八神はやてには永遠に開いてほしくない扉があった。
「僕ですよ。中にいますよね。入っていいですか」
別に彼が悪い人物というわけではなかった。
むしろ、孤独な自分を常に気にかけてくれる幼馴染だった。
だが、彼はどこか変わっていたのだ。
扉を開ける
中に入ってきた彼は確固とした自分の考えを述べる。
そして、どこから出したのか、青く輝く甲虫型のオブジェを取り出す。
そして、それをはやてに握らせる。
結局、そうするしかなかったからだ。
はやてが我慢ならなかったのは、まるで他人事のごとく、無情で、
それを受け入れるしかなかった自分が恨めしかったのだ。
結局、それをチャージするというおまじないは効果があった。
心が軽くなり、少しの間は歩けるようになったから。
まあ、結局のところ、はやては彼を家に入れなくなった。
彼はある日、彼女が物心ついたときからあった本に触れた。
その本は何故か半分透明になってしまった。ついでに光を放ちながら。
その時はさすがに我を失って、彼を家から追い出してしまった。
その後の数日間はノックと謝罪の声が聞こえたが、無視した。
それから四年間は、彼はずっとはやての家に来ていなかった。
「・・・会いたいなあ」
ふと呟く。彼がはやてにあげた甲虫のオブジェは今も大事に持っている。
時折、それをチャージすることもある。
そのおかげで、たまに車イスなしで一日を過ごすこともできる。
「・・・いつかお礼言わんとな」
二宮秀一。それが少年の新しい人生における名前であった。
さて、彼は聖祥小学校の三年生だ。
「将来の夢か・・・」
今日の授業のテーマ、周りの同級生と同じくらい彼の夢は漠然としたものだった。
しかも、めったに人に言えないような夢だった。
Cogito
この一単語だけでも、明らかに変人扱いだろう。
だから、
まだ決まってない
と言う他に方法がなかったのだ。
そうなると、隣のクラスの月村すずかとアリサ・バニングスが羨ましく思える。
彼女たちはある意味では将来が定まっているからだ。
それで自分は?あまりにも漠然とした目標ではないか?
九年目にして、初めてこの世界に転生したことを後悔した。
よく考えたら、ボーグバトルができないというのも悲惨なものだ。
四年前は良かった。八神はやてという幼馴染がいたのだから。
彼女はこの世界に存在しないボーグにも慣れ親しんでくれた。
・・・彼女の大事な本をおかしくしてしまい、追い出されたが。
当たり前だ。彼だってボーグを壊されたら同じことをするに違いない。
少年はふと思う。
なぜボーグのない世界に転生してしまったのか?
この世界ではボーグバトルができないのに。
それは釣瓶を持たない人たちを手伝うためだ
自問して一秒で答えが出てしまった。
仕方ない、夜風を浴びて頭を冷やすか。そう思って外に飛び出した。
なぜか巨大な怪物に出会ってしまった。
明らかに魔法関連のなにかだろう。
魔法そのものに関しては、はやての本を触った時に知ることができた。
あの時は、長い悲劇の歴史が頭の中に入り込んで大変だった。
それはともかく、まずはこの怪物を倒さなくてはならない。
これを放っとけば、被害が出るのは明白だ。
手を胸に当てる。一瞬で手にはサファイアのように輝くボーグが握られる。
「そこの人、早く逃げてください!」
どこからか声が聞こえてくるが、無視した。
一方的とはいえ、ボーグバトルを久しぶりに楽しめるのだ。この機を逃してはならない。
ボーグを握った手で、怪物を殴る。その瞬間、Cogitoを通じていくつかの情報が頭に入ってくる。
ジュエルシード、願望実現・・・。とんでもないレベルの魔法技術だった。
あの闇の書とかいう本に匹敵するくらいだ。
こんなのを放っとけば街どころか地球が危ない。
「やっぱり放っておけないな」
秀一は改めて魔法という技術の恐ろしい側面を認識した。
「・・・ここで倒す!」
「むしろ駄目です!なのはさん、あの子を撃ってください!」
不穏な声が聞こえる。
「えっ?でもあの子、秀一君に似てるんだけど・・・」
やけに聞いたことのある声だった。
「知り合いだったらなおさらです!それがあの子のためです!」
「えっと、ごめんね。秀一君!」
嫌な予感がしたから振り返ると、目の前にピンク色の玉が迫っていた。
前世では絶対にしなかったような失敗だった。
秀一は意識を失った。