アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜 作:うさトロ
ミカは葛藤していた。頭の中を同じことがぐるぐると回り続ける。
夢か、仕事か。その事だけで彼女の頭はパンクしそうだった。
翌日。
今日もまた穏やかで暖かな朝日の中、幸せそうにうさ耳をぴょこぴょこさせながらシノは寝ている。
いつもならもうこの時間帯にはミカが起こしに来るはずなのだが……
しばらくして、自力で目を覚ましたシノはまだ眠い目をこすりながら朝食を食べに下の階へ降りた。
しかしミカの姿は家中のどこにもなく、代わりにテーブルの上にはラップがしいてある朝食と思わしきものと、その横に書き置きが置いてあった。
『緊急のお仕事が入ったから、先にご飯食べてて!ごめんね!』
「むぅ……」
シノは少し不機嫌になりながらも、冷めた朝食を黙々と食べ始めた。
味がしない。いや、正確に言えばミカの料理の味付けは完璧だった。
味を感じないのはシノ自身の精神的な面にあった。
寂しいのだ。
しょんぼりとした顔のまま食事を続ける。
味を感じないので珍しく残してしまった。
普段なら朝食の時間は必ずミカと2人で食事をするのだ。
朝食に限らず、朝、昼、晩のどの時間も2人で食事をする。
シノにとってミカのいない1人での食事は初めてだった。
シノはまた寝ることにした、
ミカがいない以上、何をしてもしょうがないのだ。
普段開かない口が余計に開かない。
今朝はほとんど声を出していないせいでシノはとても無気力にあった。
一方その頃。
(シノは確かに『2人で見てみたい』って言ってくれた……)
(私と一緒に行きたいんだ……)
(でも……憧れの警備隊にこんなに早くから入れて、みんなに天才って慕われて……)
まだミカは葛藤していた。
「どうしたんだい、ミカ君。」
「あ、隊長……!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「なるほど。そういう事だったんだね、」
ミカは隊長と呼ばれる男に一通りの説明をした。
「なら、行ってくればいいんじゃないかな」
「でも……!」
「いいんだよ、ここしばらくは特にこれといって大きな事件や事故は起きていないし、かなり平和になった、とも言える状態にある。」
「ミカ君は真面目で仕事熱心だ。本当にいつも助かっている。」
「でも、働きすぎは良くないな、」
「え……?」
「だってそうだろう?働きすぎて体調を崩してしまったら元も子もない。」
「おまけに、帰ってからもその子の面倒ばっかり見てると、君の身体を休める時間はあるのかい?」
「でもうちって、朝9時から夜の6時までの勤務で、お昼休憩も1時間あって、ほぼ毎日残業なしで帰宅できるじゃないですか……、おまけに休みだってあるし、有給休暇だってそれなりに申請すぐ通りますし……」
「確かにうちは職場としてはだいぶホワイトなほうさ。他がどうかは知らないけどね、」
「多分、連邦の方に行けばもっと厳しいんじゃないかな、あそこは国境が近いから魔物の襲撃が昼夜問わず多いからね」
「それに君、有給まだ1度も使ってないだろ?」
「ええ……確かにまだ1度も……」
「いい機会だ、旅に出てみればいいんじゃないか?」
「いいんですか……?」
「あぁ、うちは構わないさ。だって有給の消化だろう?」
「あ、ありがとうございます……!」
「旅に出るならくれぐれも気をつけてね、外には我々でも手が付けられない魔物だっている。文化の違う人間たちもいる。」
「もし良かったら、帰ってきた時にでも思い出話を聞かせて欲しいな、」
「分かりました!ありがとうございます!」
「じゃあ、私の方からも本部の方に伝えておくから、申請は忘れないようにね。」
こうして、隊長と呼ばれる男に後押ししてもらい、ミカの想いは決意へと変わった。
シノと2人で旅立つための覚悟は決まったのだった。