緋弾のアリア Reversi   作:長財布

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感知

「へぇー、まさか私の他にも武偵殺しの捜査をしてる人がいたなんてね・・・」

 

病床で資料を読み漁る神崎・H・アリア、彼女もまた武偵殺しの事件を追って遥々ロンドンから東京にやってきたのだ。

 

ちなみにエリーはアリアのことを知っているようだがアリア本人はエリーのことを知らない様子だった。

 

「正確には武偵殺しを操ってる黒幕だけどね」

 

エリーが答える。彼女は終始複雑そうな表情だった。

 

「だから武偵殺しについて知っている事を教えてほしいんだ。どんな小さいことでも構わない」

 

たまらず俺が彼女の言葉を継ぐ。

 

「知っていることもなにも・・・武偵殺しは手がかりを何も残さないのよ」

 

手詰まりか、分かってはいたがそう安々とシッポを掴ませてはもらえないんだな。

 

エリーはゴミ箱に入っている紙束を見つける。何やら報告書のようだが・・・

 

「これバスジック事件の報告書だよね?もらっていい?」

 

「えぇ、構わないけど手がかりになるようなことは何も書いてなかったわよ」

 

「ありがとう、じゃぁ私達はこれで失礼するよ」

 

そういってエリーはさっさと出口に急ぐ。

 

「え、もう良いの?」

 

困惑するアリア。

 

「あぁ、あ・・・そうだ、貴女はどうやって武偵殺しの出現を察知してるのかな?」

 

最後にエリーはアリアに質問する。

 

「武偵殺しは遠隔操作で乗り物を乗っ取るの、その時の電波をキャッチしてるのよ」

 

「なるほどね、ありがとう」

 

そう言って今度こそエリーは病室を後にした。

 

静かな病室に残された俺とアリア。

 

「じゃぁ俺もこれで、ええと、なにか情報を掴んだ俺たちにも教えてほしい、コチラもなにかあったらそっちに伝える」

 

「わかったわ」

 

俺はアリアと連絡先を交換しておいた。

 

 

 

 

 

 

俺たちは捜査資料にかかれてあったバスジャックのルートを走っていた。横に座るエリーは時折資料に目を落としつつ外をしきりに見回している。

 

「なにかわかったか?」

 

「たしかに彼女が捨てるのも分かるね」

 

「一旦帰るか?」

 

「あぁ、部屋に戻ってゆっくり考えたい」

 

俺は首都高に乗ってエリーのマンションへと向かう。

 

部屋に戻り彼女は例のソファに座って考えを巡らせていた。彼女だけに見える情報の断片をパズルのように組み合わせている。

 

「武偵殺しは周到なヤツで痕跡を一切残していない、セグウェイやルノーにも手がかりは無し・・・」

 

ブツブツと独り言を言いながら手を動かしていく。

 

「唯一引っかかるのは武偵殺しの事件にはアリアが絡んでいること、それに遠山キンジも、二人は今年の春に出会ったばかりなのにいくつかの事件をすでに解決している」

 

「待てよ、確か彼女は武偵殺しが遠隔操作をするときに発する電波を察知して居ると言っていたか、武偵殺しはどうして毎回彼女に感づかれているにも関わらず手法を変えないんだ?」

 

「こういったタイプの犯罪者は事件を起こすことを楽しんでいる節がある、自分は逮捕されないという自信の現れか?」

 

エリーは手を左右に振って今の仮説を払い除けた。

 

「いや違う、目的は彼女にあると考えるのが妥当だ。決まってキンジをそばに置くのも仕組んでの事、不特定多数を狙っていると見せかけてターゲットはあの2人だったのか」

 

「でもなぜ遠山キンジなんだ?待てよ・・・豪華客船のハイジャック事件で殉死した武偵の名前は確か遠山・・・そうか、そういう事か!?」

 

ハッと目を開いて俺の方を見る、その目つきはまるで獲物を眼の前にした虎のようだった。

 

「武偵殺しの目的は分かった。後は犯人探しだね。早速準備に取り掛かりたいところだが頭を使いすぎて今日は疲れた。物事を成功に導く上で休息も大事だよ、キミもしっかりと休んでおくように。それに銃の手入れをしておいてくれ、キミの狙撃が必ず必要になってくる。クルマは自由に使っていいよ、持ってきたのは良いけどあれは大きすぎたしキミのほうが色々と動く上で便利だろう?」

 

矢継ぎ早に伝えたエリーはそのままバタン、絨毯の上で寝てしまった。

 

エヴァンゲリオンみたいなやつだな・・・

 

俺は彼女を抱えベッドまで運ぶ。お言葉に甘えてCX-75のキーを持って俺はマンションを出た。

 

地下駐車場に降りて機械式駐車場からCX-75が出てくるのを待っていたときだった。

 

「うわっ!?びっくりさせんなよレキ・・・」

 

俺と同じ狙撃科のレキが横に立っていた。狙撃手らしいと言うか人間らしくないと言うか、所作がいちいち無機質でよくわからないヤツだ。

 

「良くない風が吹いています」

 

そして言っていることもよくわからない。彼女のいう風とはある種の彼女の行動原理のようなものだ。

 

「俺にか?」

 

「はい、近いうちに貴方は迷います」

 

「確かにエリーと一緒に捜査し始めたときからなんか変なイメージが付いてまわってるんだ。うまく言葉では表せないがな・・・」

 

銀行強盗事件のときにも感じたいわゆるイヤな予感って奴だ。俺は武偵殺しの黒幕という確かに存在するだろうが実態が全くつかめない組織に対する恐怖心からくるものだろうと思っていた。

 

しかしレキの口ぶりからすると違うようだ。

 

「迷いの元はもっと身近にあると思います。貴方は今後を左右する重大な選択に迫られますそれに貴方はとても悩み、困惑するでしょう」

 

普通の人なら胡散臭いオカルトだと一笑に付すだろうが武偵という職業柄無視することもできなかった。

 

「でも自分の選択を信じてください。そして自信を持って行動してください。では・・・」

 

ちょうど良いタイミングでCX-75が駐車場から出てくる。レキの姿はもうなかった。

 

「全く・・・相変わらず変なヤツだぜ・・・」

 

そう呟いて俺はCX-75に乗り込んだ。そしてエンジンを掛けようとボタンに手を伸ばしたときだった。

 

「ん?」

 

ふと手元に握っていたキーに視線が向かう

 

Ellie・M・Washimiya

 

キーホルダーに彼女のフルネームが刻印されていた。

 

「M・・・アイツのミドルネームか?」

 

彼女はイギリスの名家の出だ、ミドルネームがあってもおかしくないだろう。俺は特に疑問に思わずCX-75のエンジンを掛けた。

 

近所迷惑になるんじゃないかってくらい大きくて甲高いエキゾーストノートが駐車場に響き渡る。

 

俺はアクセルを踏み込んでマンションを後にした。

 

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