アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜 作:うさトロ
「では、説明してもらおう。」
だだっ広い王宮で、シノやミカ、フランクにマルクはドレイク大公陛下の尋問を受けていた。
状況的にはフランクが圧倒的に不利な方まで陥っていた。
「我が国はマルクから武器を買っている。それに違いないな?」
「仰せの通りでございます」
ドレイクの問いに答えるフランク。
「ではマルクよ、その武器はどこで仕入れている?魔物から買い取っているのか?答えよ。」
質問の矛先はフランクからマルクへと向けられる。
「そのようなこともあるかもしれやせん。しかし仕入先は商売が種。いくら王様と言えども明かす訳にはまいりませんや」
「ふむ、主の言う通りだな、理解しよう」
「ではフランク。何度も盗まれ続ける武器。警備を強化しても一向に被害が減らないのは何故だ?」
質問の矛先が再びフランクへと向けられる。
「それは……」
確たる証拠、反論するための素材を持ち合わせていないフランクは口ごもってしまう。
その様子をあまり気にすることなく、ドレイクは続ける。
「盗んだのが魔物とあらば、人の法では裁けぬ。しかし、人間が手を引き、誘導しているのであれば……」
ドレイクは一度話すのを止め、少し溜めてから、
「その人間は裁くべき存在である。」
と言い放った。
「まさか、陛下は我々がわざと武器を盗ませているとおっしゃりたいので?」
しかしまだ反論を続けるフランク。
「では、我が国の兵士はそれも防げぬ程に無能だと言うのか?兵士長?」
あえて役職名で呼んだのは威圧をかけるためだろう。
「そんな!滅相もない……そうだ!そそのかしたのはこの冒険者ではないでしょうか!商人が武器を届けに来たのがその証拠です」
「は……?」
「なんでそうなるの」
思わぬ方向に飛んできた矛先。
もうシノもミカも怒りを通り越して呆れ果てていた。
「ふむ、ミーナはどう思う?」
ドレイクは少しだけニヤリとしながらメイドであるミーナに問う。
そのにやけは下心からのものでは無かった。
何か策があってのにやけだろう。
それに応えるかのように、ミーナもニヤケ顔をしながら言葉を発した。
「あれぇ?そういえば、マルクさんのそのお財布、フランクさんとおそろいなんですねぇ、仲良しですぅ」
にやけ顔はやがてゲス顔に変わっていく。
可愛い顔がとんでもないくらい悪役のような顔に変わっていく様はこちらも少しゾッとしてしまうほどだった。
「おそろい!?えぇ!?」
マルクは慌ててさっき半ば強引にミカから奪った、大金の入った財布を確認する。
それを見たフランクが『しめた!』と言わんばかりの表情で、
「マルクめ!私の財布を抜いた不届き者め!きっと犯人はこのマルクです!」
という。
「どこまでも……愚かなやつ……」
シノは呟いた。
「とんでもねぇ、この冒険者が持ってたんでさぁ」
マルクの言葉は真実だろう。
嘘をついている様子は見られない。
それに続けてミーナが、
「さっき、おふたりが『届けなきゃ……』って言ってたのを聞いたんですぅ、そのことを前もって陛下に伝えておいたんですよぉ」
フランクはあっさり論破されてしまった。
階級が自分より上のメイドの発言とあらば、信用度はあちらの方が上なのだ。
「フランクよ。」
重々しい口調でドレイクがフランクの名を呼ぶ。
「あの財布には相当な大金が入っているのではないか?」
「左様で。」
「どうやって稼いだ?」
「そ、それは……コツコツ貯めて……」
急にフランクの口調がぎこちなくなる。
ますます怪しくなってきた。
「……先程から、話に真実が無きこと、気づいておるか?」
「はっ!」
ドッキリ企画の種明かしを受けたような反応を見せるフランク。
焦る様子が目に見えてわかる。
「魔物にわざと武器を盗らせ、そこの商人が安く買って、お主が高く買い取る。それで毎回儲けを山分けでもしていたのだろう。」
「メイド長、あの方をお連れ願えますか?」
シンシアがメイド長のナギに頼み、公国の酒場の店主であるチップを連れてきた。
「2人が頻繁に目撃された酒場のご主人です。」
チップはあんまり緊張感のない声で、
「あ、これはこれは大公陛下、どーも」
と軽く挨拶をした後、
「あぁ、このお二人ねぇ、よくうちの店に来てましたよ」
と証言をする。
「この二人がどんなことを話していたか、申してみよ」
ドレイクの尋問が始まった。
「いやぁ、いくらなんでも、お客さんの話に首を突っ込むほど、私も野暮じゃあないんでねぇ」
「でもそこの兵士長さん、この最近は随分と羽振りがいいみたいですね、何年も溜まってたツケも全て払ってくださいましたし、おまけに近頃は注文するお酒も高いのが多いと来た。」
「まったく、上得意様ですよ」
チップはベラベラと暴露した。
「お前!客である私のことをベラベラと……!」
色々バラされるのが気に入らないのだろう。
「ベラベラは……お前も同じ……」
「違うのは真実か嘘かってとこだけどね」
すかさずミカがツッコミを入れる。
「申し訳ございませんねぇ、陛下の『話せ』と言う命令は断れませんよ、さすがにねぇ」
「ちぃ……っ」
フランクは舌打ちをした。
「兵士長、随分と羽振りが良いようだが、その金はどこで手に入れた?軍の給与はそれほど変わってはいないようだが。」
再び尋問が行われる。
「いや、その……ちょっと臨時の収入が……って、どこからでもいいじゃないですか!」
言い逃れをしようと必死のフランク。
しかし決してドレイクは逃そうとはしない。
「そうもいかぬ。疑惑がかかっている今、貴様にはそれを明確にする責務がある。」
睨みを聞かせてフランクに問いかける。
「そ、それは……」
フランクの顔が再び青ざめる。
「兵士長を連れていけ。そこの商人もな。裏で話を聞かせてもらおう」
ドレイクはキッパリと言い放った。
しかしマルクはそれが気に食わなかったのか、
「待ってくだせぇ、安く買って高く売ることの何が悪いんです?」
と反論をする。
「国の財政に無用な負担をかけたのならば、国としては罰を与えるのが妥当ではないか?」
「うっ……」
あっさりと論破されてしまった。
フランクとマルクは兵に連れていかれた。
シンシアがシノとミカの元に駆け寄る。
「本当によかったです。おかしな罪を着せられなくて」
「えへへ、ホントだよ……」
ミカもようやくようやく絶望から解放されて、肩の力が抜けたのか、心做しか表情は明るくなっていた。
「兵士長の企みを暴いてくれて感謝する。」
「いえいえ!そんな……」
ドレイクによる直々の褒め言葉にミカの身体に再び力が入る。
もうひと踏ん張りである。
「やつの巧みな隠蔽に愚かな我々は気づけなかったようだ。まずは褒美をとらせよう。」
「お、愚かだなんて……」
緊張でガチガチのミカに対し、ドレイクは優しく話しかける。
「他に、例と言ってはなんだが、何かあったら我々の力を貸そう。いつでも城を訪ねてくるがよい。」
「い、いいんですか!?」
これにはさすがにふたりも驚きを隠せなかった。
こうしてふたりの身の潔白は証明された。
ひとまずは一件落着である。