アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜 作:うさトロ
「んん……っ……ここ……は……?」
ミカはさっきまで、メイドたちに用意してもらった部屋のベッドで寝ていたはずだった。
しかし、目の前に広がるのは、今はシノと暮らしているいつもの家だった。
「そっか、ここ、たぶん夢だ……」
すぐに夢だと気づく。
何故だろう。
目の前の家は今の家とは違い、ところどころ建材が新しいようにも見える。
「ひょっとして……」
ミカがなにか察したとき、目の前のドアが勢いよく開き、少女が元気よく飛び出してきた。
その少女はミカによく似た金髪をふたつくくりにしていた。
「昔の私!?」
ミカは大きな声を上げて仰天した。
どうやらこの夢はミカの昔の記憶を辿って進んでいくようだ。
『んー?』
ミカによく似た少女、もとい、過去のミカが現在のミカに気づき、大きく首を傾げた。
『おねぇちゃん、だぁれ?』
「え、あの……えと……」
当然、ミカは困惑した。
ここで自分の名を言ってしまうと、恐らくややこしいことになってしまうと思ったのだ。
「わ、私はね……?」
ミカが必死にどうにかしようと慌てていたその時、
『こら!すぐにどこかに行くなと言っているだろう?』
過去のミカを追うように1人の若い男が出てきた。
ミカにとっては懐かしい声だった。
『パパ!!』
「お父さん……!」
『む……?誰だ?あんたみたいな人、見覚えはないが……』
それもそのはず。これは過去の記憶なのだから。
「あ、いや、すみません……人違いでした……」
『……、そうか。』
ひとまず、人違いということにしてその場はやり過ごした。
まさか昔のことを夢に見るなんて、ミカは思ってもいなかった。
懐かしいが、どこか寂しい気もあった。
『あらあなた……ミカに似ているわね……?』
目の前に現れた女性は、ミカとそっくりの金色の髪を膝の辺りまで伸ばしており、ふわっとした白く透き通ったワンピースを着ていた。
「お母さん……!」
ミカは思わず口にしてしまう。
昔の記憶を辿っているだけとはいえ、過去の記憶は過去の記憶である。父や母の容姿を忘れるわけはなかった。
『お母さん……?ってことはやっぱり……』
ミカの母と思わしき女性がなにか言おうとした時、
辺りが一瞬にして暗くなった。
さっきまでいたはずの女性ももう居ない。
なにか怪しげな雰囲気になる。
何かの気配がする。
魔物だ。それも大型の魔物が大量に街へ侵略してきたのだ。
「これって……!」
ミカには思い当たる節があった。
『魔物だ!魔物が街へ!』
『みんな逃げるんだ!どこかへ避難するんだ!』
記憶の中の住民たちは急いで逃げる準備をしていた。
『ミカは!ミカはどこへ!』
『ミカ!どこへ行っちゃったの!!』
「そうだ私……この時……お父さんお母さんとはぐれて……」
ミカは思い出していた。いや、明確には無理やり記憶を叩き起された。
たちまち街は火の海となり、建物は次々と倒壊し、悲劇の連鎖を起こしていた。
『うっ……うぅ……ぐすん……』
どこからか泣き声が聞こえる……
「あれは……」
過去の自分だった。
両親とはぐれ、1人燃えた家の中で泣きじゃくっている。
『まだ家にいるのかもしれない!』
『なんだって!急ごう!』
向こうの方で声が聞こえる。
他でもない、ミカの両親だった。
燃えてほぼ灰になりかけている家を見て、
『もしほんとにこの中に取り残されてたなら……』
『行ってくる。待っててくれないか。』
ミカの父はそう言うと、近くにあった水を頭から被り、炎の中へと走っていった。
『あなた……!』
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「はっ!」
目が覚めた。
ミカの体からは汗が吹き出していた。
(あんな夢を見るなんて……)
横を向くと、そこにはシノがすやすやと気持ちよさそうに寝ていた。
ミカは深くため息をつくと、汗を流すために再びシャワーを浴びに行った。