悪役令嬢に転生したので男装して執事になりました〜攻略対象が私の周りに集まるのは何故~   作:れーと

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6・執事様とシリウス殿下の初対面

ティアラちゃんとセオ兄様が家族になり、シリウス殿下の執事を目指し始めて――早二年。

 

私は七歳になった。

 

 

 

「うぅぅ…緊張するぅ……っ!」

 

 

 

今にも飛び出てきそうな心臓を執事服の上から押さえて深く息を吸い込む。

 

 

 

「あはは…アリィは心配し過ぎだよ。シリウス殿下はとても優しいお方だから、すぐに仲良くなれるさ」

 

「――うん。そうだよね、父上」

 

 

 

これまでの過酷な二年間を思い出して冷静を取り繕った。

 

 

 

―本当に地獄の二年だった。

 

朝から晩まで執事の礼儀、主を守るための武力に知力…終いには暗殺術まで訓練をした。執事の評価は主の評価へとつながる、などと言われてしまえばどれ一つとして手を抜くこともできず、この二年間は全力疾走を続けてきたのだ。

 

そう、でもこれで私の願いは叶う。

 

ティアラちゃん×シリウス殿下の最推しカップリングをVIP席で見られるッ!!

 

私はそのためだけに地獄を乗り越えたのだから!!

 

 

 

「おや、時間だ。それじゃあ帰りに合流しよう、アリィ。くれぐれも頑張ってね」

 

「―はい」

 

 

 

中広間で仕事へ行く父上とシリウス殿下の執務室へと向かう私で分かれる。

 

―さぁ、ココからが本番だ。

 

 

 

「―気合十分。いくよっ!!」

 

 

 

**

 

 

 

「―それで?もう一度聞くけど、どうして公爵令嬢であるアリシア嬢が男・装・し・て・執・事・なんてやっているのかな?」

 

 

 

こここここここここ、怖っ!!

 

 

 

昼の光に反射して輝いた金髪と、にこやかな表情とは正反対の全く笑っていない真紅の瞳から目を逸らす。

 

 

 

「―えっと…執事になりたかったから、です」

 

「へぇ?わざわざ男装して?大変な訓練を乗り越えて?ボクの傍にいたいなら婚約者になればいいだけだし…ねぇ、君の目的は何かな?」

 

 

 

部屋に入って簡単な挨拶を交わした後から始まったこの尋問は一体どうしたら終わるのだろう。止まらない冷や汗で風邪をひいてしまいそうだ。

 

 

 

「こ、この国の役に立ちたい、と思っただけデス。…それに、主の婚約者なんて面倒で大変―ではなく、責任重大な役目、私には到底担えませんから」

 

「ふぅん?じゃあ、まぁそういうことにしておいてあげるよ」

 

 

 

ほっ、良かった。尋問が終ったぁ…。

 

 

 

「―まぁ、本当の理由はそのうち言わせるし、ね?」

 

 

 

あっ、良くなかったわ。

 

よし、こうなったら!最終秘技、話題転換!!

 

 

 

「そ、そういえば主って趣味や特技あります?」

 

 

 

あ、ちょっとあからさま過ぎた?

 

 

 

「………はぁ。剣と魔術は自信があるけど…それは特技に入るかな?」

 

「へぇ、魔術ですか…ちなみに何属性で?」

 

「〈炎〉〈雷〉〈光〉〈癒〉〈万象操作〉の五つ」

 

「うわぁ…流石、ハイスペックですね~。…万象操作とか……」

 

 

 

この世界の【魔術属性】というのはほぼ無限にある。

 

その中でも有名なのは、〈火〉〈水〉〈風〉〈土〉〈電気〉〈闇〉〈光〉の七属性。

 

―え?殿下は〈炎〉〈雷〉って言っていたって?

 

そう。そこがポイント。

 

さっき言った七属性は極めると別の名称の属性になるんだ(属性変化)。

 

〈火〉→〈熱・炎〉

 

〈水〉→〈冷・氷〉

 

〈風〉→〈無・空間〉

 

〈土〉→〈緑・大地〉

 

〈電気〉→〈力・雷〉

 

〈闇〉→〈夜・擬態〉

 

〈光〉→〈聖・浄化〉

 

つまり殿下は九歳(私の二つ上)にして〈火〉を〈炎〉、〈電気〉を〈雷〉にまで極めたってことなんだ。

 

普通、属性変化が起きるのはずっと魔術に触れてきた男性で三十歳から五十歳くらい。

 

その上〈星宝〉持ちじゃない人間だと一属性までしか属性変化が起きないんだ。あとは〈星宝〉を持っていないと属性が三つまでしか操れない―とかの弊害もある。

 

…まぁ実感わかないだろうけど、殿下の〈星宝〉と属性は一般的に見て"やばい"ってことだね。

 

 

 

「シアは?君もどうせ魔術使えるんでしょ?」

 

 

 

あはは…何とも酷い物言い。ちなみに"シア"は私の執事用の愛称。

 

さっきは"スピネル公爵家のシア"って挨拶したことで私が"アリシア"だってバレちゃったんだ…。

 

―え?ドジ過ぎる?普通は偽名を言うだろうって?

 

ふっ、考えてこなかったのだから仕方ない!あぅ、私は悪くないんだからねっ!?

 

 

 

「私は〈無・空間(風)〉〈水〉〈闇〉〈時〉〈月・星〉ですね」

 

 

 

私の属性は後衛、援護系が主だから本来護衛には向かないんだよね…。執事になるんだからもっと敵を消しやすい属性が欲しかったよ…。っていうか、闇とか月とか悪役っぽいよね!

 

 

 

「え?五属性??もしかして、シアも〈星宝〉持ち?」

 

 

 

あ、しまったっ!?

 

 

 

「は…はい。サファイヤの星宝持ち、なんです。―あはは」

 

 

 

アレだけは、バレませんように―っ!!

 

 

 

「へぇ~、確かに綺麗なブルーサファイヤの瞳だね」

 

「あ、ありがとうございます…主も綺麗なルビーですよ」

 

「!よくボクの星宝が分かったね。言っていないのに」

 

「あぁ…ガーネットって言うよりもルビーのような明るい、綺麗な輝きをしていましたから」

 

 

 

ルビーってガーネットよりも純粋で透明感があって綺麗なんだよね。殿下の瞳は真っ直ぐで美しかったからそうなんだろうな~って思ったんだ。

 

―っていうのと、ゲームの知識で知っていたから。

 

 

 

「ふふっ、そっか。シアとは長い付き合いになりそうだ。改めてよろしくね」

 

 

 

―はて、何かいいことでもあったのだろうか?

 

急にご機嫌になった主様に嫌な予感を覚えながら私も言う。

 

 

 

「よ、ヨロシクオネガイシマス…?」

 

 

 

こうして、一抹の不安を感じながらも私の執事ライフはスタートした。

 

―まさかあんなに長い付き合いになるとは、考えもせずに。

 

 

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