アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜   作:うさトロ

7 / 38
第6話「静かなる夜と旅立ちの誓い」

 

「あ、あのさ!」

 

なにか話そうとするミカの声をさえぎり、話題に割り込むかのように、

「オムライスと、ナポリタンでございます、ご注文の品は以上でよろしかったでしょうか?」

料理が届いた。

「あ、はい……」

「ではごゆっくり。」

なんとも気まずい空気の中、シノとミカは食事を始めようとしていた。

「あ……、とりあえず、冷めないうちに食べよっか、」

「う、うん……」

「「いただきます!」」

いつも食事の前の挨拶と終わりの挨拶は欠かさない。

これは昔から変わらない。

「ふぅ……ごちそうさまでしたぁ……美味しかったぁ……!」

「ごちそうさま……」

2人とも料理をぺろりとたいらげ、お腹いっぱいだった。シノのうさ耳も嬉しそうにぴょこぴょこしていた。

「あ、一つ気になったんだけどさ、」

「ん……?」

「私のオムライスとここのオムライス、どっちの方が美味しいの?」

「はっ……!?」

シノはいま、究極の質問に囚われてしまった。

シノはとてつもなく苦悶の表情で考え始めた。

(あっ、これ聞かなきゃ良かったやつだ……)

ミカはちょぴっとだけシノに申し訳ないと思った。

「んんん……」

まだ悩み続けるシノ。自慢のうさ耳も少ししおれつつあった。

悩みに悩んで、シノが出した答えは……

「ミカのやつ……!」

ミカはほっとした。なんだかんだでシノは30分ほど悩んでいたのであった。

「そっかぁ!良かったぁ!」

前言撤回。ほっとした程度ではなく、めちゃくちゃうれしそうだった。

弾けんとばかりの笑顔をシノに向けながら、

「これからもオムライス作るからねっ!」

と宣言するように言った。

その言葉に呼応するかのように、シノのうさ耳はぴょこん!と跳ねた。

「うん……!」

2人はお互いに屈託のない笑顔をしていた。

その後、互いに見つめあっていると、どんどんおかしくなってきて、

「あははっ!」

「ふ……ふふふ……」

辺りに大きく響くほどの笑い声をあげていた。

 

食事を終え、一息ついたふたりは、代金を払い、酒場を後にした。

 

その帰り、ようやく思い出したかのように、重い口をミカが開いた。

「あ、あのさ……、さっきの続きなんだけど……」

しどろもどろとミカが噛み締めるように発音する。

「ん……?」

「シノさ……、この前……、私とふたりで旅がしたいって言ってたよね……?」

「ん……?うん……」

「出よう!旅に!2人で行こう!」

その一言を聞いたシノの顔はとても明るく、今にも弾けそうな、いかにも『パァァァァ』という擬音が似合いそうな笑顔になり、自慢のうさ耳も今まで見たこともないような速さで揺れている。

「いいの……?」

にわかには信じられないシノは聞き返すようにそう言った。

「うん!行こう!2人で色んな景色や綺麗なものを見に行こう!」

ミカもあくまで己の信念を曲げるつもりは一切なかった。

その蒼く輝く瞳はとても綺麗に澄んでいた。

その時シノは気付く。

(綺麗なもの……!)

「綺麗……!」

思わず口に出してしまった。

「綺麗?何が?」

ミカはなんのことか分からなかった。

「その目……瞳……」

「輝いてる……」

「それを言えばシノだって、その紅い瞳、とても綺麗だよ!」

まるでお互いの緊張の糸が途切れたかのように、2人の肩の荷は軽くなっていた。

 

2人は会話の内容を何気ないものに戻しながらも、夜の公国を歩き、家へ帰っていくのだった。

その帰り道はまるで、2人の旅の決意を祝福、歓迎するように、明るく、優しい光で包まれていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。