冴えない棋士は弟子を貰う様です   作:C.C.サバシア

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遂にアニメ最終話の場所
最早改変が入り過ぎて原作がブレイクしてますがこの際もう気にしてられない

これまでに出た原作チョイ役達
篠窪大志
・二十代前半の若手棋士、大卒棋士であり博学
 棋帝のタイトル保持者というエリートな立ち位置で初登場するも名人にストレート負けし失冠している。七段

碓氷尊
・九頭竜八一に敗北した前竜王
 それ以外の情報はほぼ無し(段位も明記無し。竜王戦昇段規定により八段以上は確定)、推定三十代半ば~四十

二ツ塚未来
・於鬼頭信者の若手棋士、四段
 ソフト信者でもある
 九頭竜八一の『西の魔王』名付け親(?)

蔵王達雄
・タイトル通算四期獲得の大ベテラン
 原作情報:九頭竜との対局での勝利を最後に引退する以外強さの見える場面は無し。何のタイトルホルダーだったかも明かされていない

鳩待覚
・関東奨励会の運営をしている若手棋士
 原作情報:大柄な体格だが心優しく、その影響でメンタル面に弱さの残る描写をされた上で九頭竜に敗北している。五段


第十七話『春・花見と決意と』

「花見……遂に、か」

 

 ボロ家の窓の外に舞い散る桜を見ながら一人呟く。

 寒かった時期も終わり気付けば春、俺は目の前の対局に一つ一つしがみついて戦った末に気付かぬ内に玉将戦一次予選突破、盤王戦予選突破と凄い事をやってのけていた。

 

 玉将戦一次予選決勝、相手は鳩待覚五段。

 俺の奨励会時代の中盤くらいにプロに上がった人で、若くして関東奨励会の運営に就いていたあの人は言わば恩人だった。

 そしてそう言った近しい人物との初めての公式戦、緊張もしたし鳩待さんがタイトル獲るなら応援したいとずっと思ってきたが当たってしまったら全員ライバル。

 割り切って全力で恩返しを果してきた。

 

「どんだけ割り切っても、多少なりとも思うところはあるけどね……」

 

 勝者の裏には必ず敗北者がいる、勝負事なら当たり前の事だが近しい人物相手にはまだまだ慣れそうには無い。

 

「勝ったからには進め、止まるな」

 

 対局後の鳩待さんの言葉だ。

 少し喜びに浸り切れない俺の肩にそっと手を置き言ってくれたあの人には、やはり頭が上がらない。

 人として尊敬に値する人物だ。

 

 さて、棋戦の状況だが玉将戦は二次予選まで一ヶ月、盤王戦決勝トーナメントまでは二ヶ月開き、それまでに棋帝戦と賢王戦予選が始まる。

 

 正直言うが、俺はこの四つの内で一つ勝てたら良い程度で見ている。

 

 よりにもよってだが玉将戦二次予選一回戦は昨年のリーグ落ち棋士、盤王戦決勝トーナメント一回戦はB1棋士、賢王戦四段戦一回戦は七宝、棋帝戦予選一回戦は……まさかの八一だった。

 

 当たりがヤバ過ぎる。

 連勝してきた身からしてもそろそろ止まるってのは感じてたがどうしてこうなったってレベルだ。

 正確に言ったら棋帝戦以外は運が悪かったって言えるレベルだが棋帝戦がおかしい、何でお前タイトル持ちでシードじゃないんだよ……

 

「……優先すべきは勝ち進んでる二つの棋戦だ。あと二つも全力でやる事はやるが……勝てる気はしない」

 

 七宝はアレから俺を対等なライバルと認めた上でゴリゴリに対策を組んでるらしい、間違いなくスタイルを一新してくるだろうから対策を組もうにも一度見てからじゃないとキツい。

 八一は言わずもがな、蔵王九段戦以外では隙無しの絶好調。原作通り帝位戦も勝ち進み、このまま通りに進むなら帝位戦挑戦者だ。

 

 何度も言うが俺に将棋の才能は無い。

 今まで勝ててきたのは、無い才能を最低限埋め続けてきた知識だけだ。

 だがそれも本当の才能の前には無意味だろう。

 何せ真の天才はその知識に加えて才能があるのだから。

 

