アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜 作:うさトロ
「私……みたい……!」
「綺麗なもの……見に行きたい……!」
シノはミカにそう告げた。
「確かにシノはこの街から出たことなかったよね、外の世界、興味ある?」
ミカはよく任務や仕事上の関係で、公国の外に出ることはよくあった。
しかしシノは未だに公国より外へ出たことはなかったのだ。
外に出れば魔物の群れや過酷な環境、更には文化の違いから受け入れて貰えないかもしれない。
ミカはそんな心配をしていたため、シノを公国の外に出かけさせることはなかった。
彼女が仕事のお土産話を持って帰って、それをシノに聞かせていたが、もう効果は無さそうだ。
実際に見なければシノはもう納得しないだろう。
そろそろ彼女の好奇心を抑えるのも限界か、と思っていたその時。
『ギュルルルルル……』
シノのお腹が盛大に咆哮をあげた。
シノは恥ずかしさで顔が真っ赤になっている。
今にも爆発しそうだ。もう煙が上がっているのが目に見える。
「とりあえず、一旦帰ろっか、」
「うん……」
シノは俯いたまま小さく頷いた。
帰宅後。すっかり冷めてしまった朝ごはんを加熱しなおしながら、ミカは料理を続けていた。
「もうできるからね!」
「早く……!もう……お腹……ペコペコ……!」
「魔物退治で結構動いたもんね〜、私ももうペコペコだよ……!」
何気ない会話を繰り広げている最中も、料理を楽しみに待っているシノの自慢のうさ耳はぴょこぴょこと跳ねていた。
「はい!できたよ!おまちどうさま!」
その日の朝ごはんは目玉焼きにウインナーソーセージ、食パンだった。皿の端にはレタスも添えられてある。
「「いただきます!」」
食前の挨拶を交わし2人は黙々と食事を始めた。
ツヤを帯びた綺麗な白身が、溢れ出るマグマのようにとくとくと流れ出る黄身を纏い、まるで光のベールのように輝いていた。
それを美味しそうに頬張るシノ。
美味しそうに頬張るシノを眺め、そっと微笑むミカ。
ありふれた家庭のような光景だったが、シノやミカにとってはこれ以上ないほどの幸せな瞬間だった。
「ふぅ……ごちそうさまでした……!」
「ごちそうさまでしたっ!」
食後の食器を片付けながら、
「どうだった?」
と、料理の感想を聞くミカ。それに対し、
「美味しかった……!」
純粋な瞳を向けてミカにそう伝えるシノ。
「そう?良かった!えへへ……」
そして照れるミカ。
この会話が今回だけと言う訳ではなく、ほとんど毎回のようにミカは食後にシノにこう質問する。
そうやってシノに褒められることで自らの料理に対するモチベーションをあげるのがミカの密かなブームでもあった。
そして思い出したかのように、ミカはシノに質問する。
「この街を出て、色んなもの、見てみたい?」
少々不安を抱えつつも、改めてシノの決意が決まったことを確認する。
しかし答えなどとっくに分かりきったような物だった。
「見たい……!」
「あの賢者石みたいな綺麗なもの……、他にも沢山あるかもしれない……、」
「あんなもの見せられて……、外の世界に興味を持たないわけ……、ない……!」
「ミカがしてくれてた話の景色も……!ミカと2人で見てみたい……!」
シノの好奇心はもうとめられるようなものではなかった。
「だよね、そう……、だよね。」
しかしミカもそういう訳には行かない。
シノと2人で旅に出るのはミカ自身の夢でもあった。
だが、彼女には公国を警備する任務がある。仕事がある。
どちらも両立はできない。それはミカ自身が1番理解していた。
ミカはその日の夜もずっとその事で頭がいっぱいだった。
夜も遅くなるまで、椅子に座り深く考え込んでいた。
どちらを優先すべきか。
シノとミカ自身の夢か、自分の仕事か。
ミカは葛藤していた。頭の中を同じことがぐるぐると回り続ける。夢か、仕事か。その事だけで彼女の頭はパンクしそうだった。