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とある森、降りしきる雪の中で無数の蛸壺が掘られ、全身鎧を身にまとった男たちが談笑に興じていた。
「鎧の中まで冷たくなってきそうだな」
「お前は偵察型だから寒くねえだろ。てか迫撃砲どうした」
「二時間前の砲撃で俺のはもうねえよ。ああ、タバコ吸いてえ」
「エウゲニー、鎧の外に出るのはやめとけ。同士大尉に見つかったら殺されるぞ」
だよな、と三人目の男は嘆息し蛸壺の斜面へと背中を預け欠伸をこぼす。
「足止めはしてるがそろそろ不味いんじゃないか? 退いたほうが」
「そういうな、我々が今後退すれば作戦が崩れることになる」
「「「大尉殿!?」」」
三人が弾かれたように顔を上げると目に入るのは、グレートヘルム型の兜の目に当たる部分にはスリットが入っており中からは赤いモノアイが覗く、それに大きな鎧。
鎧はマクシミリアン式の鎧に似ているが寸胴で分厚さが段違いであり、成人男性三人分といったところだろうか。避弾経始を意識した作りになっており、上から見れば丸みを帯びた三角のように見えるだろう。身長は三メートルほどもある。
そして近代的な装備が所々に飾られ、ふくらはぎ横には履帯までもが取り付けられ。重機関銃をまるで小銃でも持つかのように気軽に持っている。
慌てて立とうとする三人を少年のような声を鎧の中から響かせる大尉と呼ばれた男は鋼鉄の手で制し、座っているように促す。
「もう少し我慢してもらえるか。もう少しすれば左右の軍が我々を後退させてくれる」
明るい口調で言う大尉に三人は顔を見合わせた後に、偵察型と呼ばれた比較的小柄で逆関節の鎧を着込んだ兵士が口を開く。
「ですが同士大尉。噂では左右は総崩れし撤退を始めていると聞きます。」
「左右は我々と違い装甲兵は少ないないからな。多少は大目に見てやれ。しかしこれ以上撤退が続けば我々も退かざるを得んが……と、同士少佐を見なかったか?」
思い出したように言う大尉の言葉に再び顔を見合わせた三人は首をひねる。
「お前見たか?」
「いや、二時間前の砲撃から見てねえな。お前は?」
「……そういえば被害が多かったあっちの方で兵を見てました」
三人の言葉に、困ったように肩を落とした大尉はため息を吐き、ふくらはぎ横の履帯を下ろした。
履帯がしっかりと降りているか地面を踏みしめて確かめた後、モノアイを三人へと移した。
「分かった……何度も言うが鎧の外には出るなよ。特にエウゲニ、貴様だ」
「分かっております! 決して出ません!」
「ははは、エウゲニーにゃ大尉の言葉が一番き――」
一人が敬礼で答え、もう一人が笑ったその時、口笛のような音が上から響いてきた。
「砲撃!」
誰が言ったか、その言葉があちこちから響いてくるのと同時に地面が至るところから爆音と共に爆ぜ始めた。
「全員蛸壺の中に入れ! 終わり次第負傷者がいないかの確認! 機関銃の準備も怠るな! 分かっているとは思うが戦車が出てくるようなら対戦車兵を援護しろ!」
「大尉! 早く中に入って下さい!」
「そこに私は入れんだろうが! 良いから入っていろ! 私は少佐を探す! それと盾もしっかり被っておけよ!」
そう大尉は伝えると履帯を信地回転させ、激しい砲撃の中で雪と土を巻き上げながらどこかへと去っていく。
それを見送った三人は蛸壺の脇においてあった全長三メートル、横幅二.五メートルの三角に曲がったタワーシールドを持ち頭上に掲げた。
砲撃が豪雨のごとく降る中を走る大尉は少佐を探し、見たと言われている場所へと木々を避けながら履帯を回す。
そして、元は白であったであろう、汚れて灰色になって蛸壺から離れようとしている全身鎧を確認し速度を早めた。
しかし、もう数メートルという所で直上から笛のような音が響き渡る。
「くっそっが!」
大尉は灰色の鎧――少佐――へと思いきり体をぶつけ吹き飛ばした。
瞬間、大尉の後ろに砲弾が着弾。吹き飛ばされた大尉は腐葉土に落下。とはいえ、衝撃はある程度殺したのみなので中にいる大尉は息ができず、長方形のバックパックからは煙が吹いていた。
「いつ……大尉! 何故このような……今後方に運びます! メフィスキー! 砲撃が終わり次第各中隊長へ伝令! エフセイ中尉が臨時に指揮を執るようにと!」