 ……俺は今度の玉将戦か盤王戦、少なくともどちらかで勝たないといけない。

 つまり前年度玉将戦リーグに在籍した棋士か、A級一歩手前のB1棋士から一勝するという事だ。

 

「でも……勝たないとな」

 

 俺にはタイムリミットがある。

 美羽の師匠でいる為には、勝ち進んでるどちらかで勝ち星を積み上げられなければC級2組昇格が一気に遠ざかる。

 俺が今C級2組に上がれるチャンスとしてあるのは『良いとこ取り30戦中20勝』or『タイトル挑戦』。

 前者は残り21戦11勝、後者は最速の盤王戦が六連勝。

 どちらも地獄だしタイトル挑戦がどれほど苦しいかなんて分かりきっている。

 

 それでも勝つしかない。

 たとえフリークラス編入棋士の中でC級2組に上がれたのが歴代でもたった一握りだとしても。

 フリークラス編入棋士がタイトル挑戦した歴史が無くても。

 

 変えなければ俺のプロ人生は十年で終わる。

 

 その時あの子は二十歳、きっと美人に成長して彼氏も出来、女流棋士としても一人立ち出来ているだろう。

 そうなった時に俺がボロボロだったら、俺の事なんかすっかり忘れてるかもしれないじゃないか。

 美羽の花嫁姿を見るまではプロ棋士として終わりたくないし、それ以前に俺自身将棋は人生なんだ。

 

 どんな理由付けしてでも気張って生きてやる。

 

 

「しゅんせんせー、おっはよーございます!」

 

「……ん、おお美羽か。わりぃちょっと考え事してた」

 

 今日も朝から元気MAXの美羽が来る、今日は花見というのもあるからかツインテールが若干犬の尻尾の様に揺れている。

 そう言えば、だが美羽が最近俺の事を名前で呼んでくれる様になった。

 寧ろなんで呼ばなかったのかちょっとだけ疑問だったが「憧れの人ほど名前を呼ぶのに勇気がいる」らしい。

 

 はぁ……かっっっわいいなあ美羽は!!!

 

 と、閑話休題。

 

「……わたしはしゅんせんせーのことしんじてるもん。どんなけっかになってもずっとついていくよ」

 

「あー……知られてたか、流石に……ありがとな」

 

 美羽は俺の雰囲気で何を考えていたのか察してしまったらしく、凄く有り難い言葉を掛けてくれる。

 たとえ十年後に書類上だけの関係になっていても、今こうして寄り添ってくれるだけで俺は頑張れるんだ。

 

「しゅんせんせーのことだいすきだもん! ずっとずっといっしょが良いなー」

 

「美羽えええええお前って子はあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"俺も大好きだぞおおおおおお!!!」

 

 男泣きである。

 完全に男泣きである。

 最早俺の方が美羽から一人立ち出来るかの方が怪しいかもしれない。

 

 

 

 

 

 桜舞い散る道に男女二人。

 俺はさておき美羽は桜と良く映える。

 

 ところでだがこの原作のこの時期、花見と言えばで察せるものがある。

 そう、アニメ最終話エンディングの八一の棋士関係の身内全員集合の神シーンだ。

 いくら今俺が生きてるこの世界こそが現実であり、誰しもが生きている人間と分かっていても前世で憧れたこの展開が覆らない上に俺と美羽が加わるとなればそれなりに緊張もする。

 

「やあ我がソウルメイト駿よ、久し振りだな!」

 

「おお、歩夢じゃん! それに釈迦堂さんもお久し振りです」

 

 しかしやはり予想外な事は起こるもので、道中出くわさないと思っていた親友とその師匠と遭遇。

 二人とも相変わらずファンタジーである。

 

「ふふ、久し振りだな。……成程、そこの子が噂の君の弟子か」

 

「おお、アニメみたいないしょう……」

 

「ええ、まあ。先月D2で研修会受かったばかりですが」

 

「順調そうじゃないか、これなら七月のマイナビも楽しみだ」

 

「マイナビ……そうですね。女流棋士への一番の近道、ですからね」

 

 マイナビ女子オープン……アマチュアが数多く参加出来る唯一の棋戦だ。

 と言っても予選の予選、みたいな場所からのスタートではあるが。

 

「ぜったいほんせんに出るわ!」

 

 ビシッと釈迦堂さんを指差す美羽……宣戦布告?

