アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜   作:うさトロ

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第32話「最終手段:メイド」

フランクに完全に追い詰められ、

シノとミカのふたりは公国の道をとぼとぼと歩いていた。

するとどこからかご機嫌な鼻歌が聞こえてくる。

 

「あれ?……あれあれぇ?」

そのご機嫌な鼻歌の正体は過去にふたりが助けたメイド、ミーナだった。

「あなた達、あの時国境沿いでシンシアちゃんを助けてくれた人ですよねぇ、その節はお世話になったですぅ」

「なんだか浮かない顔をしてますけどぉ、何かあったんですぅ?」

「ミカ……そういえば……財布……」

「あぁ、そういえば……」

ミカはバッグからフランクの財布を取り出す。

「アイツ……財布……落とした……」

シノはミーナに説明した。

「お財布ぅ?フランク兵士長の?でも届けると王様に罰を受けちゃうんです?」

ふたりはこくこくと頷く。

「何がどうなってるんですかねぇ?」

状況を掴みきれていないミーナに、

ミカは一から全部事情を話す。

 

「なるほど……それは尋常じゃない事態ですねぇ……」

ようやく状況を把握することが出来たミーナ。

「そうなの……、困ってるの……」

「あ、もしかしたらシンシアちゃんならなんとかしてくれるかもですよぉ?」

「シンシアちゃんが?」

「はい!ということで後でお城に来てくださいねぇ」

「わ、わかった……」

そういうとミーナは城の方に戻っていった。

 

「行っちゃったね……」

その様子を眺めていた二人も徐々に、ゆっくりと歩き始めた。

「大丈夫かな……」

ミカがボソっと呟く。

「何が……」

「もしこのまま、ずっと私たちが悪者扱いされ続けることになったら……シノはどうする……?」

「そんなの……わかんない……」

「うん……だよね、そうだよね……」

ふたりは不安と絶望で押しつぶされそうだった。

もしこのまま、公国を追われる身になってしまったら?

悪者扱いで終わってしまったら?

お尋ね者にされて怯える日々を送ることになってしまったら?

色んなことが頭の中をぐるぐると回る。

 

とぼとぼと城に向けて歩いていると、

城門の前の桜の木の辺りで、見慣れてしまった赤いバンダナの男が話しかけてきた。

「お!?お前ら随分と持ってるな」

マルクだ。

「いや、この財布は……」

「こりゃ、いっちょ稼げるかもな!」

ミカがこの財布はフランクのだ。と言おうとするが、マルクは早とちりしてミカの言葉を遮るように、食い気味に話す。

「さっきは随分とふっかけちまって悪かったな。その金で武器を売ってやってもいいぜ。」

かなり上から目線な気もするが、ふたりにそんなことを気にする余裕はない。

「いや……でも……」

人の財布だ。その中のお金なんて使えるわけが無い。

「なに躊躇してんだよ、お前らが助かるためには、俺にその金を渡して武器を受け取る。そしてお前らはその武器を持って城に行って、無実ってことを証明して、褒美を貰う、それでいいじゃあねぇか!」

やはり腐っても商人。

お金のことや商売のことになると頭の回転が早い。

「話は決まりだな、この財布は貰ってくぜ」

「あっ、ちょっと……」

マルクは半ば強引にミカから財布を受け取る。

「城に着くタイミングで武器は届けに行ってやるからよ!」

そういうとマルクは行ってしまった。

 

どうしてこうも上手くいかないんだろう。

今日は厄日だ。もうなんにも考えたくない。

ミカは心の底から絶望していた。

負のスパイラルに陥ってしまう。

 

「こうなったら……ミーナちゃん達に頼るしか……!」

もうふたりに残された希望はそれしか無い。

ふたりは城に向かう。

今度こそ身の潔白を証明するために。

 

ふたりの細々とした歩みは、

歩数を重ねる度にずんずんと重たいものになるのが自分達でもわかった。

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