アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜   作:うさトロ

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第31話「フザケンナ、ユルサナイ」

シノとミカのふたりはフランクの財布を拾った。

この財布は使えそうだ。

 

「とりあえず、この財布はちょっと持っとくとして……、」

「アイツ……酒場に行った……」

「だね、ちょっと入ってみよっか」

 

ふたりは酒場に入っていったフランクの後を追う。

「なんだお前ら、また来たのか?」

チップが不思議そうな顔をしてふたりにそう言う。

「ちょっと事情があって!」

ミカはそう吐き捨てて酒場の物陰へと隠れる。

シノもそれに続いて物陰に身を潜めた。

辺りをキョロキョロと見回し、フランクを探す。

すると案の定、奥の方でフランクはマルクと話していた。

「やっぱり……!なんか怪しいって思ってんだよあの二人……!」

「いや……あの時……ミカ……くたばってたし……」

ふたりはバレないようにひそひそと会話をする。

「何を話してるんだろ……」

「ちょっと……集中して……聞く……」

シノは目をつぶり、全神経を耳に集中させる。

「お願い、シノ。何としてもこっちが有利になる情報を聞き出してね……!」

 

シノの耳に二人の会話が入ってくる。

「マルクよ、お主もワルよのぉ……」

フランクの口調が少しおかしい。

恐らく酒が回っているのだろう。

「『ワル』か、悪くねぇ響きだな、まぁ旦那程じゃねぇけどなぁ!」

マルクがそういった後。二人は大きな声で『ガハハ』と笑っていた。

とても愉快そうだ。

しかしシノとミカのふたりは不愉快である。

不幸の上に成り立つ幸福なんてたまったもんじゃない。

「お前の買った武器を国で買い取る。そしたらそれをまた盗ませて……」

「おい旦那……!声が大きい……!」

二人は手を組んでいた。

しかもとんでもない悪事のために。

「シノ……、聞いた……?」

「うん……許せない……」

ふたりはかなり頭に来てきた。

「おっと、すまない……酒が入るとな……」

「チッ……」

酒が入って調子に乗っているのだろう。

口を滑らせたフランクに対してマルクが注意する。

申し訳なさそうにはしているが、にやけ顔は変わらない。

「まぁそう怒るな……これからもよろしく頼むぞ」

「旦那も、尻尾掴まれないように気をつけな」

そういうと二人はまた酒を飲み始める。

 

張り込みをする刑事の如く二人を見守るシノとミカ。

その後ろから思わぬ人物の声がした。

「……どれも高そうな酒だな。」

「お前……!なんで……!?」

「ふたりとも、何してるの?こんなコソコソと」

「あ、あなた達は!!」

黒いコートに仕込まれた大量のナイフ、腕にはワイヤーガンが携帯された、無愛想なヤツ。

そのパートナーは透き通るような白色の長い髪を長く伸ばした、すらっとした魅力的な女性。

「サブナック……!」

「……おう。」

「エレナさん!!」

「どうもー」

 

思わぬ人物との再開により、ガタガタと物音を立ててしまった。

 

「なっ!お前ら!」

「いつから聞いていた……!?」

案の定。

四人ともフランク達に見つかってしまった。

「……なんだコイツら、消すか」

「待って!ダメ!殺すのは良くない!」

仕込んでいたナイフを取り出そうとするサブナックを抑えるミカ。

「……そうか。」

「なっくん、私たちは離れよう、ここはシノちゃんとミカちゃんの問題だよ」

エレナが事を察し、この場を離れることを促した。

「……あぁ、そうだな……」

「ふたりともまたね!頑張ってね!」

そういうとエレナとサブナックのふたりはその場を去った。

「なっ、待て!」

聞かれたのをまずいと思ったのか、フランクは二人を追おうとした。

「待った!あの二人は関係ない!」

「むしろ……関わらない方が……身のため……」

シノとミカは必死に彼らを庇った。

「むぅ……まぁいい、それよりお前ら、今の話……どこから聞いていた?」

「割と……初めから……」

「旦那!こいつら早く捕まえて沈めちまおう!」

悪事がバレたことにより焦るマルク。

しかし何故かフランクは異様に落ち着いていた。

「まぁ待て、街の中だ。事を荒立てて兵士を呼びたくはない。」

妙に肝が据わっているフランク。

マルクをなだめた後、静かにこちらを向いて続ける。

「どうするつもりだ?私たちの事をこの国の王、ドレイク大公に告発でもするか?」

フランクは煽るように話す。

「そりゃ……、こんなことして、許されるわけが……!」

ミカの言葉を遮るようにフランクが話を続けた。

「それも結構。」

どうしてそこまで余裕なのか。

ふたりには理解できなかった。

「だが、私はこの国で要職を勤める身。」

「お前らが小さな正義感を振りかざして訴えたところで、大公は私の言うこととお前らの言うこと、どちらを信用すると思う?」

あくまで兵士長という権力を使ってふたりのことを押さえつけるつもりだった。

「くっ……汚いやつ……!」

これにはさすがのシノもミカも黙り込んでしまった。

「旦那はムダに上っ面だけはいいからな、陛下からの信用も厚いときた。」

「上っ面だけとはなんだ、余計な一言だぞ」

そう言いつつもマルクとフランクは顔を合わせまたガハハと大声で笑う。

「まぁいい、私はやさしいんだ。」

しばらく笑い飛ばした後、思い出したかのように言い放った。

「先程までの話を全て忘れろ。そしてここから速やかに立ち去れ。お前らが生きる道はそれだけだ。」

「こいつ……!どこまでも卑怯なやつ……!」

シノは歯を食いしばった。悔しくて悔しくてしょうがない。

「シノ……もういいよ、行こう……」

諦めが着いたのか、ミカは俯きながらシノの手を引いて酒場を出た。

「ミカ……!」

シノはミカの顔を見た。

その顔は今にも泣き出しそうなほどクシャクシャになっている。

しわしわになりかけている唇を強く噛み、必死に涙を堪えている。

シノはもう耐えられなかった、あいつらをぶっ飛ばしたい。その気持ちでいっぱいだった。

しかしそんなことをすれば本当に公国を追い出されることになる。

大好きだった家に二度と帰れなくなってしまう。

ぶっ飛ばしたい。でも出来ない。

シノの頭の中はその事で葛藤していた。

 

酒場を出てとぼとぼ歩いていると、

ご機嫌そうなどこからか鼻歌が聞こえてきた。




今回は「サブナック」さんとこのサブナックとエレナちゃんを少しだけですがお借りしました。
ありがとうございます!
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