シルヴァリオ メタモルフォシス ~シルヴァリオ ラグナロク Side:Capricorn~   作:斎藤2021

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どうぞ、脳内で「鋼の限界突破」を流しながらお読みください。


Chapter Ⅲ 鋼の戦友/Overdrive

「――報告は以上だ。それで、何か異論はあるかい、戦友よ」

 

「あるわけないだろう。眉唾だと思っていたが、なんだよこれ、黒を通り越して真っ黒じゃねぇか」

 

「あぁ、まったく同感だぜ。守るべき民を駒同然としか見てないなんざ、塵屑も同然よ。一体どういう理念があって、んなことしてるかはまだ分からねぇが――帝国に害成すってんなら一も二もねぇ、殴り飛ばすだけだ」

 

「――痺れるぜ、無敵の限界突破(オーバードライブ)

 俺もできれば加勢に加わりたいと思っていたが……お前がいるなら心配はないな。必勝確実だ」

 

 不敵に豪胆に微笑みながら、鳴殺笛(シューリンクス)は、限界突破(オーバードライブ)が提出した書類に判を押した。

 

 此処、アドラーの北部部隊が統べる旧クライストチャーチ大聖堂、そこを改造した軍舎の一室、隊長室にて、二人の魔人はこれから始まる大きな闘争に業火の如き怒りと戦意を燃焼させていた。

 

「まぁ、ともあれ。現地で何かあればすぐに連絡をしてくれ。裁剣天秤(ライブラ)にも話を通しているから俺たち瞬圧山羊(カプリコーン)の出番はないと思うが……まったく、こういうとき、自分が駐屯兵なのが恨めしくなってくる」

 

「そう言うなって。お前さんたちが治安維持や統治をしてくれるおかげで、制圧部隊の俺たちが立ち回りやすくなってるんだからよ。

 でもまぁ確かに。お前が戦場で隣に並んでくれたなら、それ以上に心強いものはないけどな」

 

「よせって。俺なんか限界突破(おまえ)裁剣女神(アストレア)に比べれば、どこまで行っても二番煎じだ。過大評価はやめてくれ。

 だが、いつでも力を貸すのには違いない。何かあればすぐに言ってくれ。俺にできることなら尽力しよう」

 

「……そうだな。なら早速で悪いんだが――」

 

 

……

………

 

 

「……どうしてこんなことに」

 

 突如ロバーツ隊長から呼び出しをされ訓練場に来てみればこれだ。一体全体どういうわけだか分からない。

 私の目の前には、両拳を鳴らしながら獰猛な笑みを浮かべている限界突破(オーバードライブ)と、狩人が如く弓矢(アダマンタイト)を携えながら鋭利な眼光をギラつかせている鳴殺笛(シューリンクス)が、一触即発の空気を漂わせていた。

 

 何でもジェイス隊長きっての頼みで、神祖制圧の前の最終調整として、ロバーツ隊長との模擬戦を申し込んだらしい。

 無論、ジェイス隊長大好きのうちの馬鹿隊長がそれを無碍にするなどあるはずもなく……こうして、何故か私が立会人として選ばれてしまっというわけだ。

やばい、帰りたい。

 

「悪いなアルヴィン。こんな一方的な我儘を聞いてもらってよ」

 

「気にするな。いやなに、本音を吐露すればな……久々にお前とヤり合えると思うと、胸が昂って仕方がない。

 殺すつもりでいくぞ、お前相手に温い真似は許されんからな」

 

「はッ、上等だぜ。互いに加減は無しだ。模擬戦とはいえ、これは死合い。戦友だからこそ、ぶつける力と想いに、嘘偽りがあってはならねぇからなァッ」

 

 ……などと両者は私を置いてけぼりで盛り上がるばかりで。

 本当、男って馬鹿だなと思わずにはいられない。

 何なんだこの人たち、本当にホモなんじゃないのか? ジェイス隊長の妻子持ちっていうのも実はフェイクで、男色家(こっち)がこの人の真実なんじゃないかとも思ったが、ひとまずそんなおどろおどろしい思考は片隅に追いやって。

