緋弾のアリア Reversi   作:長財布

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吟味

「悩むな・・・」

 

俺は悩んでいた。

 

「おいレオ、早く決めてくれないと後ろが詰まっるんだぜ?」

 

「え、あぁ・・・済まない」

 

武藤に急かされ俺はボタンを押す。下からB定食と書かれた食券が出てきた。

 

エリーの捜査に協力することで俺は彼女から少なくない額の報酬をもらっている。いつもはラーメン一択なのに昼食のメニューを選ぶ余裕が出ててしまった。

 

それに彼女から常に良いコンディションを維持するようにと言われ、栄養バランスを意識するようにもなった。

 

机を囲うのは俺と車両科の武藤と強襲科の不知火、探偵科のキンジだ。

 

「お前最近噂になってるぞ、イギリスからの転校生と付き合ってるらしいじゃないか?」

 

「!?」

 

武藤の唐突な言葉に俺は味噌汁を吹き出しそうになる。

 

「な、何だよそれ・・・俺はエリーに捜査協力してるだけだ」

 

「ふーん、でも放課後に彼女がキミに告白してるところを見た人も居るらしいよ」

 

不知火が悪ノリしてきた。コイツめ・・・背中に気をつけておけよ・・・

 

「あれは彼女のイギリスンジョークだって」

 

「テンパるんじゃねーよレオ、それを言うならイングリッシュジョークだろ?」

 

「お前がなんで女絡みの話し振るか分かってるぞ、また星伽さんにアプローチして失敗したんだろ?」

 

「チキショー!それを言うのは反則だろ!」

 

「はい俺の勝ち~」

 

机に突っ伏す武藤に俺は高らかに勝利宣言をした。気にすることなかれ、いつもの馴れ合いだ。

 

 

 

 

 

 

武藤たちとの楽しいランチの後、俺は装備科棟へ向かった。平賀文から預けていたKar98のアップグレードが完了したとの連絡を受けたからだ。

 

「平賀、入るぞ・・・」

 

「茨木君!待ってたのだ!」

 

ガラクタだらけの工房の奥から小さい体がガサガサと音を立てながら出てきた。少しは整頓しろよな・・・

 

平賀は俺の前にガンケースを置く。

 

「古い銃で苦労したけどとてもやりがいのある仕事だったのだ!開けてみるのだ」

 

俺はガンケースを開けて愛銃の姿を拝む。

 

外見で大きく目立つ変更点はフォアエンドとストックの形状変更、俺は基本シッティングポジションの構えを取るため、シャシーとストックが膝、肩、腕に密着するような形状にしてもらった。

 

更にチークパッドが調節できるようにした事と20ミリレイルシステムの取り付け、ストレートボルト化した事、後は各部品の精度出し、かなり無茶のある改造だが平賀は喜んで引き受けてくれた。

 

「気に入ったのだ?」

 

「勿論!マジ最高!」

 

試しに構えてみたがフィッティングがハンパない!

 

「そこまで言ってくれるととても嬉しいのだ。こんな大口依頼も久しぶりだから弾代と申請代行手数料はサービスしとくのだ」

 

「ホント感謝するよ」

 

勿論このカスタマイズはかなり高くついた、しかしこれだけはケチってはいけないところだ。

 

平賀と支払いについて相談した後その足で狙撃科棟で試射をした。思ったとおり、満足のいく出来栄えだった。これなら1000m級の狙撃も難なくできるだろう。

 

これで準備も万端。武偵殺しよ、いつでもかかってこいだぜ!

 

 

 

 

 

 

 

帰り、俺はガソリンスタンドに居た。CX-75はガソリンをめっちゃ消費するのだ。

 

ハイオクのノズルを突っ込んで満タンになるのを待っているとふと向かいにあるホテルの前に止まったシトロエンDS9が目に留まった。

 

『外』と書かれた青い横長のナンバープレート、外交ナンバーだ。上2桁の数字は27、フランスの外交関係者が使用する公用車ということだ。

 

ホテルから2人の人影が出てくる、その中のひとりはよく知っている人物だった。

 

エリ―!?

