アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜 作:うさトロ
「「いただきます!!」」
2人は手を合わせ、リクルが作ったドフィノワーズを食べ始める。
表面に切れ込みを入れると、そこから生クリームが溢れてくる。
それと同時に濃厚かつクリーミーな香りが切れ込みから漏れ出てくるように広がる。
さながら、香りの爆弾のようだった。
ほくほくとしたじゃがいもにスっと吸い込まれるようにフォークの先がなめらかに入る。
「凄い!こんなにすんなりとフォークが入るなんて……!!」
ミカも思わず感動していた。
「あつっ……あちっ……」
猫舌のシノは熱々のドフィノワーズをはふはふとしながら必死に食べていた。
「お、落ち着いて食べなよ……そんな急がなくても逃げたりしないよ……?」
「箸……止まらない……フォークだけど……」
ちょっとしたジョークを交えながらも2人は食餌を進めた。
「「ごちそうさまでした!」」
2人は食事を終え、リクルに礼を言った。
「本当にありがとうございます!」
「美味しかった……!」
「いやいや!お礼を言うのはこっちの方ですよ!これで施設の人たちに振る舞える料理が出来ました!ありがとうございます!」
リクルの依頼を無事に完了させ、
2人は次の目的地を決めようとしていた。
「次はどこに行く?」
「ちょっとふらふらと歩くのは……?」
「なるほど、じゃあここまで来た道を1回戻ってみようか、」
「なんか……違う景色……見れるかも……」
「だね!決定!」
2人は国境沿いから公国まで戻ることに決めた。
明るい日差しに守られながら一度来た道を戻る。
お昼ご飯にドフィノワーズを食べたおかげで程よく2人のお腹は膨れていた。
少し旅の疲れもあり、2人は大きなあくびをした。
お昼時の時間を少し過ぎ、そろそろお昼寝がしたくなる時間帯である。
2人は程よい眠気に誘われながらも、一歩一歩、地面を踏みしめ歩く。
国境沿いを越え、木でできた大きなゲートを通り、雪山と草原の辺りまで来た。
ちょうど雪山と草原の境目にある大きな木の麓に何かを見つけた。
「なに……あれ……あそこ……なにかある……」
「ちょっと見てくるね」
ミカはそう言うと木の麓まで駆け寄った。
と、その瞬間。
ズゴッ
「えっ!なに!?」
木の麓に立っていたミカの姿はそこにはなく、
代わりに大きな穴が空いていた。
その穴の中にミカはいた。
「落とし穴か……っ!」
幸い、木の麓に寄らなかったシノはその穴に落ちることはなかった。
「どこかに引っ張りあげる道具があれば出られるだろうよ!」
突然、叫び声が辺りに響く。
「だれ……」
「俺が誰かなんてどうでもいいだろうよ」
男はどうやら冒険者のようだ。
恐らくシノやミカよりも先輩だろうよ、と。
「なんなの……?」
シノは突然現れた怪しい男に困惑していた。
「この俺が先輩として教えといてやるよ」
シノの質問を無視し、怪しい男は話すのを続ける。
「冒険者ならな、もっと落ち着いて行動するべきだろうよ」
「何……言ってんの……?」
「おいおい、なんだぁその態度はよ」
「あんたの相棒、助けてやらなくていいのかよ?」
「まさか……穴を……掘ったのは……!」
恐らくこの落とし穴を掘ったのはこの怪しい男だった。
「なんだ?先輩冒険者のケイン様に濡れ衣を着せようってか?」
その怪しい男はケインと名乗った。
「せっかく初心者のお前らに親切に冒険者の心得を教えてやるって言うのによ」
「別に……いらない……」
「何と間違えたか知らねぇが、目先のキレイなもんに目がくらんで1人で行動するなんて危ねぇこった」
「ミカ……!」
「たーすーけーてー」
ミカは穴の中でぴょんぴょんしていた。
しかし、ミカが一生懸命、真剣に、本気で、マジでジャンプしても意味をなさなかった。
「どんだけ深いのこの穴」
「おいおい、聞いてんのかお前ら」
「まぁいいか、助けてやってもいいぜ」
ケインはそう話すとひとつの提案を出してきた。
「有り金を全部ここにぜーんぶ置いてけ、そしたら助けてやってもいいぜ」
「有り金……全部……?」
「あぁ、そうだ。持ってるだけぜーんぶ出したら助けてやるって言ってんだ」
ケインは無茶な要望を提案してきた。
「相棒の命か、冒険を始めて間もないお前らのはした金か、どっちが大事か選ぶんだな」
「なら……そこの街で……ロープ買った方が早い……」
シノは機転を利かせて策を思いついた。
だがしかし、
「おっと、それなら俺のテストを受けてからにするんだな」
「テスト……?」
「あぁ、そうだ。」
ケインもまた機転を利かせ、更なる提案をしてきた。
「ここを通りたきゃ俺を倒せ。いや、俺を倒せばロープもくれてやるよ」
ケインは戦闘態勢に入った。
慌ててシノも武器を構えた。