 

「ではこれより、私、リディア・ウォーライラ立ち合いのもと、模擬戦を開始します。

 両者、構えてッ」

 

 私が声を張り上げた瞬間、改めて両者の戦意に炎が宿る。覚悟が決まる、死を携える。眼前の戦友は、今だけは討滅すべし敵と意識を切り替え、ロバーツ隊長とジェイス隊長は、己が牙を獰猛に鳴らしていた。

 そして――

 

「――始めッ!」

 

『――推して、参るッ!!』

 

 次の刹那、大気を燃焼させんが如き鋼の闘志が噴火し、爆撃じみた炸裂音を轟かせながら、限界突破と鳴殺笛の死闘の口火が切られるのだった。

 

 

 

……

………

 

 

 

 

 

「天昇せよ、我が守護星――鋼の恒星(ほむら)を掲げるがため」

 

「創生せよ、天に描いた星辰を――我らは煌めく流れ星」

 

 必殺の絶拳と穿通の弓矢が火花を散らした次瞬、両者はまったく同時に起動詠唱(ランゲージ)を奔らせ、星の励起を敢行した。

 基準値(アベレージ)による様子見など一切不要。何故なら互いが互いに、眼前の敵が強者の星に座していることなど百も承知だからだ。様子見などという日和った真似をしようものなら即座に命を刈り取られるであろうことは考えなくても理解していた。

 だからこそ、初手から必殺、全力全霊。相手をこの上なく信頼しているからこそ油断も加減も毛ほどもない。余すことなく全力を開放し、勝利をこの手に掴むため、二人は互いの星を太陽の如く煌めかせた。

 

「鏃から半身半馬を蝕む告死。永劫終わらぬ多頭竜(ヒュドラ)の毒が、不死身を捨てろと囁くものの、取るに足りぬわ。片腹痛し。

 蹄を鳴らせ、弦を引け、矜持を胸に地平を駆けろ。苦悶と嘆きにこの強弓が朽ち果てるなど有りはしない。なぜならば、耳を澄ませば聞こえてくるのだ――天に轟く雷霆が」

 

 爆轟する気合。増幅していく勝利への執念。

 両者ともに掲げる覚悟の熱量は常人のそれを遥かに突破しているが、特に異常なのはジェイスの方だ。

 覚悟への振り切れ方が、アルヴィンの二枚、三枚は上を往っている。

 アルヴィンが脆弱なわけでは断じてない。前述したとおり、アルヴィンも十分な規格外、傑物である。だがこのジェイス・ザ・オーバードライブという鋼の戦士は、それすらも軽々と乗り越える。その名前の如く、己に限界などないと笑い飛ばすかのように。

 上昇を続ける鉄の想いに、際限はない。

 

「おお、遥かに煌めく天頂神よ。星座となるには早すぎる、まだ戦えと言ってくれるのか。ならば我が身は全身全霊、すべてを懸けて応えるのみ。爛れた血肉は切除した。鋼の四肢を取り付ける」

 

 そして、纏う星の空気が、明らかにアルヴィンのそれとは異なっている。

 拡散していく魔の気配。孕む死の香りは、爆発寸前のニトロのようだ。

 そう。彼は純正の星辰奏者(エスペラント)に非ず。彼こそは、不死身を掲げる最新鋭の人造惑星(プラネテス)。第三世代型魔星の到達点、その究極。

 完成された光の烈火が、あまねく悪を誅殺すべく唸りを上げる。

 

「穢れた血潮は総じて無用、燃える油と入れ替えようぞ。

 御許へ召され星座へ列するその時まで。さあ戦友よ。轡を並べていざ往かん」

 

 ゆえにいざ、刮目するがいい。限界突破はここに在り。

 もはやこの身を蝕む破滅(もうどく)など、怖くもなければ取るにも足らない。

 脆弱たる五体など不要、すべてはこの鋼の心と共にある。

 今日の笑顔を守り抜き、涙を砕き明日への架け橋とせんと願う限り。彼に敵はいないのだろう。たとえ悪魔や神が相手でも、彼は無辜の民(だれか)の明日を必ずや守護する笑顔の盾となる。

