日本帝国軍本部監査局会議室。
「さて、このリストについて何だが」
重々しく口を開いたその声は、聞く者を震え上がらせる。
この国の元帥であり、事実上帝国軍の陸海空を統べる男。
「元帥閣下、そのリストはですね、私はちゃんと保管してたんです。でもどこぞの馬鹿がギャグボール噛まされケツ叩かれて」
「それが遺言でいいか周防?」
「ひいいいいいいい! ちょ! 俺は無実ですって!」
「げ、元帥閣下! 切り捨てるならこの男だけにしてください! 私はまだ死ねない!」
「お前ここぞとばかりにふざけんなよ! ここは管理責任でてめえが処刑されろよ!」
共に嵯峨元帥に呼ばれた九里坂提督と俺は、今まさにデッドオアアライブの状況。テレフォンして助け求めたいんだけど。
どの選択肢選べば助かるか是非に知りたい!
「あのなぁ。お前らが艦娘を性的な目で見て評価をデータ化したのが不味かったの。わかるか? 昨今でフェミスト気取る連中がここぞとばかりに叩くネタをお前らが提供したわけ。無論関わった連中は軒並み責任者から外して遠方もしくは辺境鎮守府に追いやったわけだが、お前らの場合、既に蒼島鎮守府だから、それ以下の鎮守府がないんだよ」
「というかそもそもそのリストに私は関係ないじゃないですか」
九里坂提督がまるで勝ち誇ったかのような顔を浮かべるも、元帥の隣に立っていた艦娘が、放漫な胸元から数枚の写真を出して来た。
「R指定の飲み会楽しかったか? ちなみにこの連中は?」
写真に写るのは下着姿でおおはしゃぎする九里坂提督と、筋肉むっきむきの男達が全裸になって野球拳と酒に溺れている姿だった。
「えー、それはとある大学のダイビングサークルに所属し、ブルーラグーン諸島でダイビングしている友人達です」
「ブルーラグーン諸島でダイビングしてんのみたことないんだけど」
「本当だ! 嘘じゃない! まあ一割ダイビングで九割飲み会ばかりだが」
「「「それはダイビングサークルじゃない」」」
九里坂提督以外のこの場の三人の意見は満場一致。
「ちょ、ちょっと待ってください! こ、この程度で流石に処分はご無体ですぅ」
最早すがるように戦艦艦娘の足にすがり付いている九里坂提督。
こいつもう将校としてのプライドとかねぇのかよ。
「まぁお飾りに罰を与えてもあまり意味をなさいのは知ってるが、処遇は考えておこう」
「ちょっと待ってください元帥」
「さて、このリストが公になったあと、青葉は取り敢えず私の実家へと送った」
あー、そう言えば嵯峨提督も岩手県民でしたね~。
「きっと今頃は摩耶と一緒に楽しく過ごしている頃ね」
「摩耶も!?」
そう言えば艦娘の中で、元帥命令でそばに置かれていた摩耶。他にも元帥の側に元帥指名で側にいる艦娘がいる。
今現在、壁際で直立し、ひたすらうまか棒ボーキ味をモシャモシャ食べている春雨。
「えーと、差し支えなければ摩耶は何をやらかして?」
そっと元帥はテレビに何かの映像を映し出す。
《july 9 2020 俺はとうとう元帥の秘密の冷凍庫を見つけた。仲間達がしていた噂は本当だった。元帥は外部から仕入れた何かをここに隠していると。そして私はそれを見つけ、試しにバレないように一つ持ち出した》
《july 10 2020 どうやら元帥にはバレてないようだ。てか、今日は何だかお腹の調子が悪いな。くそ! こういう時に限ってトイレが全部詰まってやがる! 誰だよトイレにコンドーム流した奴は! クソが!》
《july 11 2020 やけに体が痒いしお腹痛い。何だか今日は元帥が優しいなぁ。それにしてもこれ旨ぇなぁ! チュー、チュー、ってすげぇ病み付きになる。はぁ俺はこれ無しじゃ生きられないな。クソが!》
《JP 12 2020 今日はあれだ。・・・・いつものアレが食べたいなぁ。鳥海またトイレかよ。最近あいつトイレ回数クソだな。てか春雨の旨い棒がアレに見えてきた。クソが!》
《ここから日付だけしか書かれてない》
「すいません。ちょっとツッコミ入れていいすか?」
「黙れ。黙ってみろ。殺すぞ」
これ絶対にアレをパクってるよね! 某サバイバル的なホラーのゲームをパクってるよね!
《やっちまった。元帥に思わず咥えさせてくれって言っちまった・・・・元帥は相変わらず無表情・・・・でも美味しそう ・・・・クソ♪》
もうこの時点で摩耶がおかしくなってるのはわかる。いや、元カレあいつはおかしいのだが。
《今日も 忍び込んだ 鳥海 いた 鳥海 貪った 旨かった クソ♭》
《チュー んほ あま ウマ クソ》
《ここから先はページが破られている》
「こう言うわけだ」
「どういうわけだよ!」
あれ明らかに摩耶おかしくなったよね? てか今頃青葉と仲良くって言ったけど、俺の故郷でもある岩手県で何が行われてるの!
