冴えない棋士は弟子を貰う様です 作:C.C.サバシア
10勝6敗(9連勝)
あと21戦11勝でC2昇格…まあ何も起きない訳が無く…
「ふぅ……いよいよか」
対局室で一人呟く。
昨日から一人篭って対八一戦に必死に対策を練りに練っていた。
美羽もチラッと様子を見に来てくれたり差し入れがあったりしたのは嬉しかったがあまり話す余裕が無かったのが悔やまれる。
本当ならしっかり喋りたかったし直近の例会に四連勝した事もちゃんと褒めたかった……だがこの対局に込める想いというのは格別な為断腸の思いで気合を入れた。
勿論だが八一にアドバイスを度々送ってる手前健康管理に余念は無い、睡眠時間は多少減らしたが元々余裕のある睡眠時間にしていたから影響は出ないし料理も出前で野菜と肉と炭水化物のバランスを……と思っていたところにそういった事を良く考えてくれていた美羽の手料理の差し入れがあり心強かった。
「勝てるか勝てないか……いや、今はそうじゃないな」
勝てるか否かで言ったらまあ勝てないだろうけど、今更考えても仕方ない。
今は持てる知識とやってきた研究を持ってして全身全霊で八一にぶつかるだけだ。
勝っただの負けただのは対局が終わってから考えりゃ良い。
「……待ってたぜ、八一」
「早いな、駿」
「親友で憧れのお前とやるんだぜ? ウズウズして仕方なかったんだよ」
「そりゃ嬉しいな……」
八一が到着し、軽く雑談を交わす。
それ以外は静寂が支配する。
まだ対局には時間があるがどうしたもんか。
「……そう言えば歩夢が鹿路庭さんと付き合う事になったみたいだな」
おっと急に切り込んできたのは八一。
しかしやはり情報が早い、大方付き合い始めた夜にでも連絡を入れたんだろうがな。
そもそも歩夢と鹿路庭さんだが、歩夢から相談を受けた次の日早速成功したと爆速で電話に掛かってきた。
めちゃくちゃ嬉しそうで良かった……と電話を切ったら次は鹿路庭さんからもお礼の電話が掛かってきて本当に似た者同士と言わざるを得なかった。
しかもあの人に至ってはテンションが有頂天だったのか超惚気けてきて告白の言葉を教えてきてくれた、わざわざ。
鹿路庭さんが語るには
「貴方は美しい……どこまでも純粋に将棋を愛している。我は……いや、俺はそんな透き通った珠代さんの心に惚れた。好きです、いや大好きです。この先一生を懸けて貴方を幸せにします。だから俺と、結婚を前提に付き合ってください」
……すっげぇ紳士だった。
まあ根が真面目な奴なのは昔から知っていたがそう表現する以外方法が無かった。
「ま、くっつくべくしてくっついた二人だろ」
「そうかもな……俺もそろそろ……」
「対局時刻となりました。始めてください」
八一が何か呟いた様だがそれより時間らしい。
ここまでは親友としての八一だったがこっからはライバルとして、倒すべき棋士としての『九頭竜八一竜王』になる。
「よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします」
いくら八一とはいえあっちも絶不調や大型連敗をしている棋士だ、何処かに穴はあるはずだ……
と思っていた時期もあったよ、今はもう全く無いが。
「うっ……」
まだ50手を超えたばかり。
本来ならまだまだ先を見据えた手にお互いなっているはずなのに、俺の陣形はもう押されていた。
子どもの頃から、いや正確に言や前世の頃からずっと見てきた八一の将棋。
あれだけ見てきて、ずっと研究してきて、最後の二日間短期集中で更に追い込みを掛けて対策と先手後手になった時の八一の傾向も対応も積んできた。
誰よりも八一の将棋を見てきた自信があった。
清滝九段の内弟子をしていた時期だって研究会も奨励会も勝った棋譜も負けた棋譜も全てのアイツの棋譜を勉強に使ってきた。
どこまでも八一に追い付こうと、無謀と言われても諦めずに手を伸ばし続けてきた。
(その結果がこれだ……こんな序盤でここまで押されるのか……策は無いのか……? いや、まだだ。まだ俺にはあるじゃないか、残された手が一つだけ……!)
そうだ、まだ50手に過ぎない。
まだ修正は効くはず……アレを……二ツ塚の時のアレを起こすしか無い。
そもそも発動条件が明確で無かった未来視だが、時を追う毎にコツを掴み始めた。
鳩待さんの時や研究会での試しでも指してみて、今出来る最大限の集中力を引き出した時に来るらしく見える手筋は所謂『最善手』と『相手の最善応手』の繰り返し。
最大集中力が上がれば上がる程見える未来が長くなる、というところまで理解した。
まあ体力は死ぬ程減るし途中までしか見えないがチート能力なんてこの世にある訳も無し。
体力をかなり持ってかれるこれを序盤で使うのはハイリスクだが……言ってらんねえよなあ!!
(見ろ……見るんだ、最善手を。八一なら指すはずだ、最高の手を。だからこそ、途中まででも構わない。押し返せるのならば、そっからは自力でやってやる!)
