「青葉です。本日は宜しくお願いします・・・・・」
言葉とは裏腹に全くやる気のなさそうな青葉。
本日はうちの鎮守府の取材にわざわざ本国から来てくれたらしいのだが、なんでこいつこんなにやる気がないんだ?
「なあどうした?」
「聞いてくださいよ周防さん。私って生粋のジャーナリストじゃないですか?」
「お前重巡な」
頭おかしいんちゃうか。重巡がジャーナリスト自称したら浜風はどうなるんだよ。
きっとあいつそのうち運送屋名乗り始めるだろうし、照月はさすらいのフードファイター名乗るだろうし、暁に至ってはチンチンレデイとか自称してそうだ。
ん? でもあながち間違ってないと言うか、むしろそっちが職業か。
「まぁ周防さんがなに言ってるのか意味わかんないですけど」
「お前今ので自分の存在全否定だからな?」
「実は私の悩みって言うのはですね」
「ねえ聞いてる? 一人語り始めないで」
「ここの鎮守府ってスキャンダルとほぼ遠いじゃないですか? 行き遅れのフラット女性提督なんて、男の噂が皆無だし」
「むしろそれはあって欲しい切実な願いだ。誰かに貰って貰わないと現在卒塔婆になってるゼクシィがバベルの搭になっちまう。邪教の館でも合体に使って貰えないゴミ屑なんだぞ」
「照月に至っては色気より食い気だし」
「知ってるか? あいつ結構な勢いで店を潰してるぞ。それはスキャンダルじゃないのか? 艦娘として致命的だろ」
「そんなの赤城さんとか加賀さんとか大和さんで見慣れてますからね」
見慣れちゃいけないからな?
「浜風はいい線言ってると思うがな」
「死んだ目好きな男がいると? どんなネクロフィリアですか。せめてドラム缶愛好家の男子と噂になってくれれば」
そんな奴いねぇよ。ドラム缶について語り合う浜風なんか想像出来んわ。
「暁さんはレンチ振り回すだけのチンチン娘だし」
まぁそれはしょうがない。
「てかスキャンダル無くて結構じゃないか。あったらあったで管理責任問われるからな」
「いや、既に管理責任問われるレベルじゃないですか?」
鎮守府の惨状を見て青葉は苦笑する。
確かに問われるだろうなぁ。提督が。
「いいんじゃないか? 俺は提督じゃないし。サポートだし」
「連帯責任って知ってます?」
全く酷い話だ。悪いことしてないのに連帯で責任とらせるなんてな。
「まぁ何にしても諦めろ。ここでスキャンダル探そうとしたって、いるのはスキャンダルに無縁な・・・・・」
「いましたよね! つい先日ここに来たばかりの!」
いたなぁ。
「いたな。潜水艦」
「いや、違うでしよ? 重巡がいたじゃないですか」
「そうだった。北海道から来た胸がメロンの奴だったな。夕張」
「夕張は軽巡ですから」
「そうだったな。胸が戦艦だったことは覚えてるんだけどな」
「お前はアホか!」
後頭部を思い切り叩かれ振り替えると、そこには鈴谷が立っていた。
「よう鈴谷」
「あんた絶対わざとでしょ」
「おいおい。お前の胸を間違える分けないだろデチ公冗談だから!」
ジェンガのところ如く積まれたゼクシィ片手に襲いかかってくる鈴谷。
本当にゼクシィ提督を誰か貰ってやって欲しい。
「取り敢えず鈴谷さん取材させてください!」
「今の話の流れでOKすると思う?」
「うーん。それじゃあ三万円払うんで先っちょだけ」
「どこのスカウトよ!」
そうだ。それでOKなら俺が申し込みたいわ。
「鈴谷。三万円貸して」
「今の話の流れでOKすると思う?」
ち!