「了解いたしました!」
大尉は薄れゆく意識の中で悪態を吐く、総指揮官が前線にいるほうが悪いと、何もなければお前なんぞかばわなかった、お前が死ねば俺のクビが飛ぶんだクソ、と。
「何で俺がこんな目に」
帝歴1905年
ロマノ帝国、その貧民区から誕生したとある扇動者により革命が起きる。後にフィブラリ革命と呼ばれたこの革命は帝国を打倒せんとしていた。そこで時の皇帝サンドロ二世は議会の設立に勅令を出し、立憲君主制へと移った。そして、市民へと当時普及していたラジオにて宗教や言論の自由、集会に結社の自由、更には女性への参政権、経済の自由化、そして後にRI法と呼ばれる様々な自由も認めた事で事態は沈静化し扇動者とその思想に感化された革命家達は海外に逃亡、再起の機会を図ることになる。
そして中央政府は、独立したがっていた国々を独立させる代わりに君主を我が帝国の皇帝とすることを条件に出し、それぞれが喜んで飲んだことによって物的同君連合へと変わり、国名もロマノ帝国からロマノ連合国へと名前を変えた。
女性参政権やRI法は半ばサンドロ二世の強行で行ったため多くの貴族からの反発を受けた。しかし、サンドロ二世は頑なとして譲らなかった。
これにより皇帝と貴族は更なる溝を生むこととなった。
もともと、即位した段階で農奴解放やゼムトヴォなどにより市民寄りな政策を打ち出していた後、貴族が食堂を占拠し農民議員が屋外で食べていると聞いたサンドロ二世は激怒し、貴族を屋外へと農民議員を屋内で食べさせるようにした。
これは軍や警察を使っての監視も行われたために全土で貴族の大反発を招き、皇室の相談役であり僧であったエフィに諭されたことにより同じ食堂で食べるよう緩和された。これによって最初の溝が生まれたのだった。
統一歴1912年
バルカ湖北方にある金鉱でストライキが発生。その鎮圧に軍隊が導入されたが、サンドロ二世が無理を言って共に向かい。止めようとする親衛隊達までも強引に突破して労働者たちの話を聞き、謝罪の言葉とともに立憲君主だということを忘れ劣悪な労働環境を改善すると約束しストライキは収まった。
そして実際に――立憲主義へと変わったとは言え、変わったばかりなので中央政府もサンドロ二世の言葉を無碍に出来ず。トルーピヨ首相も喜々として頷き――労働時間は15時間から9時間へと変わり、賃金も大幅に上がりよくわからない罰金も撤廃された。
この労働改善はその土地で形を変えながらもロマノ帝国全土へと広げていった事により、市民は皇帝や中央政府を熱烈に支持することとなった。
余談ではあるが、1900年のサンドロ二世の即位式では来訪した大群衆が順番待ちの混乱により事故が発生し多くが怪我をおった。その時、サンドロ二世は傷ついた群衆に心を砕き祝賀行事を取りやめ、人員を怪我人の治療へと回している。
もし、この時何事もなかったように祝賀行事へと参加していればここまでの支持はなかったように思う。
そして、この年に工業の重工業化が始まる。
それに伴い帝国東部や極東の開発政策も同時にスタートした。
帝歴1913年
ルバト工場飛行機設計部設計家コルスキーが旅客機として四発機であるアグロンニを開発。度重なるテストや初飛行を経て、お披露目式にて首相であるトルーピヨや新しいものが好きであったサンドロ二世は大いに感激し大規模に導入することを決定。
トルーピヨ首相は元の旅客機としての機能は勿論のこと、広大な国土へと物資を運ぶ輸送機としての稼働も決定し、主要な場所には飛行場を設置し、雪が積もっている場合でも問題ないように除雪車も作られることになる。これによってアグロンニはベリシア鉄道と共にロマノ帝国全土の物資を支える基盤となった。
そして色々な作業を楽にするべく、隣の帝国が作っていた魔力を使い動く作業用全身鎧を参考に自国で作られた魔力式全身鎧――RB-13――が完成。
一家に一台というお題目の元、ポスターやチラシ、ラジオなどでも宣伝されたものの市民にしては高価であったのと、使える人間が限られていたので出荷台数は控えめであった。しかし大きな農家や力仕事が多い現場では売れ、重宝され魔力持ちが良い仕事にありつけるなど雇用効果もあった。
これに目をつけた軍部も多数購入しライセンスを取得、軍事利用の目的でも開発していくことになる。
