鎧戦記   作:フライングピッグ

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このお話はちょくちょく納得言っていない部分もあるので後で手直しするかも知れません。
申し訳ございません。


サムル橋攻防戦

先の突破戦以降、連合軍は敵の防御線をコザークを全面に押し出して盾にし、我々装甲兵や歩兵で打ち砕き着々と戦線を押し上げていき、重要な要所であるサムル橋後方15キロ地点で小休止。

 今我々の小隊は敵が立て籠もっている塹壕の偵察を命じられている。

 

 『こちらヤコ曹長。聞こえますか』

 「ああ、聞こえている。状況を伝えろ」

 『敵はこちらの陣地からおよそ5キロ先に構えています』

 「よし、了解した」

 『我々はこれから……ちょっと! なんで騎馬と歩兵が!?』

 「はぁ、ついていけ」

 

 またか、あの脳筋共が。

 一度装甲兵の実力を見せるため上から無理やりコザーク達を停止させ、我ら装甲兵で楽々と突破したのを見せつけた。

 だが奴らはそれを見て逆に熱を上げ、無理やり最前線に出張り始め、敵発見の報告があれば前へ前へと勝手に進み自滅している。

 威力偵察にはなっているからいいが、残骸を片付けるのは面倒だ。

 

 

 

 「敵の様子はどうだ」

 『み、味方の心配はしないんですか!? ものすごい勢いで機関銃を乱射されてコザークさん達が死んでいってます! あ、でも敵の砲の位置は分かりそうです。計算するので待ってください』

 

 たまにヤコ曹長の事がわからなくなる。

 慌てていたかと思えば急に冷静になり有能な所を見せつける。

 偵察兵に搭載されている高倍率レンズで砲弾の弾道を捉えてすぐさま計算し、位置を割り出すなど常人ではまず無理なのではないだろうか。まず弾道って見えるものなのか。

 砲兵泣かせにもほどがある。

 

 『位置分かりました。今から敵の配置と重迫撃砲のおおよその位置を伝えます』

 

 伝えられた情報を書き留め、礼を伝えて無線を一度切ると指揮所へと無線をつなぐ。

 出てきた通信手に状況と場所を伝え、了解の返事が帰ってきた所で再び無線を切り再びヤコ曹長へと無線をつなぎ撤退の指示を出す。

 後は航空機との連携で大体の砲は破壊できるだろう。

 

 『コザークさん達はよろしいのですか?』

 「我々の関知するところではない」

 

 そう、我々はコザークたちの援護をしていない。

 一切というわけではないが、コザーク達が逃げ帰り、それを敵が追ってきた場合のみ装甲兵や歩兵が出るという具合だ。

 良く言えば威力偵察要員。悪く言えば口減らし。

 上もコザークには辟易しているらしく、これを機にコザーク達を減らそうという魂胆のようだ。

 

 それにコザークも気づかないわけではないのだろうが、ああやって自分たちの価値をアピールしている。

 まあ、着々とコザーク達は攻勢に失敗していき人間や馬は勿論、信頼も失いつつあるのだが。

 

 軍部の上層に楯突けばどうなるか、彼奴等が教えてくれている。

 全く、大人しく戦車や装甲兵に座を渡せばよかったものを。時代遅れのバカどもめ。

 そうだ、コザーク達が音を上げた暁にはお祝いとしてコザックダンスでも踊って差し上げよう。

 

 

 そして、運命のサムル橋攻防戦。

 早く落とさねば、敵が橋を落としてしまうかも知れないので我々は急ぎ陣地を展開、サムル橋の手前でいつもの塹壕戦となった。

 ここでの鍵はどれだけ早く敵塹壕を突破できるかにかかっている。

 

 「今回はよろしくおねがいします」

 「ふん、貴様らはあとから付いてくればいい。我らの強さを見ておけ」

 「ですが、今回は速さが勝負だと上からのお達しです」

 「集中の原則も知らんのか?」

 「……は?」

 