 

「約束された誓いを掲げ、邪悪を穿つ矢を放て」

 

 ――そう、必ず。何があろうともだ。

 何故ならそれこそ軍人(ジェイス)の本懐。彼が願う“勝利”の形。

 その願いが朽ちぬ限り、限界突破は無敵であり続けるのだ。

 

 

超新星(Metalnova)――天光礼賛、限界突破の鋼魔弓(Overdrive Sagittarius)!」

 

 そして、稲妻の如く轟き閃く魔星の権能。

 神の恩寵さえ破砕する殲滅力を宿した魔拳を、肉薄する矢の大群に向けて放った瞬間、目を疑うような現象が発生した。

 

「な――これはッ……!?」

 

 リディアは、初めて実際に目の当たりにするジェイスの星辰光の破壊力に思わず声を漏らして瞠目した。

 そう、アルヴィンの放った弓矢がジェイスの拳に殴り飛ばされた瞬間、それらすべてが例外なく()()()()()()()()()()のだ。

 これがジェイスの宿す魔星の輝き、不死さえ穿つ限界突破、その正体。

 接触対象を極めて脆い結晶構造へと強制変換し、問答無用に木っ端微塵に粉砕してしまうという恐ろしい能力だ。

 所謂、「当たればそこですべてが終わってしまう」類の力である。

 ジェイスを相手に、ただの一度も失敗は許されない。一撃でも掠ってしまえばそこで終わり。幕を閉じる(デッドエンド)

 ゆえに、アルヴィンはジェイスの接近を封じながら立ち回る必要があるのだが――

 

「ふははははは、あーっはっはっはっはァァッ!!」

 

 絶笑で大気を震撼させながら進撃する限界突破は止まる気配を見せなかった。

 すでにアルヴィンが投射した弓矢の数は総数三桁を突破していたが、ジェイスはそれら九割を殴り飛ばし、残りの一割は被弾必至と甘受しながら、恐るべき戦意で肉薄を続けている。

 この調子ではあと二十秒もあればアルヴィンに敗北の未来が訪れるのは想像に難くない。

 しかし、そんな未来は訪れないとでも言うのか、アルヴィンはジェイスと同じように口元の笑みをより強烈に深めるばかりだ。

 ジェイスの尋常ならざる強靭さを認めつつも、自身の勝利を、何よりも疑っていない

 

「最高だぜジェイス、駐屯兵ってのは中々戦闘の機会に恵まれねぇからなぁ――たまにはお前みたいな強者と鎬を削らなきゃ、俺の腕も鈍るってもんだァ!」

 

 機関銃の如く弓矢を連射するアルヴィンの手元が閃いた瞬間、その現象は起こった。

 アルヴィンの手元を離れ直進していた弓矢が、突如()()()()()()()()()()

 それも一本や二本ではない。総数十七本の矢が、まるで糸で操られているかのように踊り始めた。 

 先まで直線的な軌道しか描かなかった弓矢が突如変則的な動きをしてきたことにより、ジェイスの拳のキレにも乱れが生じ、必然として手傷も増える。

 しかも、異常事態はそれだけに留まらず。

 

 ジェイスの脇腹を貫通した弓矢が、旋回しながら再び膝裏を貫通した。

 これは通常、あり得ないことだ。

 本来であればジェイスの肉体を貫通した瞬間、弓矢の運動エネルギーは減衰し、大地に墜落する。それが普通であり、覆せない自然の理。

 しかしアルヴィンの異能は「そんなの知ったことか」と言わんばかりにその不条理を実現していた。

 

 すなわち、アルヴィンの異能の正体とは――

 

()()()()()()()()……使い手の技量に左右される星をよくここまで使いこなせるもんだ。流石だぜ、鳴殺笛(シューリンクス)ッ!」

 

 縦横無尽に乱舞する弓矢に五体を切り刻まれながらも、ジェイスは他意のない称賛の言葉をアルヴィンに吼えた。

 