しかし、資金不足に陥っていった帝国はブリタニア連邦からきていた協商の提案を飲んだ。そして資源も足りず、物資も不安があったことから皇国と欧米へと援助を求めた。
それによって生じるであろう不凍港の問題はすでになく。極東にあるトロパブロ不凍港から、物流中継地であるスチークートへの鉄道網はすでに完成しており、上でも述べた輸送機と合わせ運用していく算段となっている。
そして、それを知らなかったサンドロ二世が私財を投じ大量に購入、ガスマスクを付けた型を危険な労働環境にいる労働者たちへと送った。
トルーピヨや蔵相であるルゲイ、皇后に止められるも強行突破し住んでいた宮殿を政府へ売り払い、高価な調度品や家財も売却。
これにより一家は宮殿からトルーピヨ首相が急いで用意した二階一戸建て護衛付きへと移り、平民のような生活へと変貌した。
これがロマノ帝国全土へと報道されるとサンドロ二世の一家は市民たちからさらなる人気を得、各家にサンドロ二世一家の肖像画が置かれる事態にまで発生。
この時、第四皇女であるアナが家計の負担を減らすために士官学校へと入学手続きを送り、受理されている。
帝歴1915年
いつの間にか帰ってきていた革命家達は労働者がすっかりと様変わりしているのを見てショックを受け、革命を諦めかけたが現政府や皇帝に反感を抱いていた貴族たちに目をつけ甘い言葉で籠絡し貴族たちの支持を受ける形で革命党を起こす。
革命党は現政権を一切支持せずに扇動者が提起した卯月定立を表明した。
政府はこの提起された内容を鼻で笑ったものの、貴族たちが後ろについているのは見過ごせず、行動を監視するため秘密裏に警察を導入。これが後の秘密警察の基盤となった。
そしてこの年の十月、革命党はクーデターを引き起こした。
革命党は前々から暴力による革命を主張しており、それに同調した貴族たちの助力もえて決行。兵は主に貴族たちの私兵や派閥、革命家に賛同した者たちから構成されていた。
ロマノ帝国は赤と白に分かれての内戦へと突入した。
帝歴1916年
貴族や革命党を中心に引き起こされた革命は貴族の手引きにより皇帝一家が住む地域と工業地帯へ侵攻。しかし、秘密警察によってその情報を得ていた政府は軍を待機させており、あっけなく鎮圧された。
だが、革命軍は少数の部隊を万が一のためと秘密裏に別れさせていたため、本隊と軍が戦闘を開始すると同時に少数部隊も目を掻い潜りながら皇居へと接近、護衛と交戦状態に入るものの、護衛は最新式の戦闘用魔力式鎧――MA-1――を装着していたため小銃による弾が通らず鎮圧されたが、決死の覚悟で突破した一人が手榴弾を家へと投げ入れ、爆発。
この時、小さかったアレクセイ皇太子が地下から抜け出して戦闘の様子を見ており、それに気付いたサンドロ二世はアレクセイ皇太子を連れ戻そうとした所に手榴弾が入ってきたため皇太子を咄嗟に庇い、重症を負ってしまった。
鎮圧した護衛が急ぎ家へと入り、重症を負っていたサンドロ二世を発見。
急ぎ病院へと運ばれ、一命は取り留めたものの下半身不随となってしまった。
このニュースを聞いた首相は勿論、市民や労働者達は怒り狂い、軍へと志願するものが増えに増えてしまい一部拒否をした所、革命軍達を自前の銃や農具で追い回す事態にまで発展。
帝国の首都や工業地帯でのクーデターは鎮圧されたが、南部でも起こっていた。賛同したものは貴族以外では革命家の思想に共感した者たちや派閥以外殆どおらず、様々な政治工作はしていたものの、元々貴族が後ろ盾ということでその理想は破綻しており、そして皇帝への人気は絶大であった、それを害した革命党は市民や労働者階級からも白い目で見られていたため兵士が思うように集まらず、逆に勧誘すれば銃を持ち出され背中を撃たれ、農具で殺されたりと散々であった。
しかし、革命軍は暴力と恐怖で一定数の人員を確保。そして農地も取り上げるなどをしてそれを元に南部で反攻作戦を開始。ミリクア半島から反攻の軍事作戦を行うことになった。
面倒だ、人生とはこの一言に尽きる。
仕事、人間関係、税金、その他諸々面倒ごとのオンパレード。
楽しいことなど少ないことが常で交友関係も就職を機に減っていき同僚とはうまく付き合えず、休みの日は一人で映画やゲーム、アニメを見る他になく。オタクになってしまうのも仕方のないことだろう。いや、必然というべきか。
