冴えない棋士は弟子を貰う様です   作:C.C.サバシア

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オリ棋士紹介(例の関西弁棋士)

☆西崎一将(20)
段位:四段
師事:新田啓示九段
所属:関西将棋連盟
順位戦:C級2組
概要:七宝四段、鍬中四段と共に昨年十月度プロ入りした3人の一人
データ志向であり特定の得意分野は無しながら相手の弱点を的確に突く指し筋で翻弄する
各棋戦で四段ながら善戦しており同期二人と比べ話題性に乏しいが七宝四段と並び新人王候補の期待の若手
データ収集の為と称し人手不足の記録係を良くしており特に同期の二人や若手棋士の記録係になりやすい傾向にある
普段は非常にフランクな性格であり勤勉家
鍬中の弟子事情に付いては初期の頃から知っていたらしく七宝に密かに情報を回していたり美羽とも顔見知りだったりする


第二十五話『一難去ってまた一難?』

「……そう言えばなんだけどさ」

 

「なーに、しゅんちゃん?」

 

「……マイナビ女子オープン、チャレンジマッチもう始まってるよね?」

 

「……」

 

「美羽さん?」

 

「ソ、ソデスネ」

 

「……あの、戦績の方とか」

 

「ナンノコトデスカネ……」

 

「確かにほっといた俺が悪かったけども! ま、まさか負けたとか……」

 

「……」

 

「正直に話してくれ」

 

「アノ、イッカイマケマシタ……」

 

「マジデスカ……ち、因みに何回戦?」

 

「ニカイセンデス……」

 

「oh……」

 

 帰り道、和解も済んで勢いで愛の告白をしたら相思相愛でハッピーエンド……で終われたら良かったのだが思えば連敗街道中にマイナビ女子オープンのチャレンジマッチがあるという痛恨の失態をしており、美羽にいざこざの影響が出ていたのか知らぬ間に結構ヤバい状態になっていた。

 

 因みにマイナビ女子オープンの構造を説明すると、アマチュアが参加者の大半を占める予選の予選『チャレンジマッチ』、プロの大半がここから参戦の『予選』、そこを勝ち上がった先の『本戦』がありチャレンジマッチは2敗完全敗退制なのでまだ致命傷か否かと問われたら否である。

 本来ならこのチャレンジマッチ、一日で全試合やるらしいのだが今年だけ都合上二日制だったのが俺に大きく追い風だった。

 これで一日で全試合でもう負けてたとか言われてたらショックで死んでいた、間違いない。

 でも美羽の実力で二回戦負けは確実に俺の責任なので腹痛が酷いです……

 

「え、えーと……敗者組のトーナメントは一週間後に一気に全部やるのか。し、仕方あるまい、全て俺の責任何だから負けない様に指導するぞ!」

 

「おねがいします、しゅんせんせ!」

 

 トーナメント表を見た限り敗者組の枠は非シードだと1枠三連勝が必要だがシード……チャレンジマッチ決勝敗退者は敗者組で二連勝した相手との決勝戦に一勝すれば勝ち抜けられる。

 美羽のグループには……決勝がシード、しかも女流二段の三十代、ベテラン女流プロ棋士だ。

 

「おうよ! ……しかし勝つべき相手に女流プロがいて、しかも二回戦で負けた相手だとはな」

 

「うー……」

 

 しかも言った通り美羽が二回戦で負けた相手その人だ。

 二回戦からプロと当たって、敗者組で必ず勝たないと行けないとかどんな巡り合わせなんだか。

 

 しかしそれだからこそ俺が何とかしてあげないと。

 やっと師匠として、もう一度自覚を取り戻せたんだ。

 見違えるくらい強くしてリベンジ戦に送り出してやるのが最低限俺の、師としての償いだろう。

 いや寧ろここを勝ち抜ければ地獄のプロ連戦必至の予選の大きな弾みになるはず。

 悪いが美羽の経験値になってもらいますよ……

 

 

 

 

 

「美羽、今までの成果を、違いを見せつける時だ! バシッと行ってきな!」

 

「うん! しゅんせんせ!」

 

 一週間後、会場には総勢28人の敗者組が揃っていた。

 その28人が5ブロックにシードのある5人ブロックが四つ、シードの無い8人ブロックが一つに振り分けられている。

 シード者は確認した時もしっかり一致していたチャレンジマッチ本ブロックの決勝敗退者4人。

 美羽は順調に勝てばその一人の女流二段のプロと当たるが他は誰が上がって来てもアマチュア。

 美羽より格上の研修会C1クラス……3級もいるがこっちも一週間美羽が学校の時間を除いて泊まり込みの合宿をしたんだ、プロ相手連戦を想定した合宿をなあ!