 

 今回はコザークや装甲兵なども関係なく、連携して攻めようとしたのだがコザーク達はこれを拒否。速度ならば負けぬと大群を従えて飛び出していってしまった。

 何が集中の原則だ。あれは敵の弱点を探り兵力が勝っていなければ到底意味をなさん。

 くそ、特権階級かなんだか知らないが足を引っ張りやがって。ここで橋を落とされれば今までの苦労は水の泡となるのだぞ。分かっているのかあいつらは。

 前線に集中? なにかの冗談か。

 塹壕に騎兵突撃をする狂人共が。

 

 「大隊長殿、如何しますか」

 「……放っておけ。暴走すれば見殺しにせよとの命令だ。貴様が所属する特務参謀からな」

 「左様で」

 

 

 

 サムル橋攻防戦。最初の攻防戦にて、コザーク達の大攻勢が発生した。

 その突撃したコザークを待ち構えていたのは機関銃、それもどこからか持ち込まれた。

 機関銃によって多くのコザーク兵が倒れたため障害物になり、後ろの騎兵が迂回機動を取ったものの、それも撃退され躯を晒した。馬を盾に戦うものもいたが、軽迫撃砲によって死んでいった。

 結局の所、抑えたのは塹壕一つだけであり、それに対してのコザーク兵の犠牲者は明らかに釣り当っておらず、その抑えた塹壕も敵の散発的な砲撃に晒され残りも逃げ帰ってくる羽目となる。

 後に伝わるコザークの大虐殺が発生した。

 

 

:コザーク

 

 攻勢に失敗した。

 原因は分かっている。敵が学習しだしたのだ、我らの戦術を。そして馬だ、馬が撃たれれば我らはただの歩兵。

 それを敵に付け入られて撤退するしかなくなるのだ。

 勇気のあるものは落馬しても死んでしまった馬を盾に応戦しているが、止まれば敵の砲撃に晒される。

 馬が足りず、歩兵として戦うコザーク兵もいる。

 

 後ろからくる鈍亀は役に立たず、我々がひくときのみ援護をするだけで突撃の際は次いてこれずに置いていく。だが、突破をしたにも関わらずそれの穴を埋めようとしないというのはどういう事だ?

 無能共が。

 

 「くそ! 何故味方がああも無能なのだ!」

 「我らをすり潰す気なのだろう」

 

 コザーク用に建てさせたテントの中、悔しさを噛み締めていれば声がかかる。

 声の方を見てみれば同志クスラノフがテントの中へと入ってきていた。

 

 我らをすり潰す? 我らコザークを? そんな馬鹿な話があるか。

 

 「どういう事だ。我らは軍管州まで与えられた特権階級なのだぞ!? ありえん!」

 

 俺の言葉を鼻で笑った同志を睨みつけてやれば、クスラノフは肩を竦めパイプに火を灯しゆっくりと煙を吐いた。

 

 「ありえるのだよ。我らは上層部の提案した機械化師団、そして装甲兵というものを危険視し排除しようとした。それが上層部の癇に障ったのだろうよ。それに、今回は自由にしすぎた」

 

 危険視だと? そんなものはしていない。我らがいるのに機械に頼るなど屈辱の極みだ。断固として認められることではないのだ。

 現に我々だけで何個もの塹壕を突破した……我々だけの力だけではないが。

 

 「だが……しかしだな」

 「しかしも何もない。事実だ」

 「……反乱でも起こすか?」

 

 冗談でいったつもりだったのだが、同志は鬼のような形相でこちらを睨み、腰のサーベルにまで手を伸ばした。

 

 「冗談だ! そんな事はせん! 滅ぼされるのが目に見えている!」

 

 勢いよく両手を振り冗談と伝えれば同志はホッとしたように息を吐き、腰のサーベルから手を離し、腕を組んで俺を見下ろした。

 

