いよいよ動きます
それではどうぞ
「あー、耳がああぁぁぁ」
「仕方ないだろ、急降下してるんだから」
フリーフォールも真っ青になるくらいの速度なのだろう。まあ、俺もシンも乗った事はないが。
「ここで暫くは準備をするべきだな」
俺たちはブルックの町にやってきた。3日か4日ほど夜通し飛び続けて、陸路と比べてかなり楽に着くことが出来た。少し遠くの見えずらそうなところから降り、徒歩で向かう。
「早くしろ、シン。そろそろエネルギーがカツカツだ……」
腹が減った相棒のため、手っ取り早く魔物を取り込んでエネルギーにする。味のない塊を飲み込んでるみたいだ。
「隠蔽忘れるなよ」
「分かってるっての」
途中で水なんかの補給ついでに寄った町で知った事だが、ステータスプレートには隠蔽機能があるそうだ。
そんな事はともかく俺たちはブルックの町に入る。
「止まってステータスプレートを見せてくれ、あと町に来た目的は?」
「はい、これ。目的は旅の補給」
隠蔽したプレートを見せる。
「歩きで旅してるのか?」
「まあ、そうなるね。」
「なるほどな……歓迎しよう。ようこそブルックへ」
「それはどうも。宿屋の場所を教えてくれないか?」
「真っ直ぐ進めば冒険者ギルドがある。町の地図を貰ってからの方がいいだろうな」
「ありがとう」
ブルックの陽は高く登っている。
俺たちは門番に教えてもらったギルドに入る。かなり清潔である。受付もあるが、飲食店も併設されている。他の冒険者が食べているのをチラッと見るが、なかなか美味しそうである。
受付さんから地図を貰い、宿屋はどんな相場が聞くと、親切にも教えてくれた。
ギルドを出て、安そうな宿屋に行く。ちょっと迷いそうになったが、地図は正確であった。
「いらっしゃい。一人か?」
「はい、そうです。」
「一泊6000ルタ。朝飯付きならプラス500ルタ」
確かに相場通り。袋から18000ルタを置く。
「三泊で」
「105号室ね」
金を回収し、そう言うと彼は奥に引っ込んでしまった。
「早く行こうぜ、シン。俺は眠い」
相棒が横で急かすまま、105号室のベットに俺は沈んだのだった。
翌朝……ではなく起きたのはもう夕方だった。繁華街はもう賑わいを見せている。
「少し寝過ぎたか」
「久々にこんなエネルギーを消費したからな。シンの成長で俺も成長するから頼むぜ?」
「はいはい」
繁華街は賑わっていて、露店で焼き鳥のような食べ物が売ってあったり、飯屋や酒場もちらほら。地図はかなり詳しく書いてあり、大助かりした。
飯屋のテーブルに座り、遅い朝ごはんを楽しんだ。勇者としていた頃の飯と比べれば間違いなく安いものであるが、空腹状態であることに加え、単純に美味しかったので俺は満足した……
「やっぱり魔物より肉だな肉!」
ここまでの道中の魔物は食事というよりは栄養補給の方が近かったので、5日ぶりくらいのまともな食事に相棒は嬉しいらしく、空中をぐるぐると回っている。
そして、3日目。必要な装備も買って、俺は町を出た。
「ヴェルズ・サンダーバードを召喚」
魔力を喰らって再び現れた鳥。
クエエエエェェェ!!!と大きな叫びを上げ、恐ろしき大怪鳥は空を飛ぶ。
「シン。そろそろ始めろよ」
「分かってる。きっと美味しいんだろうな」
互いに無言のまま飛んでいると村が見えてきた。
「ようやく見えたか。みんなウズウズしてるぞ」
「取り敢えず、村の近くに降りるか」
近くの森に降りてあのモンスターを召喚する。
「こい、インヴェルズの斥候!」
ぴょこんと出てきた斥候。
「村を見てきてくれ」
ピシッと敬礼をするとスタタタ!と駆け出した。
しばらくして帰ってくると、やはり
「よし、戻っていいぞ」
斥候は俺の影に潜って消えた。
「じゃあ、始めるか」
「よし、大量に召喚するぞ」
森の生物と魔力で次々にインヴェルズの先鋭と呼ぶ者を生み出していく。
「よし、かかれ!」
先鋭はブブブと翅を羽ばたかせ、呼ぶものは徒歩で村を襲撃する。
ーー村サイド
村の近くの森に大きな鳥が降りる。それが不幸の始まりだった。
大きな魔物が森に来たとかで、大人たちは大きな町やギルドに助けを頼むかなんて言っている。正直農作業でへとへとな俺はそんな事はどうでもよく、ゴロンと寝転がる方が大切だった。
