アルケミアストーリー 〜シノとミカの錬金物語〜   作:うさトロ

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第8話「夢か、はたまた現実なのか。」

「なにあれ……気持ち悪い……」

 

ぐにゃぐにゃと歪む時空をみてシノは気分が悪くなる。

「うっ……気持ち悪い……」

吐きそうになりつつも目の前の現状を必死に受け入れようとこらえ続ける。

 

しばらくして、目の前の歪んだ時空がさらに激しく歪み始めた。

そしてその中から1人の老人が現れる。

「誰……っ!」

シノは見知らぬ老人に対して警戒する。

身も知らぬ人間などに関わるつもりはもっぱら無い。

そんなシノの言葉を無視するかのように、老人はゆっくりと話を始めた。

「よくぞ参った。」

ゆっくりと落ち着いた声で一言放った。

「これから旅に出る勇敢な子よ。」

まるで意味がわからない。

シノは困惑しつつもその老人の言葉を黙って聞いていた。

「ワシの名は『エディアール』。かつては『英雄』と呼ばれる冒険者であったが、訳あっていまはこの『滅びの村』の村長をしておるものじゃ。」

新しく聞く名称や単語がぽんぽん出てくる。

シノはもう頭が痛くなってきた。

訳の分からない説明にもうついて行くことを放棄しつつある。

もう何が何だかわかってはいなかった。

「さて、これから冒険に出る勇敢な子よ。」

「私の名前……シノ……って言うんだけど……」

「それはすまなんだ。ではシノ、」

「気安くその名で呼ぶな……」

「えぇ……」

どっちもどっちであった。

正直やりづらかった。

「コホン!まぁ良い、冒険者となる者よ。お前にはこの剣を託そう。」

「伝説の剣、『リズウィット』じゃ。」

「剣……?弓は……?」

「え?」

「弓……!弓がいいの……!」

「ちょっと黙っとれ」

「むぅ……」

シノは生粋の弓使いであった。剣など握ったことも無い。

「剣を使うのは初めてか。」

「うん……」

「なら良い機会じゃろう。それでワシを倒すんじゃ。」

「おっちゃん……死んじゃうよ……?」

「心配するな、ワシには神の加護があるから死んでも教会で元通りじゃ。」

『神の加護』。ミカがそんなことを言っていたのをシノは思い出す。

「神の加護……って……?」

「おぉ、そこからか、恐らく神父からも説明があるかもしれんが、簡単に言うと死なない体になるのじゃ。」

どうやら、魔物や冒険者によって攻撃されて倒れてしまっても、教会でまた元通りに戻れる、

いわゆるコインティニューのシステムのようなものだった。

「寿命や病気、致死量のダメージを受けてしまうと、本当に死んでしまうからそこだけは注意するんじゃぞ。」

「大丈夫……、私は……死なない……!」

「おるんじゃよなぁ、自信だけは大層なやつ。」

「なに……っ?」

「ほれ、口とではなんとでも言える。早くその剣を構え、ワシにかかってこんか。それともあれか?お主には無理か?」

エディアールはシノを酷く煽った。

「舐めるな……ッ!!」

シノはその煽り文句を買ってしまった。

勢いよく飛び出してリズウィットを持ち、そのままの勢いでエディアールに切りかかる。

「甘いな。そんな見え見えの太刀筋ではワシには指1本触れられん。」

エディアールは飛びかかるシノを華麗に避けて見せた。赤いマントをヒラヒラとさせる闘牛士のようだった。

「まだ終わってない……!」

着地と同時に激しく地面を蹴り、燕返しのような軌道で再びエディアールに切りかかる。

「何っ!」

エディアールもさすがにその瞬発力には驚いた。

しかしスレスレのところで避けてみせた。

「ちっ……!」

シノは軽く舌打ちをする。

(このうさ耳……なかなか鋭いな……だが!)

「そんな在り来りな攻撃ではワシは倒せんな!」

「ならっ……!」

シノは地面を激しく蹴った。それもただ蹴っただけではなく、砂埃が上がるほど、暴れるように、辺りを忍者のように飛び回る。

「なんじゃ……?」

これにはさすがのエディアールも困惑した。

シノは意味もなく飛び回り、まるで切りかかる様子を見せない。

やがて辺りが砂埃まみれになりかけた時、エディアールは察したように、

「これでワシの目をくらますつもりか、発想自体は良かったんじゃが……」

「甘いな。」

そう言ってエディアールは辺りの砂を払うようにセイクリッドサークルを放った。

「ふふふ……これでさっきの努力も無駄になってしまったの……」

しかし、シノの姿はどこにもなかった。

「なに……?まさか逃げたのか……!?」

「逃げてなんか……!ないっ!!」

エディアールの言葉に反応するかのように、シノは叫んだ。

しかしどこを見渡してもシノの姿はない。

(どこじゃ……!どこにいるんじゃ……!!)

「ま、まさかっ!」

「私はここだ……っ!」

そう。シノはエディアールの頭上にいた。

「なにぃぃぃぃぃ!!?」

これにはさすがのエディアールも驚きを隠せなかった。しかし、

 

ガキン!

 

あまりの奇襲戦法に驚きはしたものの、さすがは英雄。咄嗟に頭上に剣を掲げ、シノの渾身の一撃を防いでみせた。

「くっ……!!」

「なかなかやるのう……!」

シノがもう一発攻撃を入れようと剣を構えその時、

「もう良い、ワシの負けじゃ。」

エディアールは負けを認めたのだ。

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