 「そうだ。滅ぼされる。あの哀れな反乱軍と同じようにな。であれば、もうでしゃばるようなことはせずに後ろにいようではないか」

 「それはどういう――」

 「――軍警にならないかとも打診が来ている。この国を降伏させたなら、取った土地に軍警として広く配備もしてくれるそうだ。我らの地位は揺るがない」

 

 悪くはない。悪くはないが……

 

 「……軍上層部からの打診ならば俺は蹴るぞ。突撃し、死んだほうがマシだ」

 「中央政府直々の打診だ。我らがツァーリも推してくださっている……それに、下手なことをして軍管州を取り上げられても、な」

 

 軍ではなく中央政府、そしてツァーリもか。

 腹立たしいが、悪くはないだろう。面目も保たれ、我らは生き延びる。

 軍の上層部にすり潰されるのも気分が悪い。ならばいっそ後ろに下がり家族のために働くのも悪くはないだろう。

 

 「これを受けるならば素行も良く、とのお達しもある。これで軍に意見できる立場から降ろされた……嫌がらせもできん。ま、信頼も落ちている事だ。生き残れるだけマシだろう」

 「チッ……しょうがあるまい。後のことは新しいものに任せるとしよう。次の戦働きが悪いようであればまた我らの出番もある」

 

 それまでは精々鉄人形や鉄の箱にでも頑張ってもらおうではないか。

 それに実のところ内心ホッとしている。戦うことでしか価値を示せなかった我らが平穏に過ごせるというのも悪くはないのだから。

 子供や皇女様をも使う軍上層部には反感しか抱かんがな。

 

 ツァーリの威光にさらなる輝きあれ。

 

 

:ソコロフ

 

 俺は今、テントで一人コサックダンスを踊っている。

 なんでって、コザーク共が音を上げたからに他ならない。

 これで余計な資源が減るのを防げると思えばコザックダンスもしたくなる。

 

 先の攻防から数日が立った頃、少将からの手紙でコザーク達がこの戦争が終われば軍警や警察といった姿になるというのを見た。

 あの頑固で自由なコザークが頷いたのかと疑問符を浮かべたが、後方から続々と交代要員が配属され、大多数のコザーク達が戻っていくのを見るに本当だったらしいと確信し俺は今踊っている。

 これからはしっかりと連携もするようで、馬を降りたコザーク兵や歩兵の前を俺達装甲兵がいくことになった。

 だから小さく笑いながらコザックダンスをしている俺は何もおかしくはない。

 

 「中尉、次の戦いのことでお話が……え?」

 「あ」

 

 何をしている曹長。

 入る時は声をかけろとあれほど言っているのに、なんで勝手に入ってくる。

 何をしている本当に。粛清するぞ?

 

 

 そして次の日、攻勢の際には降りしきる鉄の雨を弾きながら歩兵の盾になり俺達装甲兵が先行する形で突撃していた。

 

 「命令通り第一塹壕を突破しても止まるな! 塹壕の処理は歩兵に任せろ! 敵の砲がまだ生きているからな!」

 

 まだ生きている砲があれば止まるべきではない。

 何故ならば敵の塹壕は敵陣であるため防御側の砲撃照準は正確なのだ。

 突破されたと分かればすかさず砲撃され、こちらの被害は増すばかりで良いことはない。

 くそ、時間がないとは言え空爆前に突撃させられるとはな!

 

 塹壕を飛び越え、後ろに残っている敵兵は歩兵に任せて更に向こうの第二塹壕へと履帯を回す。

 見えてきたのは第2塹壕、の後ろに複数の対戦車砲。

 盾は置いてきているというのに! しかしなんでこんな所にある!? 先の爆撃や砲撃でほとんど壊したはずだぞ!

 その砲を見るに新型の対戦車砲……クソが! 随分な支援を受けているようだな!

