ルメトモ ヲ ンエウユシ テニ スタート   作:凧の糸

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乗り越えるは壁

 

 

 

 六十五階層。俺以外のクラスメイトにとって因縁としか言いようの無い、バケモノ、ベヒモスがいた場所。南雲君が迷宮に喰われた場所。

 

「気を引き締めろ! ここのマップは不完全だ。何が起こるかわからんからな!」

 メルド団長の声がやたらと響く。

 

 より一層険しい表情になりながら、広間へと出た。

 

 

 

 魔法陣。足下に赤い赤い魔法陣が現れた。

 

 

「ま、まさか……アイツなのか!?」

 

 コーちゃんが額に冷や汗を浮かべながら叫ぶ。他のメンバーの表情にも緊張の色がはっきりと浮かんでいた。

 

「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」

 

 龍太郎も驚愕をあらわにして叫ぶ。

 

「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある。気を引き締めろ! 退路の確保を忘れるな!」

 

 メルド団長の声色からもう決して一人も欠けさせないという意思を感じる。

 

 

「メルドさん。 俺たちだってあの時よりより強くなったんだ、勝てなくたって絶対に負けない!」

 

「へっ、その通りだぜ。何時までも負けっぱなしは性に合わねぇ。ここらでリベンジマッチだ!」

 

 

 

 

 魔法陣の輝きは最高潮に達し、ゴゴゴと一匹の獣を吐き出した。

 

「グゥガァアアア!!!」

 

 咆哮を上げ、地を踏み鳴らす異形。ベヒモスが皆を壮絶な殺意を宿らせた眼光で睨む。

 

 全員に緊張が走る中、そんなものとは無縁の決然とした表情で真っ直ぐ睨み返す女の子が一人。

 

「もう誰も奪わせない。あなたを踏み越えて、私は彼のもとへ行く」

 

 

 戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

 

 

「万翔羽ばたき 天へと至れ 〝天翔閃〟!」

 

先陣をきったのはコーちゃん。

 

 曲線状の光の斬撃がベヒモスに轟音を響かせながら直撃する。以前は、〝天翔閃〟の上位技 "神威"を以てしてもカスリ傷さえ付けることができなかったらしい。しかし、いつまでもあの頃のままではないという彼の宣言は、確かなものだろう。

 

 

 自らより弱い人間に強烈な一閃を喰らわされたことで驚き、血を吹き出しながら後退する。

 

「いける! 俺達は確実に強くなってる! 永山達は左側から、檜山達は背後を、メルド団長達は右側から! 後衛は魔法準備! 上級を頼む!」

 

 的確な指示を出す。 

 

「ほぅ、迷いなくいい指示をする。聞いたな? 総員、光輝の指揮で行くぞ!」

 戦闘面だけでなく、指揮の面も成長していたようだ。

 

 

 皆でベヒモスを包囲すると腹立たしげに「グオオオオォ!!」と唸る。

 

 邪魔な人間を吹き飛ばしてやろうと突進をして来た。食らえば無事では済まなさそう。

 

「させるかっ!」

「行かせん!」

 

「「猛り地を割る力をここに! 〝剛力〟!」」

 

 龍太郎と永山君がずるずると押されながらも確かに受け止めている。

 

「ガァアア!!」

「らぁあああ!!」

「おぉおおお!!」

 

 

 一匹と二人は互いに激しくつば競り合っている。地面はひび割れ、空気がビリビリする迫力だ。

 

 

 

「全てを切り裂く至上の一閃 〝絶断〟!」

 

 もちろん、二人が作ってくれた隙を逃すことはしない。雫が抜刀術でツノを斬ろうとするが、いかんせん硬くて食い込むまでしか出来ない。

 

 

「ぐっ、相変わらず堅い!」

「任せろ! 粉砕せよ、破砕せよ、爆砕せよ 〝豪撃〟!」

 食い込んだ剣にメルド団長はたがねに槌を打ち付けるが如く、騎士剣で強化された一撃を入れる。

 

 

 

 べギリ。

 

 

 ようやくツノを折ることができた。ベヒモスは何が何だか分からず、凄まじい衝撃の影響で大暴れしている。これには流石に耐えきれず、永山、龍太郎、雫、メルド団長の四人を吹き飛ばされた。

 

「優しき光は全てを抱く 〝光輪〟!」

 

 柔らかい網によって衝撃ダメージを受けずに済む。白崎の防御魔法だ。

 

「天恵よ 遍く子らに癒しを 〝回天〟」

 

 瞬時に回復させる。傷はあっと言う間に治り、服装なんかも相まって聖女みたいと言う人もきっといるだろう。

 

 

 コーちゃんは暴れるベヒモスに突進し、傷口に剣を押し込め、放つ。

 

「〝光爆〟!」

 

 聖剣に込められた力の奔流は大爆発を起こす。

 

 

「ガァアアア!!」

 

