アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜 作:うさトロ
ミカの想いは決意へと変わった。
シノと2人で旅立つための覚悟は決まったのだった。
「おーけー、とりあえず申請は受理したから、好きなだけ行ってきなさい。」
「ありがとうございます!」
「今日はこれで失礼します!お先に失礼します!」
「うん、お疲れさ……ま……。って、もう聞いてないか……」
上司の『お疲れ様』という挨拶を最後まで聞かずにミカはその部屋を飛び出し、職場を後にした。
夜の公国を1人の少女が駆ける。
二つくくりにした金色の髪が風になびき、激しく、なおかつ美しくひらひらと舞う。
ミカは急いで帰宅した。
シノの姿は一階には見当たらなかった。
「シノ!ただいま!!」
ベッドで拗ね続けていたシノは、帰ってきたミカの声に反応し、うさ耳をぴんと真上に張らせ、ドタドタと大きな足音を鳴らしながら下の階へと降りていった。
「遅い……っ!!」
そう静かに叫びながら、言動とは裏腹にミカに飛びついていた。
「う、うわわ、うわぁぁぁーっ!」
あまりにもシノの勢いが良かったため、ミカは押し倒されてしまった。
「いったた……、ごめんね……、寂しい思いさせちゃったね……。」
そうシノに言い聞かせた。
しかしそれは自分にも言い聞かせているようでもあった。
「はっ……!べ、べつに……」
と、シノは顔を赤く染め上げながら、それを誤魔化すようにそっぽを向いた。
「とりあえず、晩御飯にしよっか……って言いたいけど、急いで帰ってきちゃったから食材買い忘れちゃった……えへへ……」
いつもなら仕事終わりには必ず夕食の材料を市場に買いに行ってから帰るのだが、今日のミカはそれどころじゃなかったのだ。
「今夜は酒場になにか食べに行こっか。」
「酒場……!」
今夜は酒場で食事を済ませることになった。
酒場ととは言えども、ジュースや様々な料理が提供されるため、子供だけでも十分な利用が可能だ。無論、酒も仕入れてある。
この辺りには酒場くらいしかレストランのようなものは存在しないので、利用者も当然多い。
毎晩人でいっぱいだ。
「いらっしゃい!今日は何にする?」
「チップさん!お久しぶりです!」
「おう!2人とも久しぶりだなぁ!こんなに大きくなって!いくつになったんだっけか?」
「私が今年で16、シノは……18でいいのかな……?」
「『いいのかな……?』ってお前さん……」
「おーい!こっちの皿はまだ来ないのかー!」
まるで2人の会話を遮るように他の客が叫んだ。
「あぁ、はい!ただいま!ふぅ……こうも人が多いとどうも上手くまわらねぇや……」
「手伝いましょうか?」
「おぉ、悪いな、是非ともお願いしたいんだが……、お前さん、今日はそんなことのために来たんじゃないんだろう?なにかこう……シノのやつに話があるから来たんじゃないのか?」
察しがよかった。ミカはそのことを思い出し、
「ほんとだ……、すみませんチップさん……!」
「いいってことよ!いつも助けて貰ってばかりじゃ悪いしな!!」
チップの言葉を受け取り、ミカはシノと2人席についた。
シノはメニュー表を食いつくように見ている。
どれも美味しそうな料理ばかりだ。
「どれにしようかな……!」
今こうしている間にも彼女のうさ耳はぴょこぴょこ跳ねていた。とても機嫌がいい証拠である。
「私、ナポリタンにするね!シノは?」
「オムライス……!」
「ほんとにオムライス大好きだね、じゃあ注文しよっか、すみませーん!」
「はい、お決まりでしょうか!」
「ナポリタン1つとオムライス1つで!」
「ドリンクの方は……」
「どちらもオレンジジュースでお願いします」
「かしこまりました。すぐにお持ちします!」
「ところでさ、シノ?」
「ん……?」
「昨日さ、私と2人で冒険に出たいって、言ってたよね……、」
「ん……、うん……」
「あ、あのさ!」