 

 「総員乱数機動! 照準を絞らせるな!」

 「りょうか」

 

 一人命中した。

 生きているのか死んでいるのか確認する時間はない。

 対戦車兵も我ら中隊も含めすべて重機関銃だ。盾は持ってきていない。 

 

 「第二射が来る前に突破するぞ! 魔力を回せ!」

 

 歩兵の小銃弾が装甲が叩く音を聞きながら、その音の原因である塹壕から顔を出している敵兵へと重機関銃を薙ぐように乱射。

 頭を引っ込めさせ、更に近づく。

 

 「手榴弾用意! ピンを抜け!」

 

 塹壕を飛び越える段になり、腰から手榴弾をピンごと抜き、タイミングを見計らいセーフティレバーを離して塹壕を飛び越えた。飛び越える際に手榴弾を塹壕に落とし、ある程度の歩兵を掃除する。

 そして問題の対戦車砲へと肉薄しながら重機関銃を乱射する。

 すると、装填が終わった砲が俺へと狙いを定め撃ってきたので数歩先の横へと身体を回転させるように移動し回避。

 少し掠ったが問題ない。

 

 「死にたくなければ早く取り付け!」

 

 再び履帯を回して対戦車砲に近づき装填を急いでいる兵士を肉塊に変え、第3塹壕にももちろん対戦車砲が確認された。

 それ込みで第3塹壕を蹂躙する頃には装甲兵は全体を通して、魔力切れを含め半数まで減っていた。

 やはり一番の敵は魔力量か。次の循環スーツに期待するしかない。

 

 それからは第2塹壕を制圧した歩兵と合流し魔力の回復を待って、橋へと急ぐ。

 随分な強行軍だが仕方がない。橋をこちら側のものにするためだ。

 本当は戦車が到着するのを待つのだが、戦車はまだ来ていないのでしょうがない。戦車もコザーク兵が足を引っ張ったおかげで少数しか生産されておらず、この戦場にも少数しか来ておらず組織だった動きはできない。

 だが、今回のコザークの撤退を受けて増産される見通しがたった。

 この戦争中盤くらいには現れるだろう。はっは、大爆笑だ。

 

 次の作戦では、対戦車兵と偵察兵は突撃に参加せず後ろから敵兵、敵対戦車砲への長距離直接火砲支援(ダイレクトカノンサポート)の任につく。狙撃手とスポッターに近い。

 なので橋を渡るのは突撃兵のみということになる。

 それと、橋が落ちる可能性もあるということで爆撃と砲撃の支援はない。

 

 次の作戦開始時間が近くなり、それに必要なものがまだ来ないので内心焦っていれば後ろから履帯の音が聞こえ、音の出どころへと視線を向ければ兵員輸送車、と共に偵察兵達がやってきていた。

 その中の一人が慌てたように耳のアンテナをピコピコ動かしながら俺へと駆け寄ってくる。

 ヤコ曹長か。

 

 「中尉、怪我はありませんか」

 「あるように見えるか? あるように見えるなら後方に下がれ。それより、それに積んでるのは弾薬と盾か」

 「はい」

 

 師団の中でこの作戦に参加した第一複合師団でここまでで稼働可能なのは十分の八程度かと考えていたが、アンクルサムと二枚舌が余計なことをしてくれたおかげで予想よりも減っており十分の五、半分にまで減っていた。だがまあ、生きている循環スーツが予想よりも多ければ兵は増えるだろう。

 

 「小隊集合! 弾薬の再分配を行うとともに突撃兵は盾を受領しろ。偵察兵と対戦車兵は直接火砲支援に向かえ」

 

 我ら小隊は一人減ったくらいで特に作戦行動に問題があるわけでもない。

 それに橋を渡るのは突撃兵のみのため一旦、突撃兵のみで構成された急造の部隊――突撃隊――へと吸収される。

 突撃隊が橋を確保したら歩兵が続き、橋近くの街を攻め落とし歩兵と工兵が橋頭堡を築く算段となっている。

 その時にはロシアンティーでも優雅に飲むとしよう。

 