 相手は二十年以上名跡のタイトルを守り抜いてきた女流最高峰の棋士。

 それを相手に堂々言い切るとは……マイナビ、これは予想外の成果を挙げてくれるかも知れないな。

 

「ほう……私相手に宣戦布告とは中々にガッツのある弟子を取ったな、君は」

 

「メンタル面の才能は既に女流プロ並ですよ、この子は」

 

「フハハ! 我が師にも屈しないその精神! 素晴らしいぞ!」

 

 歩夢も前会った時より何倍も強くなっただろう美羽にご満悦らしい。

 コイツも美羽と同年代の妹を持つ身であるから近い将来的にアマチュアでのマイナビ参戦は考えているのだろうから美羽の様な精神力を身に付けてもらいたいと思っているのかも知れない。

 

「さて、話も一段落付いたところでそろそろだ……」

 

「うおっ」

 

 桜吹雪が顔を通り抜ける。

 話に盛り上がっていたがどうやらそろそろ花見会場に着くらしい。

 さて原作じゃ歩夢と釈迦堂さんは月夜見坂さんと供御飯さんが着いた後くらいに着いていたが……

 

「久し振りだな、ドラゲキンッ」

 

「待たせたな、若き竜王よ」

 

「よ、八一。相変わらずやってんねえ」 

 

「まあな」

 

「あいちゃーん!」

 

「美羽ちゃーん!」

 

「どうも~九頭竜先生に神鍋先生に鍬中先生~」

 

「これはこれは鹿路庭さん……どうです、あちらで我とお茶でも……」

 

 賑やかだなあ……って間髪入れずに歩夢は何やってんだか……

 しかし鹿路庭さんが来たとなると……

 

「んふふ……来ちゃった☆八一くぅん、それに駿も」

 

「お久し振りです師匠」

 

 やっぱりもう師匠も来たって事か。

 しかし歩夢組と山刀伐師匠組は良く東京から来たよなあ。

 

「お、山刀伐も居るじゃねえか……それに玉将戦で調子の良いガキも」

 

「なはは……」

 

「ふふ、賢王戦……私は負けるつもりはありませんからね」

 

「んふ、僕も息子に良いとこ見せたいしやっと掴んだタイトル戦だからね☆負けないよ」

 

 その後も順調に生石玉将組やら月光会長組が来て会長と師匠が互いに直後にある賢王戦の対局の話でバチバチやったりしていた。

 

 と、まあそこまでは予定通りの原作改変だった訳だ。

 

 だったんだが……

 

「呼ばれて来たんですが、またこれは賑やかですね」

 

「ははは、我々もこういう日くらいはゆっくりと羽を伸ばすのも良いかも知れないね」

 

「し、篠窪さんに碓氷さん!?」

 

「や、二ツ塚四段との棋譜見せてもらったよ。おめでとう、しかし凄い事をするよ君は」

 

「三月以来かな、二ツ塚くんとの対局は棋譜からも熱気が伝わってきてワクワクしちゃったよ」

 

「あはは、ありがとうございます」

 

 なんと篠窪さんと碓氷さんまで来ていた。

 原作やアニメじゃ殆ど登場しなかったがこの世界線だと妙に八一や歩夢と親しかったし俺とも親しくしてくれているがまさかここまで影響があるとは……

 

 しかし居てくれるのは実際仲良くしているのでとても嬉しいし褒められたらそりゃ舞い上がるでしょ。

 

 ……こんだけの人と繋がれたのも将棋があってこそだな。

 

 益々負けらんねぇな。

 

「八一! 棋帝戦予選、負けねえからな!」

 

「ふっ……望むところだ!」

 

 これから変わる未来

 なけなしの希望を手に

 崖っぷち進もう

 崖の向こうには花が咲く。

 

 今の俺にピッタリかも……なんてな。

 

 これから忙しくなりそうだ。




因みにC級2組昇格後三年は最低でも生き残れる(降級点3点で脱落)ので昇格した時点で少なくとも十三年はプロ人生が伸びる事になる
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