「困りました。これで鈴谷さんがOKしてくれたら、あることないこと書けたのに」
「書かないでよ。てか周防海尉を取材すればいいじゃない。この人叩けば埃でそうじゃない?」
「失礼だな」
「そうですよ鈴谷さん。周防さんは本国では歩くブラックリストって言われてるんですよ? 書きすぎて書くものが逆にありません」
「ねえ? 海尉って元監察だよね?」
「監察だって人間だ。聖人君子じゃない」
「それ監察の人間が一番言っちゃいけない言葉だからね」
発言の自由と権利が保証されてる国にいる筈なんだがな。
「そういうわけで鈴谷さんを密着取材させて貰いますね!」
既に青葉の中では決定事項のようだった。
2
青葉からの取材が決まった翌日。
浜風が何故か気合いを入れてドラム缶をデコっていた。
「よ、よう浜風。朝から何してるんだ?」
「おはようございます。今日は取材があると聞いたので、一生懸命ドラム缶をデコレーションして、デコドラにしてみまして」
お前電飾とか付けすぎだし、それデコトラ見たいになってんだけど・・・・・・・
「そ、そっか・・・・・頑張れよ」
多分、鈴谷の取材であることを知らないんだな。
俺はそっと目元を拭いその場を後にした。
そして鎮守府に向かう途中で照月を見かけた。
何やら浜辺でベンチプレスしているのだが・・・・・
俺はそっと見なかったことにしてその場を素通りしようとしたら、目の前にトレーニングベンチが落ちてきた。
「おはようございます。奇遇ですね海尉」
「ねえ今わざとこっちにぶん投げたよね? 明らかに偶然を装うのに無理があるぞ」
「実は今日取材がありまして」
「ねえ、お前も大概人の話を無視するよね? しかも聞いてないから!」
「今日は沢山運動して大食いの新記録を作ろうと思ってたんですよ」
「止めてくれない? この島でお前の胃袋満足させられる店はないから」
「そういうわけで今日は有給で休みますので」
聞いちゃいないよ。
艦娘ってこんなに人の話を聞かない存在だったか?
これはこれで元帥に文句つけてみようかな。ろくな艦娘がいないので、優秀で胸が大きくて美人で気立てのいいおっぱい。
いや、頼んだら頼んだでぶっ殺されるかぶっ殺されるか殺し屋みたいな戦艦送り困れそうだな。
誰とはいわないけどさ。むで始まってしで終わる眼鏡なんていわないけどさ。
もう朝から疲れた。
俺は鎮守府にたどり着いたところで、暁の姿をチラリと見つけたので、そっと鎮守府の敷地に立てられた壁に身を隠す。
あいつもか! あいつもなのか?
もう今日は大人しく帰ろう。
そっと気づかれないように踵を返し、壁伝いに歩いた瞬間に壁が崩れた。
「いいいいいいやああああああああああ」
最早バイオハザードのジャックおじさん宜しくと言わんばかりに、レンチを構えた暁が清々しい顔で姿を現した。
「あら提督! こんなところで奇遇ね! 暁に会いに来てくれたの?」
どちらかと言うとお前が会いに来てくれたんだよね!
「な、なあ? お前も取材なのか?」
「何を言ってるのかしら? 暁はデートするのよ」
「そうか。お前もチンチン・・・・え? 今なんて?」
こいつ初めてチンチン意外の言葉を使わなかったか?
「暁はこれからデートしてくるの。なんてったって暁は大人の女だから!」
大人の女ねぇ。365日熊さんパンツを穿いててチンチン叫んでる奴がねぇ。
何だか感慨深いなぁ。これで近いうちに暁も寿退社と言うわけか。
「そうか。幸せにな」
「何を言ってるの海尉? デートは勿論海尉とするのよ?」
「ごめん。意味がわからない」
「暁のデートに付き合わないと、レンチに代わってチンチンしちゃうんだからね!」
そう言ってブンブン振り回したレンチが、暁の手からすっぽりと抜け飛んで、海を泳いでいた駆逐棲艦に激突して大爆発を起こした。
レンチって魚雷の役割も果たすのか?
