アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜   作:うさトロ

28 / 38
第26話「VS.荒くれ者ケイン」

「俺を倒せたらロープもくれてやるよ」

 

「やってやる……!」

 

ケインのテストと称した挑戦をシノは受ける。

ケインは拳を。

シノは剣を構える。

 

お互いにジリジリと距離を詰める。

 

「そっちから来ねぇなら俺の方から行かせて貰うぜェェェーーーッ!!」

 

ケインはそう叫びシノに向かって突撃をしかける。

 

シノは軽く横にステップを踏んでひょいっとかわし、再びケインに向けて剣を構える。

 

「ほう、少しはできるみたいだな」

 

「今度は……こっちの番だ……ッ!」

 

シノは地面を軽く蹴り、前方に向けて飛び込むように駆け出す。

 

その瞬発力から生み出される斬撃は一閃の光を放ち、美しく、流れるようにその場をかける。

 

「なっ!速いッ!?だがっ!」

 

しかし、ケインもまたそれを上手くかわす。

 

「すばやさだけは……早いヤツ……!」

「お前がそれを言うのかよ」

「なっ……!」

 

お互いがお互いの攻撃を避け続ける攻防戦が繰り広げられる。

 

「どうした!こっちに攻撃が来ないじゃないか!」

 

「それは……お前も……同じ……!」

 

「口だけは達者だなぁ!喰らえッ!」

「なっ……!早い……!」

 

突然ケインがシノに向けてタックルをしてくる。

これにはさすがのシノも対処しきれず、モロに喰らってしまった。

「くっ……!」

男性の体は女性に比べ屈強である。

 

その身体から放たれるタックルの重さは並大抵のものでは無い。

 

シノは片膝を地面につき、みぞおちの辺りを押さえて悶える。

 

「はぁ……はぁ……」

「どうした?もう終わりか?」

 

はっきり言ってケインの顔は腹が立つ。

その腹が立つ顔がドヤ顔によってより腹が立つ顔になっていた。

 

シノはギリギリと歯ぎしりをしている。

相当頭に来ている証拠だ。

 

シノは怒りながら頭で考えた。

 

(あいつ……何とか……しないと……)

(ミカが……ミカが……!)

(助けられないっ!)

 

その時。シノの中に電流が走る。

 

(そうか……!)

 

なにか良い策が思いついたようだ。

 

(こっちからの攻撃……当たらないなら……っ!)

 

シノはよろよろと立ち上がる。

まだタックルを喰らった部分が痛み、そのせいで呼吸が少し荒くなる。

しかし、シノには護る者がいる。

 

「大事なもの……失う怖さに比べれば……っ」

「こんなの……っ!!」

 

「おいおい、まだ向かってくるって言うのかよ、無駄なんだよ!」

 

ケインは再びシノに向けて攻撃を繰り出そうとした。

素早い蹴りをシノに向けて放つ。

 

その瞬間。

 

「ぐわぁっ!」

 

シノに蹴りを入れたはずのケインの方が後ろに飛ぶ。

 

「な、なんだと……!?」

 

「はぁ……はぁ……、何とか……なった……」

 

カウンターだ。

精一杯の力を振り絞り、シノはケインが攻撃する瞬間、

持ち前の素早さを利用し、ケインの蹴りを剣の表面で受け止め、そのままの勢いで腕を思い切り振った。

 

それでケインが後ろに吹き飛んだのだ。

 

「で、でもな、肝心の俺にダメージは入ってないんだぜ」

 

「確かに……私は……お前には……ダメージは……与えてない……」

 

「へっ!やっぱり俺にダメージはねぇじゃねぇかよ」

 

ケインがそう言いながら一歩下がる。

その瞬間だった。

 

がくっ

 

ケインの膝が崩れる。

 

「なんだと……?」

 

シノはケインの全力の蹴りを剣で止めたのだ。

ケインにはそれ相応の衝撃が与えられているため、膝に相当のダメージが入っていた。

 

ケインの脚はガクガク震え、産まれたての子鹿のようになっている。

 

「くっ……」

 

「約束……」

 

シノはそう言いながらケインに近づく。

 

「あ?」

 

「約束……ロープ……」

 

「なんのことだっけなー」

 

「いま……この剣で……お前の首……吹き飛ばせるけど……どうする……?」

 

勝てばロープを渡すという約束をなかったことにするケインに対し、シノは首をはねるぞと彼を脅す。

 

「わわ、わかったよ、ほ、ほらよ」

 

お世辞でも冗談には聞こえないシノの脅しに血の気がひいたケインは、素直にシノにロープを渡す。

 

「分かれば……いい……」

 

「ふっ、引っかかったな……今だ!」

 

シノがロープを手に取ろうとした瞬間、

ケインがシノに殴りかかる。

 

「くらいやがれっ!!」

 

しかし。

「黙れ」

「あべし」

 

シノはケインの行動に屈することなく、

蔑むような目でケインを見下しながら、

冷酷かつ残忍にケインを切り捨てた。

その瞳には光が灯っていない。

沈むようなワインレッドの色をした瞳は輝くことなく、覗き込むと深いどこかに吸い込まれてしまうように暗かった。

 

「うっ……」

 

突然、激しい頭痛がシノを襲った。

 

「うぅ……」

 

(ダメだ……ミカに……嫌われる……今この場に……いなくて良かった……)

 

「とりあえず……ロープ……」

 

シノはふらつきながらも足元に落ちているロープを拾い上げ、ミカがハマった落とし穴の方へ向かった。

 

「ミカ……大丈夫……?ほら……ロープ……」

「あ!シノ!ありがとうー!」

 

「ふぅ……やっと出れたよぉ……」

「大丈夫……?怪我……ない?」

 

「それは私のセリフだよ!シノの方こそ大丈夫……?」

 

「まぁ……何とか……?」

 

嘘である。

 

シノの身体は先程のケインとの戦闘でボロボロになっていた。

 

「と、とりあえず後で手当てしよっか」

「消毒……染みるから……いい……」

「あと……ちょっと……眠い……」

 

戦闘による疲れにより、シノは倒れてしまった。

正確には寝てしまったのだが。

 

「え、えぇ!?ち、ちょっとシノ!?」

「もう……」

 

シノの寝顔を眺めながら、ミカはそっと微笑んだ。

 

「助けてくれて、ありがとね……!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。