アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜 作:うさトロ
フランクの無茶な要求に心がへし折れてしまったミカを引きずり、シノは酒場へと入った。
それと同時に、まるで直前まで待ち構え待機していたかのように、声が飛んできた。
「よぉ、そろそろ来る頃だと思ってたぜ」
その声の主は、目付きが悪く、頭には赤いバンダナを巻いている。
「誰……?どういうこと……?」
シノはくたばっているミカを椅子に座らせ、その赤いバンダナ男に質問した。
「うちの武器が必要なんだろ?無実の証明のためにさ」
なぜかこの男はふたりの危機を知っていたのだ。
「なんで……それを……!?」
シノは少し怪しいと思い、警戒しながらバンダナ男に尋ねる。
「さぁ?なんでだろうな」
バンダナ男ははぐらかす。
あくまでもとぼけるつもりだ。
「俺の名は『マルク』、うちの武器は公国にも採用される、どれも一流の武器なんだぜ」
赤いバンダナ男は『マルク』と名乗った。
「だから……?」
シノはミカの手当、もとい、ミカの折れた心をなんとかしようと必死なため、マルクの話にはテキトーに相槌をうっている。
「はぁ……やれやれ、俺の武器を買って公国の奴らのところに持っていけばお前らは無実を証明できるってのによぉ……?」
マルクの口角がニヤリと上へあがる。
(この男……怪しい……)
しかし、今のシノにはこの怪しい商人から武器を買わないことには無実を証明することは難しくなってしまうのだ。
「武器……値段……」
シノは警戒しながらも武器を買う道を選ぶ。
「おっ、分かってくれたか、それなら話は早い!えーとだな……」
そう言ってマルクは左手の親指から小指の順に指を折っていく。
「武器はひとつ10万、全部欲しけりゃ200万だ。」
「なっ……200万……!?」
「なんだ?払えねぇのか?」
マルクの提示する思わぬ武器の高さにシノは大きな声をあげて驚く。
今この話をミカが聞いてなくてよかっただろう。
恐らく彼女がこの話を聞けば卒倒していただろう。
「そんな……金……ない……」
シノは慌ててミカのバッグから財布を取り出し、手持ちのお金を確認する。
当然、200万ゼルなんて大金、持っているわけがなく、シノはオロオロと焦り始める。
「別に無理して買う必要はないんだぜ?どうせ最後にはこの国が買い取ってくれるんだからな」
「チッ……」
シノは軽く舌打ちをする。
シノはどうしてこんな目に会わなくては行けないんだろうかと少し嫌な気持ちになる。
「まぁ、別に、すぐに払え。なんて言わねぇよ、支払いは後からでもいいんだぜ」
「ふむ……」
後から支払ってもいいと言うマルクの要求。
しかしどちらにせよ200万なんてシノとミカのふたりには後からコツコツ貯めたところで、到底払える金額ではない。
「払える自信……ない……」
シノはしょげてしまった。
自慢のうさ耳も下向きに垂れ下がってしまう。
「ちょっと待ちな、なにか勘違いをしていないか?」
「ん……?」
マルクにはまだ何か企みがあるようだった。
「簡単に手に入るじゃねぇか、」
「なんの……話……?」
シノには全く分からなかった。
思わず大きく首を傾げてしまう。
「褒美だよ、褒美、それさえこっちに回してくれりゃ払えるんじゃねぇのか?」
「あっ……」
「そーゆー事だよ」
さすが商人。お金のことになると頭が冴えるようだ。
職業病なのか、それともただただずる賢いだけなのか。
だがしかし、シノに残された手はもうこの方法しかない。
「そろそろこの国とべったりの商売も潮時だと思ってな、まぁ時間はやる。考えといてくれ」
そう言ってマルクはその場を離れる。
「偉そうに……」
シノはぼそりと文句を吐いた。
「ん?んん……?あれ?私は……?」
しばらくしてミカが目を覚ました。
「ここどこ!?なに!?何がどうなってるの!?シノ!シノは!?」
まだ折れた精神は完全に治りきってはいなかったようだ。
まだいつものミカとは程遠い。
この件が終わったらしっかり休ませてあげよう。
そう思ったシノだった。
「ミカ……落ち着いて……私はここ……」
「あっ、シノ!ここは……?」
「ここ……酒場……公国の……」
シノは先程の出来事を全部ミカに話した。
「そうだ……!武器……!何とかしないと!」
ミカは全てを思い出し、自分たちにかけられた疑いを晴らすための方法を考えることを再開した。
「と、とりあえず、今ここにある武器は返しに行こう!ほら行くよ!」
そう言ってミカは酒場のドアを思い切り開け、武器を持って勢いよく飛び出した。
「ちょっと……ミカ……前……!」
「えっ?うわーっ!!」
いきなり飛び出したミカは不幸にも誰かと追突してしまう。
「おい!気をつけろ!」
「す、すみません……」
その相手はいまふたりが一番会いたくない人物だった。
「フ、フランク……兵士長……」
ミカの顔が途端に青ざめていくのがわかった。
「なんだお前らか、武器の方は取り返せたのか?」
フランクはシノとミカのふたりを確認した瞬間、嘲笑うような、小馬鹿にするような口調で話し始めた。
「それが……」
ミカはシノと共にマルクとの出来事を全てを説明した。
「なるほどな、無実の証明は無理だったか。なら、覚悟をしておくんだな」
「ちょっと待ってください!」
「まぁ、お尋ね者になるたくなければ自分から王宮にでも出向くんだな」
ミカの言葉を無視し、フランクは余裕の表情で酒場の中へ入っていった。
「あー!もう!なんなのよあの人ー!!」
ミカはその場で地団駄を踏んだ。
そしてシノがなにかに気づく。
「なに……あれ……」
「ん?どうしたのシノ?」
「あそこ……」
そこに落ちていたのは大きながま口財布だった。
シノはそれを拾い上げ、その重たさに驚愕する。
「なにこれ……おもっ……!」
「もしかしてこれ……フランクさんのやつじゃ?さっきぶつかった時に落としたのかも……」
その財布がフランクの物だとわかった途端、ふたりはなにか思いついた。
「ねぇ……シノ……?」
「うん……ミカ……」
「「この状況……、使えるかも……!!」」
お互いに顔を見つめあった。
ふたりの口角はぐいっと上にあがり、悪そうにニヤニヤしている。
ふたりの逆転劇が始まろうとしていた。