…………見えた!
ここだッ!!
「…………は?」
その声を上げたのは……俺だった。
おかしい、有り得ない、間違いなく最善手を指し込んだはずだ。
なのに八一は……全く別の場所に指していた……
八一がミスった?
いや違う、アイツは今『ノータイム』で返してきた。
だとすれば単なるミスは不自然だ、何か考えがあってやってきたに違いない。
(もう一度だ、もう一度見てやる。体力なんて知ったこっちゃ無い、倒れてでももう一度見て、指しきってやる)
今にも倒れそうなくらい揺れる脳を何とか水分補給で紛らわせ、集中する。
もう一度見れば押し返すまでの道筋くらい見えるはずだ……
(見え……ない……)
しかし何度も何度も見ようとするが今度は何も見えなかった。
「は……ははっ」
いくら集中力が切れても意識すれば朧気にでも見えていた。
それがどうだ、起きてる気配すら微塵も無い。
こんな事があったか?
確かにチートじゃないとは言ったがそれでも最善手を映し出し続けるんだぞ、そう簡単に……
いや、一つだけある。
見えなくなる事が、一つだけある。
「即……詰み……」
こちらに打つ手が一切無くなった時だ。
即ちこの手で負けが確定しているという事だ。
八一は、アイツは『最善手の未来視』を超えてきた、という事に他ならない。
つまり『最善手を超える手』を見つけていたのだ、それも一瞬で。
……銀子ちゃんは言っていたっけ
「八一は歴代棋士の中でも5本に入る力がある」
と。じゃあアレか?
八一は一瞬で辿り着いたとでも言うのかよ……
『神の一手』ってやつに――
『若手棋士を語るスレ その326』(五月下旬)
108:名無しさん
……鍬中は三連敗か。あの日の棋帝戦予選のクズ竜王vs九連勝鍬中は注目カードだと思ったんだが肩透かしだったな
109:名無しさん
>>108
そもそも九頭竜はあの位置にいるのが異常なんだよ、アイツ竜王防衛した正真正銘今の棋界を支える屋台骨だぞ。ぽっと出の最近まで負け続きだった新人と比べるのがおかしい
110:名無しさん
>>109
つっても58手で九頭竜の勝ちってなあ……
111:名無しさん
でもプロ棋士は騒然だったらしいぜ?なんでも最善手を指した鍬中の手を超えてきたって、並み居るプロでも想定外の手ながらあそこが一番の好手だったって
112:名無しさん
>>111
つまり九頭竜は神の一手に到達した可能性が…?
113:名無しさん
>>112
無いと言いきれないのがあの天才竜王の怖いところよ、クズだのロリコンだの言われてるが才能だけはこのスレでも誰も文句付けた事ねえから。煽った事はあるが
114:名無しさん
しかし鍬中一気に落としたなあ。棋帝、玉将、賢王……玉将の二次予選で負けたのはクソ痛い
115:名無しさん
来週の盤王戦挑戦者決定トーナメント初戦落としたらこのまま終わりだろうな
116:名無しさん
よし、次の相手は……宮 越 亮 二 九 段
117:名無しさん
はい生石世代四天王の一人
118:名無しさん
盤王二期と一般棋戦優勝三回
119:名無しさん
これで四天王最弱らしい
120:名無しさん
今無冠だし多少はね?
121:名無しさん
>>120
なお竜王戦1組
122:名無しさん
>>121
無冠だけど純粋な能力は落ちてないタイプ
123:名無しさん
>>121
絶対またタイトル戦出てくるわ、碓氷九段と竜王戦フルセットした27期の伝説がそう簡単に衰えるかよ
124:名無しさん
鍬中;;
125:名無しさん
アカン鍬中が星になるぅ!
126:名無しさん
しかも得意の盤王戦と来た
127:名無しさん
万が一にも鍬中がここで殻を破れたらまだ盤王戦だけは何とか勝てる望みが出てきそう
128:名無しさん
>>127
勝っても次は帝位、棋帝一期ずつの月夜見坂の師匠で元A級風張雞児九段やで…
129:名無しさん
>>128
悲しいなあ
130:名無しさん
>>129
どうして最近の鍬中は尽く一番下の予選でもダメなのと当たってしまうのか
131:名無しさん
鍬中には強く生きてほしい(願望)
132:名無しさん
かわいい弟子いるんだろうが!だったら勝って見せろ!
133:名無しさん
ロリを不幸にする事は許されないからね、仕方ないね
134:名無しさん
連敗くらい名人だってする。九頭竜相手に四連敗したし。打開出来るかどうか、正念場だぞ……
135:名無しさん
しかし生石世代最弱と呼ばれてた山刀伐の弟子が世代最上位の一人と当たるとかどんな巡り合わせだよって話よ。この一番、棋界としても注目のカードになるかもな
136:名無しさん
その山刀伐は賢王戦三連勝……師匠に良いとこ見せろよな!応援してっから!
能力頼りになってしまうのは弱さ故に…頼った末路が神の一手に粉砕された訳ですが