「こら、お腹冷やすわよ!」
「大丈夫だから」
幼なじみのアーニャとの毎日が何よりも黄金であった。
寝ていると、何やら騒がしい。ぼんやりした意識の中、隣のルーさんが駆け込んできた。
「おい、魔物の襲来だ!急げ!」
俺はすっかり目覚めて、急いで準備をした。男衆はある程度自衛できるように訓練されている。今回も気を付ければきっと倒せる。だってこないだはジャイアントボアだって倒せたんだから。
「なんだよ……これ」
たった三十分の出来事だった。人型をした黒い蜂はその針で次々に人を刺し殺していく。殺された人たちは跡形もなく男も、女も、老人も、子どもさえも皆等しく真っ黒なドロドロに変わった。
一撃で死ねなかった人はもっと悲惨だった。身体が溶けていく感覚の中で死んでいく苦痛を味わっているようだったから、楽にするしか道はなかった。
十匹ほどの群れだったので、俺たちでもなんとかなった。それでもざっと村の半分は死んだ。足の速い使者を近くの町ブルックに飛ばし、皆は傷を出来るだけ早く早く癒そうとしていた。
戦いが終わってすぐにまた蜂は来た。鈴虫の翅が生えた奇妙な魔物を大量に引き連れて。
人間は絶望した。ここから逃げたところでどうにもならない。追いつかれて死ぬだけだと。
次々に人間は死んだ。大事なアーニャは目の前で翅男に喉元を噛みちぎられて死んだ。隣のおじさんは頭がなくなった。粉挽きのジムはドロドロになって死んだ。村一番の力自慢であるゴーレンは無数の翅男に全身を喰われて死んだ。
死んだ、死んだ、死んだ、死んだ。みんなが死んでいく中で俺だけはなぜか見向きもされない。あいつらの頭を叩いても、魔法で電撃を放っても、剣で思いっきり串刺しにしても一匹も俺を見ない。
助けてえ!いやだ!死にたくない!
俺の耳にはもうそれだけしか聞こえてこない。虫は相変わらず俺に見向きもしない。
俺以外をすべて食い尽くした虫ども。満足したのか霧のように消えてしまった。
既に起きる気力はほぼない。神がいるというのなら何故みんなを助けなかったのだろう。みんな信仰心には厚く、毎日を必死に生きていたはずなのに。どうして俺たちだけ不幸にならなければいけないのだろう。
足跡が聞こえてきた。一体誰だろう。なけなしの気力を振り絞りその人を見る。
醜悪な愉悦の表情だった。
「いやー、残念残念。みんな俺たちのせいで死んじゃったね。まあ、仕方ない。いずれはこうなるんだから運が悪かったと思ってよ。ホントに悲しいなあ、俺たちのせいだけど」
クスクスと嗤う。
……は?運がーー悪かった?
「おい……どういう……ことだ」
「いい感じの村。すぐには手助けも来ないし、何よりみんなの顔が希望に満ちていたんだ!じゃあ、恐怖の味で食べないと損じゃない。こんな美しい村なんだから」
イカレタこいつの身勝手で俺は、俺たちは傷つけられたのか
「その表情、いいね!美味しそうだ!」
憎しみ、怒り、悲しみ。負の感情が、これ以上なく吹き出していく。
殺してやろうと左手を振り上げるも、あいつの右手から黒いもやが俺を覆って動きを止める。
「大丈夫。きっとすぐに"アーニャ"と会わせてあげるよ、お腹の中でね」
「くそったれが」
「どうもありがとう」
俺の意識は消えた。
「うまかったな」
「だろう?憎しみとか、暗い感情が脳から噴出しているのは特に美味い。魔物はこうはならないから何か違いがあるんだろう」
「食い過ぎは良くないんだろ?」
「そうだな。おやつみたいなものさ」
この数日後、王国は大勢の騎士を引き連れてやってくるが、無残に荒らされた村と黒い泥だけが残っていた。
一つの村を壊滅させた事からあの黒い蜂はマッドホーネットと名付けられ、第一級の危険度を持つ魔物に指定された。
タイトルわかりやすくするべき?
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変えよう
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そのままで
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その他