 そう。アルヴィンの宿す星の力――それは、弓から投射する金属に星の力を付与し、運動エネルギーはそのままに自在に操縦するというもの。

 アルヴィンはアダマンタイトである弓から金属製の矢を投射し、それらを無限に操縦することにより戦闘を行っているのだ。

 一見すると応用が利き利便性が高く、遠距離から敵を圧倒できる類の異能に感じるかもしれないが――それは否。先にジェイスが言ったように、この異能は使用者の技量に左右される星なのだ。

 

 投擲された金属は、何も自動で敵を攻撃するわけではない。

 放たれた弓矢、真実一本一本を、()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 この星の力はどこまでもアナログであり、ゆえにこそ使い手が凡庸であれば宝の持ち腐れしてしまうであろうピーキーなものに他ならなかった。

 雑に使って強いなどとは、口が裂けても言えない、応用力の高い――悪く言えば、扱いが難しい星辰光と言えた。

 

 しかし、見るがいい。アルヴィンはこれを苦も無く使いこなしている。

 戦況を鷹の如き広い視点で見渡し、自らの投射した弓が今現在どこにあり、どう動かせば敵手に痛打を与えられるかを常に思考回路を大回転させながら考えている。

 加えて、追撃の弓矢を放つことも忘れない。この一連の動作を一秒単位で行っているのだから、彼もまたジェイスと同じく規格外の魔人と評することができるだろう。

 事実、先まで前進を止めなかったジェイスが停止を余儀なくされ、殺到する弓矢の暴嵐の対処に追われている。

 一発一発は致命傷にならずとも、塵も積もれば山となる。(いなご)の大群のように群がる弓矢すべてを受けてしまえば、すぐさま戦闘不能に陥るのは猿でも理解できた。

 

 よって、それは必然と言えるだろう。

 この勝負、アルヴィンに軍配が上がるだろうとリディアは確信した。

 現状を見てもアルヴィンが圧倒しているのは明らかだし、そもそも両者の能力の総合力を鑑みても、ジェイスに勝ちの目がないことは試合が始まる前からなんとなく察してはいた。

 

 

 

Alvin Roverts

 

 

基準値(AVERAGE):B

発動値(DRIVE):A

収束性:C

拡散性:A

操縦性:AA

付属性:B

維持性:B

干渉性:C

 

 

Jace the Overdrive

 

基準値(AVERAGE):C

発動値(DRIVE):AA

収束性:AA

拡散性:D

操縦性:A

付属性:C

維持性:D

干渉性:E

 

 ……これだ。

 ジェイスが能力値で優っている点は、出力と収束性のみ。つまり単純な火力、必殺性のみと捉えられる。

 しかしその必殺力も御覧の通り。封殺してしまえばなんのことはない。

 接触したら終わりと言うのであればそもそも接触されなければ何も問題はないのだ。

よってリディアは瞳を閉じ、勝負の決着を確信した――次の瞬間。

 

「いいや、()()()()!」

 

「ッ……!?」

 

 大気を(つんざ)いた爆発じみた大喝破が、リディアの意識を釣り上げた。

 視線を飛ばせば、なんとそこには依然闘志を燃やして戦闘を続行するジェイスの姿が。

 何をやっているのかあのバカは。もう勝負はついただろう、負けるのが悔しいのかなんなのか知らないが、無駄な足掻きはもうやめて――

 

「……なんで。嘘……」

 

 倒れない。ジェイスは未だに拳を振り続けている――どころか、攻撃の回転率がさっきよりも上昇しているのは、一体どういう理屈なのか?

