冴えない棋士は弟子を貰う様です   作:C.C.サバシア

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前後半に分ける為若干短くなりました

そして250件のお気に入り…改めて日々見てくれる方々に感謝したいです


第二十七話『八一の悩みⅠ』

「今日も良い天気だ……」

 

 マイナビ女子オープンのチャレンジマッチが終わり、約半月。

 盤王戦のトーナメントも無く俺個人としての棋士としての動きも無く、周りの動きと言ったら師匠の祝勝会と歩夢の棋帝戦くらいか。

 

 まず歩夢の棋帝戦だが、驚く事に開幕連勝を決めていた。

 相手は嘗ての竜王戦挑戦者決定三番勝負でストレート敗北した名人。

 このタイトル戦は未来の名人戦を占う分岐点とも評され非常に注目を浴びていた。

 

 そもそもだがこの世界線の棋士達は原作比で測っても相当強化されている。

 八一は神の一手に辿り着くわ師匠はタイトルホルダーになるわ歩夢はタイトル挑戦するわ天衣ちゃんは銀子ちゃん相手に土付けるわ……他だって名人の勝率は七割越えだし久留野さんも玉将戦リーグにいたなんて情報は原作に無かったし篠窪さんも名人に勝って毎朝杯を優勝……

 その中でも恐ろしく強化されたはずの名人に連勝する歩夢って原作八一並の強さあるんじゃないの?

 

 というか地味に一番原作比で強化されてるのってもしかして篠窪さんか?

 ああいや一番は絶対に蔵王九段だ。

 強さ自体なら篠窪さんの方が圧倒的に上だろうがそもそも3月で引退してたはずの人が翌期も現役で81で棋帝戦挑決って何なんだ……

 

 

 そして師匠の祝勝会だが山刀伐師匠は生石さんと旧友なだけあり相当な人数が集まっていた。

 第六局の検討をしていた棋士達で用事の無い人達は全員いたしこの前対局した宮越さん含む生石世代の面々も集結していた。

 八一や歩夢も来たしあいちゃんもいたし、鹿路庭さんも来てたか。

 あいちゃんに誘われたか天衣ちゃんもいたが美羽と仲良く話してたし何だかんだ楽しめていた様なので良かった。

 

 途中鹿路庭さんから歩夢とのお付き合い暴露が来た時は趣旨が変わったかの如く師匠が盛大に祝う方に流れたりその流れで歩夢の棋帝戦挑戦の祝勝会に成り代わったり、かと思ったら歩夢からキラーパスされて美羽のチャレンジマッチ通過の祝勝会になって例のインタビューと記事で俺が弄られたりめちゃくちゃやっていたがそれはそれで楽しかった。

 危うく鹿路庭さんの流れで俺と美羽のお付き合いも言い掛けて死にかけたが何とか凌いだ、流石に今はまずいからね、仕方ないよね。

 

 

 さて、振り返りはまたにして今回はその美羽とのお付き合いの話を親友二人にして八一の後押しという名の道連れにご招待しようか……

 

 

「……てな訳でお日柄も良く集まってもらった訳ですが」

 

「お日柄が良いだけで良く集まれたな俺達……」

 

「良いではないか良いではないか、我等が集えるのも今や僅かな時のみ。悠久の刻を楽しもうぞ!」

 

「まあ取り敢えずですね、俺から発表があるので聞いて頂こうと思いまして。特に八一には……特に八一には」

 

「なんで二回言った」

 

「ほう……我は一応察しが付いたぞ?」

 

「流石歩夢はカンが宜しい事で」

 

「褒めても紅茶しか出ぬぞ」

 

「俺はさっぱりだ……」

 

 茶番の様なやり取りも済み一段落。

 手早く四次元ポケットの如くどこから出したか分からない三人分のティーセットとお茶菓子を準備する歩夢を尻目にごほんと空気を整える様に咳払いしふぅ、と一息。

 しかしこれで躊躇していては今度美羽のご両親に挨拶しに行くのもままならんぞ……よし、大丈夫、行ける。

 

「では発表しまぁす!」

 

「…………えー俺と美羽ですが、この度恋人としてお付き合いをさせていただく次第になりました」

 

「んぐぅ!? ごほっごほっ!! ちょっと待て!! 急展開がすぎるだろ!?」

 

「ふむ、我は何れそうなるのは見越していたぞ。だが確かに急な話だ、大方『雨降って地固まる』だろうがな」

 

「歩夢の察しが良過ぎる件」

 