 「時間だ。行くぞ」

 

 ヤコ曹長達と別れ、突撃隊へと合流。

 対戦車砲の直接支援を受けながらの前進となった。

 

 

 

:対戦車兵

 

 高倍率レンズの先は照門と照星。

 更にその先は、わずかに見える対戦車砲と弾を込める兵士。

 それに照準を合わせて、引き金を引く。

 

 身体を揺さぶられそうになる衝撃を堪えて撃った先を見る。

 少しずれたかな。

 

 「左に0.2。一人巻き込んだ」

 

 横にいるのは特務小隊からきた偵察兵、ヤコ曹長。

 排莢して、新しい弾薬を薬室に送り込みながら報告を聞き、照準を修正する。

 もう一射、命中。あの対戦車砲はもう使い物にならない。

 

 「3.5キロの距離を2射で命中させるんだ。凄い」

 「止まっていますので。それに、この砲の精度がいいだけです。次お願いします」

 

 たしかあの銀狼の小隊員と聞いていたから期待したのだけれど、期待通りだった。

 しっかりと風の方向を伝えてくれるし、弾着観測もしっかりしている。

 急に偵察兵とバディを組めと言われて困惑したけれどこの人なら私の腕前について来れる。それに、少々後ろに配置されてしまったから当たるか心配だった。

 他の対戦車兵はバカスカ撃ってるらしいけど、スマートじゃない。

 

 「そろそろ突撃開始みたい。もう少し減らせってさ。右に10メートル目標。射距離3540、東の風プラス3度」

 「了解しました」

 

 射距離も瞬時に伝えてくるこの能力は私の相棒に是非ともほしい。

 もう一門破壊した所で、隣から声がかかる。

 

 「これ聞いたらリュドさんのこと欲しがるだろうな」

 「それは光栄です。引き抜きの話があれば即移りましょう」

 

 そう簡単に決められるものでもないのだが、エースの一人と数えられている銀狼のお願いは無碍にできないはずだ。多分。

 

 「上から命令。対戦車砲を掃討したら榴弾に切り替えて突撃兵の援護」

 「了解しました」

 

 小難しいのを考えるのは後でいくらでもできる。

 今は目標を破壊することに専念しよう。

 

 

:ソコロフ

 

 突撃前に対戦車兵の援護を受け多少は減ったが対戦車砲はまだ健在。

 なので厚さ十センチの曲線を描いたタワーシールドを掲げての前進となる。

 鋼鉄の塊のためかなり重く、履帯を使用しての速度は思い切り下がってしまい人間の全力疾走程度の速力しか出ない。

 

 まあ、ないよりはマシなので良いのだが。 

 

 「同志達が援護をしてくれている間に突破する。橋の向こうまで着いたならそのまま周囲を掃討し歩兵の援護にあたれ。いいな」

 

 大隊長のありがたいお言葉の後、俺を先頭とした魚鱗陣のような陣形で攻めることになった。

 ……は?何で俺が先頭なんだ。

 

 「各員安心しろ! 先頭は銀狼であるミール・ソコロフ中尉だ!」

 

 そういうことか。エースだから先頭ということか。士気高揚に使わせてもらうと。なるほどなるほど?

 ふざけるな。士気高揚のためであったなら大隊長が先頭で突撃しろ。指揮系統の混乱? 知るか。

 替えがきくからといって中尉に先頭を貼らせるんじゃない。クソが、エース扱いほど面倒なものはないな。

 

 俄に湧く周囲の様子に、抵抗することもできないので大人しく先頭に立ち、お決まりの言葉を吐いて履帯を回す。これが同調圧力か。

 

 「ツァーリの威光を示す! 突撃!」

 『ウラアアアァァァアアア!!』

 

 橋の手前からでも砲弾や銃弾がこちら側に飛び込んでくるというのに、更に激しくなる向こう側へと爆撃も砲撃もなしで突撃しなければならない。

 死ぬかもしれん。

 