「お前はまだイワテを知らない。イワテの原住民はは食べ物すら凶器にする最古の部族だからな」
「はい。元帥閣下の仰るとおりかと。あのわんこそばという拷問手段は北方棲姫すら烈風置いて逃げ出す始末ですからね」
北方棲姫が烈風置いてっちゃうの!!
「流石は三笠。よくわかってるじゃないか」
「いえ武蔵です」
「自分の秘書艦の名前忘れてどうするんですか」
「周防、お前ブーメランって言葉知ってるか?」
きゅうりうるさい黙れ。未だに武蔵の足にすがり付いているお前に言われたくない。
「さてと。いい加減に本題に入るぞ。今回の件で海軍好感度が大暴落で来期の予算も大幅な減額が予想される。そこでお前達に汚名返上の機会を与えてやる。取り敢えずバナナ文書で公表された巨乳と貧乳の対立構造はただの都市伝説だと思わせるイベントを企画し成功させろ」
凄い無理ゲーじゃないか! フラット5が巨乳駆逐艦達相手に友好的になれるか?
いやない!
「無理ゲーっす」
「大鑑巨乳主義が根強い中で、貧乳達への差別意識撤廃を願う元帥の思想を貴様は理解できんのか!」
武蔵が突如激昂して無茶苦茶なことを言い出した。
「そりゃあんたは持ってるからな! あんたが叫ぶと上から目線にしか聞こえないんだよ! あとローアングルから見上げていいですか!」
そして俺はぶっ飛ばされた。
「確かに周防の言葉は理解できる。だがな。ここで手を取り合わずに歴史の過ちを未来の少女達に繋げていいのか? 10年前にとある軽空母がとある重巡に“艦載機落とし”を実行した。未だに“とある軽空母の│巨乳殺し《ビッグスレイヤー》”と語られている話だが、18巻になる前に差し止めたいんだよ」
「すいません。よくわかりません」
なんで有名ラノベのパクリみたい本が出てるわけ?
てか普通に差し止めしろよ。
「重版までされ、貧乳側は印税でウハウハになり、今ではフラット教なるものが現れ、“浜風の胸はパット入り”なる怪しい布教活動までしている。世界のパワーバランスがおかしくなる前に、この流れを止めなくてはならない。わかるな?」
「ちっとも」
「要は巨乳と貧乳を争わせず、二つの勢力をうまく利用して蒼島鎮守府を建て直せと言っているんだ。だがそこには根深い問題がある。金ではどうしても埋められないことだ」
いや、それこそそんなのわかりたくもないよ。むしろ好きにやらせたらいいじゃん。
「大体印税ウハウハなら豊胸しゅじゅ・・・・・は!」
「どうやら気づいたようだな」
そうだ。どんなにレベルが上がっても、どんなに改修したところで、彼女達の胸は決して大きくならない。
何せバスト数値は生まれた時からとっくにカンストしているからだ。
ならその金を何処に使えばいい? 彼女達の使い道と言えば、巨乳達への嫌がらせに使うだろう!
「くそ! 見落としていた」
武蔵の足元では九里坂提督が涙を流し気持ちの悪い嗚咽を漏らしている。
「不憫過ぎる! げんずいいいいいい! どうがわだじに! わだじにもぎょうりょぐざぜでぐだざいいい」
「わかってくれるかきゅうり」
「はい! あれ元帥今なんて?」
「周防。これは“極めて高度な政治的問題”だ。難易度は第七海域に匹敵する高さだ。やれるか?」
流石にそこまで言われたらなぁ。
「わかりましたよ。この任務、なんとかやりとげてみせます。手始めに連中のマネーを抑えるため、日々パチンコとキャバクラ通いをして金を使い、連中から金を借り倒します」
「よし。お前がちっともわかってないことがよくわかった。武蔵」
「OKボス」
「すみません。ちょっと冗談が過ぎました」
「わかればいいんだ」
「取り敢えず競馬と競輪で我慢します」
「金の使い方の問題だと思ってる時点でお察しだよ。九里坂。お前はこいつよりまともだと思ってる」
「お任せください! 取り敢えずフラット5を手当たり次第合コンに連れ出し金を使わせて見せましょう! そして頑張って6人揃って│寿退社《そつぎょう》して見せます!」
「よし大和。この二人を処刑しろ」
「元帥お前もな」
この日、武蔵の主砲が数年ぶりに監察局会議室を破壊したのだった。
現在ニコニコ動画にて紙芝居アップしたいなぁと思ってましたが
パソコン壊れました。