アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜 作:うさトロ
シノとミカの2人は森の奥底で息を殺し、『奴』を狙っていた。
時は遡ること数日前。
2人は狩人の資格証を手に入れるためにバインの元を訪れ、弓のことを習っていた。
「師匠が言うには、弓は自身の手足の延長みたいな物らしいんだ。あんた達はその極意を掴んでしまったみたいだね」
バインは淡々と続ける。
「僕はもうあんたらには狩人の素質があると思ってる。」
「あ、ありがとうございます」
「でも、一応決まりだから、師匠から言われた最後の試練を伝えるよ」
バインはそういうと、2人に試練内容を伝える。
試練の内容は大きく2つ。
『ネッシーの肉を持ってくること』、
もうひとつは
『害獣を討伐すること』だった。
どちらも魔物の生息地に入り込み、獲物を狩り出さなければならない試練となっていた。
どこにいるかわからない獲物を、獲物側のテリトリーでひたすら待ち続ける。
大変な作業にはなるが、狩人にとっては日常茶飯事。
「これができてこそ狩人の資格がある。師匠はそう言ってたよ」
バインは師匠から伝えられているポイントや必要事項を2人に話す。
「害獣に関しては、ちょうど年老いて知恵をつけたカタキグマの討伐依頼があったから、それをお願いするよ。」
カタキグマとは、本来なら旅人や冒険者を襲う危険な魔物なので、それはそれで厄介なのだが、今回の討伐目標は特殊で、家畜や畑から楽に食料をとることを覚えてしまったらしく、近隣の村々に莫大な被害を出しているという。
「エサは……これ!」
バインはカバンの中からとても美味しそうな肉を取りだした。
「これは……?」
「これは『特製鶏ハチミツ照焼』だよ。あいつらはこれが大好きなんだ」
そう言ってバインは2人にエサとなる食料を手渡した。
「じゃあ、よろしく頼むよ!」
そうして試練をクリアするために2人は農場を離れて、様々な場所を巡った。
その間に2人はひとまずネッシーの肉を手に入れた。
ここまでは特に何事もなく、順調に進んでいた。
しかし、問題なのはここからだ。
カタギグマは滅多にその姿を現すことはなく、そして特定の場所にしか出没しないのだ。
そのポイントを絞れたはいいものの、エサを使ってもなかなか現れることは無かった。
そうして時間だけがひたすら経過し、今に至る。
「まだかな……」
「あのやろー……」
シノもミカも内心イライラしていた。
しかし、決してその苛立ちを爆発させることはなく、必死に堪え、静かに目標ポイントの様子を伺い続けていた。
すると、ポイントの辺りからゴソゴソと音が聞こえる。
その音に反応した2人はポイントに設置してある罠に必死に目を見張っていた。
その音の方から現れたのは……
ただのフクログマだった。
「なんだぁ、またかぁ……」
「はぁ……」
2人は緊張で上がっていた肩をガックリと落とし、失望してしまった。
が、しかし、また同じところでガサガサと音が聞こえる。
その音はやがて大きな影となり、やがて大きな影は赤いクマのような形へと変化していった。
「あれが……カタキグマ……!」
「大きい……倒せるかな?」
通常のフクログマと比べると、ひと回り、ふた回りほど大きかった。
「大丈夫……。やってみせる……」
シノはしっかりと獲物を定める。大きく息を吸い、
「……。」
またあの時のように、圧倒的な集中力を見せる。
「そこっ……!」
シノの放った矢は素早く、一瞬でカタキグマの元へと届く。
弱点を仕留めたと思った瞬間、カタキグマの姿が無くなる。
「えぇっ!」
「なにっ……!」
次の瞬間、カタキグマの姿が2人の後ろに現れる。
「シノっ!!」
「はっ……!ぐぅ……っ!!」
気づいた時には遅かった。シノの身体はカタキグマの強力な攻撃によって吹き飛ばされた。
「シノぉぉぉぉぉっ!はっ!」
シノの心配をするミカだったが、カタキグマの次の攻撃がミカを襲おうとしていた。
「かっ……は……っ!」
これまたカタキグマの猛烈な一撃がミカを襲う。
ミカは咄嗟に防御の姿勢をとったため、何とかダメージは軽減できた。
しかしカタキグマは次の攻撃のために大きく腕を振りかぶる。
軽く吹き飛ばされ、怯んだミカは防御の姿勢を組むタイミングを逃してしまった。
ミカにカタキグマの強烈なダメージが入りかけたその直前。
どこからともなく1本の矢が宙を切りカタギグマの弱点に確実に刺さった。
「ぐぉぉぉぉ……」
次の瞬間、カタキグマは光の粒となって消えた。
ミカは飛んできた矢の方向を見る。
そこには確かにシノがいた。
「はぁ……はぁ……私の……勝ち……」
そういうとシノはその場に倒れてしまった。
「シノ!」
ミカはシノの元に駆け寄る。
「シノ!シノ!!ねぇ!起きてってば!シノ!」
「え……へへ……私……やったよ……目標……倒した……よ……」
シノは光の粒となって消えた。
その光はどこか暖かく、しかし冷たくもあった。
「シノ……。シノーーーっ!!」
ミカの叫び声が辺りに響き渡った。
「はっ!そうだ……そうだ教会だ……!!」
ミカは思い出したかのように、連邦の教会に向けて走り出した。
怪我をしたにもかかわらず、一心不乱に走り続けた。
ミカは走っている時もシノのことしか頭になかった。
「シノ!」
「あ……」
やはりミカの狙い通り、シノは教会にいた。
「よかったぁ!心配、したんだよ!」
「ごめん……心配……かけた……。」
「ううん!今はシノがこうして生きてて良かったよ!」
そう言ってミカはシノに抱きついた。