 「倒れた味方につまずかないよう間隔を開けろ!」

 

 これの何が不味いのか、先頭の装甲兵が倒れれば後続がそれにつまずくかも知れないということだ。

 そのために間隔を開けさせたがどうなるやら。

 

 「ぐぬっ」

 

 予め調整しておいたのだろう、俺達に向かって45ミリ対戦車砲が正確に放たれる。

 その一発を縦で受け止めたが、衝撃が凄まじく動きが止まりかけた。これは何度も受けきれるものでもない。そして盾も重くなって使う魔力量が増える。このままでは足が止まって本当に死ぬ。

 こうなれば無理矢理にでも速度を上げる!

 

 「2発砲弾を受けたら盾を横に捨てろ! 味方を信じ速度を上げる!」

 

 盾と鎧に銃弾が当たる音を聞きながら、橋の向こうで装填が終わった対戦車砲が俺に向いているのが分かった。

 盾を持つ腕に魔力を回し第2射を受ける準備を整え、砲弾を受けた。

 砲弾がめり込んだその衝撃は大きく、盾を持つ左側が泳ぎそうになるのを履帯のコントロールで持ち直す。一息吐いて、盾を橋の外まで放り投げた。

 ここからはチキンレースだくそったれ。 

 

 重機関銃を牽制のためにばら撒きながら橋の中央まで突破、折り返し地点となった所で再び俺へと一つの照準が向く。

 どうする? 横のやつの盾をもらうか? いや、横も盾を放り捨て、今装甲に着弾して落伍した。

 重機関銃の弾が運良く射手にあたるのを祈る? まだ500メートルもあるというのに?

 どうする、どうする、どうする!

 

 考えている間も与えてはくれないらしい、砲弾は発射された。

 経験か、勘か、自然と重機関銃も気休めの盾として腕を十字に組んでクロスアームブロック。

 その中心に砲弾が直撃する瞬間、俺は少し横へとずれた。

 

 「中尉!」

 

 仲間の言葉で意識が戻る。すると、俺はまだ橋を渡っていた。

 何事かと下を見てみると両手がなくなり、前装甲の少し横が砲弾でえぐられている痕が見えた。

 どうやら生きているらしい。生身の腕も無事だ。

 では、やることは一つだな。ぶっ殺す。

 

 「私のことは気にするな! 進め!」

 

 俺は魔力をさらに回し、隊列から更に前へと進み憎き対戦車砲へと回避軌道をとりながら一直線に。

 幸い手には循環スーツが通っていない為動ける。

 武装もなにもないが、だからこそ更に早く移動できる。

 

 300メートルを切った距離を全力で履帯を回し対戦車砲の一つへと突貫。

 俺を狙った砲の横の砲が俺に向いたが、その砲は対戦車兵の援護によって破壊された。

 そして、さらなる砲弾を避けて距離を更に詰め、対戦車砲へと体ごとぶつかった。

 

 「なんだこいつ! 狂ってるのか!」

 

 ゆっくりと起き上がって吹き飛んだ砲で下敷きにされている男の頭を踏み潰し、逃げ腰になっている砲手に回し蹴りを入れて吹き飛ばす。

 近くの装填手が拳銃を俺に撃つが効くはずもない。

 狂ったように拳銃を乱射する男に近づき、膝蹴りを入れ黙らせた。

 その衝撃で男が血を吐いて俺の鎧を汚したが、まあ問題ない。

 

 次の砲へと向かうかと視線を移動させれば、味方の装甲兵達がこちら側に到着し周囲の掃討を開始した。こうなれば勝ったようなもの。風呂にでも入りたくなる。

 

 「中尉は下がってください! 後は我々が。おい! 中尉を後ろに運べ!」

 

 ちょうど魔力切れで意識が朦朧としていたから丁度いいか、倒れても。

 疲れた体を癒やすように、意識は暗闇へと落ちた。

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