アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜 作:うさトロ
「あ、あのさ!」
なにか話そうとするミカの声をさえぎり、話題に割り込むかのように、
「オムライスと、ナポリタンでございます、ご注文の品は以上でよろしかったでしょうか?」
料理が届いた。
「あ、はい……」
「ではごゆっくり。」
なんとも気まずい空気の中、シノとミカは食事を始めようとしていた。
「あ……、とりあえず、冷めないうちに食べよっか、」
「う、うん……」
「「いただきます!」」
いつも食事の前の挨拶と終わりの挨拶は欠かさない。
これは昔から変わらない。
「ふぅ……ごちそうさまでしたぁ……美味しかったぁ……!」
「ごちそうさま……」
2人とも料理をぺろりとたいらげ、お腹いっぱいだった。シノのうさ耳も嬉しそうにぴょこぴょこしていた。
「あ、一つ気になったんだけどさ、」
「ん……?」
「私のオムライスとここのオムライス、どっちの方が美味しいの?」
「はっ……!?」
シノはいま、究極の質問に囚われてしまった。
シノはとてつもなく苦悶の表情で考え始めた。
(あっ、これ聞かなきゃ良かったやつだ……)
ミカはちょぴっとだけシノに申し訳ないと思った。
「んんん……」
まだ悩み続けるシノ。自慢のうさ耳も少ししおれつつあった。
悩みに悩んで、シノが出した答えは……
「ミカのやつ……!」
ミカはほっとした。なんだかんだでシノは30分ほど悩んでいたのであった。
「そっかぁ!良かったぁ!」
前言撤回。ほっとした程度ではなく、めちゃくちゃうれしそうだった。
弾けんとばかりの笑顔をシノに向けながら、
「これからもオムライス作るからねっ!」
と宣言するように言った。
その言葉に呼応するかのように、シノのうさ耳はぴょこん!と跳ねた。
「うん……!」
2人はお互いに屈託のない笑顔をしていた。
その後、互いに見つめあっていると、どんどんおかしくなってきて、
「あははっ!」
「ふ……ふふふ……」
辺りに大きく響くほどの笑い声をあげていた。
食事を終え、一息ついたふたりは、代金を払い、酒場を後にした。
その帰り、ようやく思い出したかのように、重い口をミカが開いた。
「あ、あのさ……、さっきの続きなんだけど……」
しどろもどろとミカが噛み締めるように発音する。
「ん……?」
「シノさ……、この前……、私とふたりで旅がしたいって言ってたよね……?」
「ん……?うん……」
「出よう!旅に!2人で行こう!」
その一言を聞いたシノの顔はとても明るく、今にも弾けそうな、いかにも『パァァァァ』という擬音が似合いそうな笑顔になり、自慢のうさ耳も今まで見たこともないような速さで揺れている。
「いいの……?」
にわかには信じられないシノは聞き返すようにそう言った。
「うん!行こう!2人で色んな景色や綺麗なものを見に行こう!」
ミカもあくまで己の信念を曲げるつもりは一切なかった。
その蒼く輝く瞳はとても綺麗に澄んでいた。
その時シノは気付く。
(綺麗なもの……!)
「綺麗……!」
思わず口に出してしまった。
「綺麗?何が?」
ミカはなんのことか分からなかった。
「その目……瞳……」
「輝いてる……」
「それを言えばシノだって、その紅い瞳、とても綺麗だよ!」
まるでお互いの緊張の糸が途切れたかのように、2人の肩の荷は軽くなっていた。
2人は会話の内容を何気ないものに戻しながらも、夜の公国を歩き、家へ帰っていくのだった。
その帰り道はまるで、2人の旅の決意を祝福、歓迎するように、明るく、優しい光で包まれていた。