 

 ウチのかわいい弟子を安牌だと言っていたあのプロに一泡吹かせる為に!!

 

 

 そう、美羽から合宿中話を聞いたのだがどうにも二回戦で対局した女流二段に安牌呼ばわりされボロ負けしたらしい。

 更には師匠も所詮はプロ崩れと……

 

 いや俺の事は構わない。

 美羽が対局した時点では第二次連敗街道入り掛けてた訳ですし?

 ただ美羽を安牌呼ばわりした事だけは絶対に後悔させる。

 

 その為に実力の底上げは勿論だが相手の挑発で手を崩さない様な精神力も身に付けさせた。

 プレッシャーには大分強かったから今まで本格的に優先度合いを上げてまで伸ばす事はしてこなかったがある意味今弱点が割れて助かった。

 

 チャレンジマッチが完全終了していないのならば吸収の早い美羽はまだまだ勝ち上がるチャンスは高い。

 そういう算段で将棋そのもののトレーニングとしてはまずは対戦可能性のあるアマチュア棋士の棋譜を徹底的に調べて棋譜並べ、どういう思考で指していたか推定ではあるが俺が経験則から解説、並べ終えたらもう一度次は失着だろう場所で止めてまた解説し並べながら弱点を列挙。

 

 道場で似たタイプの人とやらせたりして的確に経験を積ませた。

 美羽の利点を伸ばすといういつもの指導法ではないがちゃんと着いてきてくれたのだから間違いなく成果は出るはずだ。

 

「さてさて一回戦もチラホラ終わりが出てるか」

 

 七宝が大盤解説をしている部屋で客に混ざり聞いているがあちこちで終局しているのを聞き手の焙烙女流三段が伝えている。

 因みにここでも原作とのズレがあり焙烙女流三段は去年雷とは当たっておらず予選からの参加だった。

 

「しゅんせんせー! 勝ったよー!」

 

「お、マジか! おめでとう!」

 

 っと、焙烙さんが確認する前に美羽が終局を教えにわざわざ来てくれた。

 まあ一回戦は計12試合あるし他の解説もあるから伝わる前に……というのも仕方ないな。

 

「……ふっ」

 

 あ、何か七宝がこっちにアイコンタクトしてきたと思ったらニヤつきやがった。

 今度は負けてやんねーからな、おめー。

 

「あれ誰だ?」

 

「ほら、確か初の十代フリークラス棋士の鍬中四段だよ。弟子がいるっぽい事言ってたけどまさか九頭竜竜王に負けず劣らずとはな……」

 

「マジでか。あれが鍬中駿か。確か盤王戦、宮越九段に勝ったんだよな……」

 

 それはそうと何か周りが俺の事を喋ってる様な?

 今までは何処に紛れてもコアな将棋ファンにさえ殆どプロ棋士だとは思われてこなかったがどうにもこの前の対局が連盟からピックアップとしてYouTubeとニコ動に上がったらしく多少認知度が向上してる気もする。

 

 と、それはともかく次の対局まで少し時間があるんだから多少なりともおさらいをしておく必要があるな。

 

「よし美羽、まだ時間あるだろ? ちょっとロビーで休みつつ次の相手の復習するぞ」

 

「分かりましたー!」

 

 ビシッと敬礼する様な素振りで隣をちょこちょこ歩く美羽、うんやはりかわいい。

 

 

 

 

 

 二回戦、相手はソフト研究を主軸とした現代型の指し筋のC1最上位クラス、女流3級が相手となった。

 データを見る限りチャレンジマッチは抜けても文句無しの安定感のある棋士ながら二回戦でこちらも不幸にも女流プロと当たり本ブロック敗退をしていた。

 

(ソフト研究者だけあって全体的には綺麗な手筋だが……二ツ塚と比べるとまだまだ粗も目立つ子か。まああの天才と比べるのは酷だが)

 

「竹内アマは非常に好戦的且つ型に囚われない指し方が目立ちます。特にこの玉陣への突入は相手から見るとかなりのプレッシャーとなります」

 

「なるほど! つまり竹内アマはガッツのあるドーン! と行ける子という事ですね!」

 

「究極に簡略化するとなればそういう事です、焙烙女流三段」

 

 大盤の七宝と焙烙さんの解説を聞きながらじっくりと戦況を判断する。

 