仕事だって生きるために仕事をするのか仕事をするために生きるのかだって最近は区別がつかない。
ただ費用対効果を考え、業績を上げるのを考え、リストラされないよう精一杯仕事をする。面倒なことこの上ない。最近では働き方改革なんて言葉を聞くがそれは余裕がある人間だけがやれることであって、仕事に忙殺されている人間は改革なんてする余裕がない。ブラック万歳。全く笑えてくる。
事実、ブラック企業は少々減っているがそれだけ。堂々とのさばりそこで働いている自分が格好いいと思うナルシストが幅を利かせ、自分たちのせいですぐに辞めていく人間を根性なしとレッテルを貼る。生まれた年代によってもレッテルを貼るのだから人間というものはまったくもって面白い。死を選ぶものが多いのも頷けるというもの。
その死を選んだものを自己責任という言葉で片付ける人間がいるのだから更に笑える。つまらない芸人よりもよっぽど面白い。
労基なんてものも当てにならない。定時が17時という時点でお察しだ。もし連絡できて監督官が来ても口裏を合わせて問題ないように見せかけるだけ。後で犯人探しが始まって窓際に。まるでコメディでも見ているかのようだ。
まあ、自分が視野狭窄で考え方が捻くれているという自覚はあるが、早々自分なんてものは変えられるはずもなく、さっきのようなくだらない思考を脳内でこねくり回し、ナルシスト共を内心で見下すことでしか生きていけないのだ。
「……定時なんで上がります」
「まだ仕事が残ってるだろ」
俺のは早々に終わらせて、無言でおかれた仕事もすぐに終わらせた。
自分が終わっていないだけだろうに、自分が少しでも先輩だからと先に帰る後輩を面白くないと思い引き止める。それか残業が当たり前と考えている輩。まあこいつは前者のナルシスト野郎だ。無能めが。
「先輩が終わってないだけじゃないですか。もう少し手を動かす時間を増やせば終わりますよ」
「俺のほうが仕事多いから終わんねんだよ! お前が社交性を持って手伝うなりなんなりすれば終わるだろうが! 第一、先に帰るとか先輩に申し訳ないとか思わねえのか!?」
ほら、反論したら顔を真赤にして仕事が終わらない原因を自分ではなく他人に押し付ける。
そして社交性と先輩後輩というやつで此方の有限な時間をさも当たり前のように縛る。
ほら、面倒しかない。
いつもは定時で上がらず遅くまで仕事をし、定時で上がる際も反論せずにさっさと立ち去るのだが今日は特別な用事があるので反論してやっている。ありがたく思うがいい無能ナルシスト。
「思いません。私はこれから自由時間なので先輩に縛られる謂れは一ミリとも存在しません。その前に先輩、今日と言わず勤務時間にえらく手を動かしていませんでしたね。何をしていたので?」
「関係ねえだろ! いいから手伝え! その後は居酒屋で説教だ!」
「仕事ができない上に手伝いを強制ですか。その後は居酒屋? 説教? お話になりませんね。手伝ってもらったのですから普通は感謝でしょう。もう少し頭を使っていただきたいものです。では」
後ろから色々聞こえるがゴミの言うことは全く耳に入りはしない。
なんでも、喧嘩というものは同じ次元でしか起こらないらしいから。
その後はスーパーに行って普段は買わない高い肉とビールを購入して家に戻り、七輪とガムテープ、焼肉のタレとダンボールを持って近場の人気の少ない高架下に向かう。
高架下についたら人目のつかないような隅っこでダンボールを一人が入れるほどの大きさまで組み立てて中に入って七輪セット。火を炊き始めたらダンボールハウスの内側からガムテープを張り巡らせる。少しの空気でももれないように。
スマホを起動させ最近ハマっているアニメを写して横に置く。
「はぁ、やっぱりアニメは良い」
現実の何もかもを忘れられるし、楽しいという気分にさせてくれる。
最近はただ家にいると倦怠感で何もする気が起きず、生きる事すら面倒だと思っていたのだがアニメはそれをすべて忘れさせてくれる。
アニメだけとも言わずにサブカル系全般は良いものだ。まあ、アウトドアをしてみようと釣りをしようと思ったのだがこの日までには間に合わなかった。
おっと、いい感じに温度が上がっている。
