アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜 作:うさトロ
シンシアとミーナを助けた2人は、彼女らの誘いで公国の城へと向かっていた。
向かいたい方向とは真反対となってしまったが、時間はあるので向かうことにした。
「着きました!ここですぅ!」
公国の城はとても大きく、立派な城門から漂う威圧感はいつ来ても緊張感を覚えさせられる。
「どうぞ。」
シンシアに言われ、シノとミカは城の中へと入っていった。
「おかえりなさい、シンシア、ミーナ、おや?後ろのおふたりは?」
シンシアやミーナと同じ服を着た、かなり威厳のあるような女性は穏やかに2人を迎え、シノとミカに目をやった。
「この方たちは……あ、えと……お名前……まだでしたね……」
「私はミカ。こっちのうさ耳っ子はシノ。」
シノは軽く礼をした。
「ナギさん!この人たちは私たちの危機を救ってくれた、恩人ですぅ!」
ミーナが補足説明をしてくれた。
「あら、それは……。このふたりがお世話になりました。大変感謝します。」
「私はナギ。ここのお城のメイド長を勤めさせております。」
ナギと呼ばれる女性は、シノとミカを危険人物ではないと判断し、静かに自己紹介をした。
「メイド……?」
「そうですよぉ?」
ミーナとシンシアもメイドだという。
メイド長であるナギと同じ格好をしているので当然だ。
「この度は本当にお世話になりました。このご恩は必ずお返しします。」
「いえいえ!私たちは、そんな大したことはしてないですので……!」
「あまり謙遜なさらずに、そうだ、お茶をいれます。良ければ、お話を聞かせて貰いたいのですが。」
そう言うと、他のメイドにお茶の用意をさせた。
「ふむ……そうですか……そんなことが……」
ミカやシンシア、ミーナはさっきの状況を漏れなく説明した。
(このお菓子……美味しい……)
その間、シノは用意されたお菓子を次々と口にしていた。
「もう!そんなに食べたら晩御飯食べれなくなっちゃうよ!」
「ぐっ……」
ミカに指摘され、シノの手が止まる。
「もし、お気に召されたのなら、まだまだたくさん余ってますので、よろしければお持ち帰りください。」
「いいんですか?」
「あなた方は彼女らの危機を救ってくれた恩人ですので。いくらでもご用意させていただきますよ。」
とんでもない待遇を受ける。人助けの恩がここまで帰ってくるとは、シノもミカも完全に思ってはいなかった。
「い、いいんですか……?ここまでしてもらって……?」
ミカがそう問うと、
「助けてもらったお礼するのは人として当たり前でしょう?」
ナギは『なにかおかしいのですか?』と言わんばかりの表現をしながら首を傾げていた。
心の底からいい人間なのだろう。
「でもナギさん、怒ったら怖いですよぉ」
「この前も、私がお菓子ばっかりたべてたらぁ、『食べ過ぎです。』ってお菓子没収したんですよぉ」
「はっ……!!」
シノはその言葉に反応し、お菓子を食べる手を再び止めてしまった。
「それはミーナさんが悪いと思うんですけど……」
すかさずシンシアがツッコミを入れる。
「むぅ……」
ミーナはどこか罰が悪そうだった。
「ひとまず、お話を聞かせていただきありがとうございました。今後はこんなことがないように、こちら側でも対策をしておきます。」
ナギがソファから立ち上がり、深い礼をする。
「いえいえ!こちらこそここまでしてもらっちゃって……」
ミカも急いで立ち上がり深く礼を返した。
「すみません本当に……お世話になりました……」
「シンシアちゃんを助けていただいてありがとうですぅ!」
「当たり前のことをした……それだけ……」
とは言いつつも、シノもしっかりと礼を返していた。
「よろしければ、連邦付近までの牛車を出しますが……」
「いいんですか?」
「えぇ、こちら側としては全然支障はありませんので、」
「なら……お言葉……あまえる……」
「分かりました。すぐに手配致します。」
「もう日が落ちつつあります。こちらに泊まっていってください。」
「何から何までお世話になりっぱなしで……本当にありがとうございます……!」
「ミーナ、シンシア、おふたりの部屋の支度を。」
「分かりました。すぐに取り掛かります。」
「了解ですぅ!」
シノとミカはナギたちメイドに用意してもらった部屋に行き、今日一日の疲れを取ろうとしていた。
なんと部屋にはシャワールームまであり、まるで高級ホテルのような整った設備だった。
2人はシャワーを浴び、用意されたパジャマに着替え、ベッドにはいった。
「本当に今日はつかれたねぇ、色んな人に会って、色んなことが起こって……」
「楽しかった……!」
「これからはしばらくはずっとこんな感じになるんだよ!楽しみだね……って、あれ?」
淡々と話すミカの話を聞かず、シノはもう眠りについてしまっていた。その寝顔はとても幸せそうだった。
「ふふ……今日はお疲れ様。おやすみなさい……!」
寝ているシノの寝顔を見つめ、頬をつんつんとつっつきながら、ミカは返事の返ってこない『おやすみなさい』の挨拶を交わした。
この日の月はとても綺麗な満月だった。