アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜 作:うさトロ
「はぁ…はぁ…っ!」
白い透き通った髪をさげた1人の少女がほとんど裸の姿で夜の公国を駆ける。
「『失敗作』が逃げたぞ!探せ!」
「絶対に逃がすな!我々の機密が外に漏れる訳には行かない!」
おおよそどこかの研究員と言ったところだろうか。
武装した白衣の人間がその後を追うように走っている。
「はぁ…はぁ…!」
少女は衰弱していた。
もう走る気力もほとんど残ってない。
「どこに逃げた!」
「公国を出てはいないはず!必ずや見つけ出し捕獲しろ!」
「はぁ…はぁ…っ……はぁ…」
完全に疲弊した彼女はその場で倒れ込んでしまった。
そこには立派なソメイヨシノの桜がまるで彼女を護るように綺麗に咲いていた。
「ダメです!どこにも見当たりません!」
「くっ…、もう夜も遅い…、今日は撤収だ…。」
「はっ!」
桜に護られ彼女はなんとか追っ手から逃れられたようだ。
疲れきった少女はそのまま眠ってしまった。
その日の寝顔はどこか暖かいような、穏やかな寝顔をしていた。
夜も明け、公国の街は人だかりで賑やかになる。
「よし!今日もお仕事がんばろー!」
そう言って、金色の髪を2つくくりにした少女は鏡に写る自分に対して気合いを入れるように、自分に言い聞かせるようにそう叫んだ。
彼女の名は「ミカ」。
若くして公国の警備隊として活躍している。
「おはようございます!ん…?どうしたんですか皆さんこんな桜の木の下に集まって…?」
「あ、ミカさん、おはようございます」
「どうやら人が倒れてるみたいで…」
そう聞いたミカは人混みを掻き分け現場を見に行った。
そこには白い髪の少女が確かに桜の木の下で倒れていた。
それを見た彼女は咄嗟に白髪の少女に駆け寄り、
「大丈夫ですか!?何があったんですか!」
と叫び少女の意識を確認した。
「んっ…んん…」
その声に答えるように、少女は意識を取り戻した。
「よかった…!大丈夫ですか…?」
「っ!」
心配するミカの思いとは裏腹に、少女はミカを恐れ、威嚇するように睨みつけた。
ところがミカも決して引くことは無く、少女を救おうと必死だった。
そこでミカはあることに気づく。
(なんだろう…頭の上…うさぎの耳…?)
そう。少女の頭の上には確かにうさぎの耳のようなものがついていたのだ。
(もしかして…)
ミカは威嚇する少女に静かに歩み寄り、少女をそっと抱きしめた。
少女も初めは抵抗して暴れ回ろうとしたが、次第にミカに対し落ちつきをみせた。
ようやく少女を取り押さえることができたミカは、少女にこう問う。
「あなた…名前は…?」
「…?」
首を傾げる少女に対し、
「名前…、ないの?」
少女は頷いた。
「そっか、見て。綺麗な桜。」
そう言うと、1人と1匹はしばらく桜を眺めていた。
しばらくして、
「そうだ!あなたの名前は『シノ』!」
「『ソメイヨシノ』の『シノ』ね!」
「シ……ノ…?」
「そう!シノ!これからよろしくね!」
こうして、1人と1匹、改め、2人の物語が始まろうとしていた。
この物語はとある失敗作、「シノ」と公国警備隊の天才「ミカ」の2人による冒険の物語である。