パックを開けて霜が振っている肉を七輪の上に置いて、肉が焼けていく音と光景を目に焼き付ける。
いい感じに火が通った所でひっくり返して軽く火を通してタレを掛けていただく。
うん、やっぱり美味しい。最後に食べたのはいつだったか。
10パックは買ってるからまだまだ無くならない。
アニメを見ながら焼き肉。幸せとはこういう事を言うのだろう。
食べながら、意識が朦朧としていくのを感じる。
そろそろかと息を吐いて七輪を脇に避けて寝っ転がってスマホの画面をただ眺める。
ま、死体を片付ける人には悪いと思う。余計な仕事増やして申し訳ない。それに、家族が元々いなくてよかったのかもしれない。アニメのエンディングを見ながら最期に思う。
今までお疲れ様、俺。
瞬間、意識は白く染まった。
意識が戻ると、生きていたのかと周囲を見渡すが俺は立っていて、下に水が張り地平線の彼方まで続いていて、上は青い空に白い雲が悠然と流れている。
「おい」
「はい?」
聞こえてきたのは威厳がありそうなしわがれた声。
周りを見渡してもただ空と水しか見えないものだから謎だ。
もしや神様というやつであろうか。本当にいたとは驚きだ。地獄を現世に作っておきながらのうのうとしているとは。呆れたものだ。
「地獄にしたのは貴様自身だ」
考えが読めると? ますます最近の小説のような状況になってきたじゃないか。
しかし、地獄にしたのは俺自身とはこれ如何に。俺は普通に勉学に励み、就職先をきっちりと決めたはずなのに騙されただけなのだが。完全週休2日と週休二日が違うとはまさに初歩的トラップ。これに騙された諸君は多いのではないだろうか。俺は騙されなかったが面接官と書類に騙された。
そしてまさかまた自己責任か? 神まで自己責任と言うとは世も末というものだ。ああ、世も末だった。
「貴様には生の喜びを知ってもらう」
おっと? 自殺したものは地獄に行くのではなかったのかな?
「貴様らが勝手に決めたものだ」
なるほどね。まあいいか。
生の喜びね。
じゃあイケメンで頭が良くてお金持ちの家系にしてください。
人生なんて顔と金さえあればイージーモードであるからして。
顔と金があっても辛いという輩は少しは現実というものを知ったほうが良い。持つものと持たざるものの差というものを。
イケメンであれば大体の行動は許され、金さえあれば奨学金という闇金を背負わなくて良いのだ。
「貴様が行く世界を決めた。精々そこで生の喜びを探求すると良い」
会話のキャッチボールをしようとは思わないのか?
人類というものは対話によって成り立っているのだ。もし神がバベルの塔を壊さなければもっと平和になっていただろう。業を感じろ自称神よ。
そして俺は多神教のほうが好きだ。多神教と言っても少しは常識を持った神にしてもらいたい。洞窟に籠もったお方とか今から連れてきてはくれないだろうか。
「暴力の歴史でもある。それは貴様らの業だ」
おっと、責任転嫁とは自称神とは余程傲慢と見える。
もししっかりと性善を設定していたなら相手の考えを尊重し、考えを押し付けず、しっかりと思いやりの優しさがあったならば暴力は減っていたはずであり十字軍遠征や新旧戦争、三十年戦争その他諸々という愚は犯さなかったはず。
肌の色で、生まれで、外見で、身分で差別もしなかったはずだ。
「それも貴様らの業だ」
人のせいにしか出来ないようだ。
チンパンジーのほうが遥かに賢いに違いない。
人のせいばかりにするのは生産的ではないし進歩もしない。少しは自分の非も認めるところから始めれば人間というものは進歩するものだろう。
そこら辺はどう思うだろうか。
「それでは、しっかりと生の喜びを噛みしてこい」
会話になっていない。
やはりこの神から生まれた文明はなるべくしてな
「ふぎゃー! ふぎゃー!」
おっと、強制的に転生させられたらしい。ふざけるなと言いたいところだ。
目の前にはスラブ人的な顔をし、サラファンと呼ばれる民族衣装を着た女性とルパシカと呼ぶ伝統衣装を着た男性が俺の顔を覗き込んでいる。
まさかここはあの広大な面積を誇る不毛地帯? そんなバカな。おそろしあ。
しかも母と父と思われる二人は確実に昔の服装であるため現代ではない。しかも木造の小汚え部屋も見えるものだから金も持っていないものと見える。