何にしても、暁に付き合わないとチンチンされるということなので、俺は仕方なく暁とデートすることとなった。
まぁデートと言ってもブルーラグーン諸島には何もない。
せいぜいあるとすれば駄菓子屋くらいだろう。
浜辺通の道を暁とテクテク歩いていると、世にも珍しい艦娘が立っていた。
「HEY提督! ようやく見つけたデース!」
いや、全然珍しくも何ともなかった。カレー作りが大好きだけど殺人級のクソ不味さで、何故かそれが妹のせいになっているという、主砲を使わずして味方を沈めるフレンドリーファイアが得意の戦艦だった。
どっかで見たことある顔があるなぁ。提督というから俺ではないな。
そう言うことにして俺はその場から立ち去ろうとする。
「海尉呼んでるわよ」
「暁。俺は提督じゃないだろ」
「そうだったわね。海尉はジョーソーブにチンチンされちゃったもんね」
「暁。俺は上層部にチンチンされたことは一度もないし、そもそもチンチンなんてのはだなぁ」
「オーマイガ! 提督が卑猥な言葉を連呼してるデース」
あ~やだ。オーバーアクションすれば取り敢えず欧米系に見えると思ってる子のパターンで、目の前の艦娘は冷めた目の俺の様子などお構いなしに話を続けてくる。
「周防提督~! ホーミーデース!」
ん? ホイミ? デス?
スクエニ呪文をごちゃ混ぜに唱えられても困るんだが。
まるで捨てられた子犬みたいな声を出してすがり付いてるくる艦娘。
「シャッターチャンス! ふふふ。とうとうスキャンダルをゲットですよ!」
「よう双葉。元気か」
どこからともなく現れた自称ジャーナリストの重巡。
「青葉です! てか昨日はちゃんと名前覚えてたのにどういう記憶力してるんですか!」
「私がいるのに無視しないでくだサーイ! 周防提督! 早速教会行くデース」
「おい馬鹿放せ! 教会の蘇生料いくら踏み倒してると思ってんだ! 今行ったら確実に俺はザラキでぶっ殺されるんだよ!」
「海尉、天下の聖職者に即死魔法使わせるって前代未聞ですよ?」
青葉。世の中には金に汚い聖職者が溢れてるんだよ。
毎度毎度海に沈む度に「オー提督! 死んでしまうとは情けない!」とか言いながら腹の中では笑って皮算用してる神官が横行してるんだ。
「てかお前鈴谷の取材は?」
「逃げられたテヘペロ」
「そうか。ネタが欲しがったら九里坂提督の合コン現場に潜入しろよ。あそこはネタしかないぞ」
「いや、私が求めてるネタはあくまで全年齢対応でして、あの現場基本的にR指定入るんですよ」
「ねぇ、あの提督何してんの? 合コンの現場でR指定ってそれこそスキャンダルだよな?」
「周防海尉。私もまだソロモンの海には沈められたくないので黙秘しますねテヘペロ」
テヘペロを免罪符だと思ったら大間違いである。
元帥にチクってやりたい所だが管理責任問われるだろうし。
いや、そもそも立場逆だろ。なんであの人のせいで俺が管理責任問われなきゃならないんだよ。
「取り敢えず取材するなら夏イベントに向けたものにしろよ」
「つまり周防海尉はフラット艦娘の大破姿が見たいとメモメモ」
「馬鹿か。大破姿なんか見てどうすんだよ。大体龍驤とかの大破姿見ても心に来るもの無いんだぞ」
「ほほう。久方ぶりに顔見に来たら、うちの大破姿がなんやって?」
おっと。これは懐かしい秘書艦の声が聞こえるではありませんか。
振り返った俺は、実にこの時ばかり清々しいくらいにゲスな笑顔を浮かべていたと思う。
「よう浜風。元気だったか」
この後、俺は龍驤の艦載機に追い回された挙げ句、浜辺の砂の中に首下まで埋められたのだった。