 よって、趨勢は逆転する。ジェイスが覚醒を遂げたことにより再び二人の距離が縮められていく。まるで鼻歌でも刻むかのような気楽さで、ジェイスは己が不利な状況を蹴り飛ばしてみせたのだ。

 

「ははははッ! それでこそ限界突破(オーバードライブ)! 勇気と気合と根性があれば、どんな未来も切り拓ける……それが神様が男に授けた、最大最強の武器ってなァ!」

 

「おうよ、男にはこんなにも無敵な機能が備わっている――十分に活かしてやらなきゃ、男として名折れってもんだろうよォッ!」

 

 暑苦しい言葉の応酬を繰り広げながら、そしてアルヴィンもまた当たり前のように覚醒した。投射する弓矢の数、操縦する弓矢の数、両方とも滝登りに向上していき、より洗練されていく。

 無駄が一秒単位で削られていき、すべての行動が最適化されいくのだった。

 両者の攻撃の回転率、破壊の規模が増したことにより、発生する余波が訓練場の壁面を容赦なく削り取り始めた。

 大地どころか大気すらも絶叫を迸らせ、ジェイスとアルヴィンを中心に世界は徐々に破壊の渦に呑み込まれていく。

 

 そんな空前絶後の死闘をただ一人見守るリディアはというと――

 

「あの人たちは……頭おかしいんじゃないの」

 

 ただただ、戦慄していた。

 なんだ、この怪物たちはと。なにゆえそこまで戦意を滾らせ、闘争に身を投じることができる? 何故、呼吸をするように一秒前の自分より強くなれる? 散歩感覚で覚醒できる? おかしいだろう? 道理に合わぬ、いや、それより何よりも――

 

「ジェイス隊長は……なんで、笑えているの?」

 

 何故、ああも楽し気に、何の痛痒も感じていないかのように戦闘を続けられている? おかしいだろう? だって、彼は基準値と発動値がかけ離れているから、今この瞬間も全身を熱した鉄の棒で掻き混ぜられているかのような激痛に苛まれているはずなのに。()()()()()()()()()として、その事実が何よりも恐ろしい。

 確か全身の何割かをサイボーグにする強化手術を受けたとか聞いたが、その影響だとでも言うつもりか? いいや、決してそれだけじゃないだろう。何故なら、ジェイスの身を襲っている激痛は内部からだけではない。今この瞬間も、アルヴィンの放つ穿通の弓矢が秒単位にジェイスを切り刻んでいる。痛くないはずないだろう。

 そんな内からも外からも激痛の波に苛まれているというのに、この男は何故そんな素振りを一切見せない? まだ戦おうと拳を振るえる? 

 

「……化け物だ」

 

 ぽつり、と。率直な恐怖の言葉を吐き出した。

 自分はこうはなれない。なりたくない。これが努力の果てに行き着く人間の末路だとしたら、自分は絶対こうはなりたくない。

 確かにリディア・ウォーライラが持ち合わせる異能は「化け物」と評す以外ない力だが……だからこそ、心までは人間のままでいたい。

 そう、強く願う。

 

「うおおおおぉぉォォッ!!」

 

 瞬間、徐々に距離を詰めていたジェイスがあろうことか大地を蹴り上げ後方へ飛び退いた。

 まさかこのタイミングで後退を選ぶなどとは露にも思っていなかったのだろう。一泊、アルヴィンの意識に空白が生まれ、弓矢の群れはジェイスから遠ざかる。

 ジェイスは勢いそのままに城壁面まで跳躍、そして――

 

「――おらあぁァッ!!」

 

「ちょッ――はああぁぁ!?」

 

 壁面を渾身の力で蹴り上げた。当然のように壁面は崩壊を起こし、微塵となって砕けていく。

 修繕費用とかどうするんだと頭を抱えるリディアを他所に、蹴り上げた反動で弾丸の如く前方へ吹っ飛んだジェイスは、アルヴィンの弓矢をすべて掻い潜り、結果として一瞬で間合いに滑り込むことに成功する。

 唸る拳。叫ぶ魔の星。今決着の一撃が、ここに森厳(しんげん)と振り下ろされ――

 

「――いいや()()()ッ!!」

 

 そう咆哮した瞬間、アルヴィンはあろうことか己がアダマンタイトを放り捨てた。

 リディアの顔面が驚愕に歪む。ジェイスも少々面食らったような顔をしているが、それも道理だろう。

 この状況下で自らの武器を放棄するなど、自殺行為以外の何物でもない。アダマンタイトを手放したことにより出力も発動値から基準値へ低下。

 これで真実、アルヴィンの敗北は確定したかに思われたが――

 