「清水澤3級も手堅い指し方で序盤は大きくリードを取れていましたが怯まない攻め一辺倒の竹内アマの前には取るに足らず、と言った度胸。ただ無理攻めもまだ随所に見られるので清水澤アマが付け入る隙はあります」

 

「ですがこの無理攻めは下手に触ると飲み込まれませんか?」

 

「そのリスクはありますが、逆にそこ以外で綻びを見つける方が残り時間を考慮すると難しい」

 

「なるほど~3級とアマチュアの対局でここまで難解な局面というのは珍しいですね」

 

「ええ、双方レベルが高くないと中々見せられない。有望ですよ、両者共」

 

 大盤解説、自分での判断も加えて見ても確かに現在美羽の方が若干押している、というか中盤以降ずっと美羽の方が攻めていたのが功を奏している。

 リード差はまだまだ僅差といったところだが際どい攻防で少しずつ相手の陣内を荒らしているのは短時間対局もあり対応に追われる相手の精神のすり減り方は尋常じゃないだろう。

 合宿中わざわざ二ツ塚を呼び寄せといて正解だったな。

 

 あの対局では嫌な奴にも見えたが少しプライドが高いだけで弟子の特訓に勉強になると進んで参加してくれたのには本当に感謝が尽きない。

 ソフト指しに関する知識の教え方も非常に上手かったし。

 

「鍬中の弟子、思った以上でちょっとビビってる」

 

「竹内ちゃん、可愛さもだが強さも半端ないな」

 

「清水澤ちゃんも参加してるアマチュア内なら最強格なんだが尽く運に見放されてるなあ」

 

「何かここ二年くらい女流棋士が天才JS祭りになってない?」

 

 周りの反応も上々、二ツ塚も浮かばれるってもんよ。

 そして俺としてもこれだけ褒められてると鼻高々である。

 

 盤面は……そろそろ美羽が決め切るかな、相手の

子も渾身のカウンターパンチがあったが意に介さず無視というかボクシングで例えるなら顔面に全力ストレートがクリーンヒットした直後に相手の顔に連撃している様なもんだ。

 相変わらず猪突猛進な子だがそれを一貫してここまで辿り着いたのかと、まだチャレンジマッチではあるが感慨深く感じる。

 

「清水澤3級投了ですね。竹内アマは最後の最後まで動揺を見せず一貫した手筋で中盤以降のペースを一切渡さない圧巻の対局。決勝に駒を進め本ブロック二回戦のリベンジマッチ、金平女流二段との対局になります」

 

 遂に押し切ったか、七宝の言う通り一度ペースを握ってから終始場を支配仕切っていたと言って過言ではないだろう。

 俺や二ツ塚がいたのは確かだが特訓と言っても一週間でどこまで仕上げが効くかと思っていたしこれで安心し出来そうだ。

 

「いや~お見事でした! アマチュアらしからぬ堂々とした指し筋に一貫した強気の攻めに私もつい魅入っちゃいました」

 

「清水澤3級も良い手は多く、最後のカウンターは起死回生になるかと思いましたが竹内アマが一枚上手でした。先程の一回戦も見ましたが荒削りな面がまだ目立ちますが対局相手の癖や筋を良く理解している、余程飲み込みが上手くなければこの短期間にこれ程の対策を講じるのは難しい」

 

 しかも七宝もかなり高い評価をしてくれている。

 アイツはアマチュア時代から辛口な意見が目立ってたからどんな評価になるやらと見ていたがその心配は要らなかったらしい。

 

 

 だが次が一番の正念場、前回の雪辱を果たす時だぞ。

 

 俺は美羽の試合の大盤解説が終わったのを見届け美羽を迎えに席を立つのだった。




因みに予定通りなら本編の超大まかな流れはマイナビ編(盤王戦挑決トーナメント進捗同時進行)が終わったらトーナメント完結編やって終了です
番外編やらまだ問題の回収や日常編挟む可能性もありますが流れはもう後半戦だと思います
それに伴いアンケートも終了させていただきます、非常に助かりました。ありがとうございました

そして節目の連載1か月に2万UAに今更ですがお気に入りも200件という事で、ありがとうございます
当初は完結までにお気に入り三桁と1万UAを一つの目標としていましたが大詰め前でどちらも倍を超える評価をいただけたのは非常に光栄な事だと思っています

周りの同原作が50作に満たない中今年更新のある20作程の大半が評価赤MAXやお気に入り四桁で、そう言った作品に追いつける様な褒められた作品ではありませんがこれだけやる気になれた、疾走出来た作品は初めてです
これからも頑張って参りますのでお付き合いいただければと思います
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