アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜 作:うさトロ
ケインの仕掛けた落とし穴に落ちたミカを助けるため、シノはケインと戦闘。
見事に勝利しロープを入手。
そしてミカを助けることが出来た。
しかし、戦闘による疲労によりシノは眠ってしまった。
「そうだ、今のうちに手当しとこ」
ミカはカバンから医療箱を取り出し、包帯や消毒液、脱脂綿などの道具で、テキパキと手際よく施術を施した。
「よし、我ながら相変わらずの手際の良さですな!えへへ、なんつって…」
僅かに微笑みながら、自分でツッコミを入れる。
しばらくして、シノが目を覚ます。
「あ、起きた?おはよう!」
「ん……、起きた……。」
まだ眠そうな顔を両手で擦るシノにミカは優しく語りかける。
「しばらく休憩したら公国まで戻ろっか、酒場で次の目的、決めなきゃ」
ミカは淡々とシノに次の予定を伝える。
「何より、お腹、空いたでしょ?」
こうして2人はまた酒場へと向かった。
次の目的地への作戦会議のために。
「よう、いらっしゃい、今日はなんにする?」
酒場に着くとチップさんが優しく出迎えてくれた。
「いつもので!」
ミカはナポリタン、シノはオムライスを注文した。
「今日は凄い繁盛してるね、テーブルがここしか空いてなかったんだもん」
「人……多い……うぅ……」
2人が席に着いたその瞬間。
扉がバァン!と音を上げ、ピンクの髪をさげた少女が勢いよく入店してきた。
「店主!揚げたてポテトはまだあるかしら!」
と、大きく声を荒らげて言う。
「お、良かったな嬢ちゃん、ちょうどいま上がったとこだ。」
「よかった!間に合った!」
少女は辺りを見回し、席を確保しようとした。
しかし360度どこを見ても、とても座れる席があるようには見えなかった。
「席が空いてないや……」
少女は混雑する酒場にぽつんとただずんでしまった。
その光景をみたシノは、
「ここ……まだ……空いてる……」
と、少女を誘った。
「え、いいの?」
少女はきょとんと来た顔でシノに聞き直す。
すかさずミカも、
「どうぞ!」
と、ちょうどひとつ空いていた席に座るように誘う。
「じゃ、じゃあ……お邪魔します!」
そう言って少女はシノとミカの座る机の空いている席に腰を下ろした。
「私はミカ!」
「シノ……。」
2人はそう言って少女に自己紹介をする。
「シノちゃんにミカちゃん!席、座らせてくれてありがとう!私はマイカ!『魔王ちゃん』って呼ばれてるよ」
『魔王ちゃん』と名乗る少女はテーブルに運ばれた揚げたてホカホカのポテトを口いっぱいに頬張りながらそう告げた。
「ま、魔王!?」
「見た感じ……魔王には……とても……見えない……」
2人は驚きを隠せずにいた。
魔王と言えば悪役。
極悪非道、冷徹無情、ましてや慈悲なんてありゃしない、悪役の中の悪役のイメージだ。
しかも、この世界で見た魔王は以前倒した『トッポ』とかいうヤツのように、もふもふした動物のような姿しか見たことがない。
それに比べ、マイカはとてもそのようには見えない。
『魔王』と名乗る割には、
敵対心がまるで見られないのだ。
「ほんとに魔王なの?」
「襲ってくる様子……見れない……」
2人はそう言うとマイカをマジマジと見つめる
「やっぱり、『魔王』って言っちゃうとみんな怖がるよね……、まぁ……過去にかくかくしかじかありまして……」
マイカは俯いてしまった。
しばらく気まずい空気が流れる。
その悪い空気を打ち破るようにシノが口を開く。
「悪い人に……見えない……。」
「シノ?」
「えっ……」
突然話し始めるシノに、ミカとマイカの2人は困惑した。
その様子を気にすることなく、シノは続ける。
「だって……こんなに美味しそうに……ご飯食べる人……悪い人なわけ……ない……!」
シノは珍しく叫んだ。
しかしそれは静かに、でも力強い叫び声だった。
「ふふ、たしかに、美味しそうにご飯を食べる人に悪い人はいないね」
ミカは思わず笑ってしまった。
そしてその言葉を繰り返すように言った。
「2人とも……!」
マイカは思わず感動してしまった。
これまで彼女が『魔王だ』と主張しても、まともに受け取ってくれる人間などほとんどいなかった。
「バカバカしい」とあしらわれたり、恐怖のあまり逃げ出したり、様々な反応、それも、前向きな感情ではない反応ばかりだったのだ。
「席まで譲ってもらって、オマケに私を見ても怖がらずに仲良くしてくれて……、ほんとになんて礼を言えばいいか……」
たじたじとするマイカ。
「お礼なんて大丈夫だよ!」
それに答えるミカ。
その言葉の後に静かにシノが頷く。
「別に……当たり前のこと……しただけ……」
その後、3人は会話を交わしながら食事を進めた。
シノとミカの冒険の話。
マイカの体験談。
3人は色んな話をした。
楽しい時間はあっという間に過ぎた。
食事を終えた3人は酒場を出た。
「今日は本当にありがとう!またいつか会った時はよろしくね!」
そう言うとマイカはどこかへ行ってしまった。
「なんか、凄い人だったね……、」
「うん……なんというか……楽しかった……」
「ふふ、そうだね、」
「よし!私たちも行こっか!」
2人は酒場での余韻に浸りつつ、また歩き出す。
新たな目的地へ向かって。