アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜 作:うさトロ
2人は歩き続けていた。
アブル連邦を目指してひたすら歩く。
「もうすぐだよ!」
広がる平野の大地を一歩一歩踏みしめ、2人はいよいよ連邦に到着しようとしていた。
「着いたよ!ここがアブル連邦……!」
「でか……」
そびえ立つ城壁に圧倒され、2人は少し緊張していた。
「門の前にいっぱいテントが張ってあるのはなんなんだろう……?」
連邦の大きな門の前には、何故かテントがたくさん張ってある。
城壁を目にしたあとだと、とてもその光景はみすぼらしくも見えた。
しかし2人は特に気にすることなく、門から中へと入ろうとした。
その時だった。
「オイオイオイ!ちょっと待ちな!」
この国の兵士だろうか。門番をしていたであろう男に止められてしまった。
「あんたら、冒険者だろう?ここに入る許可は得てんのか?えぇ?」
兵士は2人を睨みつけ、威嚇するように言った。
「きょ、許可……?」
何も知らない2人はキョトンとした顔で聞き返した。
「オイオイ、質問を質問で返すんじゃねぇよ、今はこっちが質問してる番なんだよ?んな事もわかんねぇのか?あぁん?」
とても口が悪い兵士だった。
その態度が気に入らないシノは兵士を睨み返す。
「ちょ、ちょっと待ってください!私たちここへ来るのは初めてで……!」
ミカは少し早口になりながらも口の悪い兵士に対して返答をした。
「あ?そうか、ここは初めてか」
2人が連邦を訪れるのを初めてだと理解した瞬間、兵士の口調が柔らかくなったような気がした。
(ミカ……私……こいつ……嫌い……)
(こらっ、そんなこと言わないの……)
ころっと態度を変える兵士をシノは心の底から嫌った。
そのことを耳打ちでミカに話した。
「初めてならしょうがねぇな、ならここの決まりってもんを教えてやるよ」
やはり偉そうだった。
さっきまでと同じような口調で兵士は続ける。
「ここはな、城塞都市『アブル連邦』だ。」
「そんなこと……知ってる……!!」
まるで馬鹿にされたような気がしたシノはすかさず答えてしまった。
「あ?なんだ?やんのか?」
まさに一触即発。
シノと兵士は互いに睨み合った。2人の視線の間には火花がパチパチと光るのが想像できる。
今にもシノは兵士に殴りかかりそうだった。
「シノ!落ちついて!」
「こいつ……ッ!!」
シノは歯をギシギシと軋ませながら必死に殴り掛かるのを堪えていた。
右手は力強く拳が握られている。
その拳は怒りで震えていた。
2人が今にも殴り合いそうになっていた時、また別の兵士が現れた。
「門の傍で何を揉めている。邪魔だ。」
「あっ、アンドルさぁん!」
アンドルと呼ばれるその男は、兵士の服を着ているが、その服にはところどころ普通の兵士とは違う装飾が付けられている。
恐らく兵士長かなにかだろう。
この口の悪い兵士とは立場が別のようだ。
「こいつら、ここに来るのは初めてだそうで……」
急に腰が低くなる兵士にシノはますます腹が立っていた。
「そうか、なら、私の方から説明をしよう。」
「あ、ありがとうございます……!」
アンドルの言葉に対し、ミカはシノを抑え、なだめながら礼を言った。
「ここに入るためには、ある程度の義務を果たさないといけない決まりなんだ」
「ある程度の義務……?」
「そうだ。例えば……、魔物の討伐など、この国の平和に繋がることをある程度やらなければならん。そうやってこの国の王は決めている。」
冷静かつ、穏やかに説明をするアンドル。
「えっ、この国の国家さえ歌えればいいんじゃないんですか!?」
先程の口の悪い兵士が割って入る。
「なら、貴様は全て歌えるのか?」
「あ、あったりまえっすよ!」
兵士の目が少し泳いだような気がした。
「ならば歌ってみろ。」
アンドルは兵士に促す。
「えっ、えぇ〜っと……」
「もういい、一生国家の練習でもしていろ。」
「ぷっ……」
シノは兵士の間抜けな姿につい笑ってしまった。
「こいつ!笑ったな!!」
それに過敏に反応する兵士。
「やかましい。」
「ひっ……」
それを叱責し、抑えるアンドル。
「ちょうどこれから、平野の魔物を討伐するところなんだが、少し人手が足りないんだ。それを手伝ってくれると言うのなら、こちらから国に入れるように話をつけよう。」
「魔物って……?」
「この少し先にフクログマが大量に出没したらしくてな、こちらに被害が及ばないよう、何体か討伐をする作戦なんだ。」
「なるほど……」
悪くない条件だった。
魔物を討伐し、アンドルに認められれば、連邦に入れるのだから。
「わ、わかりました!その作戦、引き受けます!!」
ミカは作戦に参加することにした。その横でシノが小さく頷く。
「悪いな、助かるよ。」
アンドルはあっさりとシノとミカを歓迎した。どうやら余程人手不足らしい。
「では、今から作戦を決行する。広がる平野に向けて出撃!!」
アンドルは作戦に参加する兵士たち全員に聞こえるような大きな声で叫んだ。
その声に続いて兵士は雄叫びをあげる。
兵士全員の士気が高まった。
「お前たちは、私の後に続いてくれ。あとは現地で指示をする。」
「わ、分かりました……!」
こうして、フクログマ討伐作戦が決行された。