しか)る彼女の顔は、先程ベルに見せたものとは違う意味で赤くなっている。

 

「ミナト君のそういう所が、女性を勘違いさせるんだよ!?」

「でも、俺は君に」

「い、い、ねっ!?」

「わ、分かりました....ははは...」

 

エイナの圧が彼を押さえつける。これまた先程(ベルの時)と似たような光景である。少年と彼、もしかしたら2人はどこか似ているのかもしれない。

 

受付カウンターから身を乗り出すように、叱りつけてくる彼女に苦笑しつつ、ミナトはエイナにある提案をする。

 

「今日はもう特にやることはないんだ。それで...」

「それで?」

 

彼の言葉に、コテンと首を横に傾ける。そんな仕草でもあざとく見えない彼女の容姿は、やはり整っている。

 

「君が良ければだけど、今夜一緒に食事を取らないかい?」

「.................えっ!?」

「君と2人きりで話がしたくてね」

 

そう言いつつ、真っ直ぐ碧色の瞳をこちらに向ける青年に困惑するエイナ。頬を軽く染めながらオロオロする彼女に対し畳み掛けるように言葉を続ける。「どうかな?」と。十数秒ほどフリーズ(機能停止)したハーフエルフの少女は、口元を手で隠すようにしながら

 

「え、えっと...う、うんっ!....あと1時間くらいで仕事が終わるから、それまで待っててもらっても良いなら....」

「もちろん。まだ予約の時間まで余裕あるから、大丈夫だよ」

 

「お、お店、決めてたんだ....」と、カウンターを挟んで向かい合う彼には聞こえない声で(つぶや)き、これまた彼に見られないように顔を伏せ、ほんの少し口元を緩めた。

 

「じゃあ、また後で迎えに来るよ」

「う、うん。ありがと...」

 

なんとか、消え入りそうな声音で返事をする。

 

「....おい」

「ああ...見たか、あのエイナちゃんの顔!?」

「あんな嬉しそうな笑顔見たことねぇぞ!」

「【黄色い閃光】と付き合ってるって噂は本当だったのかよ!?」

 

受付嬢の中でも人気の高いエイナには、毎日のように多くの男性冒険者達からデートの誘いが絶えない。彼女がどんなにしつこく誘われようが、それを丁寧に断ってきたことをよく知る冒険者達は、目の前の光景に驚愕する。しかもデート(食事)の誘いをしたのは、あの【黄色い閃光】。甘いマスクとその実力から、多くの女性に憧れを向けられるナミカゼ・ミナトである。よく見れば、ギルド本部内にいた女性冒険者達が、2人のやり取りを見て、羨ましそうに彼女へと視線を送ってるのが分かる。心なしかエイナと同じギルド職員数名からも同じ視線を感じた彼女は、気まずそうに、でも嬉しそうに手元に残ってた仕事に意識を戻したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静かな空間で食器と器具がぶつかる音が微かに鳴り響く。オラリオの外れにある個室専門の料理店。そこの一室で、西洋風の机に腰掛ながら、出てくる料理に舌づつみを打つミナトとエイナ。個室専門なだけあって他の客の声は聞こえてこない。元来、賑やか過ぎるのが苦手な2人には、静謐(せいひつ)な場所が似合っていた。料理を食べ、言葉を交わす2人の周りには、和やかな空気が流れている。

 

「こんな素敵なところに連れてきてくれてありがとう、ミナト君」

「どういたしまして。それに、君もこういう場所の方が性に合うだろう?」

「うん、酒場みたいに賑やかなのはちょっと...ね」

「ははっ、よく知ってるよ。昔君と行った時、目を回してたよね」

「あ、あれはっ!あの雰囲気に圧倒されたの!」

「ごめんごめん。分かってるから、怒らないで。ね?」

「もう...」

 

彼といると調子が崩される。普段誰にも見せないような自分を見られてしまう。いや、彼と一緒にいると嫌でも浮き立つ自分がいる。エイナが初めて担当した冒険者が、誰であろう他ならないミナトであり、以来5年近く彼と二人三脚で歩んできた。当時、『学区』からオラリオに来たばかりの彼女と、気性の優しいミナトは何かと話が合い、今日みたいに度々(たびたび)2人きりの機会を設けてきた。何年もミナトと過ごしていれば、嫌でも彼の人の良さを理解させられる。まるでエイナの心が読めているかのように、その場のその場で彼女が求めることをする。加え、常に自分(エイナ)を最優先に考えて行動してくれるため、知らず知らずのうちに彼女は彼に対して甘えてしまう。そんな彼に対してエイナは、元々の面倒みの良さと、人懐っこい性格を存分に発揮し、献身的にミナトのことを後ろから支える。彼自身、そんな彼女の姿勢にはとても助けられており、自分を支えてくれるエイナに、密かに恋心を抱いている。いつ想いを打ち明けるか、最近はもっぱらその事に悩まされているミナトであった。

 

 

「今日は聞きたいことがあるんだ」

「どんなこと?」

「うん。この間新しく担当することになった子がいるって言ってたでしょ?彼について少し教えてくれないかな」

「ベル君の....?どうしてまた」

「実は.....」

 

5階層での出来事を事細かく説明する。『ミノタウロス』を取り逃してしまったこと。そして、新米冒険者であったベルを危険に晒してしまったこと。一つ一つ、心の底から申し訳なさそうに、エイナに話した。

 

「そっか...ベル君の言ってた『ミノタウロス』は【ロキ・ファミリア】が....」

「謝って済む事じゃないって分かってる。でも、どうしても彼と、彼の『主神』に謝罪をしたくてね...」

異常事態(イレギュラー)なら、仕方ないよ....モンスターが逃げるなんて聞いたことないし」

「それでも彼を含め、上層にいた冒険者を危険な目に合わせたのは変わらない。俺が見た彼だけでも、どうか....」

 

ダンジョンの特異性によるものだから仕方ない。そう言って彼の気を軽くしようとするエイナだったが、ミナトの顔色は戻らない。

 

「わかった...」

「えっ?」

「ベル君のこと教えてあげる、そう言ってるのっ」

「...ありがとう、君にはいつも助けて貰ってばかりだな...」

 

ミナトの姿勢に負けたエイナは、ベルの所属ファミリア、本拠(ホーム)の場所、そして彼の主神について説明した。

 

「『ヘスティア』様って確か...」

「知ってるの?」

 

今しがた教えた少年の主神の名を、口にするミナトを不思議に思い、おずおずと尋ねる。

 

「ヘファイストス様が何度か口にしてたことがあってね、名前だけは聞いたことがあったんだ」

「そうだったんだ...」

「うん。これで彼に会いに行ける」

「優しくしてあげてね?」

「取って食ったりするわけじゃないんだから...安心して」

 

冗談を交えつつ会話を続ける2人は、窓から差し込む月光も相まって、とても綺麗だった。




エイナさん可愛ええわ

ほんま可愛ええ
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