 呑気に紅茶を飲んでいた八一は盛大にむせ狼狽える……というか凄まじいツッコミをしてきたが歩夢が冷静過ぎる。

 過程までしっかり読み切るのは流石プロ棋士兼恋人持ちって事だろうか。

 

「確か祝勝会の数日前……盤王戦トーナメントの宮越九段戦で仲直りしたんだよな?」

 

「そうだな」

 

「ふっ、竹内嬢が記録係の隣にいた写真を見た時は八一との対局を思い出したぞ」

 

「あれ実は美羽の姿が全世界に初めて映った瞬間なんだよね……」

 

 本当はマイナビのインタビュー動画が来るまで隠すつもりだったがその直前でバレるとは……まあ誤差っちゃ誤差だが。

 あれのお陰で量産型八一だのロリコン二号だの盤王獲得したらコイツもロリ王か?なんて全く君達は俺を何だと……

 

「……もしかしてその日の内に?」

 

「イエス」

 

「ええ……」

 

 いやええ……じゃないよ八一くん。

 君も何れこうなるんだよ八一くん。

 

「して駿よ」

 

「どしたよ歩夢」

 

「それを知っている人間は?」

 

「美羽の両親とお前ら……の前に告白直後に西崎にね……」

 

「昔から思ってたが駿って勢い任せなとこ多いよな……まあおめでとう」

 

「そこもまた個性よ! フハハ! おめでとう我が盟友!」

 

 西崎とは中学生の時から似たタイミングで昇級昇段してきて三段リーグも二年一緒。

 フランクな性格故に初対面から交友関係もすぐ出来、九月になれば七年の付き合いになるが言ってしまえばそれだけの気軽な仲だ。

 仲が良いって言える奴の中で一番付き合いが薄くて美羽との関連性も一番低いアイツにまさか告白の数秒後にはバレるなんて普通思わないでしょうよ……いくらその日の記録係とはいえさ……

 

 っていや待て、それより主題を忘れてはならない。

 俺は今から八一を完全なるロリ王にする使命がある。

 即ちあいちゃん、天衣ちゃん、銀子ちゃんの内から一人を選ぼうと絶賛お悩み中の八一の背中を飛び降りドロップキックで蹴っ飛ばして一緒に沼に落ちよう大作戦だ!!

 

「ありがとう。そして西崎にバレたのは単なる事故だ、気にするな」

 

「いやお前は気にしろ……」

 

「それよりだ、八一。お前確かまだ三人から誰にするか決めてないよなあ?」

 

「うぐっ……いやまあそうだが……」

 

「成程、駿は最初からドラゲキン八一の背中を押す為にこの場を用意した、という事か」

 

「つまりはそういうこった。八一、いい加減決めたらどうなんだ?」

 

「……いや、それは分かってるんだ。迷ってばかりじゃいけないって、特に今の駿の美羽ちゃんと付き合うって話でその気持ちが大きくなった。でも俺には……」

 

 こりゃ重症だな……決めたいけど決められない、三人共に盛大にアプローチを掛けられて三人共に好きみたいな気持ちになったら仕方ないが。

 

「はいはいストップ。取り敢えず三人のアプローチのおさらいな。そこから始めよう」

 

「そうだな、状況整理をする事によって心身を落ち着ける事は非常に大切だぞ八一」

 

「わ、分かった……って言ってもあいは竜王防衛の時にキスしたところから進展は無い……前以上に甘えてきてめちゃくちゃ可愛いが」

 

「歩夢、紅茶くれ。無糖で」

 

「うむ」

 

「ああ八一は構わないから続けてくれ」

 

「お前ら人の話をなんだと……はぁ、天は……その、一月の話になるが天が泊まりに来た時に……告白された」

 

「歩夢、お代わり」

 

「添い寝してる時に」

 

「すまんお代わりは2杯で」

 

「……無自覚というものは末恐ろしいものよな」

 

 何だよ今の話はァ!

 甘い、甘過ぎるッ!!

 無糖の紅茶無しにはやってられん!!

 だがまだ聞いてない事があるんだなコレが。

 それを聞くまではダウン出来ない。

 無自覚にゲロ甘を垂れ流されても耐えてやるよ!

 

「……プハッ。取り敢えず二人の話は聞いた。じゃあ銀子ちゃんとはどうなの?」

 

「あ、姉弟子か……これ話さないとダメか?」

 

「これからのお前にとって重要な分岐点だ、諦めて話せ」

 

「マジかよ……アレ話すのか……しかし背に腹はかえられないか……分かった、話す」

 

 さてさて八一と銀子ちゃんの進展はどうなってる事やら……これは楽しみだ。

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