 傷口を抉られ、荒らされ、大量の出血をしながら技後硬直中の僅かな隙を逃さずベヒモスが鋭い爪を彼に振るう。

 

 

「グフっ!」

 

 吹き飛ばされても回復魔法を飛ばしてくれる。が回復の為に時間を稼ごう。

 

「相棒、このアンプルを打ち込めば、いけるんだな?」

「アア、ソレヨリヨケテ、カクジツニ"アテル"コトニセンネンシロ」

 

 アンプル内はヴェルズ化の素がたっぷり入っている。タイミングよく使わないと逆に強化してしまうかもしれないが、少しの間なら動きを鈍くすることだって可能だ。少しの間さえ作れば確実に仲間がベヒモスを倒してくれる。賭けも含まれる作戦だ。

 

「オラっ、食らえ!」

 傷口にアンプルが刺さるのと俺が吹き飛ばされるのは同時だった。

 

「グハッッ、 痛え」

 背中を打った。

「"外皮"デダメージヲケイゲンシタ。キズハスクナイゾ」

 相棒が咄嗟にインヴェルズの外皮を張ってくれて何とかダメージは少ないといえど、頭を打ったのかフラフラする。

 

 

 足止めの皆も吹き飛ばされ、何やらツノは赤熱化している。

 

 

「天恵よ 彼の者に今一度力を  〝焦天〟」

 

 コーちゃん達の回復も間にあった。

 

 

「……角が折れても出来るのね。あれが来るわよ!」

 雫が叫ぶのとベヒモスが跳躍するのは同時。だが、驚くのはその巨体で後衛まで跳んだこと。前衛を無視して後衛に襲いくる。

 

 

 

「ここは聖域なりて 神敵を通さず 〝聖絶〟!!」

 

 後衛組の一人、谷口が光のドームを作って防御した。

 

「ぅううう! 負けるもんかぁー!」

 

 ひび割れながらも暴力から必死に後衛を守っている。

 

 

 

 破られる!鈴がそう心の内で叫んだ瞬間、

 

「天恵よ 神秘をここに 〝譲天〟」

 

 回復魔法が彼女を包む。

 

「これなら! カオリン愛してる!」

 白崎の魔力を谷口に注ぎ、障壁は力を増していく。

 

 ベヒモスはひび割れていた障壁が傷一つなくなり、ますます立腹しているようた。

 

 

 だが、「グ、グ、ガ、ガアアアァァァァァァ!!!!」

 

 

 身をくねらせるように、自分の中に入った異物を取り除く為、暴れる。

 

 突然の奇行に「え……?」と皆が一瞬惚けてしまうが、すぐに正気に戻る。

 

「後衛は後退しろ!」

 

 指示で後衛組が一気に下がり、前衛組が再び取り囲んだ。ベヒモスを牽制しつつ、遂に待ちに待った後衛の詠唱が完了する。

 

「下がって!」

 後衛代表の中村さんから合図がでる。俺達前衛組は、渾身の一撃をベヒモスに放ちつつ、その反動も利用して一気に距離をとった。

 

「「「「「〝炎天〟」」」」」

 

 

 五人により放たれた業火はベヒモスを焼いた。

 

 

「グゥルァガァアアアア!!!!」

 皮膚の焼ける熱さと呼吸の苦しさでより暴れる。

 

 

 炎が強すぎるので、此方に炎が来そうになって急いで障壁を張った。

 

 

 最初こそ地獄のような声が聞こえたが、時間が経つにつれ、弱々しくなり、完全に聞こえなくなった。

 

 

 真っ黒な残骸が残った。

 

 

「か、勝ったのか?」

「勝ったんだろ……」

「勝っちまったよ……」

「マジか?」

「マジで?」

 

「そうだ! 俺達の勝ちだ!」

 勝利を誇るように聖剣を掲げ、皆もそれぞれ喜んでいるが、俺は微妙だった。

 

「死んでないといいんだがなあ」

「イチオウ、イキテルゾ。 オレタチガ、イナクナッタラ"ヴェルズ化"スル」

 

「そりゃ、良かった」

 強い駒の入手チャンスを逃しかけた。まさに相棒さまさまだ。

 

 

 

「シンちゃん! やったな!」

 此方に駆け寄り、喜んでいる友達がいるのだ。ともに勝利を分かち合おう。

 

「ああ! やったな!」

 

 ガンと拳をぶつけ合う。

 

「痛えって」

「すまない、強すぎた」

「あははは、なんてことないよ」

 

 たわいない事をしばらく喋ったら、切り替えて先に進むのだった。

 

 

 

 

 

 





ちょっとした説明

インヴェルズの外皮:昆虫モチーフのインヴェルズから発案。硬い外骨格は敵の攻撃を遮断する。落下ダメージなんかも軽減できる優れもの。

タイトルわかりやすくするべき?

  • 変えよう
  • そのままで
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