 

フォーマルな格好をした鷲宮エリーだった。彼女は初老の外国人男性と一緒にDS9へと乗り込む。俺はさっさと支払いを済ませて例のDS9を追うことにした。

 

とはいえすこぶる目立つクルマ故あまり接近できない、4台の一般車を挟んで尾行を開始した。

 

「どうしてエリ―はフランスの外交官と会ってるんだ?」

 

全く訳がわからない・・・

 

DS9は東京湾の埠頭がある方向へ向かう、そろそろ尾行するのもしんどくなってきた。CX-75に乗っているのを後悔してしまう。

 

ついにエリー達の乗っているDS9は人気のない倉庫街の方向へ曲がっていったために尾行を断念した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫かい?なにやら顔色が悪いみたいだけど・・・」

 

「いや、別に俺は元気だぞ?何も問題はない」

 

次の日、俺はエリ―の部屋で捜査の報告を聞いていた。しかし内心報告どころではない。

 

別に彼女に昨日のことを聞こうとも思っていたのだが聞かない方が良いとも思ってしまっている。

 

「だったら良いんだけど・・・ともかく武偵殺しについて分かったことを報告するよ。」

 

エリ―の報告をざっくりとまとめるとまずヤツの目的は自分の存在を誇示するために事件を起こしている。手口は最初不特定多数を狙いターゲットにだけ分かる手がかりを残す。そして次のターゲットは神崎・H・アリアと遠山キンジである。

 

「なぜあの二人がターゲットなんだ?」

 

「彼女に関しては家柄が関係しているんだ。なんせ彼女の実家は、その・・・ホームズ家だからだよ」

 

「てことは神崎はあの名探偵の末裔って事か?」

 

「そういうことになるね」

 

マジかよ・・・

 

確かに彼女の病室に言った時、神崎・H・アリアとあった。あの『H』はホームズのHだったのか・・・

 

それでエリーが彼女を訪ねたときに調子悪そうにしてたのか。確執のある家の直系の末裔に会いに行っていた訳だからな。

 

「家が関係していると言っていたが犯人もイギリスの名家って事か?」

 

「名家という点は合ってるけどイギリスだけとは限らないよ、キミが思っている以上にヨーロッパは狭いんだ」

 

・・・まぁイギリスは歴史的に色んな国にケンカ売ってきたからな。

 

「だったらキンジはどうして狙われる?」

 

「キミだってあの小説のことはしっているだろう?あの探偵のそばには誰が居た?」

 

「ジョン・H・ワトソンだろう?あぁ・・・相棒が居るってことか?」

 

「そういうコト、どうして武偵殺しが遠山キンジを相棒として選んだかはわからないけど豪華客船で兄を殺害、自転車に仕掛けた爆弾、偶然ではないだろうね」

 

しかしあの二人、あまり上手くいっているわけではない様子だ。神崎は一人で突っ走る癖がある、それに普段のキンジじゃ使い物にならないだろう。

 

「それでここからは私の予想だけど武偵殺しは私達にかなり近い人の中にいると思う」

 

「・・・もしかして生徒の中に武偵殺しが居る可能性があるということか?」

 

「あぁ、考えてもみなよ?この学園島、住人の多くは武偵校の関係者だ。そんな人達の中で白昼堂々と爆弾テロをやって見せるんだ。外部からの犯行なら絶対誰かが気づく、教務課だって捜査してるのに一向にシッポを掴めないということは灯台下暗しってことも十分にありえる、日本の捜査機関っていうのはそういったことに弱いからねぇ」

 

報告を聞き終えエリ―の部屋を後にする。犯人逮捕に関する詳しい作戦は情報を揃えてまた連絡するとのことだ。

 

俺は首都高を走りながら考えを巡らせていた。

 

エリ―の様子はいつもと変わらなかった。外出した形跡も無し、俺が昨日見たのは見間違いだったのだろうか・・・

 

答えは出ぬまま結局男子寮の駐車場へと到着してしまった。

 

「ん?こんなクルマあったっけか?」

 

俺のスペースの隣に見慣れないクルマが停まっていた。確か名前はエイキロン、フランスのジェンティオートモービル社が製造している1000馬力オーバーのモンスターカーだ。

 

不審に思いながらも俺は横にCX-75を駐車する。この区画だけまるで高級ホテルのようだ。

 

俺がクルマから降りると隣のエイキロンのシザーズドアが開く。中からスーツを着たキレイな外国人女性が出てきた。

 

「貴方が茨木レオ君?」

 

流暢な日本語で俺に話しかけてきた。

 

「そうだが?アンタ何者?」

 

「リディアーヌ・シュヴァリエです。よろしく」

 

リディアーヌと名乗った彼女は懐から名刺を取り出して俺に差し出した。フランス語で色々と書いてあるが唯一分かった文字がある。

 

DGSI(Direction centrale du Renseignement intérieur) フランス国内情報中央局、日本で言う国家安全保障局、アメリカだとCIAに準ずる組織だ。

 

「フランスの情報機関が俺に何の用だ?」

 

俺はフランスに渡航経験も無いしフランスの機関に目をつけられる心当たりが全く無いのだ。

 

リディアーヌさんから見せられた写真を見て俺は驚愕した。暗い所で撮ったものだろう、画像を処理して明るさを上げているため少し荒いが俺が昨日見た初老の外国人とエリ―がはっきりと写っている。

 

「鷲宮エリ―について聞きたいことがあるの」




話がぜんぜん進まず焦っております。

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