「милый」
「да」
何を言っているかわからない。日本語で話してはくれないだろうか。
だが、生の喜びをしれとの言葉は分かった。要はこの二人に愛してもらえということなのだろう。うん、これから新しい言語を習得するとなると大変な予感しかしない。
どうも、ミール・ソコロフです。
男の子で7歳です。立派なショタっ子に成長したぞ。
そしてこのミールという名前は、世界、平和という意味らしい。
キラキラネームも甚だしいと思うのは俺だけなのだろう。将来絶対笑われるぞ。まあ、顔は中々に良いので自称神は少し許すとする。
パパはバリバリの帝国軍人! かっこいい! 内戦とかで死にそうだけど。生き残っても粛清とかされそうだけど。
とは言え、今の所赤いのは見えずラジオからの情報でもパパ上からの情報でも、少しだけ台頭したようだがツァーリのウルトラCにより赤いのは消え去っている。
具体的に言えば、素直に身を引いて立憲君主制にして議会民主主義に切り替えた。ここまでは大体一緒なのだが、この時代には珍しい男女平等の基礎である女性参政権を取り入れた。それによって一旦赤いのは国外に。
更には物的連合になるなど訳のわからないことになっている。
そしてバルカ湖という所の北方にある金鉱で運命の分かれ道であるストライキ。
そこから帝室は破滅していくはずなのだが、ウルトラCを決めたツァーリは金鉱に突撃し、身を引いたくせに待遇改善を約束。見事に通した。立憲君主とは?
まあ、その御蔭で帝政の破滅はかなり遠のいた。
その後は色々あって赤いのが帰ってきて革命とかふざけたこと抜かしてクーデターを起こして内戦突入。
そのせいでうちのパパンが帰らぬ人になって、ママンが目の前で殺されました。
絶対に許さんぞ?
自称神とやらもコミー共も。俺をあんなにかわいがって、くれた二人を殺しやがって。
俺がどうやって生き残ったかって? 察してくれ。
俺は愛というものを知って前世よりはマシな精神構造となったはずなのに、コミーと自称神、二つに復讐したくてたまらない。生の喜びを知れとはどういうことだ? この絶体絶命の状況で愛を知れと? 随分な皮肉だ。
あの笑顔も笑い声も手の温もりも帰ってこない。初めて知った愛しいという感情は憎悪に塗りつぶされた。
しかしその憎悪のままめちゃくちゃにやってしまえばコミーや神を自称している輩達と同じになってしまう。復讐は無意味であると落ち着いたが、そこで俺は考えた。
両親も家もなくなったから家なき子で、学もないのは不味いので軍に入っていずれ来るであろうコミー共に対抗するため、それと将来のため勉強しようと。
孤児院? この時代の孤児院はろくな場所じゃないでしょ。
もしマシな孤児院を選んで孤児院を出たとして待ってるのは肉体労働。しかもここはロマノ連合、絶対に死ぬまで炭鉱か木を数える作業で終わる。
それから俺は寝る間も惜しんで情報収集を開始し、今は俺が襲われたところよりさらに南にまだ反乱軍はいるらしい。お飾りとは言え市民に大人気なツァーリが負傷させられ、その残党は匿われていると来ている。
政府や市民が怒り狂うのも無理はないのかも知れない。
だから今が好機だった。
幸い俺には最新技術の魔導鎧を長時間動かせるだけの魔力があった。
それは貴重な才能で、実戦で魔導鎧の有用性も見せつけられ今は猫の手もほしい帝国は俺を受け入れた。そして士官学校は実力主義でもあったので丁度良かった。上は年齢を気にしないようだ。
寝る間も惜しんだ代償と士官学校までの道のりで目が死んだが問題ないだろう。
まぁ、15歳まで教育してもらえると思ったら違ったんですけどね!
そして俺はこの帝国のことを勘違いしてたことに入学してから気付いた。
言いたいことは分かる。パクリだるぉ!?
はい、色々と見た結果空もいいけど陸もいいな、てことで書き始めました。
ですがこれはパクリではなくオマージュです(確信)
火葬戦記らしく、赤の方々は北部ではなく南部で頑張っていただきます。
弾丸を弾いて動く鎧が書きたいんです。
ただそれだけなんです。
※(普通選挙? 民主主義的政策?) その他諸々。
これを修正しました。前の私は粛清されました。次はうまくやるでしょう。
送信しても既読にならず諸々解除されないので作り直しました。
よろしくおねがいします。