「何、拳闘(ステゴロ)に弓矢なんて邪魔だろう?」

 

 思いきり拳を握りしめ、ジェイスの鳩尾へ向けて全力で殴りつけた。

 

「ッ……!」

 

 意識の虚を突かれ、ブレるジェイスの拳。アルヴィンの心臓を穿つはずだった鉄拳は、肩口を結晶化するだけに留まり、予想外の反撃を受けたジェイスは大きく後方へ吹っ飛んだ。

 

「はははははッ! やっぱり男は拳だよなァ、ジェイス! 贅沢言うなら俺も肉弾系の星辰光が欲しかったぜ!」

 

「くはッ――あぁ、今のが一番効いたぜアルヴィン! その拳、腐らせておくにはもったいねぇ! お前の星辰光、どうにかステゴロに応用できねぇか技術班に相談しろよ!」

 

「あぁ、真剣に考えようと思っている! そしたらジェイスよォ――俺に徒手空拳の稽古つけてくれやッ!」

 

「おうよ、お安い御用だ! 言っとくが俺はスパルタだぜ、覚悟しろ! くははははッ!」

 

 そして再び始まる、絶拳、弓矢の大応酬。限界という概念を遥か彼方に置き去りにしたまま、光に焦がれた男たちは破壊の規模を激化させていく。

 そんな歓喜乱舞の破壊合戦は、轟いて止まない衝撃音に何事かと軍舎の兵士たちが集まってくるまで、半永久的に続くのだった。

 

 




ということで、アルヴィンVSジェイスの模擬戦でした。
本当なんなんこのトンチキども(ドン引き)

アルヴィンの能力も判明しましたね。
改めて下記に記載させていただきます。


アルヴィン・ロバーツ

星辰光『Unknown』

基準値(AVERAGE):B
発動値(DRIVE):A
収束性:C
拡散性:A
操縦性:AA
付属性:B
維持性:B
干渉性:C

・投射金属操縦能力。
 弓矢から投射した金属を自由自在に操縦できるアルヴィンの星辰光。
 拡散性と操縦性を筆頭に全性質が高水準なため、表層だけ見れば非常に優秀な能力に見えるが――お世辞にも強力と言える能力ではない。
 というのも、操縦は自動ではなく、真実、投射した金属一つ一つをアルヴィン自身が操縦しなければならず、どこまで突き詰めてもアナログなのがこの能力の欠点だからだ。
 使い手が複数の金属を正確に操縦できるような傑物であれば最高の星として輝くが、凡俗であれば言わずもがな。
 満足にこの異能を使いこなせることなく、鳴殺笛(シューリンクス)は奏でられずに屑星と散るのみだが――
 アルヴィンに関しては、語るまでもなく傑物であり、この能力を十全以上に使いこなしている。
 彼がこの星を発動させたが最後、殺到する弓矢は蝗の群れの如く敵を飲み込み、滅殺の旋律を奏でることだろう。
 響く屠殺の調べに、逃げ場はどこにも在りはしない。



アヤの星辰光と似てる感じですが、こちらは、能力値が高い分、金属を”投射”するというワンアクションを置かないとそもそも能力の発動ができません。
しかも金属爆発もできないので単体としての殺傷能力もそれほどない。
……あれ? めっちゃ使いづらくねこの力って感じですが、本編のアルヴィンの戦闘を読んでいただければわかる通り、まぁ本人の才能と努力次第でトンデモ能力に生まれ変わります。
アルヴィンの場合は、数の暴力で殺しにかかってきます。しかもアルヴィンは反動値が低いので継続戦闘能力も高い。そして覚醒持ち。
一見地味な能力ですが、相対すると厄介な能力なんじゃないかなって感じです。
相手に何もさせず完封するっていう戦い方は、同じ駐屯部隊隊長のヴァネッサの姉御と似てるかもしれません。

今回アルヴィンの能力名と詠唱はお披露目できませんでしたが、
ご安心ください、ちゃんと考えております。
お披露目できる時までお待ちいただければ幸いです。
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