アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜 作:うさトロ
「ここが大型農園!大きいねぇ!」
「広い……」
シノとミカの2人は狩人の証を得るため、広がる平野を越えて大型農園へ来ていた。
「あら!こんなとこまでわざわざどうしたんだい?」
「私たち、狩人になるために、バインさんに用があって……!」
「ん?僕?」
バインと思わしき男が返事をした。
「あなたが、バインさんですか?」
「そう……だけど……?僕に何か用かい?」
「あの、私たち、狩人になるための資格証が、欲しくて……!」
「狩人に?うーん……」
ミカの狩人になりたいという要求を耳にした途端、バインは困った顔をして俯いてしまった。
「困ったなぁ、過去に経験したとは言え、実は師匠からは大したことは教わってないんだ。それをいきなり教えろだなんてちょっと厳しいかな……」
連絡が取りづらいというのは事実なのだろう。
やはり有益な情報は得られないと思っていたが、2人が諦めることは無かった。
「そこを……何とか……」
「お願いします!」
2人から同時に頭を下げられ、さすがにバインも断る訳にはいかなくなってしまった。
「うーん、本当に大したことは教わってないんだけど、それでも良ければ……」
バインは少々不安ながらも承諾した。
「ありがとうございます!」
「じゃあまず、狩人の基本から。」
「お願いします!」
「お願い……します……」
2人はもう一度頭を下げる。
「あぁ、そんなに頭、下げなくても大丈夫だよ……?ちょっとこういうの慣れてないから困るな……」
「す、すみません……」
「いやいや!こっちこそ慣れてなくてごめんね、とりあえず本題に戻ろうか、話を逸らしちゃってごめんね……」
そういいながらも、バインは説明を続ける。
狩人とは、自給自足を基本とする。
活動場所がほとんど野外になるため、その場で材料を確保し、罠や道具を作らなければならない。
狩人たるもの、自分の使う道具は自分で作れるようにならなければならない、師匠はそう言ったとバインは説明をした。
「とりあえず、まずは道具作りからだね、このレシピを渡すから、弓を作ってみようか。」
「はい!」
バインから『自作セルフボウ』のレシピを受け取り、ミカは必要な材料を確認する。
「えーと……、トリネコの枝と、麻生と、松脂か……」
「カバンの中……全部ある……」
「わお、いつの間に」
都合よく揃っていた材料をカバンから取り出し、早速レシピ通りの組み立て作業に入る。
「ここを……こうして……っと。ここもうちょい削った方がいいかな」
ミカは器用な手先を活用し、手際よく作業を進めていた。
ところが一方シノの方は、
「なにこれ……どうなってんの……あれ……?なんか……違う……えいっ……あっ……折れた……」
ダメダメだった。
何度やっても上手くいかないので、シノはしょんぼりしていた。
その様子を見ていたバインはシノに手取り足取り作業を教えた。
「ここはこうして……違う違う、ここをここに……」
「ここが……ここ……?これが……ここかっ……!」
「違うよ!そこくっつけちゃったら弓じゃなくて槍になっちゃうよ!」
シノのあまりの不器用さに教えるのも一苦労したが、
「ふぅ、これで完成だよ。初めてでもなんとかなるもんだね……」
「できたー!!」
「やっと……完成……した……」
なんとか2人とも『自作セルフボウ』を完成させることが出来た。
「あぁぁぁぁ……もう……ものづくり……懲り懲り……」
「まだ弓を作っただけじゃないか……。この程度で息をあげてちゃ狩人としてはもたないよ……」
「うへぇ……」
シノは自身の不器用さを痛いほど知ったのだった。うさ耳が心なしか少ししおれている。
「よし、次は……うーん……」
バインは少し考え込んだ。
「師匠は基礎が大事って言ってたからなぁ……」
「基礎ですか……」
「うん、とりあえず、弓の練習を毎日続けるって言うのはどうだろう?」
「練習……?」
「うん、朝昼夕方、毎日100回打てば、弓の扱いにも慣れてくると思うんだ。」
「ひ、100回!?」
「さすがに……無理……」
とんでもないことを言い出すバインに、シノもミカも驚いた。
「僕の場合はこうやってコツコツと毎日頑張ったよ、まぁ……さすがに今からやれって言うのは厳しいから、とりあえず1発打ってみよっか、まずはあの木の的を射抜いてごらん」
バインに言われ、2人はおおよそ100メートル程先にある的に目掛けて狙いを定めた。
「えいっ!ありゃ?」
まだ弓の扱いに慣れていないミカの打った矢はひょろひょろと下へ落下した。
「もう少し力を込めて引いても大丈夫だよ、」
それを見てバインはミカにアドバイスをする。
隣に目をやると、弓を思い切り引いた状態でピクリとも動かないシノがいた。
「……。」
「すごい集中力だ……」
シノは真っ直ぐ的を見て、狙いを定めていた。
1ミリも動く気配のないシノの圧倒的な体幹は、まるで何百年、何千年とそこに佇み、静かに森を見守る御神木のようだった。
「そこっ……!」
シノがようやく放った矢は、ヒュンと風を切る音を上げ、圧倒的な速度で宙を駆ける。
「なんて速さだっ!」
その光景にバインは驚いた。
しかしそれだけでは無い。
矢は空中でもブレることを知らず、ひたすら真っ直ぐに飛んでいる。
しばらく宙を切り裂くように飛んでいた矢は、『パスッ』っと心地よい音をたてて的の中心に当たった。
「すごい……なんて正確さと速さと集中力なんだ……。」
バインはその圧巻な技術力に感動していた。
「普段から弓を扱っているのかい?」
「うん……いつも弓を使って……敵……倒してる……」
「そりゃあんな綺麗なフォームと圧倒的な命中力になる訳だ、すごいね」
「まぁ……このくらい……朝飯前……」
口ではそう言いつつも、シノの顔はとても嬉しそうだった。うさ耳もご機嫌そうにぴょこぴょこしている。
「そうそう!そんな感じだよ!」
ミカはしばらくバインに弓の稽古をつけてもらい、ようやく真っ直ぐ打てるようになった。
「弓って、こんなに力、使うんだ……。シノはこれをいつもやってるわけでしょ?すごいね……!」
「えへへ……」
シノは満足そうだった。
「よし、2人とも弓の扱いになれたところで、次の段階に進もうか!」
「はい!」
まだまだ狩人になるための道は終わらない。
まだもう少しだけ続くのであった。